シン・インフィニットストラトス/GrAE   作:天津毬

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何ヶ月も遅れて申し訳ございません。
今回から数回に分けてゴーレム戦をやりたいと思います。






EP-08 学園襲撃

IS学園地下格納庫

 

轟音。

震動。

そして––––––けたたましく響く警報。

 

「ぐっ…な、何…?」

 

思わず箒は呟く。

地震––––––ではない。

今のは爆風や衝撃波で揺らされた時と同じ、瞬間的かつ一過性の震動だからだ。

 

「ふむ––––––天才(アイツ)の言う通り、妨害が入ったか…」

 

煙草にライターで火を付けながら、橙子は一人、他人事のように呟く。

直後––––––橙子の携帯端末が鳴る。

電話相手は千冬。

それをツーコールで通話ボタンと、スピーカーフォンのボタンを押して通信に出る。

––––––状況を把握するには千尋や箒にも情報を並列化する必要がある。

しかし並列化するのが通話終了後では無駄な手間になり過ぎる。

故に、通話しながら行う必要がある––––––そのためにスピーカーフォンのボタンを押したのだ。

 

「もしもし?」

 

『橙子か、今どこにいる⁈』

 

携帯のスピーカーから若干焦り気味な千冬の声が聞こえて来る。

 

「第2地下格納庫だ。––––––その様子だと、襲撃でも受けたようだな?」

 

そんな千冬とは対象的な、愉快そうな––––––まるで悩み事を投げかけて来た友人を揶揄うかのような声で橙子は応じる。

 

『…ああ。第2アリーナと中庭に所属不明のISが侵入して来た。』

 

「第2アリーナ⁉︎」

 

––––––思わず箒が声を上げてしまう。

そこは現在、クラス対抗戦が繰り広げられている場所だからだ。

 

「––––––で?」

 

しかし橙子は冷めた声音で促す言葉を口にする。

 

「侵入者がいるなら生徒を退かせ、教師部隊を使って取り抑えれば良いだろう。」

 

確かに橙子の言うとおりだ。

元々教師部隊とはその為の組織であり、このような非常時に対応するマニュアルもある。

だが––––––マニュアル通りに事態が運ぶことは極めて稀だ。

それを裏付けるように、

 

『…それが無理なんだ。アリーナの各システムはハッキングされ、我々の制御を離れている。おまけに生徒の避難すらできん。おそらくは侵入してきたISの仕業だろうが––––––』

 

千冬が告げる。

––––––だが直後、橙子は呆れ返るを通り越した顔をして、

 

「––––––はァ⁈」

 

残念な美人、と評するに相応しい声音を放つ。

––––––そして頭痛を堪えるようにして頭に手を当てながら、珍しく困惑しながら問いかける。

 

「いや…まさかお前…この学園…無線ネットワークによる管理体制だったのか?」

 

『えっ?あ、ああ。そうだが––––––』

 

ちなみにIS学園のアリーナはイベント時に学園外に試合の推移や結果などの情報を広告すべく、オンライン環境にアクセスすることが多々ある。

情報の伝達先はツイ●ターやL●NE、フェ●スブックなどの大手SNSも含まれており、そこから察するに多方面に電波を発していることになる。

––––––その上で、学園のセキュリティは全て無線ネットワーク管理体制と来た。

無線ということは情報のやり取りを行う為に電波を送信するモノである。

電波を送信するということは情報の通り道がある。

そこに目を付けられ、発信された情報にウイルスを紛れ込ませ、ファイアウォールを突破されれば––––––アリーナのみならず学園の機能を乗っ取れるだろう。

––––––特に、イベント情報広告のために四方八方に電波を飛ばしまくっている今なら尚更だ。

…無茶でSFめいた話に聴こえるかもしれないが、我々が日常的に使用している携帯やパソコンのWifiの無線交信型に対してもハッキングおよびクラッキングが可能な違法ツールが実際に存在するのだ。

なら、別にそんな大掛かりなハッキングを可能とするツールもしくはコンピュータウイルスがあってもおかしくはない。

––––––故に政府機関は外部からのハッキング防止のためにハッキング困難な有線形式もしくはWifiそのものを導入しないといった対策を取るのがセオリーだ。

もっとも、それで外部からのハッキングは防げてもそれらは内部からのハッキング––––––ウイルスを仕込んだUSBメモリを内部端末に繋がれてしまっては意味を成さない。

