幼女を愛でつつ敵をくっころし天下を統一するだけの話   作:ちびっこロリ将軍

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エロに時間がとんでもなくかかった件。
「幼女を愛でつつ敵をくっころしてエロい事をするだけの話」というタイトルで掲載しています。


幕間 河北情勢

 劉表と孫策の決戦の少し前、大陸の情勢は大きく変わろうとしていた。

 

 大陸の有力勢力はいくつかあるが、中でも強大な戦力が袁紹と袁術の二名である。四世三公の名門の出身で袁紹は冀州、袁術は荊州という豊かな州を本拠地とし、大軍を率いていた。名声と兵力が揃った勢力があれば敵対しようと思う者は少なく、周辺豪族を自軍に加えながら勢力を拡張していき、二袁と呼ばれる大勢力にまで成長した。

 

 しかし、二袁に次ぐ大勢力も存在する。益州牧の劉焉、青州刺史の焦和、兗州刺史の劉岱。そして、幽州刺史の公孫賛であった。

 

 その中でも特に有力なのが公孫賛だ。烏桓突騎と呼ばれる、敵陣に激しく突撃し、陣形を崩してしまうほどの練度を誇る騎兵集団を主力とする精鋭の軍。かつて光武帝を天下統一へと導いた騎兵を率いる公孫賛は袁紹と勝るとも劣らぬ勢力を築いていた。

 

 名門としての人脈を駆使して外交面において十歩も百歩も先をいった袁紹に対して公孫賛が戦えていた理由は大きく二つある。

 

 まず、一つ目は正式な官位である。

 

 公孫賛は、反董卓連合の際、董卓が悪政を布いているという噂が本当かどうか確かめる為、密偵を出したりしていたのだが、その間に袁紹からは「さっさとこっちにつけ」と手紙が来て、董卓からは「さっさと袁紹を攻撃しろ」と手紙が来る。そして迷いに迷った公孫賛は病欠といって中立をしていた背景があった。

 

 そんな状況になってしまったのはある人物のせいでもあるのだが、とにかく公孫賛はどっちつかずな態度を取り続けたせいで、連合解散後、袁紹に攻められる事になった。人望は、そこそこある公孫賛だが、相手が悪い。

 

 州刺史と言っても、太守の上司でもない。自分の私兵になれ! と言っても太守からしてみれば、自分より格下に命令されるなんて御免だと言って戦ってなどくれないだろう。それどころか勝手に袁紹に降伏してしまう者が出始めてしまう始末であった。

 

 幽州はたしかに精鋭の騎兵が居た。だが、幽州刺史という肩書だけでは命令できない上、纏められない。粛清をして自派閥で太守を埋めた袁紹のような強硬手段が取れない公孫賛は滅亡寸前にまでに追いやられていた。

 

「どうすればいいんだ……」

 

 公孫賛はどうしようもない状況に胃を痛めながらも文字通り必死になって行動するも、どうしようもない現状は変わらない。

 

「ああ、もうすぐ私は死ぬのか……ははは」

 

 そんな事を頻繁に言い出すくらい精神的に参っていた公孫賛の下にあるものが届いた。

 

「幽州刺史公孫賛を奮武将軍の地位及び幽州・冀州・青州・兗州の四州の刺史を統括する督四州に任ずる。なお、刺史・太守・県令の任命権を一時的に公孫賛に委任する」

 

 幽州を含め、四州の人事権を明け渡すという、あり得ないような漢王朝からの、正確には董卓政権からの申し出。さらに驚くのは、反董卓連合包囲網とも言える大規模な作戦内容だった。

 

 それは賈駆が苦心して築き上げた逆転の一手。

 

「現在、袁紹の本拠地である魏郡及び劉岱の治める東郡に、黒山賊の于毒・白繞・眭固等が率いる十万を超える軍が侵攻の準備を進めているわ。それに加えて、青州黄巾三十万と交を結び、焦和を攻撃させている。袁紹傘下の南匈奴の単于である於夫羅に離反させ、それと同時に河内太守の張楊も決起させる手筈になっている。その時、董卓軍は豫州奪還作戦を行う。あとはあんた次第。袁紹を倒して天下にその名を轟かすか、そこで死ぬかよ」

