「まさか生身の人間が魔女を倒すなんてね... 聞いたことない話だわ。」
巴マミは黒崎の腕を凝視した。細く見えるが、よく観察すると筋肉が絞りこまれていてたくましい腕をしている。
「お前さっきの化け物の事について何か知っているようだな。全部話してもらおうか。」
「いいわ、教えてあげる。さっきの化け物は魔女と呼ばれている存在よ。理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ 。形のない悪意となって、人間を内側から蝕んでゆくの。そこで気絶しているアナタの知り合いさんも魔女に心を取り込まれていて危険な状態だったのよ。」
どうやら巴マミの話によると花岡が不可解な行動をしていたのは魔女に心を取り込まれていたかららしい。
「アナタ達かなり危ないところだったのよ。魔女の結界に飲み込まれた人間は、普通は生きて帰れないから。」
「何でお前そんなに詳しいんだよ。一体何者なんだ?」
「信じてもらえないかもしれないけど私はキュウベェという生き物と契約した魔法少女で毎日、魔女と闘っているのよ。」
普通の人間なら魔法少女や魔女の話など否定して馬鹿にするだけだろう。しかし黒崎は実際に結界に取り込まれて魔女を目撃してしまったため巴マミのとんでもない話を信じざるを得なかった。
「それじゃあお前は、日曜のアニメのように変身して、さっきの化け物達と闘っているってのかよ!?」
「ええ。毎日が命掛けの闘いよ。」
黒崎は巴マミの体を凝視した。体は華奢で普通の女の子の体だ。一蹴りで吹き飛んでしまいそうな体なのに自分でも苦戦した魔女と毎日闘っているというのだから黒崎は驚きを隠せなかった。
「クク... そうかい、魔女ねえ...ずいぶん面白れェ話を聞いちまったぜ。おい巴マミさんよォ。お前の魔女退治に俺も混ぜてくれよ。」
◆ ◆ ◆
「クッ... 魔女から受けたダメージがまだ残ってやがるな.. 。」
黒崎は自宅のソファーで傷の手当てをしていた。黒崎はマミの魔女退治に参加する事を了承してもらい携帯のアドレスを交換してもらった。魔女退治に参加する理由は単純で、ただ闘いを楽しみたいからという理由である。アドレスを交換してもらった後キュウベェと呼ばれる生き物との契約の事やソウルジェム、グリーフシード等の専門用語までも教えてもらった。
「魔女か...とんでもなく強かったぜ... 最後の攻撃が外れていたら俺は負けていただろう。また魔女と闘う事になっても今のままでは負けちまう可能性が高い。もう一度体を鍛え直す必要があるみたいだな。」
黒崎は手を床について腕立て伏せを始めた。
唐突だが、もし人が今より強くなるにはどうするのがベストか?
打撃・投げ・もしくは間接技などの「技」を身につける事だろうか?
たしかに強くなるかもしれない。
しかし、それよりも簡単かつ確実に誰もが必ず身につけられるモノがある。
それは筋力だ!筋力のつきやすさは個人差こそあるが必ず誰でも手に入れられる。
技を身につければ強力だが瞬時に使えるようになるには相当な修練が必要になるだろう。
しかも状況によっては使えなかったりする事も喧嘩では少なくない。(打撃をするスペースがなかったり、すでに組み合っていたり)
だが筋力は殴り合いだろうが、つかみ合いだろうが必ず効力を発揮する万能な武器なのだ。
「へへ... 待ってろよ魔女共ォ。俺が一匹残らず叩き潰してやるぜ... 。」
黒崎は狭い部屋の中で、ひたすら牙を研ぎすましていく。