そのまま載せるとアウトだったので食品風に変えたらこんな有様…文才がほしいと今年のサンタさんに頼むことにしました。
感想、励みになります!
いつもありがとうございます!
多分次回くらいで一巻完結です…多分
次回もよろしくお願いします!
良かったらもう一つのほうの作品も意見、ご指摘いただけたら嬉しく思います…
今日も今日とて、学校が終わりスーパーへと向かおうとする僕に、猟犬群のリーダーである爽やかイケメンの山原さんが僕に話しかけてきた。
どことなく僕を見る目がきつかったようだけどそんなのはどうでもいい。
クラス中から冷たい視線で見られている僕にその程度の睨みは痛くもかゆくもない。
「やあ、調子はどうだい?」
「まぁ…普通です」
「スーパーで連戦連勝しているみたいじゃないか」
「はぁ…」
「でもそろそろキツいんじゃないかな?」
「どういう意味です?」
「君は知らないだろうけど、【二つ名】持ちが君の噂を集めているらしい…近いうちにもの好きなんかは君にちょっかいをかけてくるだろうね。その時、君は果たして弁当を獲れるのかな?」
山原さんはニィっと悪そうな笑顔を浮かべた。
どうでも良いけどこういう厨二臭い仕草もイケメンなら許されるのって理不尽だ。
ニヒルなキャラ付けをしようと、何かのお礼をするたびにポケットから駄菓子をプレゼントしてたのはいいけど裏では誘拐魔とかいうあだ名をつけられていた川原君に謝罪すべきだ。
「…僕らならその【二つ名】から君を守ってあげられる、弁当を獲らせてあげられる」
「…」
「これが最後だ。猟犬群に入らないか?」
「結構です」
即答だ。
考えるまでもない。
ていうかもうなんかムカついてきた。
こともあろうに目の前のこの人は、弁当を恵んであげる、と言った。
この瞬間、僕の『絶対殺すノート』に名前が挙がった。
「そんなに自信があるんだね…ならこの誘いも断らないよね?」
そういって山原さんは僕を殺意ある眼で睨んで言った。
「今日、ジジ様の店で戦おうじゃないか。君が一人でも勝てるというのなら、僕たち猟犬群からでも弁当を獲れるという事だろう?」
「…もうここまでくるといっそ清々しいですね」
ふぅ、とため息をつき僕は笑った。
「でも、そういう誘いは嫌いじゃないです」
【ダンドーと猟犬群】、その強さの肝は連携にある。
そしてその弁当奪取率は【二つ名】にも劣らず、災害である【アラシ】すら寄せ付けない。
本来のリーダーである壇堂先生がいない【ダンドーと猟犬群】の闘い方こそが負けにくいシステムであるというのならそれを僕は真正面から正々堂々打ち破ってやろう。
「燃えるぜ」
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山原の気分は高揚していた。
あの生意気な1年坊である【ゴキブリ】をこの手で潰してやれると思うと、今日の弁当の美味さも跳ね上がるだろう。
そして兼ねてより勧誘を続けていた佐藤も、今日で返事を貰えることになっている。
策は講じてきた。
負けにくいシステム、猟犬群フルメンバーでの参加、佐藤という新しい戦力の勧誘、そしてホームであるジジ様の店での戦い。
争奪戦の始まる前からできうる限りのことはやってきた。
―――山原は負けることが何よりも嫌いだった。
己が勝つ理論を一つ、また一つと積み上げていく。
そうすることで山原はいつものルーティーンのように弁当を手に入れてきた。
笑顔を絶やさず、猟犬たちを連れスーパーへ入店する。
その笑顔の裏には目も当てられないほどの憎悪と恐怖が込められていた。
自分たちの考えに賛同しなかった愚か者への憎悪と、万が一にもないが負けてしまう事への恐怖を携えて…。
―――山原は負けることが何よりも嫌いだった。
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スーパーへ入店した山原達はそれぞれが訓練された犬のように流れるように分かれていった。
そして山原は目当ての人物を探し当て背中合わせになるように陣取る。
「佐藤君、どうだい調子は?」
昔ながらのスナック菓子を手にしながら山原は佐藤にそう尋ねた。
