歩いているうちに1時間が経過し隣にはカオスがいた。
カオスによると俺の体はとんでもなく魔改造されてしまった。
まず肉体だが、一切のものが効かない。刃物や銃弾、病原菌。電気や水銀など自分に害のあるものは全て効果が無くなる。
刃物は肌に触った瞬間に折れ、銃弾は潰れ、病原菌はそもそも受け付けず、水銀は唯の水になり、電気は自分のだす電気信号に変更される。
ここまでやるか?と聞けば、「私と同じ存在とはそういうことよ」と言われた。
なんか納得してしまった。
次に能力だがこれも規格外。
『全知全能』
とりあえず何ができるか確認するために『空間倉庫』とかできるかな~とか思いながら、目の前に倉庫をイメージしながら手を突き出すとズブッと手が空間に埋まった。だがこれは曖昧なものらしく予めきちんとした倉庫を作っておいた方がいいそうだ。
宇宙空間に生身でいられるのもこの能力によるものだ。生前読んでいた『めだ○ボックス』の安○院さんも真っ青だ。人を生み出すこともできそうだが、思考は生前のままなので実行することはないだろう。
必要なときに必要な能力を使用するに止めよう。
カオスと和気藹々と話しながら歩き地球に着いた。
降り立つまでは空中を歩き地上を観察しながら降りた。
外から見た地球は青く美しかったが、実際は星自体が今現在急速に生物が生きられる環境が作られている。能力『状態閲覧人(ステータスリーダー)』で周囲の状態を見ることができるので確認すると、大気中には水蒸気、亜硫酸、金属イオン、亜鉛、一酸化・二酸化炭素、アンモニア、窒素といった成分が確認できた。
いくつかは人体には悪影響のものもあるが俺には関係ない。
周囲には大地と海が広がっている。遠くには岩石地帯も見える。
生物は今現在では確認できそうには無い。
能力『地球年表(アースクロノロジー)』によると、現在の地球は誕生から6億年ほどたっており、生前の21世紀から約40億年前ということになる。
「なあカオス」
「なに?」
「この地球誕生から6億年なんだけど」
「そうね」
「なんでこの時代にしたんだ?」
「私とあなたは存在自体が超常の存在なの。そんなものがいきなり混入すると世界からはじき出されてしまうわ」
「世界が作られるときに混ざることでその世界が生み出されたものと誤認させるってことか?」
「ええ。ついでに世界に私たちに慣れてもらう意味もあるわ」
「なんか傲慢な存在になったな、俺も」
「諦めなさい」
「宇宙空間を歩いたときに気づいてるよ。――で?これからどうする?」
「そうね~、特にすることは無いわね。何も無いし」
「ふむ……とりあえず家でも建てるか」
「あら、いいわね。どんな家にするの?」
「そうだな、武家屋敷風にするつもりだ。この時代に対応できるように材質はいじるが基本は変わらん」
「じゃあ任せるわ。力に慣れておいたほうがいいし」
「だな。これから生き物も出てくるだろうから外気圏に建てるか。認識阻害に光学迷彩。耐熱センサーに耐電機能も付けておかないとな。見つけられると面倒になる」
「そうね。基本的にイメージすれば力は使えるわ。自動で発動するものもあるけど。宇宙空間で生身でいられるのも、こんなに大気が淀んでるのに生きられるのもそのおかげよ」
「イメージするだけで使えるのはいいな。手間が掛からなくて」
「私は一応見てるわ。暴走することはないだろうけど」
「頼んだ」
俺は空中に飛び高度約5000kmにまで到達する。
外気圏の空間力場を固定し土台を作る。次に大地を創造し、そこに木や花を生み出し見た目を良くしていく。次はその上に家を建てる。
といっても、今までの行程は指パッチンでできてしまった。
現代の科学者は涙目だろう。
そんなこんなで家は完成。
歴史の資料にあるような見事な武家屋敷が完成した。
