ポケモン(仮)   作:ネコ

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第10話

 お月見山には、ピッピがいることを知っている人は多いが、ピッピに遭遇できた人は少ない。

 特にピッピ目的でお月見山へ登った際の遭遇率など0に近いと言ってもいいだろう。

 お月見山でピッピを探して既に3日目。

 ブルーは遭遇できるまで粘る気でいたのだが、流石に数日間風呂に入っていない状況は我慢できなかったようで、一度戻る決心をする。

 

「仕方ないわね……。一度戻りましょ」

「カメー(疲れたー)」

「ピギー(やっと戻るのか)」

 

 ここまでは良かったのだが、この後のブルーの言葉で事態は悪い方向へと転がり始める。

 

「んーと……現在位置を確認してっと……。お月見山にいるのは分かるのに、お月見山の何処にいるか分からないなんて、このマップ機能も役に立たないわね」

 

 まさかと思い、メタモンも図鑑を覗き込むと、そこには───

 

『ネットワークに接続されていません』

 

 その文字を見て、メタモンは視界が暗くなっていくのを感じる。

 しかし、ブルーはその文字の意味が分からなかったのか、気にする素振りもなく、メタモンに指示を出す。

 

「メタちゃん。ハナダシティまでつれていって」

「ピギ!(自分でやれ!)」

 

 メタモンの言いたいことが分かったブルーは、正直なところを話した。

 

「仕方ないじゃない。道がわからないんだもん」

「ピギー(マジか……)」

 

 突然のカミングアウトに、メタモンは無言になった。

 その事に不安を感じたブルーは、心配そうな声を出す。

 

「メタちゃんなら大丈夫だよね?」

「───ピギー!(任せろ!)」

 

 メタモンはブルーを不安にさせないよう返事をすると、サンドに変身した。

 ブルーは、メタモンが何をするのか見ていると、メタモンは壁に向かって穴を掘り始める。

 そして、暫くしてから穴から出てきてブルーへ手招きをした。

 

「穴を掘って外に出る作戦ね!」

「ピギー(その通り!)」

 

 穴の大きさは、ブルーが屈めば何とか通ることができる大きさだった。

 ブルーはリュックから懐中電灯を出すと、メタモンに続いて穴の中へ入っていく。

 穴の中は洞窟の中とは違い、光が全くと言っていいほどなく、頼りになるのはブルーが手に持つ懐中電灯と、メタモンが掘る音だけだ。

 ブルーは心細くなりながらも、メタモンを信じてついていった。

 

 穴を掘って行くことを提案したメタモンだったが、内心で焦っていた。

 「あなをほる」を使用すれば、一発でトンネルから出られると思っていたのに、一発で出るどころかどんどん深みに嵌まっているように感じたからである。

 ただ、山の形状的に、必ず終わりがあるのが救いではあるが、それがいつになるのかがわからなかった。

 

 穴を掘り始めて数時間。

 ブルーの持つ懐中電灯が動かないことに気付いたメタモンは、掘るのを一時中断し、ブルーの様子を見る。

 ここまでよくもったと誉めるべきだろう。ブルーは俯せになった状態で気絶していた。

 途中から四つん這いで来ていたのか、両膝は汚れた上に擦りむいていた。

 メタモンはカメールの入ったボールからカメールを出し、穴でほとんど身動きのとれなくなった頭を叩く。

 

「ピギピギ!(ブルーを助けろよ!)」

「カメー?(呼ばれてないよー?)」

「ピギッピギ!(気を配れってことだ!)」

「カメー……(ごめんなさい……)」

「ピギ、ピギピギ、ピギピギ(取り敢えず、ブルーは俺が運ぶから、お前も今のうちに寝とけ)」

「カメー(はい)」

 

 カメールがボールに戻ったことで、メタモンもブルーを包むように覆い被さる。

 そして、ブルーを操作しながら、先程よりも数段効率を落として掘削の続きを始めた。

 

 更に数時間が過ぎたところで、穴が何処かへ貫通した。

 そこは、これまでに掘った穴の中よりも僅かに明るい。その原因は、夜空の星だった。

 メタモンが、穴から出ていくと、黒い影が一気に動くのが分かる。

 メタモンの神経は研ぎ澄まされ、何時でも戦えるように、それぞれの手を穴の周辺へ向け、もしもの時のために空へ逃げることができるように翼を出す。

 しかし、その行為は無駄に終わった。

 黒い影は襲ってくることはなく、離れたところでメタモンたちを見るだけに留まっていたのである。

 メタモンは夜用の視界に切り替えると、その影たちを見た。

 相手はメタモンたちを見て相当驚いているようで、「ピッピ、ピッピ」と話し合いをしている。

 

「ピギー?(何か用か?)」

「ピッピー?(人?)」

「ピギー(ポケモンだな)」

 

 メタモンの言葉に、ゾロゾロと岩の影からピッピやピクシーたちが出てくる。

 その数は数十匹はおり、登山者のほとんどの人が会えないと言うのが俄には信じがたい光景だった。

 

「ピッピー(羽が生えてる)」

「ピッピー(手の形も変だよ)」

「ピッピー?(何のようだ?)」

 

 ピッピたちは、ポケモンである事が分かったためか、ブルーに取りついたメタモンを囲み始める。

 

「ピギー。ピギー(ただの迷子だ。朝になったら町へ帰る)」

 

 メタモンの言葉に納得したのか、ピッピたちは、円陣を組み星明かりの元で踊り出す。

 メタモンは、地面を整えると、その上にブルーを横たえ、ピッピたちの躍りを観賞する。

 ピッピたちの躍りは、朝方まで続くのだった。

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