ポケモン(仮) 作:ネコ
シオンタウンで過ごすことになったブルーたちだったが、シオンタウンには特に行くべきところはなく、早くも暇を持て余していた。
「メタちゃん。罰として何か面白いことをしなさい」
「ピギッ!?(無茶振り!?)」
「カメー(頑張れー)」
午前中は訓練を行い、昼食を終えたばかりの時に、ブルーはメタモンに指示を出す。
しかし、急な事に対応できるはずもなく、メタモンは身体を震わせて無理であることをアピールした。
「暇ね……」
特に期待もしていなかったのだろう、ブルーは空を見上げて盛大に溜め息を吐いた。
メタモンは、カメールの頭を叩いてから、ブルーをつつく。
「カメー(痛い……)」
「どうしたの?」
ブルーはメタモンを見て、メタモンの指す方向へ顔を向ける。
そこには、ポケモンたちの墓が納められているポケモンタワーが聳え立っていた。
「あれはポケモンタワーって言って、ポケモンたちが寝ているところよ。───だからってポケモンが見れるわけでもないし、行く必要は感じないわね」
メタモンがブルーの服の裾を引っ張り、行きたそうにしているのを見て、ブルーは説明してあげるが、メタモンが諦める気配はない。
しかし、特にしなければならないようなこともなく、一度中を見てみるのもいいかと考え直した。
「折角来たんだし、見るだけ見てみましょうか」
「ピギー(賛成)」
「カメー(怖いとこ嫌だなー)」
カメールはモンスターボールの中に入り、メタモンはブルーに取り付く。ブルーはそれを確認して、ポケモンタワーに向かった。
ポケモンタワーの1階には、受付と2階へ登る階段、それに供養のために訪れた人が座るための椅子が設置してある。
ブルーは中を見渡すと、階段に歩を進めた。
2階からは墓が所狭しと鎮座しており、その合間を抜けていく。
特に見所はなく、墓にポケモンの名前が彫ってあるくらいだ。
幾つかの墓の前では、お供えものをして黙祷を捧げる人が数人いる。
中にはポケモントレーナーもいたが、流石に墓前でバトルを仕掛けてくる者はいなかった。
そうして辿り着いた最上階。
窓からは外の景色が堪能できるが、山に囲まれているため、海などは見えない。
「やっぱり何もないわね……」
「ピギー(ゴーストいないなー)」
ブルーが外の風景を見ていると、一人の老人が階段から上がってきて、墓の前まで来ると笛を吹き鳴らす。
その音色は心を静めるような、ゆったりとしたものであり、少しの間ブルーはその音色に耳を傾けた。
「ピギー(見っけ)」
老人の音色に引き寄せられてきたのは、黒いガスのような塊───ゴースたちだった。
ゴースたちは老人の回りを取り囲むと、その場を動こうとしない。
老人は目を瞑って演奏しているため、ゴースたちが見えず、取り囲まれていることを知らずに笛を吹き続ける。
笛の音が止むと、それに合わせてゴースたちも姿を消していった。
ブルーも閉じていた目を開け、演奏していた老人に拍手を送る。
「良い音ね」
「いやはやお恥ずかしいですな」
「ずっとやってるの?」
「ええ。この子の母親が亡くなりましてな。それ以来こうして吹きに来ている次第です」
老人の影に隠れるようにして佇んでいたのは、骨を被ったポケモン───カラカラだった。
カラカラは、老人の背後に隠れながら、手に持った骨でブルーを威嚇する。
しかしながら、怖がっていることが容易に分かるその様子に、ブルーは微笑むとポケモン図鑑で撮影を始めた。
「カラカラって言うのね」
「ええ。怖がりですが、頑張って守ってくれる優しい子ですよ」
「なんか、私を見て怖がってるのは何故かしら?」
「人見知りだからでしょう。幼い頃から、母親と私にしかなつきませんでしたからな」
「人見知りなら仕方ないかな」
ブルーと老人が話していると、階下から黒い服を着た集団が駆け上がってきた。
「いたぞ」
「出来る限り傷つけるな」
物騒な言葉と共に、ブルーたちの方へ歩いてくる。
「フジ老人で間違いありませんかな?」
「そうですがあなた方は?」