実際にその手口でイランの原子力核施設は制御不能に陥れられ、あわや核爆発寸前にまで至った過去がある。

だがどうしたものか––––––仮にも国公立…つまり日本国政府のものであり、国連の管理下にあるとはいえ政府機関並みに重要な設備であるIS学園では前述の外部からのハッキングを防ぐセオリーすら実施されていなかったという。

…うーん、この…抜けているというか慢心というか…とにかくガバガバセキュリティ…。

––––––橙子は溜息を吐くと、

 

「…お前の御上はネットワークの危険性を高校…いや中学からやり直させるべきではないか?情報学くらい、今なら中学生でも習うぞ。」

 

思わず苛立ちを込めた愚痴を呟いてしまう。

––––––普段趣味に走りがちな橙子でさえ、自分を危険に晒すような真似はしない。

それは他人との関係と印象に不信を刻み、未来永劫、犯罪歴のように残り続けるものなのだから。

だから––––––情報統制でどうにかするのだろうが––––––自分から不信をバラまく学園上層部は本気でバカだとしか橙子には思えなかった。

 

「––––––まぁいい。愚痴を言っても仕方ないからな…––––––ところでシールドバリアのセキュリティは?」

 

『それまでネットワーク管理はされていない。シールドバリアは人命に関わるが故に、有線型であり、専用非常発電機を有する、アリーナの中では独立した存在だ。』

 

「––––––他も人命に関わるだろう…‼︎」

 

思わず箒がポツリと呟く。

––––––そこには僅かな嫌悪感を孕ませて。

そんな箒を一瞬橙子は一瞥する。

だがすぐに通話に戻ると、酷く楽しそうな笑みを浮かべて、

 

「なるほど、いざ学園が停電してもシールドバリアだけは稼働し続けられるワケだ。」

 

加虐的な声音を口にする。

 

『あ、ああ…0.7秒程シールドバリアが無力化されるがすぐに非常電源に切り替わりシールドバリアが再展開されるが…何をする気だ?』

 

千冬は思わず困惑した声音を放つ。

 

「…橙子?」

 

思わず千尋も橙子に顔を向ける。

––––––だがその表情は、相変わらず何処と無く笑っているように見える。

 

「そりゃお前、電源設備を破壊するに決まってるだろう。」

 

あっけらかんと、しかしてとんでもない言葉を放つ。

 

『な––––––⁈何を言って…⁉︎』

 

思わず、千冬は裏返った声音で半ば絶叫に近い驚愕。

その他の面子––––––神楽や箒は橙子の正気を疑うような顔を浮かべる。

––––––だが箒は一瞬後、その合理性を理解して、

 

「織斑先生、確かに彼女の言い分は一理あるかと存じます。」

 

口を、開く。

––––––それに続いて、

 

「外部から電気を得ているなら、源を絶ってしまえば機械は止まるしね––––––生き物が食物や水を摂らずに過ごせば餓死するように。」

 

千尋が、後を紡ぐ。

 

『篠ノ之に黒坂⁈…そうかこれはスピーカーフォンか…‼︎』

 

「そんな事はどうでもいい。それで、お前は電源を叩くことを躊躇っているが、他に策はあるのか?」

 

話をややこしくするな、本題に集中していろ––––––とでも言いたいように、動揺する千冬を、橙子は冷ややかな声で言い伏せる。

 

『––––––現在、上級生と一部教師がクラッキングを仕掛けているが…』

 

「––––––解決には程遠い?」

 

『………アリーナ内に閉じ込められた生徒を救出するために尽力してはいるが––––––』

 

「私が聴きたいのは解決出来るか否かだ。で?どうなんだ。」

 

––––––返事はイエスかノーで。有無を言わせない声で橙子は告げる。

 

『…正直言って、無理だ……』

 

「そうか––––––なら、どうするべきか分かるな?」

 

千冬としては生徒が役立たずという烙印を押されることが、教師として許せなかった、だから抵抗したのだろう。

だがそんな事––––––赤の他人に対する同情など、こちらの人格の橙子にとってすれば別段どうでもいい話だし、何より事態がそれを許さない。

千冬は昔からひとつのことに拘り過ぎるが故に折れさせるにはこうした現実を突き付けるのが一番だ。

 