「和風でなかなかいいじゃない」
「だろう?生きていた頃は少し憧れていたからな」
「早速なかに入りましょ?家具の位置も決めたいし」
「その辺は任せる」
「ふふ、了解」
その後カオスと一緒に家具を設置して回った。
こうやって誰かと何かをするのは初めてだろう。終始楽しそうにしていた。
◇
あれから大体38億年がたった。
これまでに幾度も氷河期が訪れたり、超大陸と呼ばれる大陸が形成されては分裂し、また大陸が作られた。今ではたくさんの生物が生きている。アンモナイトにプテラノドン、ブラキオサウルスにティラノサウルス、トリケラトプスなど有名な恐竜が跋扈している。正直生で恐竜が見れて感動した。
世界が大きな変化をしている中俺たちは何をしていたかというと、俺は変化している世界を回り、それをメモしていた。本来ならこんなに面倒なことはしないのだが興味を持ち知りたくなってしまったのだからしょうがない。
だがこれ以降はそんなことはないだろう。全部知ってるし。
何でこんなことしたのか自分でも分からないが知っていることと経験したことは違うということにしよう。
後は戦闘技術の訓練。
基本的に家から出ずに日がな一日ゲームしたり漫画読んだりしているが、たまに行く唯一の趣味である釣りで、凶暴な動物に襲われた時、これから先出会うだろう人間。
特に『人間』
人は自分の知らない、未知の物を極端に恐れる。
これから先遭遇することもあるだろう。その時に対話で解決できない場合、実力行使に出られることもあるかもしれない。こちらから手を出すことは無いが、降りかかる火の粉は力づくで振り払うつもりだ。
一方カオスは家からほとんど出ず一緒にゲームしていた。
見た目は絶世の美女といえるほどなのに、実に残念な美女である。
たまに戦闘訓練に付き合ってくれるが、超強かった。
だてに100億年近く生きていない。
そんな何気ない日々を過ごしていたある日。
「ねえ紫苑」
「ん?」
「名前を付けてくれない?」
「名前?」
「そう、名前」
「カオスが名前じゃないのか?」
「名前といえば名前だけどそれは存在としてというか、空間力場としての学術的な名前なの。私個人、私という意思の名前じゃないわ」
「あ~なるほどね。でもなんで俺が?自分でつければいいんじゃ?」
「いいじゃない。こういうのは好きな人につけてもらいたいし」
「…………は?好きな人?」
「そうよ」
「誰が?」
「私が」
「誰を?」
「あなたを」
「なんだって?」
「好きってこと」
「…………マジ?」
「マジよ」
そういってカオスは後ろから抱き着いてくる。
「今までこんなにも充実した時間を過ごせたのはあなたのおかげ。なにも無い空間から私を連れ出させてくれた……私の愛しい人」
目と目を合わせながら真剣な眼差しでお互いの顔を見つめる。
「………まさかお前にそんな感情が生まれるとはな」
「ふふ、40億年近く一緒にいるのよ。そういった感情も生まれるわ。で?どうなのかしら?」
「どうとは?」
「あなたは私をどう思っているのか?ということよ」
「…………決まってるさ」
「ん」
俺はカオスの唇に自分の唇を押し付けた。
「ん…あむ…ぷは。ふふ、ありがと」
「こちらこそだ。好きだ、マリア」
「マリア?」
「ああ、お前の名前。神上マリア」
「神上はあの空間から?」
「ああ。俺もこの際苗字を神上にするつもりだからな」
「どうして?」
「前世からの決別のためと、お前によって生まれ変わったからだ」
「そう。同じ苗字だと夫婦みたいね」
「だな。でも実際似たようなものだろう?40億年も一緒にいる夫婦なんてそうはいないぞ」
「それもそうね。……ねえ紫苑」
「ん?」
「ありがとう」
マリアは満面の笑みでそう言った。
この日俺たちは恋人になり、そして夫婦になった。
ゲームとか漫画は能力で出してます。