オリサヴァや設定崩れなど御留意ください。
時は丑三つ時。
ある屋敷の地下は明らかに前時代的錯誤をしていた。
幾何学的な紋様が床に書かれ、人の手をかたどった蝋燭が煌々と燃えていおり、作りかけの球体人形のパーツが渦高く積み上げられている。下手なお化け屋敷を超然とした魔の様相がそこには映し出されていた。
そこにはこれまた時代錯誤的なローブをまとった人の姿。
今から荘厳な神事を行うといった面持ちで神妙に右手をかざす。
彼が唱えるは祝詞。今より人類史に刻まれし英雄を現世に再び呼び戻す真言。
―――素は銀と鉄―――
―――我は常世全ての悪を敷くもの―――
―――抑止の輪より来たれ―――
「天秤の守り手よ」
はたして男が呼び出したのは青い衣服に身を包み、赤い槍を携えたモノ。
極光とともに現れた神話の具現が男へと問いかける。
「サーヴァント、ランサー。召喚に応じ参上した。てめぇが俺のマスターか」
「ああ、そうだとも。ランサーのサーヴァントよ」
「オタクが俺を全力で戦わせてくれるっていう条件で、俺はアンタが聖杯をとる手助けをしてやる、そういうことでいいかい? 縛られるのは苦手なんだ。」
ただ、全力の腕試し、そのランサーの願いを男は切り捨てた。
「そうか。善処しよう。それでは最初の命令だ、令呪を持って命じる自害せよランサー」
「なっ」
赤い槍がくるりと反転してランサーの胸を突き刺す。ランサーが光の粒子となって消滅する。
だが消滅するその間際、ランサーは自分をこけにした魔術師に一矢報いようとした。
その際彼が見たものは、糸が切れたように動かなくなったローブをまとった球体人形だった。
一人の魔術師の人形達はランサーの消滅と同時に同じようなセリフを吐いた。
「令呪を持って命じる自害せよセイバー」
「令呪を持って命じる自害せよアーチャー」
「令呪を持って命じる自害せよライダー」
「令呪を持って命じる自害せよアサシン」
「令呪を持って命じる自害せよバーサーカー」
粒子となって消えてく英雄たちの最後を看取る人形は、それ自体もまた役目を終えたように折崩れていった
六騎の消滅。それに合わせて教会が鐘を鳴らす。それは弔鐘のようでいて、その実ただの合図だった。聖杯が顕現したぞ!この戦いわれらの勝利だ!と今しがた自らのサーヴァントに自害を命じた魔術師たちに伝えるもの。教会でそれを鳴らすは二人の魔術師、キャスターのサーヴァントとそのマスターである。
「実にスマートな決着だ、そう思わないかマスター」
「ああ、全くその通りだね、ユグドレミニアの連中は何でこんな簡単なこと失敗したんだろうね」
「私のような優秀な魔術師がいなかったからではないかな、他のマスター全員を暗示にかけ、聖杯戦争が行われる町から退去させてしまうくらいの力量の」
「そりゃキャスター、お前にかかれば現代の魔術師連中なんて取るに足らないだろう」
「私は本来錬金術師なのだがね、おっとそろそろではないか?」
ひゅっと彼らの目の前にある欠片に魂のようなものが吸収される。
「それじゃ仕上げだ、お前の宝具で聖杯を成らせる。そして願望の成就といこうじゃないか!」
「了解した。マイマスター」キャスターが宝具を発動させ、手の中にあった石を欠片へと向かっておとし「万能の石よ、生命の意志よ、今こそなりたまえ、そしてならせたまえ」
欠片が一瞬で蒸発する「果ての黄金!!!」そして、彼らの前に聖杯が顕現した。
「ご苦労だった。キャスター。それでは令呪を持って命じる自害せよ」
「がっ!」キャスターは自ら己の首を絞めた。キャスターは令呪で自害を命じられることが出来るのを知っていながら反応できなかった。それはマスターの協力関係が盤石だという思い込み、そして聖杯をつかむために霊体が必要だからキャスターを切るという選択はしないだろうと思っていたからである。
「畜生めがぁ」首が閉まっているせいで言葉には聞こえなかったがキャスターはそれを最後に消滅し、聖杯に回収された。
キャスターのマスターはそれを見届け、「本当にご苦労だった。キャスター。これで聖杯は私のものだ。アインツベルンの失敗作の聖杯の欠片を使ってどうにかサーヴァントだけ呼び出すシステムを作り、キャスターの力で本物の聖杯と昇華させた。」そして魔術師は、聖杯戦争の勝者は、願いをかなえるために聖杯に触れる。霊体にしか触れないはずの聖杯をつかめる。それはある人形師の義手のおかげだった。対価に自らの積み上げてきた魔術体系すべてを払わされたが、聖杯を手にした今問題はない。
魔術師はそして願いを言う。
「聖杯よ、王冠を再び生み出せ!!」
かくして一人の手で行われた聖杯戦争はキャスターのマスターである魔術師、スパランツァーニの勝利、そして願いをかなえてここに終結した。
これは聖杯戦争が終結した後の話である。
嗜虐たっぷりに露西亜の血の入った魔術師は笑う。獲物に狙いを定めたハイエナのような顔で
「マア、この僕が聖杯戦争の勝者になるのは疑いないよなァ。御三家である僕が部外者にかすめ取られるわけにはいかないし、英霊ごときに負けるような技じゃないからなぁ、僕の魔術は!
ほら、そこの、えーとなんだっけ、まあいいや、僕の魔術を食らってみてくれよ。
いくぞ、えーとアンリミテッド―――