「まぁまぁです」
「そっかそっか…早速で悪いんだけどさ、返事聞かせてもらえるかな?」
顔はお互い見えない、のにきっと山原は笑っていることだろう。
返事のない佐藤に山原は畳みかける。
「何度も言うがそんなに深く考えないでくれ。僕たちは君に命令したり強制したりはしないよ。ただスーパーであったら一緒に行動しようと、そう言ってるだけさ」
山原の口は止まらない。
「オレ達としても佐藤君のような有望な人材と手を組めたら有利に事を運べるし…あ、もしかして自分はまだ未熟だとか思ってるのかい?だとしたら大丈夫さ、君は絶対に強くなれる、僕にはわかる。それにもし強くなれなくても心配はいらない、僕たちといれば弁当を獲らせてあげられる」
「…【ダンドーと猟犬群】…【二つ名】がつくほど弁当の奪取率が多いんですよね?」
その佐藤の問いに、山原は頬を吊り上げる。
喰いついた、と。
「そうだね…大体勝率9割ってところかな?もちろん【二つ名】持ち相手にだって負けない。残りの1割だって人数がいないときだったり、よせばいいのにオレや壇堂先生がいない時だったりだから実質10割さ」
得意げに山原は語る。
喰いついた、逃がさない。
「この争奪戦は狭き門だ。勝者はほんの一握りしかなれない。弱きものは飢え、強き者だけが腹を満たすことができる…まるでこの世界そのものを具現化したような場所だ。
よくTVなんかで言われているけど、人間は自然には勝てないとされている…けどオレはそうは思わない。むしろ今では人間のほうが自然を脅かしている状況だ。
そしてその人間というのは、得てして団体で行動している者たちだ。
社会では連携こそが強みで、はぐれ物は消えていく定めにある」
「つまり…【ダンドーと猟犬群】は勝つためのシステムだと?」
「その通り。どんな人間であっても群れに入ってしまえば強者になれる。
もちろん指導者がいて、ある程度の実力を持つものこそが望ましい。
佐藤君、君にはその資格がある…断る理由、ないよね?」
落としにかかった山原は勝利を確信した。
ここで佐藤を落とし、新道を潰す。
しかしその思惑は、他でもない佐藤の返事によって崩される。
「お断りします」
その言葉がわけのわからない外国語のように思え、山原は理解ができなかった。
きっと彼の顔は面白いくらいに崩れていたことだろう。
「せっかく誘ってくれていたのに、ここまで待ってくれていたのに断ってしまってすいません」
「理由…聞いてもいいかな」
何かを抑えるような声で問う。
その声は恐ろしいくらいに冷たいものだ。
「…今まで猟犬群に誘って、それを断った人って何人くらいいるんですか?」
「…あんまりいないよ。そもそも誰も彼にも声はかけていない」
「本当ですか?その人たちはなんて言って断りました?」
「…いろいろだ」
「いえ、多分ですけどみんな同じ理由で断ったんじゃないでしょうか?
『それじゃつまらない、面白くない』って」
佐藤は山原に顔を向ける。
それに気づいたのか、山原も佐藤を見る。
店に入って、二人は初めて向き合った。
体も、心も。
「確かに猟犬群というシステムはすごいものだと思います。みんなに弁当が行き渡るシステム、それのみに特化した戦い方に僕も最初は目が眩みました。
でもあの日、行動を共にして弁当を獲ったとき思ったんです。
普通の買い物だった。そこに試練も強敵手もいないただの買い物…食べた弁当も美味しかった…けどただそれだけだったんです。
【魔導士】たちと協力して獲った弁当のような感動がなかったんです」
黙って聞いてる山原の顔は笑顔だ。
ただその笑顔にひびが入ってきている。
佐藤の発する言葉にひびは決壊を迎えそうだ。
「僕は弁当がほしい…でもそれはただの売れ残った古臭い弁当じゃない。
自分の全てを懸けてまた相手も全てを懸けて戦い、その果てにある勝利のスパイスが入った弁当なんです」
そう、以前、佐藤に槍水が考えろと言った言葉。
『俺はその販売方式を含めて、半額弁当は最高の料理の一つだと思っている。』
そして新道の言った言葉。
『争奪戦が楽しかった時のことを思い出してみたらいいんじゃないか?』
その答えこそがこれなのだ。
ビギィ!
