幼女を愛でつつ敵をくっころし天下を統一するだけの話   作:ちびっこロリ将軍

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最近、キャラの口調が分からなくなってきてしまった。趙雲を書こうとするとロジカル語法になってしまうくらい末期です。あと、今日は2話更新でこれが1話目です。



21話 不屈の女

 兗州東郡東部に位置する甄城

 

 本来の州都から東に離れた地にて部屋の上を見上げている女性が居た。名を曹操といい、袁紹によって東郡太守に命じられ、黒山賊の討伐と青州黄巾征伐によって兗州最大勢力に上り詰めていた。

 

「ようやくここまで来たわね」

 

 ここまでの苦難の道のりを思い出すと感慨深さも感じる。それほどまでに曹操は追い詰められていた。

 

 反董卓連合にて、呂布・張遼の両者率いる軍との遭遇戦にて敗れた曹操は、本拠地を失い、兵を失い、ただの無官にまで落ちぶれ、連合後の群雄割拠の時代をただ見ている事しか出来なくなった。黄巾の乱から乱世の到来を予測し、動いてきた。それが全て失われたのだ。

 

 曹操は袁紹へ頭を下げ、官位を貰う立場に甘んじるしかなかった。

 

 袁紹は皇帝の影響力が関東に届かないと見ると、自らが皇帝のように振る舞うようになり、官位や爵位をばら撒いていた。名目上は皇帝から代理で受け取った勅旨に則って、官位を渡しているだけというものだが誰も信じていない。だが、袁紹の配下ではなく、漢王朝の臣下であるいう名目の欲しい者は、その嘘を追及しないでありがたく受け取り、土地の支配を強めていた。

 

 もし、都合が悪くなれば、袁紹が虚言にて自分を騙したと逃げるつもりの者達だが、袁紹の力が強い時は爵位や官位を与えてくれた袁紹の意向には逆らえなくなる。こうして弱い支配だが、袁紹は次々と勢力を拡大していく。

 

 そんな中、曹操が目を付けていたのは東郡。東郡は兗州刺史の劉岱が、反董卓連合の折、東郡太守の橋瑁を殺害し、自分の勢力圏に組み込んだものの、東郡へ侵入してきた青州黄巾に敗れ戦死し、その配下であった王肱が割拠していたが、乱入してきた黒山賊に敗れ空白となっている地域であった。

 

 兗州刺史劉岱の死によって支配の安定しない兗州を自らの手中に収め、ゆくゆくは華中を統一し、華北を制するであろう袁紹と戦い、己の覇業を成す為に。

 

 袁紹の軍師たちもその野心を見抜いている。ゆえに袁術にぶつける事で互いに削り合わせ、華北を制した後においしい所だけを奪おうとしていた。袁紹軍にとって曹操は袁術への肉壁役でしかない。

 

 そして、曹操も袁術を早期に倒さなければその策は現実のものになるだろうとも予測していた。袁紹は馬鹿だが、多くの名士が集まっている。曹操が袁紹を傀儡とする事を許すほど甘くは無い。

 

(地方の一太守にすぎない私が、華北を袁紹が制する前に華中をまとめ上げ、華南勢力を無力化させる……無理だと思っているのでしょうけれど甘いわ)

 

 だが、それは曹操でなければの話。

 

 野に解き放たれた曹操は、兗州に侵攻していた黒山賊を瞬く間に鎮定し、三十万もの青州黄巾を屈服させる事に成功し、東郡に加え、陳留、斉北、斉陰にまで影響力を広げつつあった。

 

▽▲▽▲

 

 袁術軍の兗州侵攻の報を聞き、曹操は早急に軍議を開いた。

 

 傍には己の側近であり、親族衆でもある夏候惇と夏侯淵。そして、軍師の荀彧に加え、新たに程昱と郭嘉が参加していた。

 

 程昱と郭嘉は、先の黒山征伐で参謀としての任に就いていたが、他を隔絶するほどの功を挙げ、一参謀から軍師へ引き上げられていた。曹操は新しく見出した軍師の力量を対袁術との戦いをもって計ろうとしていた。

 

「来たるべき戦が来たわ。この戦いをもって我らは地に伏した龍から脱し、天昇る龍となるでしょう。ここから先は愚昧な賊との戦いではなく、真の敵が現れる。その時の為、新たな軍師を取り立てたわけだけれど……」

 

 曹操は二人を探るような目で見つめる。

 

 気負いすぎるわけでもなく、落ちついている。感情を底に隠し、曹操からの問いに備えていた。

 

(悪くないわね)

 

 曹操は二人への評価を上げる。

 

「現在、袁術軍は兗州西部の陳留郡へ向けて、軍を二つに分けて進軍している。主将は張勲で別働部隊は孫策でしょう。孫策が陳留郡東部への行路を進んでいるわけだれけど、程昱はこの狙いが分かるかしら?」

 

