幼女を愛でつつ敵をくっころし天下を統一するだけの話 作:ちびっこロリ将軍
(こいつは何を考えているのだ?)
周瑜は計りかねていた。自分をこうして拘留している意味を。
(こうして、敵軍の大将自らの尋問となれば、私の素性は知れているという事は間違いない。だが、こうして自ら来る理由が無い)
周瑜は自分の価値を理解している。
周家そのものは二世三公の名門とはいっても、周瑜は数ある分家の長女でしかない。袁紹の所に属していた周家の代表を殺して、こうして周家の当主のような扱いを受けているが、それは袁術の後ろ盾があってこそのものである。
そして、その後ろ盾も孫策という親友の軍事力を頼りにしたものであり、周瑜自体の価値は低い。家督争奪戦が終わったのなら、平凡な能力でも従順であれば袁術側に損はない。逆に統率が取れやすくなって良かったと喜ばれる事だろう。
周瑜の持っていたものは能力であるが、その能力で得ていた名声も地に落ちた。
友である孫策は自分が生きていると知れば、捕虜の返還を持ちかけるだろうが、それは群雄として死を意味する。
今回の敗北は周瑜の名声を地に落とし、無能な軍師という烙印を押した。
無能な軍師の命の為に巨額の金を動かせば、孫策自身の声望が無くなるし、その無能な軍師を未だに用いているとなれば、人を見る目がなく、未だに幼馴染というだけで無能を使い続ける暗君の誹りを受けるだろう。
(私は雪蓮と共にある事は出来ない。私が傍に居るだけで雪蓮にとって不利益となる存在にまであの戦いで落された。それはこの男が一番わかっているだろう)
実態がどうであろうと、人というものはそういうものだ。特に名声が重要視されたこの時代において、こんな負け方をした軍師を重用する事は許されない。
周瑜は忘れない。頭はふらつき、手足が動かず、地べたを這いずる事も出来なくなった状態で聞いた言葉を。
「あの人はもう脅威にならないでしょう」
幼い声だった。そこには純然たる事実を提示しただけである事が窺える淡泊さと、周瑜に対しての憐みがあった。
惨めだった。
今の自分は、成人さえもしていないような子供に憐れまれるような生き恥を晒している。今後、なんの役にも立たないどころか足をひっぱり続けるような生き方しかできない。それがあの戦いの策にかかった瞬間に決まってしまった。
(だからこそ、あの時、死を選んだというのに。なぜこの男は私を生かす? なぜ死なせてくれなかった? 私の持っている情報か? そんなものは対して役に立たないだろう……やめてくれ、これ以上私を最低の人間にしないでくれ。友の足をこれ以上引っ張るような、苦痛から逃れたいがために友を売るような人間にしないでくれ。やめて……)
これから行われる拷問への恐怖もある。だが、それ以上に友を売るような人間にはなりたくない。
そんな気持ちを出せば付け込まれる。そう思った周瑜は劉表を睨み付け、自分は恐怖していないと示そうとする。手が震えるのを必死で抑えながら。
「どうした? 指揮は出来ても、女子供の頸すら取れぬ軟弱者なのか?」
煽る周瑜に対して、劉表の態度は対照的だった。それはまるで、そんな事に興味がないように。
「周瑜殿。戦の後だ。気持ちが昂るのも分かるが、落ち着いてほしい。私は、貴女を害するつもりはないよ」
「はっ! ならば、私を解放でもしてくれるのか? そうなれば私は真っ先に貴様の頸を取る為に謀略を働かせることになるな。剛毅なものだ。態々、怨みを持つ相手を増やすのか」
「……残念ながら、君を解放する事は出来ない。君の体は矢が幾つも刺さっていた。出血も多いし、動かせば傷口も開くことになる。それに……右足はもう動かないだろう。そんな状態の君を動かすわけにはいかない。それに加え、君と敵対するのは怖いからね」
「っ……」
君と戦うのが怖いという言葉を聞いて周瑜は激情が体の中を渦巻いたのを感じた。
激情に駆られ「あんな戦いをしておいて何を言う!」と怒鳴りそうになったが、周瑜はそれを口に出せなかった。劉表にとっては、侵略者から身を守っただけの自衛行為であり、そんな事を言っても意味が無い。
(敵はこちらを智謀で弄んだ謀略家だ。ただ怒りを露わにしても弄ばれる。くそっ、名門の血筋でないのに高官に昇っている。しかも男であるのに……だ。化け物の類であると分かっていたはずなのに、油断した結果がこの様か……)
周瑜は当たり前の事すらも忘れていた事に、己がいかに慢心をしていたのか振り返る。しかし、時は戻らない。後悔は先に立たないものであると、周瑜は今更ながら実感していた。
この国は女性優位の社会である。これは、古来からではなく、漢代に入ってから顕著になった。
「男は田畑を継いだり、大工や兵士として生きていける。しかし、女は男に力で劣り、そういった職で生きていけない。ゆえに女にこそ学問が必要である」
そんな言葉を誰かが言い始め、それが少しずつ広がり、いつしか複数人の教育が出来ない家はまずは長女を教育する事が多くなっていった。
本来、後漢という国は識字率60%~70%と、古代王朝としては破格の数字を誇り、近代までこれ以上の識字率の国家は存在しない。
しかし、この外史において、前漢を滅ぼした王莽が学門を推奨しなかった為、文字を書ける者がとても限られる。そして、文字を習う機会に乏しい社会に変容していた。文字を書ける貴重な人材の女性比率が上がれば、官吏になる者も女性が増えていく。官吏に女性が多ければ、自然と女性寄りの政策になっていく。少しずつ、少しずつ、社会が変わっていく。
大きく変化したのは、後漢になってからだった。幼帝が続き、皇后が政治を執るようになる期間が多くなった。
皇后は異性に顔を晒すのは禁止されており、女性と宦官以外に顔を晒せない。
結果として、政治の中心は皇后となり、皇后の周りの女官と宦官が政治の実権を握るようになった。
皇后は寵愛する自分の周りの人間を重用するようになり、宦官の握っていた職務以外の高官職は女性が占めるようになるのに時間は要らなかった。そんな中、高官として残っている男はよほどの名門か、代わりになる者が居ないほど能力が高いか。その二択しかない。
劉表は十万人以上いる皇族の一人でしかなく、家柄も無い。ならばもっと警戒すべきだった。なにかしら化け物染みた能力があると。
しかし、周瑜が自然と持っていた男に対しての侮蔑。それが思考の邪魔をした。
(そうだ、劉表は数少ない男の高官だった。それを慢心し、見逃すなんて……男……えっ? はっ?)
そうして、ようやく思い至る。ここには男が居ると。敵の将であると同時に劉表は男であり、自分は軍師であると同時に女である。
「っ……」
周瑜の脳裏にある言葉が浮かんだ。
慰み者
戦場で簡単に起こりえる行為であり、その現場を何度も見てきた。しかし、周瑜はそれが自分自身に降りかかってくるとは思っていなかった。
今日、この日までは。
ここからは監禁、依存、寝とり等の人を選ぶ描写が入るので、「幼女を愛でつつ敵をくっころしてエロい事をするだけの話」というタイトルでR18禁小説として続きを掲載をしています。自分で書くと実用性があるのか分からないので、エロくなかったら申し訳ない。
上記の要素が苦手という方もしくは未成年の方は、くっころされたんだな~思っていただき、このまま読み進めていただけると助かります。もう一話今日、投稿しています。