『––––––解った。橙子、そして篠ノ之、黒坂に電源設備の破壊を命ずる。

国の持ち物であるからと遠慮はするな––––––責任は、私が取る。』

 

「「了解」」

 

何処か思うことがあるのか、若干の曇りを纏った声音の箒と、いつもと変わらない何処と無く笑っているような顔のまま、遠足に行く前の子供のような声音を放つ千尋の応答が重なる。

その隣で橙子は、最初からこうしてくれたら良かったんだがな––––––と思う。

––––––だが折れた後の千冬の行動と決断の速さは評価すべき要素だろう。

本当はどうするべきか理解している辺り、彼女はマトモな人間なのだから。

––––––同時にふと、橙子はある事を思い出す。

 

「千冬、そういえば中庭のISは––––––」

 

橙子が言いかけた直後––––––

 

「––––––来るよ。」

 

本能で察した千尋が告げる––––––それと同時に、直上から轟音が響く––––––爆発。

 

「な––––––っ⁈」

 

思わず声を上げて、箒は見上げる。

––––––そこには天井を叩き割り、鉄筋コンクリートの瓦礫と共に堕ちて来るISが視界に映り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––––––––––––––––––––暗転。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◾️◾️◾️◾️◾️◾️

 

 

南太平洋・カロリン諸島北20キロの海域

 

––––––広い。

雲ひとつない空。

荒波ひとつない海。

それらを染める、澄んだ青。

空と海が融け合っているように見えて、果てなく分け隔たれた水平線。

” 天才 ” 、篠ノ之束は甲板上に立ちながら、それを観ていた。

 

「…綺麗……これで豪華なお船だったら、極上なんだけどなぁ…」

 

なんてぼやきながら、後ろを向く。

––––––視界に入ってくるのは、無骨な灰色一色の艦橋構造物(アイランド)と、3つの…束の立っている場所も合わせれば4つもの全通甲板。

そしてそこにこれでもかと言わんばかりに並べられているF-35ライトニングⅡ戦闘機やF/A-27C戦闘機にMF-6ハウンドEOSなどの艦載機群。

––––––アメリカ海軍第7艦隊アレクサンドリア級三胴航空母艦【アレクサンドリア】。

それが束の乗艦している艦(フネ)だった。

 

「…ああ、でもこれはこれで豪華かもね。」

 

束は微笑みながら言う。

それもそのはずだ。

アレクサンドリア級は艦橋構造物の置かれた艦体を、流用したジェラル・フォード級空母2隻の艦体で挟む形の三胴構造航空母艦であり、艦載機数はニミッツ級空母の3倍…と、現在のところ世界最大の航空母艦であった。

アレクサンドリアはその、【アレクサンドリア級】1番艦であり自衛隊を介してアンノ技研に何度も協力してくれた艦でもある。

今回は海上自衛隊のいずも型護衛艦『いずも』との艦載機共同訓練をしている中に束は ” 邪魔しないように誠意を払って ” 乗艦させて貰ったのだ。

––––––もっとも、最初から部外者の束を突っ撥ねる気など、アレクサンドリアのクルーにはサラサラ無い。

というか、護衛艦いずもとの艦載機共同訓練と同じくらい重要な事なのだから。

 

「––––––Ms.シノノノ。」

 

ふと、アレクサンドリアのクルーである男性が声をかけて来る。

顔色は不快感を隠した笑顔––––––などではなく、真性の笑みを浮かべていた。

 

「アンノ技研からのギフト––––––対IS無人機と対絶対防御弾道、しかと受領しました。いやぁ…毎度毎度すみません。」

 

「いえいえ、あなた方は私達のお得意様ですし––––––何より、世界の秩序を維持する【正義の味方】ですから。」

 

束も真性の笑みを浮かべながら、応える。

嫌味などではなく、本気でそう言っているのだ。

何せアメリカはIS台頭後、ミリタリーバランス崩壊による世界中の混乱を鎮圧した、世界の警察という名の秩序維持者––––––すなわち【正義の味方で】あり、世界を破綻させかねない要因を殲滅する【抑止力】なのだから。

 

「いやぁ、そんな…買い被りですよ。自分らは職業軍人ですから。命令に従っているだけです。」

 

「あら、それは失礼致しました。」

 

