シン・インフィニットストラトス/GrAE   作:天津毬

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今回はまぁ…そんな進展はないです。
すみません。





EP-03 関係

IS学園・2027号室

 

イギリス代表候補生であるセシリア・オルコットの個室であるそこには、セシリア以外に織斑一夏がいた。

セシリアは全裸でベッドに寝転がり、周りには魚臭い匂いを放つ白濁液が入ったゴムがいくつも転がっている。

今はいわゆる、 ” 事後 ” という状況にあった。

ふと、気怠さの余韻に浸っていたセシリアが同じく全裸でベッドに座っていた織斑がベッドから立ち上がって服を着始めたのを見て、覚めた気持ちになりながら、聴く。

 

「…もう、戻られますの?」

 

「……。」

 

織斑は沈黙。

すなわち、それは肯定。

 

「––––––教官室?…織斑先生のところでしょう?」

 

「ああ。」

 

やはり、正解。

それを聴いたセシリアの気持ちは、さらに冷めたモノになって行く。

 

「じゃあ俺行くから、事後処理頼むな。」

 

そう言い残して、織斑は部屋から出て行く。

 

「––––––勝手ですわね。少しだけ、この気怠さの余韻に浸からせてくれてもいいのに……。」

 

だがその考えを、すぐに斬り捨てる。

 

「いえ、私のことなんて考えてくれていないのでしょうね………どうして、あんな人に惹かれたのでしょう…。」

 

幼い頃に両親を亡くし、オルコット家の将来という鎖に縛られて日々徒労に追われて、大人の汚い世界を見せられて精神が蝕まれていく世界に幽閉されてしまったセシリアからすれば、クラス代表決定戦の時の織斑は、昔に読んでいた童話に出てくるような白馬の王子様に見えて、眩しくて––––––。

それでセシリアは一目惚れした。

最初こそ、楽しかった。

––––––だが、現実はこうだ。

結局、セシリアがいくら織斑を想っても、織斑はセシリアを真剣には見てなんてくれない。

見てくれるとすれば、肉体関係の面だけ。

ただ気持ちいい事をしたいだけ。

だからセシリアの気持ちは日に日に覚めて行った––––––。

––––––ふと、セシリアの脳裏にある想いが浮かぶ。

 

「––––––私が貴方だけのモノじゃなくなったら…いったいどんな顔をしてくれるのでしょうね……?」

 

––––––悪女のような、それでいて見下すような目をして、口角を吊り上げながら呟いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

IS学園・廊下

 

一夏が歩いていると、ふと携帯が鳴る。

電話を掛けてきた主は、篠ノ之束。

 

「もしもし束さん?」

 

『やぁやぁいっくん!そっちはどう?ハーレムは上手くいってる?束さんは赤道のアストルジオ環礁のラボにいるよ‼︎』

 

通信方法は映像通信。

携帯の向こうからは陽気で無邪気な声にピンクの髪と不思議の国のアリスを連想するワンピースにウサギのカチューシャをした女性––––––【天災】篠ノ之束と青い海にヤシの木が映っていた。

 

「うん、まぁボチボチに。」

 

『それは良かった––––––ところで頼み事なんだけど。』

 

束さんから頼み事とは珍しい––––––ふと、一夏は思った。

 

『箒ちゃんが今日来ただろう何処の馬の骨とも分からないゴミ男とつるんでるみたいだから、そのゴミ男をどうにかして欲しいんだ。何とかしてくれたら箒ちゃんとラブラブなモノをプレゼントするから‼︎』

 

「分かった。」

 

それを聴いた一夏は即答。

 

『じゃあ、期待してるね‼︎』

 

そう言うと束は電話を切る。

 

「それにしても黒坂のことをゴミ男っていうのは酷いよなぁ…。」

 

一夏は苦笑いを浮かべて呟く。

 

(…それにしても、なんとかったって…どうしようか……?)

 

 

 

 

 

■■■■■■

 

同・2016室

 

そこが千尋と箒の暮らす事になる部屋だった。

ツインベッド、IHクッキングヒーターと水道完備の流し台、冷蔵庫、シャワーと浴槽を備えた風呂場、水洗便所、それらが整っている。しかもそれらの大半が最上級の品質のモノ。

下手な高級ホテルと良い勝負かも知れない。

だが考えてほしい。

千尋と箒は互いに異性である。

そして、教育機関の寮施設に入って住むというのに、異性同士で同室に––––––しかも思春期の男女を住まわすなど、普通に考えてあり得るだろうか?

