ソードアート・オンライン Players: Reito   作:drakg

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続きを書いてみました。
楽しんでいただけたら幸いです。


第1話「被害者」

「よし…これなら…!」

23回目のレベルアップ音が耳元で流れ、安全マージンを確保できたのかな、と安心した表情を浮かべるレイト。

経験値を稼ぐ相手をフレンジーボアから、1層迷宮区にほど近いところに生息するキノコ型モンスター、

スティンキーマッシュに切り替えた。このモンスターはプレイヤーを発見した際、名前の通り臭い粉を身にまとわせながら突っ込んでくる。突っ込んでくると言っても、ダメージとしては1入るだけで何も問題ないのだが、その臭い粉をまとったが最後、同系統モンスターの強制大量ポップに巻き込まれるのだ。しかし、運良く片手剣熟練値400で覚えることのできる3HITの範囲技、ホリゾンタルを覚えたてのレイトには、怖いものはなかったのだ。連続でホリゾンタルを繰り出して、倒してはキノコにわざと体当たりを受けて…という荒技でレベリングをしていたのだ。

 

「さて…そろそろ寝ようかな」

メニュー画面を開いて見えた時刻は、23:40分と高校3年生が寝る時間にしては少しばかり早いかもしれないが、VRの疲れは後に残ると姉に言われていたことを思い出したレイトは、さっさと切り上げることにした。

「転移、始まりの街」

レイトはポップアイテムの転移結晶を一つ取り出し、ゲームをスタートしたあの噴水の街へと転移した。

 

噴水の周りでは、レイトと同じ考えを抱いていたであろう数十人の剣士達がそれぞれメニュー画面をいじっていた。レイトも剣士達と同様に、その場で左手を縦にふるう。

「あれっ」

メニュー画面の最上部に、おかしな表記がある…?

「パブリック版公開記念、イベントだと…?」

「開始予定は24:00、か…」

…予定変更。今日は祭りだ。

レイトの内心はイベント開始を待つ気持ちでいっぱいになった。

「…その前に、トイレ行っておきたいな」

もちろん、排尿の抑制効果なんてナーヴギアには備わっていない。高校3年生でおもらしという不名誉な称号の授与を回避するには、定期的なログアウトをするか、カテーテルを刺しておくかだ。もちろん、自宅でカテーテルを刺してまでこの世界に残りたい人なんか、そうそうはいないだろうが。

ログアウト画面を見て、先ほどのものと何も変化していないのを確認したレイトは、さっきよりも安心した様子でログアウトした。

 

ピーン。24:00ちょうどの時報と共に、始まりの街はイベント開始を喜ぶ人たち、説明の映像を待ちわびる人たちでとても賑やかになった。そんな彼らの前に、2つの画面が上空に映し出された。

一つは、ニュースキャスターのような顔つきのアバター、もう一つは…ニュース番組?

『SAO内より中継』という文字が左上に見える。しかも、いつも現実世界の伶が見慣れたあのアイドルニュースキャスターが映し出されている。

…きっと、1回目のイベントだからニュースも取り上げているのかな

レイトはそのように解釈していた。

 

「皆様、こんばんは。改めまして、SAOの世界へようこそ。」

ニュースキャスターのような顔のアバターは、単調に話し始めた。

「まず、あなた方のアイテムストレージに、とあるものをプレゼントさせていただきました。皆様、そのアイテムをオブジェクト化してみてください。」

レイトはすかさず、周りと同様にアイテムストレージを覗いてみた。「手鏡」というアイテムが新たに増えている。

その時、レイトはとても嫌な予感を感じ取っていた。周りの一部も、レイトと同様に何かを感じ取ったようで、慌ててログアウトボタンを探し始めた。

「…ない…なんで消えているんだ…」

ログアウトボタンの消失。バグかとも思われるこの表記は、レイトを絶望の淵に立たせるには十分すぎる要素だった。その瞬間、全プレイヤーが同時に発光しだし、レイトは眩しさで目を閉じるのだった。

「おい…嘘だろ…」

手鏡を使わずとも、レイトは事態を察していた。そうだ、あのアバターは!!!

「…説明を続けさせていただきます。」

顔が変わっていなかった。こいつは、事態をすべて知っている人間なのか。それとも、AIなのか。そんなことを考えさせる余裕もなく、キャスターアバターという名前が表示された彼女は説明を続けた。

「あなた方は現在、ログアウトできない状況になりました。この状況をすでに察している方もいるでしょう。あなた方は、デスゲームの被害者となりました。この放送をご覧の現実世界の被害者のご家族へ忠告いたします。決して無理にヘルメット型端末を取り外そうとしないでください。あなた方のその行為が、被害に苦しむご家族を殺すことになります。」

殺す。確かに彼女はそう言った。その瞬間、

「グアァァァァァァァ!!!!!!」

この世の声とは思えない、男性の叫び声が始まりの街に響いた。同時に、7時の方向でパリン、という音とともに何かがポリゴン状になって弾け飛ぶのが確認できた。

「どうやら、忠告を無視してご家族がその手で被害者を葬ったようです。」

悲鳴や驚きの声の中、キャスターは淡々と現状を報告した。もちろん、その主たちには聞こえていないのであろうが。

「クソッ!!!もう聞いていられるか!!!!」

この後、キャスターアバターから言われるであろう『イベント』の内容について大方予想がついていたレイトは、一目散に1層迷宮区に近い位置にある街、トールバーナを目指して駆け出していた。

「大変なことになりましたねー。」

遠くから聞こえてくる現実世界のあのアイドルキャスターのコメントは、いかにも他人事かのようであった。ああクソ、イラつく。レイトはアイドルキャスターをこの世界に連れてきたい気持ちでいっぱいになっていた。

 

 

一刻でも早く、この世界から逃げるんだ…!

レイトは自身のありったけの敏捷値で、暗闇の草原を駆け抜けた。周りに群がる敵は、一撃で葬り去って。ただ、トールバーナを目指して駆けていった。

 

「…あの人…速い…」

ぽつりと呟いた少女は、レイトが開いた安全な道を、レイトを追いかけるように駆け抜けていった。




次回はついにヒロインの登場…?
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