「張勲さんの狙いですが、孫策さんを攻撃する我らを挟撃する為の布石でしょうね~。陳留郡は甄城の南西に位置する場所にあります。その間に孫策さんを配置すれば陳留攻略の間の壁役にするとこちらが読む。実際は陳留の攻略は片手間に、こちらの軍が孫策軍とぶつかる事を確認した後攻撃を加えたいというのがあちらの策でしょう」

 

「敵が挟撃をするという根拠は?」

 

「南方の劉表さんの存在によってそれ以外の方法がないからですね~。穀倉地帯である華南の心臓部を抑えられてしまっていては、いかに南陽盆地を保持している袁術軍でも物資が足りません。早期の決着をして、劉表征伐に向かいたいというのがあちらとしての本音でしょう。長々と対陣を続ければ私達と共倒れになってしまいます。それを良しとするほど張勲さんは愚昧ではないでしょう。故に早期決着を図るはず。謀略によって背後を付く等の嫌がらせもしてくるでしょうけど、基本的には孫策軍を囮にし、本軍が回り込み、軍事力の無力化を狙う方向で動くと思います」

 

「なるほどね」

 

 相手視点から物事を考えられており、戦術級にとどまらず、戦略面の考え方が出来ている。曹操は夏候惇や夏侯淵率いる方面軍の指揮を任せられると発言から察した。

 

 兗州は多くの州と隣接する地域故、軍を最低でも三つ以上に分けなければならないだろうと見越していた曹操にとって、戦略眼のある軍師は天恵に等しい。

 

「なので、下策として、陳留の城に入り防衛戦を行う事。中策として袁術軍が回り込む前に敵を倒す事。上策として劉表軍との同盟を結びこちらが挟撃する事を提案します」

 

「同盟?」

 

「はい。陳留の城に入れば防衛戦となり、こちらの弱点である兵糧問題が噴出します。青州兵の加入によって国力に見合わぬ兵力を持っている今、領地の拡大は急務です。のんびりと構えていると自壊してしまいます。袁術軍が回り込む前に敵を倒すというのも難しいですね~。孫策さんは歴戦の武将で、防衛に回られた際に少ない時間で勝てるかどうかは分かりません。故に、劉表さんと南陽を分け合うと約束して、挟撃をかければ宛が手に入ります。宛を奪えば、南部からの攻撃の備えとして十分かと」

 

 程昱の策は、華中に覇を唱える為に邪魔になる劉表に対しては宛城の防御力を頼りにして対処してしまおうというものだった。豊かな南陽は惜しいが、それ以上に目の前の敵を重視した策である。

 

 まさしく正統派の軍師の意見であった。曹操は程昱の力量のほどは十分だと思い、もう一人の軍師に視線を向ける。

 

「貴方の意見は分ったわ。では郭嘉。貴方の意見を聞かせてちょうだい」

 

「はっ! 私としましては、孫策軍を倒した後、袁術を討つ事を提案いたします」

 

 その策は曹操を驚愕させるものだった。

 

▽▲▽▲

 

 孫策が布陣してから一ヶ月が経とうとしていた。

 

 孫策は劉表軍に負けた教訓からか諜報方面に重きを置くようになる。いかに精強な兵であっても混乱した所を一方的に攻められれば、練度を発揮する間もなく敗れる事を認識した為だ。

 

 孫策が率いている兵数の内半分を各地の徴収に向かわせている。これは情報を取る上でも分散させていた方が広域の情報を取れ、食料も同じ地域から多く取れば反乱が起こる事を考え、少ない量を多くの地域から取ることで補おうとしていたからだ。

 

 周瑜不在が響く。

 

 各地に割拠している弱小勢力との交渉を任せていた周瑜の不在は後方の仕事の質を大幅に落としていた。能力で周瑜に次ぐ者は居ても、周家という看板を持っていない。名声と家柄、能力を兼ね備えた周瑜の不在は孫策にとって苦手な分野を浮き彫りにしていた。

 

 軍事力を盾に脅して物資を供給させる力技でなんとかしていても、反発する者も多く出てくる。妹の孫権を中心に纏めているが周瑜には遠く及ばない。

 

(物資の徴収が予定よりも遅れているわね。張勲からもらった地図だけど、度々、不備があるし)

 

 詳細な地図は漢王朝の機密である。それを奪ってきた張勲だったが、最新のものはさすがに手に入れられなかった。三十年前のものを流用したものゆえに使えない道も少なくない上、黄巾の乱で打ち捨てられた郷も少なくなかった。

 

(それでも、二ヶ月には間に合う。母様だって反乱軍を使えるようにするのに二ヶ月以上かかった。曹操が同等の能力を持っていたとしても……)

 

 ひと月でここまで進軍できるわけがない。そう、心の中で言いかけた瞬間だった。

 

「曹操軍が北方約十二里先にて出現しました。兵数は約四万。」

 

 曹操軍が陳留郡の郡境を越え、目の前に迫っていた。

 

「なんですって!?」

 

 孫策は驚愕の表情を隠せなかった。

 

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