ソードアート・オンライン Players: Reito 作:drakg
評価がいい感じだったら、続きを書いていきます。
「もっと、もっと早く!!!」
2メートル先から見える世界の中で、その黒い剣士は、二本の黄色く光る剣で
「…やっぱり何回見ても面白いよなぁ、これは」
ボソッとつぶやいて、その世界を暗闇に戻す。
2020年の東京オリンピックが終わり、日本中がまた日常に戻った、そう思った矢先に飛び込んできたある会社からの発表。
「我々は、フルダイブ技術を応用したVRMMOの開発に成功した」
付けっ放しだったデスクトップパソコンから流れる、何度も聞いた声。
伶(レイ)はその声の主をちらっと見た。
「増田、千里…ねぇ…」
そもそもゲーム開発のトップに女性が立つこと自体驚きだったのだが、まさかあのアニメの茅場の立場が女性だとは。
いやいや、まさかデスゲームが俺の世界で起こるわけがない、と伶は心の中で訂正した。
「あと8分、か。」
2020年12月9日。開発者増田千里の誕生日であるこの日の正午から、
国内向けVRMMO一作目となる「ソードアート・オンライン」、通称「SAO」のサービスが開始される。
前日から冬休みで留学先から帰国していた伶は、中学時代の友達に頼み込み、店頭販売価格の2倍を販売待ちの列に並ぶための報酬として支払い、なんとか製品をゲットしていたのだ。
「しっかし…本当に実現しちゃうとはねぇ…」
「うわっ!?姉さん、いきなり入ってくるなよ!」
ナーヴギアを抱えていた伶の背後から、寝起きかと思われる容姿の姉、咲(サキ)が現れた。
「アンタ、帰ってこれないなんてことはやめてよ、絶対」
「大丈夫だって、さすがに帰れるさ。姉さんだって開発に協力していたんだろ?」
姉は大学2年生ながらも、フルダイブ技術の研究に参加、SAOの完成にまで力を貸せるほどの実力者である。
「そうは言ってもね、アタシだって全部を見たわけじゃないの。もし、アンタが帰ってこられなくなったら…」
「そーいう姉貴の心配してくれるとこ、俺結構好きだよ」
「んなっ!?!?」
姉はその頭脳のためなのか、勉強のために青春を使い果たしている女だ。この手のおだてには弱いことくらい知っている。実際、照れている姉は可愛いから、からかい甲斐がある。
…もちろん、おだてるだけ殴られることも。
「…よし、そろそろだな」
時計を確認する。12時2分半前。
ベッドに横たわり、加湿器とエアコンをつけた伶は姉にいつの間にか奪われていたナーヴギアを取り戻し、スイッチを入れた。
「絶対、夕飯前には戻りなさい」
「りょーかいしました、お姉様。」
…ここから、俺の新しいことでいっぱいの冒険が始まるんだ!
「リンク、スタート!」
元気な声とともに、画面の先に見えていた姉の姿が見えなくなり、カラフルな円柱が何本も目の前を通り過ぎる。
ピロン、という音とともに、事前登録で作成しておいた自分のキャラクターが表示される。
“レイト”:このアバターをこの端末に認証してもよろしいですか?
Y:はい N:いいえ
数秒考えたのち、伶はYのボタンを押した。名前、恥ずかしいなぁ。
せっかくキリトに憧れて、伶の字の音読みで名前作ってみたのに。と伶河は少し後悔していたのだ。
途端に、自分の着ていた服がポリゴン状になって散り、代わりの服が着せられていた。
いつの間にか目の前には鏡があり、そこには自分がレイトになったのだ、という確信を持てる姿が映し出されていた。
ログインプロセスであろう、何度かのロードを繰り返したのち、目の前に大きな噴水が現れた。そうか。ついにこの世界に来たのか。俺は。
周りでは「始まったー!」だの、「俺が黒の剣士になるんだー!」だの、ゲームの開始を喜ぶ奴が続々と増えてきていた。
「あっと…初期装備とアイテム、確認しておくか」
左手を目の前で縦に一回振ると、メニューが現れた。レイトはまずそこに驚く。
「あれ…これって…」
確か、説明書には初期装備のスモール・ソードとポーション3個が持たされていると書いてあった。それなのに…
「なんで、文字化けしたアイテムが入っているんだ…?」
文字化けアイテムには、カ□ミ■ GIIIと書いてある。装備品なのであろう、装備ボタンが出ているが、筋力値が足りないのか、バグで装備もできないのか、ボタンを押しても無機質なエラー音がなるだけだ。
「攻撃力は高いみたいだし、取っておくか」
今はとにかく、第一層のボス討伐のためにレベルを上げることが最優先だ。そう思っていたレイトは、1層に群がるフレンジーボアを片っ端から片付けていき、4時間でレベル13まで上り詰めた。…うん、これなら十分だ。そう思った伶は、少し早いが姉の約束を守ろうと思い、左手を振ってログアウトボタンを探した。
「あった」
これを押せば、リアルに戻れるのか。本当に戻れるよな…?
…そんな伶の心配は無用だった。ログアウトボタンを押してから20秒。世界は見慣れた白い天井に戻っていた。
「ふーっ…戻ってこれた」
安心した伶は、咲を探すために部屋から出た。すると…
「おぅがえりぃぃぃぃぃ!!!!」
今にも泣きそうな咲が、いきなり伶に抱きついてきたのだ。伶河は呆れながらも、泣き出してしまった咲をなだめ、いつもより3時間も早い夕食を取るのだった。
「さぁ、またちょっくら行ってくるよ」
「うん…1層のラストアタックボーナス、もらえるといいね」
見送る姉はまさに、船出を控えた愛人を見送るようだった。
「リンクスタート」
こうして俺は、再びあの世界に潜り込んだ。