鉄心と会ってから200年近く経過した。
時代は平成に移っている。
つい最近までは戦争なんてものもあったが今では見る影もないほど発展している。
俺たちは相も変わらず自堕落に排他的に非生産的に生活している。
アルトリアだけはきちんとした生活を送っているが……
そして今現在なにをしているかというと―――
「ねえ紫苑?今度はあっちに行ってみましょ?」
「はいはい」
マリアと秋葉原に来ている。
こいつのはしゃぎっぷりは物凄く、あっちへふらふらこっちへふらふらとまったく落ち着きがない。ただまあ、やっと夢が叶ったんだ。やっぱり嬉しいんだろう、しばらくは引っ張りだこだな。
アニ○イトにいったりメイド喫茶で食事をとったり、マリアは終始楽しそうにしていた。服装に関してだが、俺はいつもの黒に金字の刺繍の入ったもので、マリアはノースリーブの上に薄手のシャツを羽織り、下はジーパンとかなりラフな格好をしている。ちなみにだが俺は誤認の魔術をかけ違和感のないようにしている。
マリアが満喫したところで今日は返ることにした。
この広い秋葉原を一日で回るのは不可能なので、明日に回すことになったからだ。
明日はアルトリアを誘うつもりのようだ。
あいつで大丈夫なのか?まあ、時代に合わせて勉強させてはいるが、あいつ世間知らずだしな。
翌日。
二人を見送った俺は多摩川に釣りに来ていた。
右手には『変態橋』で有名な『多摩大橋』がある。
どうせまた今回も面倒なことが起こるんだろう~な~とか思いつつ、釣り糸を垂らした。
始めてからどれくらいたったか。気づけば太陽は真上に上がっていた。
結果は上々。すでに20匹近く釣り上げていた。
キセルを吹かしながら今日はここまでにして片付けに入ろうとしたところ、ちらりと視界に入ったものがあった。
細い体つきに白髪に加え赤い目。
後の榊原小雪がこちらを見ていた。
俺はどうしたもんかと頭を捻ったが、結局声を掛けることにした。
「どうしたお嬢ちゃん?」
「(ビクッ)」
話しかけられるとは思っていなかったのか、僅かに震えた。
「(だんまりか。まあ仕方ないか)なんだ?やってみたいのか?」
「(コクリ)」
ゆっくりとだが首を縦に振った。
「じゃあ教えてやろう。こっちにおいで」
手招きすると、嬉しそうに走ってきた。
「始める前に自己紹介だ。俺のことは釣り人と呼んでくれ。君の名前は?」
「……僕の名前は……小雪っていうんだ」
「小雪か。可愛い名前だな」
「ホント?」
「ああ。とっても」
パアアアアアという効果音が聞こえそうなほどな笑顔になる小雪。
「じゃあまずは針に餌を付けないとな」
「餌はどうするの?」
「今回は俺が持っているものを使おう。ほら」
俺は餌の入った小さなビンを小雪に見せる。
餌は練り物みたいなやつだ。
「これを少しとって、指先で丸めて針につけるんだ。やってみな」
「うん」
小雪は餌をとり針につける。
「今度は竿を持って、後ろに振りかぶって投げるだけだ」
ヒュー、ポチャンと川の真ん中あたりに落ちた。
ちなみに小雪に渡したのは子供サイズの物で、まだ小さい小雪でも十分振れるものだ。
「ん~えい!」
「お~うまいじゃないか」
「えへへ」
針は真ん中より少し手前ぐらいに落ちた。
それからしばらくたって…
「(グン)あっ、きたよ!」
「お、早いな。ゆっくりリールを巻くんだ」
「う、うん」
小雪はゆっくりとリールを巻き、確実に引き寄せていく。
そして……
「わ~やった!釣れたよ!」
「お~初めてにしてはうまいじゃないか」
「ふっふ~ん。イエーイ」
満面の笑みで魚を片手にピースサインをしてくる。
俺は竿を戻した。
「じゃあその釣った魚、焼いて食うか」
「うん!僕木を集めてくるね」
「ああ、こっちは準備しとくから」
「じゃあ行ってくるね!」
そういって走っていった。
俺は石を集め円形に並べ釜をつくり、何匹かに塩をまぶし木を刺して小雪を待つ。
そして小雪が木を抱えて帰ってきた。
「いっぱい集めたな。んじゃ木を石の真ん中に置くんだ」
「は~い」
木を石の真ん中に置かせ火をつける。もちろん指を鳴らして。
ボウッ!!と火がつき小雪は目を開く。
「すごーい!ねえねえどうやったの!」
「秘密」
「ぶー、おしえてよ~」
「だめ」
「む~わかった」
「物分かりのいい子は好きだぞ」
「えへへ」
それからしばらく経って魚もいい頃合いに焼けてきた。
「ほら、もういいぞ」
「うん。じゃあいただきまーす!あむ、もぐもぐ」
「どうだ?」
「おいしい!」
「そうか。焦って食べなくていいからな」
「うん、わかった。あむ、もぐもぐ」
おいしそうに食べる小雪を見ながら、俺も自分の魚を食べる。
しかしどうするか……魚を口にふくみつつ、小雪のことを考える。
おそらく現時点ですでに親から虐待を受けているだろう。今の子供にしては体は細すぎるし、服も何日も同じものを着ているのだろう。ところどころ切れて、色はくすんでいる。
正直なところ俺が何もしなくても小雪はこれから先、葵冬馬と井上準に助けられる。まあその前に悲惨な出来事があるが……
だが俺が行動した場合、確実に俺に依存する。原作を見ている限り、ほぼ確実に。葵冬馬と井上準にあれだけべったりだったんだ。否定するのが無理だろう。
そこで気づいた。俺は一体どうしたいのか?
