Muv-Luv ALTERNATIVE 業   作:ROGOSS

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帝国東部方面軍第12師団

同日 作戦指令室

 

「失礼します」

「おお、待っていたよ。よろしく頼む。帝国東部方面軍第12師団戦術機大隊部隊長の長崎少佐だ」

「第23近衛中隊隊長の前園です」

 

 北陸最大の基地ということもあり、指令室では多くの人が慌ただしく動き続けていた。

 ここもいつもより照明は落とされているようだが、様々な電子機器類が作動している。

 これから行動を共にする長崎のあまりにも慣れなれしい態度に、僅かだが眉をひそめた姫川だったが歩をわきまえたのか、特に意見をすることはなかった。

 自分がなぜ連れて来られてきたのかを黒金は理解していなかった。

 長崎は机の上に新潟県の地図を広げると書き込み始める。

 

「今、我々は万代橋とみなとトンネルを利用した遅滞戦術で何とかBETAを食い止めている状況だ。だが、そもそもこれは割にあうわけがない」

「物量比べをされれば、人類に勝機は薄いと」

「そういうことだ。何とか打開策を見いだそうとしてはいるが……なにぶん、京都防衛のために派遣した兵力が大きすぎる」

「近衛軍も同じようなものです。我々も今は将軍様を護衛する部隊を作りあげるので手一杯だ」

「……ふむ」

 

 長崎が不自然の言葉を切る。

 何を言いたいのかを黒金は理解できた。

 今は、将軍様一人の命を守るよりも生き残ってる大日本帝国の民を優先するべきではないのか? このままでは、本当に大日本帝国という国そのものが消えてしまうぞ。

 同時に黒金は、それを口にしてはいけないということも理解してた。

 将軍様が生きているからこそ、国民はまだ立ち上がることができるのだ。

 あの号令が本当に無くなってしまった時。

 大日本帝国から民は誰一人としていなくなってしまうであろう。

 

「これはオフレコなのだが……」

「オフレコ……?」

「榊首相からユキツバキという作戦が提案されている」

「ユキツバキ……?」

「我々、帝国東部方面軍第12師団がまるごと囮となり、第一軌道降下旅団による掃討作戦の名称だ。まあ、軍上層部がこれを認めるわけがないのはわかってはいるが……そうでもしないと勝てないという現実だけ認識しておいてもらいたいものだ」

「……長崎少佐はどのようにお考えで」

「……選択肢の一つには入れている。さっきも言ったが、そこまでしてでも、何千人以上もの命が失われることになろうとも、やらなければ勝てないのだから。武器がないのならば、命をベットするしかないだろう?」

「……ごもっともです」

「少し話しすぎたな」

 

 長崎はそういうと地図に大きな丸を付ける。

 

「わかっているとは思うが、この円の中で止めなければならない。これから戦術機部隊は前線へと出撃する。近衛第23中隊の残存兵力は」

「歩兵30、戦術機10です」

「そうか……そちらもかなり消耗しているな」

「いえ……長崎少佐の部隊も」

「あぁ……戦術機21だ。最初は大隊といいながらも50機近くあったのだがな……嘆いても仕方のないことだ。近衛軍の武御雷とやらに期待してもいいのか?」

「もちろんです。それに……我々には精鋭中の精鋭がいますから」

 

 前園が姫川と黒金を指さす。

 長崎の視線に反応したかのように姫川は敬礼を返したが、黒金は何の反応もしめすことができなかった。

 その様子をどう捉えたのか、どこか懐かしそうに目を細めると長崎はさらに小さな丸を書きだす。

 それが第23近衛中隊の持ち場ということだろう。

 

「体系はまかせる。わずか10機でもたせるのは厳しいかもしれないが……頼む」

「お任せください」

 

 前園と長崎は固い握手を交わす。

 指令室から出ると、前園は静かに告げるのであった。

 

「隊を三分割する。10機とは言ったが、実際は11機だからな」

「俺が増えたからか?」

「そう悲観的に言うな。お前が増えたことで戦力があがるのならば、私は構わないと思っている。お前の力……見せてもらうぞ」

「姫川、そう喧嘩を売るように言うな。姫川小隊4機、黒金隊4機、そして前園隊3機だ。いいな?」

「俺が小隊長?!」

「不満か?」

「前園大尉がおっしゃているのだ。いちいち大げさに反応をするな。しゃんとしろ」

「……すまない」

「メンバーは追って連絡する。現時刻1800より出撃準備を開始。1930までには出撃するぞ」

「はっ!」

「将軍様より賜った武御雷の力、そして俺たち近衛の力を存分に示すぞ!」

 

 そう言うと前園はどこかへ足早に去っていった。

 姫川は何か言いたそうな視線を向けるも、反対方向へと歩いていく。

 

「出撃か……」

 

 3日だ。

 3日前、俺は今の黒金猛としての生を受けた。

 多くのことはなかった。独房に入れられていた期間が長かった。

 それでも、ズッと長く生きている気がする。

 何度もやり直して、繰り返した先にようやく見つけた突破口。

 そんな希望を持てるのはいったなぜなのか?

 俺という人間を俺が一番知らない。

 

「それでも、戦う理由はある」

 

 拳を握りしめる。 

 出撃まで残り1時間半。

 やることはたくさんあった。

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