山原の顔はついに壊れ、その本性が顔に浮かび上がる。
「…必ず弁当が喰えるのに?」
「それでも、僕は戦います。戦って時には負けて、泣きながら生きていきたいです」
「理解に苦しむよ」
山原は佐藤のこの目に【魔導士】こと金城を、今まで誘いを断ってきた狼どもを思い出した。
どいつもこいつも猟犬群のシステムを半笑いで断っていった。
理解ができない…が何人にも断られ続け、そして【魔導士】に言われてなんとなくわかったこともある。
こいつら狼と呼ばれる連中は、負けすらも楽しみながら戦っているのだ。
安定して与えられるドッグフードよりも生臭い血肉に食を見出しているのだ。
山原には理解ができなかった。
負けを楽しむという行為をただの破滅願望だと感じて、山原こそが狼を嗤った。
…どこか羨ましそうに、卑屈そうな顔で。
「おい山原!不味いことになった、弁当の残りが少ない。争奪戦が始まる前に全員分残るかわからないぞ」
剣道部の一人が山原にそう伝えた。
それに山原は返す。
「いや…そこから2個は考えなくていい」
「どういう意味…あぁそういうことか」
瞬間、その剣道部員も目が鋭くなる。
それを皮切りに猟犬群全体から佐藤と白粉に対する目が厳しくなった。
「…後悔はないかい?」
「えぇ」
「そうか…敵は少ないほうがいい」
「…潰しますか、僕を?」
「君が選んだ道だ」
そして山原はその場を離れ、群れを集めた。
今までのやり取りを、白粉はその横でかぁこいいと呟きながらメモを取り黙って聞いていた。
「…白粉、何でお前ここにいるの?」
「お、俺がいないと困るだろう!?」
探偵もののキャラを作りながら白粉は答える。
その探偵ものとは何を指すのか察した佐藤は、食欲が失せそうな気がしそうだったのであえて触れなかった。
「でも…白粉にも悪かった」
「へ?」
「一緒に争奪戦に参加してきたのに、僕のせいで振り回しちゃって」
「あ、いえ、気にしないでください。なんだかこういうのも、えっと、楽しいというか…良いインスピレーションが沸くというか…」
「お、おう」
その時、店内が少しざわついた。
見ればスーパーの入り口から青果コーナーに向けて歩いている顔見知りがいた。
新道心羽。
思えば白粉と同じく、佐藤の中で同時期に争奪戦に参加をした同期だ。
【ゴキブリ】とかいう本人もわけのわからない【二つ名】をつけられているかわいそうな奴ではあるがその実力は本物だ。
店内がざわついたのもそれが理由だろう。
「おい…あれって【ゴキブリ】じゃないか?」
「マジか…とことんついてねーよ」
「【ダンドーと猟犬群】に【ゴキブリ】、しかも弁当少ないし」
「新道」
佐藤は新道に声をかけた。
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「新道」
佐藤君に声をかけられた。
今さっき茶髪から話を聞いたのだが、佐藤君も猟犬群の誘いを断ったらしい。
まぁそうだろうなとは思ってたので特に驚きはなかった。
むしろ、誘いを断ったことにより佐藤君も吹っ切れて実力を発揮できるだろうという事と、断られた【ダンドーと猟犬群】が本気を出すことが僕の胸を躍らせた。
今夜の弁当は、きっと感動的なものになることだろう。
「新道にもお礼を言っとく…アドバイスありがとう」
「別に気にしてないからいいよ」
「ん、じゃあ今日は負けないから」
「それは無理かな」
店内を見渡していう。
「誰が相手だろうと、僕が狩る側で、相手が狩られる側だ」
今日も僕は弁当を見なかった。
金銀財宝のイメージがなかったことだけは確認している。
月桂冠は今宵なし、それだけわかっていれば後はどうでも良い。
何でも食べる。
何でも食べたい。
この店の半額神が出てきた。
さあ、戦いが始まる。
ジジ様が9つの弁当に全てにシールを貼り終え、バックルームへ戻っていく。
扉が閉まり、息苦しいほどの緊張感と焦燥感に抑えきれず一斉に狼が駆けだした。
今宵の勝利は9つ。
対して店内を駆ける獣は数えきれない。
先頭を二頭の狼が駆ける。
スピードも中々のものでこのままだと弁当コーナーにたどり着き奪取されてしまいそうだ。
しかしそれを他の狼が許すわけもなく、追いつき跳び蹴りや足払いをかけすぐに混戦となった。
そこに山原さんが口笛を吹き、その合図に合わせ猟犬群が必勝ともいえるパターンのために動き始めた。
第一陣である❝甲❞が乱戦の場に突っ込み、半ば力任せに道を作り続く第二陣の❝乙❞がその場に突っ込み弁当奪取を計る。
きっとこのまま何も起こらなければ、彼らはいつもの通り弁当を獲った❝乙❞が壁となり、❝甲❞も弁当を攫って行くだろう。
そう、いつもならば…。
しかし今日はそうはいかない。
何故なら僕がいるからだ。
僕の目の前で弁当を持っていこうとするなんて…許せないことだ。
それは僕のだなんで持っていこうとする僕のだ僕のだ僕のだそれは僕のだ!