 

「……ねぇ箒。」

 

「なんだ?」

 

「なんで俺らは同じ部屋なんだろ?」

 

千尋は思わず、その事について口にする。

口調は相変わらず、楽しんでいる様な、傍観しているような––––––そんな口調。

 

「…さぁ……?男子の部屋を確保する余裕が無かったとかじゃないのか…?」

 

箒は少し恥ずかしさがあるのか、たぢたぢしながら言う。

 

「…ふーん。……国公立のエリート校のクセに?」

 

「そ、それとこれとは関係ないだろう…だいいち、ここは元はと言えば女子校だし。」

 

「ああ、それなら納得。」

 

––––––何てことはない、他愛ない会話を交える。

その間の千尋の顔も、やはり何処と無く笑っているようなモノだった。

箒はふと時計を見る。

時刻は16時25分。

普段はISの訓練の為にアリーナかVR訓練機でのIS操縦の訓練か剣道の修練をしているが、今日は乗り気ではない事に加え、千尋がやって来た事で早めに帰って来ていたのだ。

 

「…食堂が開くのは18時からだから……少し部屋でくつろいでいるか。」

 

「ん。そうしよっか。」

 

千尋はそう呟くとベッドの上に腰を下ろして学校で使う予定のモノと思しき肩掛け鞄からふと、色鮮やかな正方形の紙が何枚も積み重なって袋詰めとなっているモノを取り出す。

表面には––––––『楽しい折り紙』と表記されていた。

 

「お、折り紙?」

 

箒はそれを見て思わず呆気に取られたような顔をして、今時折り紙で遊ぶ男女がいるのかと正直に驚いていた。

 

「昔からよく折ってたんだ。」

 

千尋はその中から何枚かを取り出してそれを折り始める。

慣れた、繊細で緻密な指の動きをしてみせる。

––––––この時の顔は先程とは違い本当に楽しんでいるようで、それでいて心の底からは笑っていない顔をしている。

普通なら小学生低学年で飽きるだろう折り紙が、千尋にとってすれば、とても楽しいらしい。

 

「なんか最近の…えーと、デジタルゲーム?とかって面倒くさいでしょ?設定したりとか、ルールだって決まってるし。」

 

「あー…確かに……。」

 

「でも、折り紙は確かに紙の大きさとかの決まりがあるけどじっくり時間をかけて自由に作れるでしょ?だから、コッチの方が俺は好きなんだ。」

 

それを聞いて箒は千尋の性格を若干察する。

多分、千尋はルール……いや、枠に囚われるのが嫌なのだ。

自由気ままに生きて、自由気ままに過ごして、自由気ままにしたい事をする––––––そんなタイプの人間なのだ。

––––––良く言えばマイペース。

––––––悪く言えば自己中心的。

そう、箒は理解する。

––––––ふと、そうこうしている内に千尋はひとつ作り上げてしまう。

 

「はい、彼岸花。」

 

千尋が掌の上に乗せて見せたのは、10センチ角の折り紙を用いて鶴の容量で作り上げた幾何学的なカタチの花。×容量→〇要領

それを見て箒はゴクリ、と息を飲む。

作るのに掛かった時間は5分程度。いやそれ未満かも知れない。

––––––どう見ても、上級者クラスの腕前だ。

彼岸花そのものは死や死にまつわるモノを意味することから決して縁起の良いモノではないが、それは桜色の折り紙と薄黄色の折り紙を使ったからか、何処と無く美しく見えた。

 

「…こ、こんなに難しいものを難なく作れるのか……⁈」

 

思わず箒は声に出してしまう。

自分では––––––いや、多分年相応の者でさえ、こんなに難しいものを短時間で折るのは至難の技のハズだった。

 

「…え?6年間折り続けてたら出来るようになるし、普通でしょ?」

 

千尋の『出来て当たり前だろう?』という感じの返答に箒は軽い目眩を覚えさせられる。

正直、千尋はこの手の道に進んだ方が絶対に成功しそうな気がした。

 

「箒は折れる?」

 

ふと、千尋が聴く。

––––––答えは、無理。

こんなにも難しいものを折った事など無く、仮に折れても箒では数十分はかかるだろう。

––––––だが、このまま引き下がるのも少し、躊躇われる。

だから、

 