両者は真性の笑みで会話を交える。

––––––何故、束が彼らと関わるかと言えば、世界に対する抑止力を強化する事が目的だからだ。

いや、もっと言えば『 ” 天災 ” に対する』というべきだろうか。

宇宙開発を目的にISを開発したのだが、この10年間を見て、束はこう結論づけたのだ。

––––––人が宇宙に上がるには、まだ早過ぎる。

ただでさえ天災が弄った所為でISは女性しか乗れなくなり、女尊男卑が蔓延る事態となり、さらに未だに資本主義勢力と社会主義勢力が対立する米ソ冷戦構造の延長線上にいるというこの世界情勢では、宇宙開発に至れても、どうせ宇宙で資源を巡って戦争をするはめになる。

…それは束の望んだビジョンである、『夢のフロンティア』––––––とはかけ離れた、『果てのない地獄』になってしまう事を意味していた。

ISコアを再調整して女性にしか乗れない欠陥を修正することは出来なくもないが、今の自分は、ISコアにアクセスする権限を持たない為に、修正することは出来ない。

––––––故に、束は方針を変えた。

宇宙開発の為に人類を宇宙に上げるのではなく、まずは人類代表国家のもとに世界の統一を目指すことにした。

その過程として、まずは女尊男卑や社会主義勢力に対する強大な抑止力が必要だった。

それらはいずれは衰退し、崩壊するものではあるが、この先10年は健在だろう。

別にそれくらい待っても良かったのだが––––––そうさせてくれなかったのが、【天災・篠ノ之束】である。

彼女は何のためかは分からないが、女尊男卑主義者に対して資金や技術提供をして、この世界を維持しようとしているのだ。

しかしそれは、先程言っていた正義の味方たるアメリカ軍のような物とは違う。

––––––アメリカ軍と天災束。

確かに両者共に世界を維持しようとしている点は共通している。

しかし、維持しようとする要素は全く違っていた。

アメリカ軍は世界平和という秩序を。

束は女尊男卑という混沌を。

その時点で、もう無視できない障害となった。

分かり合えば––––––と言われそうだが、そもそもそれも無理だ。

束は宇宙進出を果たす為に世界を変えようとしているが、天災束は今現在の歪な世界の維持を望んでいる。

ISの存在意義が歪曲され、混沌とした世界の存続を望んでいる。

それは、これ以上世界を堕落させかねない。

故に、束には抑止力が必要だった。

そのために今行っているような、信頼できる国家や組織へのアンノ技研を介した技術提供を行い、抑止力となりうる因子を生み出し、強化していくという地道な作業––––––それをこなしていた。

その一端としての、空母アレクサンドリアへの兵器提供……いや、そもそもその表現自体正しくない。

そもそもこの空母アレクサンドリアを含むエイブラハム・リンカーン級空母は現在協力してくれている蒼崎橙子と数名が設計し、アメリカ海軍に譲渡したモノだ。

故に、 ” アレクサンドリア級と新型兵器を丸ごと ” 提供している––––––とした方が正しい。

 

 

抑止力は現時点で7つ。

空母アレクサンドリア。

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––––––天災の暴走を止める為、そして出来る限り宇宙開発に集中することで人類の統一を願った束の切り札の ” 一部 ” であり––––––天災の腹わたを喰い千切る劔。

それをばら撒くことで、天災を動かす––––––本当ならもっと後になると思われていたが、よもやこんな簡単に事が運ぼうとは。

 

(これは他人を信じることを疑わず、自分の願いが必ず叶うと自惚れていた私が引き起こしてしまった罪科に対する償い––––––ううん、言葉を飾り過ぎたね…)

 

束は内心呟く。

––––––一拍開けて。

 

「これは、私が振り撒いた災厄の火消しを行なっているだけだよね…。」

 

––––––少し寂しそうに、そう呟いた。

 

 

 

 




更新が何ヶ月も遅れて申し訳ございません。
今回はここまでです。

神楽「私…今回空気じゃない?」

君はゴジラISでセリフあるでしょ。

神楽「いやそれ並行世界のわたs…」

次回は対ゴーレム戦を一夏&凛、千尋&箒目線で書きたいと思います。
…え?電源設備?
御安心を、ちゃんと書きます。
次回も不定期ですがよろしくお願い致します。

神楽「聴きなさぁぁぁいッ‼︎」


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