「ピィィィィィィィィィイイイイイイ!!!」
先ほどの山原さんの口笛とは比べ物にならないほどの大きさの音が鳴り響く。
無論、僕の技である。
瞬間、周りにいた狼はもちろん、最前線にいた猟犬群にも効果があった。
以前にも使用した技でありその詳細は尾張忍者の末裔を自称する尾形小路という一人の男の奇術。
繊細な音を高低差を操り、人間の耳の中に存在する三半規管を刺激し、狂わせる技。
人間の外側を攻撃するものではなく、内にあるバランスそのものを破壊する業だ。
作品内に出てくるラスボスにすら効果的であったこの技は、このように対多数でも効果的だ。
ふらふらと足取り悪く、なぜこのようなことになっているのかもきっとわからないことだろう。
僕には人の心の中を読むなんて言う超能力はないが、きっとここにいる人たちの現在の視界はおそらくとても面白いことになってるに違いない。
明らかに動きに精彩を欠いている今、ゴキブリダッシュを使えば余裕で弁当を獲れるだろう。
しかし、そうじゃない。
こんなのはまだまだだ。
まだ足りない。
戦い、勝つ。
相手の全力を受け止め、それすらも自分の全力で打ち破る。
そうして得た弁当こそが僕の求めるものだ。
だから…。
弁当コーナーへ、それこそ横断歩道を渡るように近づき、弁当に背を向ける。
そしていまだふらつき、わけのわからない顔をしている狼と猟犬たちに言い放つ。
「諸君、僕は半額弁当が好きだ」
「諸君、僕は半額弁当が好きだ」
「諸君、僕は半額弁当が大好きだ」
「豚の角煮弁当が好きだ
サバの味噌煮弁当が好きだ
4種のチーズハンバーグ弁当が好きだ
チキン南蛮弁当が好きだ
唐揚げ弁当が好きだ
日の丸弁当が好きだ
コンビニで、スーパーで
デパ地下で、遊園地で
水族館で、動物園で
空港で、新幹線で
ファーストフード店で、定食屋で
この地上で作られるありとあらゆる弁当と半額弁当が大好きだ
整列をされた鮭の切身が海苔とともに白米に乗っているのが好きだ
小骨に悩まされながら米を飲み込んだ時など心が躍る
工場の操るスライサーの厚さ2㎜の牛小間切れが好きだ
悲鳴を上げて熱気のこもった電子レンジから取り出した牛丼弁当を掻き込んだ時など胸がすくような気持だった
足先を揃えたげその天ぷらの入った天ぷら弁当が好きだ
衣しかなくて恐慌状態になりながら、何度も衣以外を探そうと箸を突き立てる様など感動を覚える
企業の思惑に乗せられ、季節限定企画もの弁当に滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死に守るはずだった財布の紐が蹂躙され、野口(千円)が消えていく様はとてもとても悲しいものだ
外国の物量だけは多い弁当に胃を押しつぶされて殲滅されるのが好きだ
ご当地限定弁当のために追い回されて害虫のように地べたを這い回るのは屈辱の極みだ
諸君、僕は半額弁当を戦争のような半額弁当を望んでいる
諸君、僕と戦う覚悟のある狼猟犬豚諸君
君たちは一体何を望んでいる?
更なる半額弁当を望むか?
情け容赦のない極狭の地での戦争を望むか?
悪逆非道の限りを尽くし三千世界の狼を殺す嵐のような闘争を望むか?」
僕の言葉に少し回復したのか、狼、猟犬群全員が僕を睨む。
あぁ…これだ。
この胸の高鳴りこそが…!
「よろしい、ならば
「我々は満身の力を込めて今まさにカットしようとするステーキナイフだ
だが食品偽装や衛生管理問題という暗い問題が起こる現代で耐え忍んできた我々にはもはやただの戦争では足りない、払拭できない
大戦争を!
一心不乱の大戦争を!」
場のボルテージが上がっていくのを感じる。
数メートルは離れている最後尾の狼の鼓動でさえ聞こえてきそうなくらい激しい動悸だ。
「我らはわずか20にも満たない狼の群れ
【二つ名】も持たぬ狼に過ぎない
だが諸君は一騎当千の狼だと僕は信仰している
ならば僕と諸君らで総力20万と1人の戦争となる
ここに一騎当千万夫不当の英傑共の戦場を!
征くぞ諸君」
場はカオスとなり、おそらく今までの争奪戦歴史上かつてないほどのボルテージが弾け、ここに戦争は開始された。
少佐、大好きな方、申し訳ない・・・