「あ、ああ!折れるぞ‼︎」

 

そう、豪語してしまった。

 

 

 

 

––––––数分後。

 

「ほ、ホラ––––––鶴‼︎」

 

箒が折り終わり、千尋に差し出したのは、全体的に見ればそれらし––––––くもなく、細かく見れば酷くくしゃくしゃの折り鶴。

箒は、『やり遂げたぞ、どうだ––––––?』といった顔をしている。

だがしかし、千尋はその折り鶴を見て少し引き攣った顔をして––––––

 

「…箒、無理なら無理って言ってくれれば良かったのに。」

 

苦笑いを浮かべながら、言う。

それに箒は顔を赤くして––––––恥ずかしそうに、思わず反抗した。

 

「ゔ…うるさい!わ、私にだって意地というものが有ってだな…!」

 

そんな箒をキョトン、と見る千尋を見て箒は「ああ、すまん。」と言うと少し申し訳なさそうに返す。

そして何故急に怒鳴ったか、察した千尋は––––––つい、声に出してしまった。

 

「つまりうまく折れなかった事への照れ隠し?」

 

「…⁉︎だからそんなにどストレートに言うな‼︎」

 

箒は増幅された恥ずかしさによってさらに顔を赤くして言う。

––––––図星。

つまりは、そういう事だった。

(…ああ、自分で墓穴を掘った––––––)

思わず箒は内心呟く。

しかし、そんな箒に千尋は追い打ちを掛けた。

 

「でも、照れ隠ししてる箒も可愛いし、そういう相手を意識しながら自分を強調する人って、俺好きだよ?」

 

「⁈〜〜〜〜〜〜ッ‼︎」

 

––––––不純な意思の無い、純粋に屈託の無い無邪気な笑みを浮かべて、千尋は口にする。

そして追い打ちを掛けられた箒は思わず両手で顔を覆って羞恥心を抑える。多分、覆っている手の中は酷く赤くなっているのだろう。

 

「お、お前っな、そ、それは本気か⁈」

 

顔を覆っていた手を退けて––––––未だに羞恥心で赤く染まっている顔で千尋に問いかける。

––––––今までこんな奴は見た事が無かった。あの一夏でさえ、今の千尋とは違っていた。

––––––素直すぎる。

だから箒は動揺を隠せなかった。

 

「うん本気。物事は素直に言わなきゃ他人に自分の意思は伝わらないじゃん。」

 

––––––やはり無邪気な笑み。

千尋はそれを浮かべながら応える。

確かに、千尋の言い分には一理ある。

––––––自分が一夏に見て貰えなかったのも、自分が素直に己の気持ちを言えなかったからかも知れない。

そんな考えが過る。

だが、今となっては––––––一夏と別れた今となっては、どちらでも良い話だが。

それにしても––––––

 

「だが…あのなぁ…素直なのは良いが素直すぎるのもどうかと思うぞ?」

 

「うん、そうだな。だから俺は『この人なら良いや』って思った人にしか素直に言わないよ。…まぁ、たまに口走っちゃうことあるけど。」

 

それを聞いて箒はふと、その言葉に反応して千尋に問う。

 

「え?…つまり、それは––––––?」

 

「箒には、素直に言っても良いや、って思ってる––––––だって、友達なんでしょ?」

 

それに箒は嬉しいような、動揺するような、複雑な感情が生まれた。

普通……普通の人間なら初対面に限りなく近しい状態で出逢って数時間しか経っていない状況では、馴れ馴れしくしようとは思えど、ここまで心を開いたりしないからだ。

誰もが初めは多少は間を置いて距離を取り、じわじわと時間を掛けて心を開いていく––––––親密な人間関係の構築とは、そういうものだ。

だが、目の前の少年––––––千尋はどうか?

