「…ここは」
目を開ければ、映ったのは白い天井だった。
私は何でベッドの上に…
「っ!?」
そうだ、私は…
「負けたのか」
そう、私は負けた。武神と言われ私にはその名に恥じない強さがあった。小さい頃から戦うのが好きで私は武術にのめりこんでいった。幸いにも私には才能があり、あっという間に他の修行者たちを抜き去ってしまった。
向かうところ敵無しで、修行すればするだけ強くなった。しかし、いつからか自分より強い奴が現れないことに気が付いた。私は戦うのが好きだ。特に、自分よりも強く、一進一退攻防、どっちが勝つか分からない、そんな戦いが。
「最後に満足できたのは揚羽さんの時か」
それ以来満足のいく戦闘はできなかった。ジジイが用意する相手もパンチ一発で終わってしまう。そんな時にこの大会が開かれた。そして、すぐにそいつは目に留まった。
銀色の髪をオールバックにし、青いコートを羽織った青年。体感、脚運び、内に秘める
そして私とのエキシビジョンマッチ。ワクワクしてどうしようもなかった。早く戦いたかった。こいつなら私を満足させることができる。そう思った。しかし、実際は…
「手も足もでなかった」
はっきり言って次元が違う。そうとすら思えるほど圧倒的だった。こちらの攻撃は当たらず、一方的に刃を潰した刀で切られる。そのダメージを回復させようと瞬間回復を行えば、早々に封じられた。そして、一刀の下に切り伏せられた。
「(お前は獣だ)」
あいつの、神上紫苑の言葉が響く。
「(自分の中の獣を理性で持って飼いならしてこそ人は人たりえる。強者と見れば誰彼構わず喧嘩を売り、満足しなければ気落ちする。そんな奴を人間とは言わん)」
ジジイにも散々言われてきた。
「(精神が未熟すぎる)」
負けて身に染みる。自分が戦って、勝ってきた相手にこれでは申し訳が立たない。相手は「誠」でもって向かってきてくれた。私は「誠」で返しただろうか?
答えは、否。
心のどこかで「どうせこいつも」と思ってなかっただろうか?ましてや手加減など、何たる不敬、何たるざま。私は恥ずかしくなり、膝を抱えた。
「一からやり直しだ」
己のあり方から、精神まで。全てだ。彼がいる、まだ見ぬ頂。今のままでは麓にすら辿り着けない。私は決意する。そこまで考えてようやく周囲に気を向けた。扉の向こう、廊下から誰かがこっちに走ってくる。
「(この氣はワン子か)」
予想した通りワン子は扉の前で止まり、コンコンとノックした。
「お姉さま?起きてる?」
「ああ、入ってきていいぞ」
返事をするとすぐにワン子は部屋に入り、駆け寄ってきた。
「お姉さま、具合はどう?」
「大きな怪我もないし大丈夫だ」
「そっか~、よかった~」
ワン子はベッドにヘニャヘニャと倒れこんだ。
「おいおい、心配しすぎだ」
「一応ただ気絶してるだけって聞いてたけど、心配なものは心配なのよ~」
「う~ん、カワユイな~内の妹わ~」
そう言って、上から覆いかぶさるようにワン子を抱きしめた。
「ワン子」
「な~に?」
「もっともっと強くなる」
「うん」
「そしてあいつに勝つ!!」
「うん!お姉さまならきっと勝てるわ!」
「ああ!」
「私も、もっともっと修行してお姉さまみたいになるんだから!」
「はは!私はワン子が強くなるのを待ってはやれないぞ」
「必ず追いついてみせるんだから!」
お互い決意を新たにし、しばらく笑っていた。
「お姉さま、具合がいいならリングに行きましょ」
「?何でだ?エキシビジョンは終わったんだし、後は表彰だけじゃ」
「それがね、今お爺ちゃんと神上さんが戦ってるの」
「!?なんでそれを早く言わない!くそ、いくぞワン子!」
私はベッドから飛び降り、リングに駆け出した。
「待って~!置いてかないで~!」
リングに着いて見たものは、木っ端微塵に砕かれたリング場と、空中で
◆
「はあ!」
「ぬん!」
時間にして約10分ほど。しかし、俺達の攻防は100をすでに越えていた。リング場は、余波で粉々になり場外判定は意味を成していなかった。空中で戦う俺達の攻撃で凄まじい衝撃が波紋のように広がる。それを観客のほうに行かないように、四人のマスタークラスは結界の強化に力を注いでいた。すごく辛そうな顔をしていたが。
お互いの拳がぶつかり、衝撃で距離が開く。俺たちは当然のように空にいた。
「どうした。息が上がってるんじゃないか?」
「ほっほ、まだまだこれからじゃよ」
とはいえ、どうしたものかと鉄心は考える。はっきり言って、かなりの体力が奪われている。どう考えても先にこちらの体力は尽きる。ならば早々に決着をつける。そこまで思考し、すぐさま行動に移す。
「
それは
「
鉄心の体が蜃気楼のように揺らいでいく。紫苑の目には揺らいでいる鉄心がいた。ただし…
「(空が見えん)」
視界を埋め尽くす鉄心の姿だが。そして鉄心から次なる技が放たれる。
「
鉄心の背後に巨大な千手観音が現れた。観音菩薩が千の手を得た姿。その手にさまざまな武器を持つ。その千の攻撃が視界を埋める鉄心一人一人から放たれた。