「私たちはロケット団の者だよ。大人しく我々と共に来てもらおう」
「ロケット団!?」
老人は、ロケット団と聞いて、黒い服の集団を睨み付ける。
「お前たちがこの子の母親を殺したのか!」
「そんなカラカラなんぞ知らん。───説得は無理なようだ。連れていくぞ」
「横の少女はどうしますか?」
「通報されても面倒だ。始末しておけ」
「はっ!」
老人の怒りを受けても、ロケット団の態度は変わらない。
老人のそばにいたカラカラも、老人と共にロケット団を睨み付けている。
「えーっと……。この場合やっつけたら良いのかしら?」
「甘く見られたものだな。行け! アーボック!」
「マタドガス、お前もだ!」
「ゴースト行け!」
ロケット団員たちは、次々と手持ちのポケモンを出してくる。
ブルーは、それを見て困ったような表情をした。
「どの人からバトルするの?」
「運が悪かったと思え」
ブルーの言葉に答えることもなく、ロケット団は何匹ものポケモンに襲わせる。
ブルーは最初こそ驚いたものの、それを見て目付きが鋭くなっていった。
「一対多のバトルなんて初めてね。この場合は何でもありで良いかしら……。取り敢えずは、カメちゃん!」
ブルーはカメールを呼び出す。
「やっちゃって。私は高速移動!」
カメールはブルーの指示に従い、近付く敵に向けてバトルこうせんを放ち、空間を泡で埋め尽くしていく。
ロケット団との視界が悪くなってきたところで、ブルーは老人の傍に高速移動すると、老人とカラカラを抱えて部屋の奥に移動した。
「ちょっと! 暴れないの! 離してあげるから!」
老人と暴れるカラカラを床に置くと、ブルーはカメールの方へと向かった。
カメールはバブル光線に加えて、影分身で敵の近くに現れることで、敵の技の同士討ちを誘発させ、相手の体力を削っていく。
それでも、泡を抜けてきた敵には、アクアテールや水鉄砲で押し返していた。
「さてと……、床も水浸しになったし、相手もびしょ濡れよね」
ブルーはカメールを後方に下げさせる。
「カメちゃん下がって! 後は仕上げよ!」
カメールがブルーの元に戻るのと入れ違いに、メタモンが変身した状態で姿を表す。
そして、未だに泡で溢れる場所へ向けて、凶悪な攻撃を実施した。
「ピギ(カミナリ)」
『ギャーー!!』
サンダーに変身したメタモンの放った雷は、視界を妨げていた泡を吹き飛ばし、そこにいたポケモンばかりかロケット団までも倒してしまっていた。
「ちょっと威力が強すぎたのかしら?」
「ピギー(疲れた)」
メタモンは変身を解き、何時ものようにブルーへ取りついた。
ブルーは老人に向き直り、身体の状態を確認する。
「身体は大丈夫ですか?」
「ああ。お前さんのお陰で大丈夫。───その者たちは生きておるのか?」
「手加減はしたわよね?」
「ピギ(もち)」
ブルーは確認のため、ロケット団を見る。
倒れているロケット団員たちの胸は微かに動いていた。
「大丈夫みたいです」
「ありがとう。お前さんがいなければ、私は誘拐されていただろう」
「私も良い経験になりまし───」
ブルーが話している最中に、カメールが白い光に包まれる。
2度目と言うこともあって、ブルーは慌てることなく、その光景を見ていた。
「おお。進化か……珍しい」
老人の言葉通りに、カメールの身体は大きくなっていき、光が消えると同時に、力強い声を出す。
「カメー!(強くなった!)」
「ピギー(おめでと)」
「お疲れさま、カメちゃん」
ブルーは進化したカメックスを労い、ゆっくりとカメックスを見るために周囲を回る。
「強そうね」
ブルーの言葉に対して、カメックスは嬉しそうに鳴き声を上げた。
「何があったの!?」
そこへ、ガーディを連れたジュンサーが現れる。
「良いタイミングね」
「また、あなたが関わってるのね?」
ジュンサーは、ブルーを睨み付け、ゆっくりと言い聞かせるように話す。
「事情はゆっくりと聞かせてもらいます」
「またー?」
その後、ジュンサーからの事情聴取はあったものの、フジ老人からの証言もあり、この日はすぐに解放された。