そんな過程をすっ飛ばしてしまっている。

そして素直に物事を言う。

––––––良く言えば、素直で正直。

––––––悪く言えば、他人の事情を考えない。

ここもまた、修正しなくてはならない箇所だ。今後社会に出た時もこのままでは世間知らずも良い所だ。

しかし今の箒は、自分が信頼して貰えている事が、嬉しかった。

 

「…そ、そうか。……こんな私で、良いなら…。」

 

やはり恥ずかしさに顔を赤くして、ゴニョゴニョとはぐらかしながら千尋にそう言う。

 

「箒、ハッキリ言わなきゃ聞こえないけど…。」

 

千尋のその言葉が箒の鼓膜を刺激した瞬間、またさらなる羞恥心が箒の脳を支配した。

それは、箒に対して公開処刑の宣告をしたに相応しい––––––。

 

「ッ⁉︎…あ、あああもう‼︎こちらは恥ずかしいのだ!少しは察しろ‼︎」

 

––––––今日出逢って一番の赤く染まった顔で羞恥心に耐えるように怒鳴った。

 

「あはは、ごめん。からかいすぎた。」

 

千尋は箒に悪戯めいた笑いをしながら返す。

箒は頭痛に悩まされるように頭を押さえて、はぁ…、と溜息を吐く。

そんな箒に、千尋は何処と無く笑っているような顔だが、今度こそ真面目は顔で箒に手を差し出す。

そして箒も意図を察して手を出して、千尋の手を掴む。

 

「じゃあ、これからもよろしく。」

 

「あ、ああ。こちらこそ…。」

 

千尋は相変わらず無邪気に笑みを浮かべて、箒は困った顔だが呆れるように笑いながら、お互いに手を交えた––––––。

 

 

 

 

 

■■■■■■

 

西新宿・アンノ技研所有物件

新宿シティセンタービル

 

東京都庁や西新宿の高層ビル群近くであり、新宿中央公園を見下ろす新宿中央公園西交差点近辺に建てられた高さ218メートルの白を基調とした清潔感溢れる、高層ビル。

その25階。

 

研究開発フロア。

 

薄紅色がかった茶髪の女性が、ぎこちない手つきでISを弄っていた。

弄っていた、というのはタブレット操作ではなくレンチで剥がした装甲の中を機械油にまみれながら作業しているのだ。

––––––チクリ。

ふと、指先に針が刺さったような痛みが走る。

 

「––––––痛。」

 

少し、顔を顰めて女性は立ち上がる。

(––––––まるで、体が麻痺してるみたい…ああ、自分の体じゃないから、当然か。)

女性は内心呟く。

 

「もう作業をしてるのか?」

 

ふと、話しかける声。

振り向くとこの新宿シティセンタービルに伽藍の堂第2事務所を構える蒼崎橙子という女性がいた。

彼女はIS学園に行っていたから、帰ってきたのだろう。

 

「うん。リハビリ。」

 

「あまり無茶をするなよ。…まだ、【殻】の人工神経にお前の【脳】が馴染んでいないだろう?」

 

「…うん、でも、これ以上【天災】に好き勝手させる訳にも行かない。」

 

「––––––全ての元凶となってしまった《天才》として、責任を取るつもりかなんだな。」

 

「うん、そうだよ。とーこちゃん。……それに、」

 

女性の一拍開けて、口を開く。

 

「…これ以上、箒ちゃんに迷惑を掛けたくないから。」

 

女性の子供らしい声音に対して、その言葉を放たせた意思は芯の強いもの––––––それを感じた橙子は呆れるように、応援するように、女性に告げた。

 

「…そうか、目標があるのは良いことだ。…頑張れよ––––––篠ノ之束。」

 

 

 

 

 

 




今回はここまでです。
…しかし……ゴジラISに比べて御都合主義っぽくなってしまってるなぁ……。

千尋「元々これ、マブラヴのエクストラ編に該当する話なんだから、御都合主義っぽくなるのは仕方ないんじゃない?」

うん…まぁ、なぁ……。

千尋「それにみんなリアル路線はゴジラISでお腹いっぱいだと思うよ。シンISまで完全リアルで鬱だったらみんな読む度にストレスを感じるようになっちゃうし。」

そやなぁ…。
じゃあ、ちょっち御都合主義を導入するかぁ…常識込みで。
––––––さて、ついに束が登場。しかし何処か変です。みなさんは違和感を感じられましたか?
あ、【天災】と《天才》、これ、重要な単語です。



■新宿シティセンタービル
アンノ技研が新宿に所有する物件であり橙子の事務所、伽藍の堂第2事務所がある。
外見は新宿オペラシティビルがモチーフ。
なお元ネタはゴジラ2000ミレニアムのミレニアンの円盤が降り立った新宿シティセンタービル。



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