Muv-Luv ALTERNATIVE 業   作:ROGOSS

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ユキツバキ作戦編
黒金小隊


同日 衛士更衣室

 

 前線にある基地に男女のスペースを分ける余裕はない。

 ましてや、内地にある基地だとしてもこの非常事態である。性別の差を気にして、羞恥心を抱くような衛士を国の存亡をかけた防衛線で役に立つはずがないと判断ししたとしても、誰がそれを咎められると言えようか。

 ゆえに、黒金はなるべく視線を逸らしながら無心になって強化装備へと着替えた。

 なんとか着替え終わると、すでに3人の衛士が黒金へと敬礼をして待機していた。誰もが、若干不審そうに見ている。無理もないだろう。突然現れた男に自分の命を預けようとしているのだ。疑心暗鬼になって当然だろう。

 

「小隊長の黒金だ。階級は中尉となっている」

「……間島少尉」

「南雲少尉です」

「西です」

 

 このご時世に男が三人の小隊か。

 BETA襲来からまずか30年以上経った今、地球上で男性の存在が希少なものとなっている。BETAとの開戦において先陣を切り続けた男が減り続けるのは至極当然の習わしだ。

 だからこそ、足りない戦力を補うため徴兵年齢の引き下げや移民の兵役の義務化、女性の徴兵までしているのだ。

 最も、BETAの進行をうけていないイギリスやアメリカといった国は国力を維持しているようだが……。

 どこまで本当の話などわかるのはごく一部の人間だろう。人類は、BETAという共通の敵をもっている今でさえ結託することはできないのだ。

 BETA対戦の次。即ち、多くの国が力を失ったその先において誰が地球をまとめあげ頂点へと君臨するか。それのみを考えているのだ。

 前線でどれだけの命が失われているかもしらない、本国で椅子にふんぞり返っているお偉いさんの考えには正直辟易していた。

 

「我々4人一小隊として行動を共にする。ポジションをつけることも考えたが、なにぶん小隊として持つには持ち場が広すぎる。今回は、各個撃破を目標に動いていくことを小隊方針としていくが、何かあるか?」

「単刀直入にお聞かせ願いたいです」

「どうした、西少尉」

 

 赤髪のポニーテールの少女が前に出る。年はまだ、10代後半だろうか? それでも、第二防衛ライン撤退戦の生き残りであり、なおかつ士族出身者である近衛にいるということはそうとう腕がたつのだろう。

 

「小隊長の実力はいかほどなのですか? ここにいる間島、南雲は私と共に訓練をこなし、そして撤退戦においてともに戦った戦友ですが。ですが…・・私は、あなたを知らない」

「西。その言い方はよせ。さすがの俺も見過ごせんぞ」

「だまってよ南雲。間島はどう思ってるの?」

「……僕は別に」

「あなたは……そうやって無関心を装って! 良い? 小隊長がポンコツだということは、死に直結するのよ? あなた達……死にたいの?」

「それはだな……」

「お前が俺の実力を疑うのはわかる。つい3日まえに現れた男を信用しろなど、どだい無理な話だ。だがな、一つだけ言える。俺はあの京都から生きて帰った男だ。壊滅した部隊からの生存者だ」

「……それは」

「何も言わず俺に従え。そして、必ず生き残れ。命令は以上だ」

 

○●○●○

 

同日 臨時総理官邸

 

「ですから、ユキツバキは日本海側に展開しているBETAを殲滅する唯一の方法なのです」

「そのために、我が帝国東部方面軍第12師団は全滅してもかまなわいとあなたはおっしゃるのですね」

「なにも全滅とまでは。あくまでも、陽動作戦としても要として動いてほしいとお願いしている限りです」

「榊首相。私には、一師団長として意地と誇りがあります。それは、決して内地の勤務からくるくだらないプライドではない。そのような、成功確率を度外視した作戦に多くの兵士たちを送り出すことはできませなんだ」

「……あなたは、その決断で国が亡ぼうとも構わないとおっしゃるのですね。今は、あくまでも遅滞戦術しか展開できていないあなたがたは、その僅かな力で打倒できるとおっしゃるのですね?」

「太平洋側BETAを早急に殲滅し、援軍を派遣することを願うばかりです」

「中将、中将閣下! ……何を悠長に構えているのやら」

 

 大日本帝国首相(さかき) 是親(これちか)はため息をつくと、思わず天井を見上げた。

 同じ中将という階級でありながら、これである。かたや民のために動き裁判にかけられた男。口ではプライドなどないと言いながらも、保身と見栄のために正しい選択もできない愚か者。

 

「彩峰中将。これが、我々は守ろうとしている国の一機関の現状なのです。なれば……私も闇の身を染めなければならなすまい」

 

 勘違いだろうか。机の書類が僅かに動いたのは。

 ノックの音がする。榊が返事をすると一人の秘書官が入ってきた。

 もしものための保険にしていたのだが、まさか実際に行わなくてはならない事態に陥るとは思いもしていなかった。

 

「榊首相。準備は整いました」

「いつでもいけるのか?」

「第一軌道降下旅団は既に配備されていました。帝国軍も薄々は、遅滞戦術の限界に感ずいていたのでしょう。国防大臣直轄部隊である特殊部隊第1特殊作戦団は先ほど新潟に向かいました。明日にでも、万代橋は爆破されるでしょう」

「わかった。確か、近衛軍が新潟にいたな」

「はい。近衛第23中隊です」

「近衛省に急ぎ作戦を伝え、撤退させなさい。あそこに刺激を与えるのはまずい」

「かしこまりました」

「さて……明日は長い一日になりそうだ」

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