 

 公孫賛にとっても、この手に乗らない理由はない。ここで董卓に付かなければ袁紹に滅ぼされるのだ。こうして大戦略と正式な官位という武器を手に入れた。

 

 冀州刺史の袁紹、青州刺史の焦和、兗州刺史の劉岱は官位を剥奪された。これにより、三人は部下を統率する大義名分を失い、漢王朝に忠を尽くすという名目で幾人かの部下が独立し、その対処に奔走する羽目になる。

 

 そして、公孫賛には袁紹にはない武器がある。正式な官位と並ぶ公孫賛の強みは劉備の存在であった。

 

 黄巾の乱の功績によって県尉の地位に上り詰めた劉備であったが、賄賂を要求された事に激怒した関羽がその役人を半殺しにするという事件が起き、任地から脱走。公孫賛に匿われていた。

 

 独立して半年も経たない内に官位を失う友に唖然としつつも、公孫賛は劉備を世話してきた。

 

 ニートと化していた趙雲が「最近、太ももに贅肉が付いてきた」とか言い出したので、キレた公孫賛がメンマを取り上げて働かせたりする一幕があったりこそしたが、指名手配されている為、外に出せず、儒学をきちんと学んだわけではないので書類仕事をさせてもあまり役に立たない劉備、関羽、張飛、趙雲の四人のニート……もとい食客の世話に悩まされていた公孫賛だったが、乱世になると、これ以上頼もしい存在は居なかった。

 

 連合の際、董卓が悪政を敷いているという虚言をもって連合を組んだと分かると、劉備がそれに大反対して、その勢いにのまれて中立という立ち位置になってしまった結果、滅びかけたりしたが、それ以上に活躍をしていた。

 

「ぐすっ、よかった。ただの無駄飯喰らいじゃなかったんだな……」

 

 公孫賛が泣いてそんな事を言っていた事を知ると関羽が絶望した顔を見せたり、劉備が怒って反論していたりしたが、細かい事だ。

 

 平時だと無銭飲食をして捕まってしまい、引き取りにいかなければならなかった友が活躍する姿を見て、ようやく一人立ちしてくれた息子を見る母親のような気持ちになった公孫賛は悪くない。

 

 そんなこんなで軍師不在を補う大戦略に加えて、正式な官位、精強な騎兵、優秀な武将が揃った公孫賛は国力で圧倒的に劣る情勢において袁紹に匹敵する勢力を築き上げる事に成功した。

 

 劉備に関羽、張飛、趙雲と大陸でも有数の武将が配下に居るこれ以上ない最強の布陣である。そう、もう公孫賛は地味な地方の刺史ではない。立派な大陸有数の群雄なのだ。

 

 元々、妾の娘であった公孫賛は名門にコンプレックスを抱いていたが、それも払拭し、袁紹を倒すと意気込む。

 

 そして、時が来た。

 

 袁紹の本拠地である魏郡及び劉岱の治める東郡に、黒山賊の于毒・白繞・眭固等が率いる十万を超える軍が侵攻。それに加えて、青州黄巾三十万が青州刺史の焦和を攻撃し、袁紹傘下の南匈奴の単于である於夫羅が離反。それと同時に河内太守の張楊も決起した。

 

 加えて、董卓軍は呂布、張遼という切り札を切り、朱儁率いる洛陽周辺地域へ侵攻。戦況は優位な状況にあり、本来、孫策が勢力を広めつつあった豫州だが、荊州での劉表決起によって空同然な状況という好機である。

 

 そこに、公孫賛が加わり、袁紹の拠点である魏郡へ大軍を率いて侵攻した。

 

 さらに朗報が届く。

 

「なに! 曹操が居ないだって!?」

 

 黒山賊の于毒・白繞・眭固等が率いる十万の軍に対応する為、曹操が出陣したという知らせが届く。

 

 もっとも警戒していた袁紹閥最強の将軍の不在に公孫賛は歓喜する。

 