結局のところ、なんだかんだいいながら俺は小雪を助けたいのだ。
しかしできれば不老不死にするのは避けたい。となると気づかれないようにする必要がある。そのためには………さっきからウザイほどこっちを見ているあいつに押し付けるか。
魚も食べ終わり、小雪がウトウトし始めたので昼寝をした。
起きた頃には日が傾き、目を開ければ、綺麗な夕日と茜色に染まった空だった。
「おい、起きろ小雪」
「んみゅ~」
「ほらしっかりしろ」
「おはよ~」
寝ぼけ眼をこすりながら起き上がる小雪。
「そろそろさよならの時間だ」
「…………」
「どうした?」
「…ううん、なんでもない。…また会える?」
「たぶんな。…次にあったとき立派な女になってたらお願い事を一つ聞いてやろう」
「ホント?」
「ああ、ホントだ」
「じゃあ約束!」
そういって小雪は小指をだした。
「ああ、約束だ」
「えへへ。またね!バイバーイ!」
小雪は元気よく手を振りながら走っていった。
「……強い娘だな。――そうは思わないか?川神鉄心」
遠くからこっちを見ている鉄心に目を向け呟く。
一瞬のうちに鉄心はこちらにやってきた。
「なんじゃ気づいとったんかい」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってんだ。大方どこかで感じた気に違和感持ったんで見に来たってとこか?しかし老けたな」
「やかましいわい!!200年もたっとるんじゃ老いもするわい。わしにはなんで年をとってないか不思議なんじゃがのう。釣り人殿」
「俺は地球が誕生した頃から生きてる。そのときから俺の姿は変わらん」
「なんと………」
「そんなことよりだ。鉄心気づいたか?」
「あの娘のことか?」
「そうだ。おそらく母親か父親、またはその両方から虐待を受けてる。そしてたぶん親は薬に手を出してる」
「やはりのう……」
「そんなわけで鉄心後は任せた」
「は?」
「は?じゃなくて小雪のことよろしく頼んだぜ?」
「いやいや、お主が自分で面倒みればよいじゃろう」
「馬鹿かお前?俺はこれから永遠にも等しい時間を生きなきゃいけない。はっきり言って他の人間が心のそこから願えば不老不死にすることは可能だ。そして俺があいつを助け「俺と一緒に生きてくれるか?」と聞けば、ほぼ確実に頷くだろう」
「それはいいじゃろ。本人が望んでおるんじゃから」
「問題はあいつが他人の死に耐えられるかどうかだ。特に親しい人のな」
「…………」
「周りが死んでいく中、自分は老いもせず死ぬこともない。親しい友も彼から先できるだろう。しかしその周りの人間がいなくなることに耐えられるかが不確実なんだよ。だったら普通に生きて普通に死んだほうがいいとは思わないか?」
「…………」
「もちろんこれは俺の意見だ。そうなった場合「勝手すぎる!」とか「なんでわかってくれないの!」とか言われるだろうがな」
「…………」
「俺と来るとはそういうことだ。全てを捨てる覚悟が必要なんだ」
「わかった上で話をしとるから余計にたちが悪いのう」
「当たり前だ。こちとら今年で40億3567歳なんだ。いろいろ悟るには十分すぎる時間だ」
「規格外すぎるじゃろ……まあ分かった。あの娘のことは何とかしよう」
「ああ、まかせた。んじゃな」
俺は鉄心を残し自宅に転移した。
一方鉄心は――
「あ、勝負吹っかけるの忘れとった」
こんな感じどう?