Muv-Luv ALTERNATIVE 業   作:ROGOSS

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万代橋爆破

1998年 5月12日

 

万代橋新潟側

 

「万代橋一帯に戦術機部隊並びに歩兵部隊の展開を確認。帝国軍にはまだ、ばれていないようです」

「さっさと済ませるぞ。榊首相の許可はすでにとってある。設置はじめ」

「はっ!」

 

 隊長の号令で工作員達はC4を抱え、それぞれのポイントへ走り出した。

 万代橋は歴史ある有所正しき建造物だ。信濃川の河口から二番目にかかっている橋であり、町の繁栄を支え続けた重要な交通の要であった。

 BETA大戦などなければ、国の重要指定文化財に示されていてもおかしくはない。

 水中行動のできないBETAの特性を利用し、現在信濃川の横断する二つのルート「新潟みなとトンネル」と「万代橋」を利用した遅滞戦術を帝国軍を展開していた。

 しかし、決定的な戦火をあげることは望まれず、このままでは消耗戦に持ち込まれ、いつしか防衛ラインを突破されるというのが上層部の見立てだった。

 そこで、帝国第十二師団を囮としてつかい、万代橋を爆破封鎖することでみなとトンネルへとBETAを雪崩れ込ませ、軌道上で待機している第一軌道降下師団によって一気に殲滅するというのが今回の作戦だった。

 師団規模の囮が必要であるということ以外は、今回の作戦は概ね正しいと言えるだろう。

 最も、盤上で作戦を立てている上層部に現場の苦しみがわかるかと問うならば答えはノーであろうが……。

 

「同じ日本人を囮にしなくてはいけないなど……あまり後味はよくありませんね。しかも、知らせもしてないなんて」

「BETAは些細なことでも変化に敏感なやつらだ。突然、みなとトンネルのほうの守りを固めれば、対処する可能性がある。仕方がないなどと言ってしまえば簡単だが……そうもいかんな」

「設置完了しました」

「よし、総員退避。こんなところで爆発に巻き込まれて死んだなど、シャレにならんぞ」

「さて……始めようとしようか」

 

○●○●○

同日

 

万代橋を防衛隊 日本海側

 

『貧乏くじを引いたと思うか?』

「え?」

 

 前園の言葉は意外にも落ち着いたものだった。

 黒金の勝手なイメージだが、武家出身となると死に際を求め彷徨い狂うものだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。

 

「むしろ、それは隊長のほうでしょ。俺の言うことなんかきくから」

『やっと隊長と呼んだな』

「ここまで付き合ってくれてるんだ。いい加減、認めざるを得ないだろう」

『敬語を使わないのは相変わらずだがな。はっはっは』

 

 前園はわざとらしく声をあげて笑った。

 近衛第23中隊と別行動をとっている2人は今、万代橋防衛特別遊撃隊となっていた。

 ユキツバキの存在を知っていた長崎は、黒金達が残ったことですべてを察したのだろう。

 「一兵でも多く渡河させ、そして自分達も必ず生きて帰ってこい」と、だけ言葉をかけただけだった。

 

『黒金。俺の親戚に本物の黒金家がある』

「は?」

『この作戦が終わったら、お前はそこの養子になれ』

「ちょ、何言ってんだよ!」

『その家はな、子宝に恵まれなくて養子を探してたんだ。気立ての良い、老夫婦の武家なのだが……あそこならば、お前を快く受け入れてくれるだろう。話ももう通してあるしな』

「そういうわけじゃないっ! どうして……今、言うんだ。まるでそれじゃ……」

『勘違いするな。俺はここで死ぬつもりもないし、お前と心中なんてまっぴらごめんだ。ただ、このご時世、どこの誰だかわからないやつに対する風当たりは意外にも厳しい。せめて、養子でも武家出身者になってもらなきゃ、この部隊にいつまでも置くことはできない』

「隊長……」

『だから頼むぞ。何としても凌ぎ切る。そして仙台へ帰還するんだ。それが命令だ。わかったな?』

「……了解だ」

 

 黒金が返事をしたその時だった。

 後方から巨大な爆発音と砂煙をまわせながら、万代橋がゆっくりと破壊されていった。

 なんの前触れもない、明らかな人為的な破壊工作に防衛隊の空気は凍り付く。 

 退路を断たれ、後ろに川がある今、まさに背水の陣の状況だった。

 

『全帝国軍につぐ! 万代橋が爆破された。戦術機部隊は歩兵を援護しつつ信濃川まで後退。渡河しろ! 歩兵部隊は戦術機と連携を取りながら全力後退! 余力のあるやつは俺に続け! このままだとみなとトンネルにBETAが大量流入するぞ!』

 

 階級など気にしているものなど誰もいなかった。

 それこそ近衛軍と帝国軍の垣根さえも越え、ただ純粋に大日本帝国を守る戦士として彼らは一致団結しようとしていた。

 その中心はもちろん、前園である。

 事前に知っていたとはいえ、不測の事態におびえる兵士を一括でまとめる能力には黒金も舌を巻いた。

 

『黒金っ! 何機ついてきた!』

「14だっ!」

『十分だ! 勇猛なバカども、臨時小隊長の前園だ。これから、BETAを殲滅させながら歩兵部隊の信濃川渡河を援護する。援軍は必ず来るはずだ! きばれっ! そして、このまま奴らを殺しつくすぞ!』

「おおっ!!!」

 

 返ってきた返事は勇ましいものだった。

 台地が震え、BETAが怯えたように進行を止めたようにさえ見えたほどだ。

 黒金達の地獄の時間が始まろうとしていた。

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