 公孫賛の冀州への侵攻に対応する為に出撃した袁紹軍だが、南匈奴の単于である於夫羅離反と黒山賊の侵攻に対応する為に、最大の武器である数の暴力は使えない。公孫賛軍全軍三万に対して、袁紹軍が四万。

 

 数では劣る。しかし、公孫賛には一騎で十の歩兵に匹敵するとまで呼ばれた烏桓突騎が八千。それに加え、烏桓突騎からさらに精鋭を選んだ白馬義従が二千。それを率いるのは趙雲。周りを支える将は関羽と張飛の二人。

 

 練度でも将の質でも圧倒している。

 

「勝てる。勝てるんだ!」

 

 公孫賛は勝利を確信した。

 

 

 界橋に袁紹軍と対陣した公孫賛は騎兵を囮にし、挑発を繰り返す。

 

 左右に足の速い騎兵を置き、右翼を関羽、左翼を張飛が率いている。挑発にのって突撃してくれば、足の速い騎兵で囲む作戦だ。

 

 堪え性のない袁紹なら乗ってくるだろうと、少数の騎兵でかき回す。

 

 そうしていると袁紹軍に動きがある。いつも通りの数を頼りにした突撃戦術。しかも三千ほどの部隊が先走って、突出してしまっていた。文醜の部隊である。

 

 よく先行してしまい、部隊を孤立させてしまう悪癖のある武将だ。

 

「よし! 飛び出てきた。趙雲をあの部隊に突撃させ、関羽と張飛に支援をさせろ!」

 

 趙雲は突騎を進め、関羽と張飛は左右から攻める。敵軍で顔良と共に二枚看板である文醜を討ち取れば、敵の士気は落ち、その後、包囲殲滅に持ち込める。

 

 突出してきた文醜の部隊を関羽と張飛、趙雲の三人が囲む。退路は無い。

 

「勝った!」

 

 公孫賛は勝利を確信した。その瞬間だった。

 

「……はっ?」

 

 前方で趙雲が率いていた白馬義従の部隊が壊滅していた。騎馬部隊の天敵である強弩兵による一斉斉射によって。

 

「弩兵? なんでそんな奴等が……あの部隊は矛兵だろ?」

 

 公孫賛は困惑する。文醜と言えば、近接武器による突撃の突破力が売りの部隊である。そして、それは今も変わらないはずだった。

 

 しかし、それは囮だった。文醜の部隊の裏に隠れるように弩兵を隠し、騎馬の突撃を確認するとともに斉射の準備を整え、突撃をしようとした趙雲の部隊を狙い撃った。

 

 文醜という突撃が売りの将軍の声望と先行しすぎてしまう悪癖があるという欠点を利用して、弩兵主体の部隊だと悟らせないようにしたのだ。

 

 客将であった趙雲の部隊の壊滅に混乱した公孫賛軍は士気が一気に壊滅状態にまで陥り、攻めくる袁紹軍にまともな対応も出来なくなり、敗走した。

 

 たしかに、曹操はおらず、名の通った将は顔良と文醜程度だった袁紹軍だったが、そこにはいつもは居ないはずの人物がいた事を公孫賛は知らなかった。

 

 袁紹軍には猫耳フードをかぶった軍師の姿があったと聞いたのは敗走した後の事だった。

 

 その後、続々と悲報が入る。董卓軍は朱儁を討ち取ったものの、劉焉によるクーデター計画が起きた事によって撤退。一世一代の機会を失った。さらに、黒山賊は曹操に討伐され、袁紹の後方を脅かす事が出来なくなり、於夫羅と張楊も討たれた。

 

「どうすればいいんだ……」

 

 逆侵攻をしてきた袁紹軍を撃退した公孫賛だったが、先行きは全く見えず、城の強化を命じる事しか出来なかった。

 




次からやっと群雄割拠編です。今回で逆転の目が詰んだ董卓軍。河北で伸長する袁紹に対抗する術を失った公孫賛。徐々に台頭する曹操。二大勢力から転落しつつある袁術。
そして天下に一番近い勢力の袁紹。色々と情勢が動いていきます。
黄巾がないと武将キャラの活躍が地味なのはどうにかしたいです。

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