ポケモン(仮) 作:ネコ
負けたブルーがポケモンセンターで回復後に行ったのは、カメックスが使用することのできる技の種類を増やすことだった。
タマムシシティには、カントー地方最大のデパートがあり、そこにはポケモン用の技マシンが数多く販売されている。
銀行で貯金していたお金を全ておろし、1つずつ吟味していく。
「これと、これはいるとして……これは使えるのかしら?」
幾つかの技マシンを購入し、ブルーは町の西へ向かって移動した。
そうして町からある程度離れたのを確認すると、カメックスを呼び出す。
カメックスは未だに甲羅に閉じ籠ったままであり、ブルーの声は聞こえているようだが、甲羅から顔を出そうとはしない。
「カメちゃん。お話ししましょう」
「カメー(怖い)」
なかなか顔を出さないカメックスに、ブルーはそのまま話を続ける。
「カメちゃんは確かに負けたけど、あなたのせいじゃないわ。私の指示が悪かったの」
「…………」
「訓練さえ積めば簡単に勝てると思ったのがそもそもの間違い。これで気付かなくってごめんね」
「…………」
カメックスは手足を引っ込めたままだったが、頭だけを僅かに甲羅から出してブルーを見る。
「これからは、圧倒的火力と、如何なる攻撃にも耐える防御力を鍛えましょう。私が変に小細工を弄したのもいけないわね……。相手の攻撃が見えていれば防げただろうし、身構えることも出来た」
「カメ?(あれ?)」
話が少しずつズレてきているが、そうとは気付かないまま、ブルーのやる気は次第に増していく。
「そうよ! あらゆるポケモンに対応できて、それらを一撃のもとに倒す。そうすれば、カメちゃんも傷付くことはないわ! そうよね!?」
「カメ……?(そうなのかな?)」
「ピギー(知らね)」
ブルーはいそいそと、デパートで購入した技マシンを取り出していく。
「覚えてもらうのはこの4つよ。覚えたら、これを臨機応変に使えるように特訓ね。防御に関してはこれで、後は攻撃。さあやるわよ!」
この日。カメックスの技は全てが一新された。
カメックスがブルーから技マシンで覚えてからというもの、その技を実践で使えるようにするため、各地を回り始めた。
手始めにトキワの森で虫ポケモン相手に訓練を行い、お月見山で岩ポケモン相手に無双する。
途中で怪しい黒ずくめの集団が襲いかかってきたが、これを嬉々として返り討ちにし、手持ちのポケモン全てを瀕死に追いやるまでバトルを続けた。
次に向かったのが無人発電所。ここの敷地に多数存在している電気ポケモンを全て一撃で倒せるまで狩り続ける。
全てを狩ってしまっては、すぐに相手が居なくなってしまうため、戦ったポケモンは介抱し、早く傷が治るように手当てをしていく。
その際、なついてきたポケモンには、何度もバトルを行い双方共にレベルを上げ続けた。
そして、仲良くなったポケモンと別れを惜しみながらも、無人発電所を後にして南下し、海沿いにいる水ポケモンたちを相手取る。
途中にいたトレーナーたちはバトルが好きなのか、何度も挑んできたが、流石に何度も負け続けると、ブルーとのバトルを拒否するように、見ないふりをし始める。
そうして各地を巡っているうちに、季節は変わり秋になった。
「流石にあのバトルは私たちの勝ちよね……。久し振りにポケモンセンターに帰りましょ」
「カメー(賛成ー)」
「ピギー……(やっとか……)」
この特訓により、ブルーの服はあちこちに破れた後やほつれが目立つようになった。
最初の方こそメタモンが気にして、夜な夜な直していたがそれにも限界はある。
これまで1度たりとも町に戻っていないのだから、直そうにも修繕するための物が尽きてしまっていた。
近くの町であるハナダシティのポケモンセンターの一室で、ブルーはテレビをつけながら、最後のバトルを振り返る。
「それにしても、あのポケモンなんだったのかしら? 図鑑で見ようとしたら壊されちゃうし……。あー! イライラするわね!」
「ピギー(あれはなぁ)」
「カメー(疲れたー)」
「いきなり襲ってきた上に、図鑑を壊すなんて! メタちゃんは手を出すならとどめを確実にさしなさい!」
「ピギピギー(あいつに全力で逃げられたら無理)」
訓練で各地を巡ったおりに、ある洞窟で修行をしていた。
その洞窟に住むポケモンは各個体の強さが、外のポケモンとは格段に差があり、カメックスを鍛えるのにかなり適していたと言えるだろう。
そうして野良ポケモンを倒していると、突然ブルーはカメックスと共に弾き飛ばされたのである。
普通のポケモン、ましてや生身の人では耐えられない衝撃がカメックスとブルーを襲う。
しかし、カメックスはここまで鍛えたことにより、最初の衝撃こそ受けたものの、その後の衝撃は技マシンで覚えたまもるにより、一切のダメージを無効化していた。
対するブルーはメタモンが守っているため、衝撃は全てメタモンが吸収し、ちょっとした驚きだけが残る。
『出ていけ』
そうして動きを止めたブルーたちの頭に何者かの声が聞こえてくる。
「全く……何なのよ」
「カメー?(突風でも吹いた?)」
カメックスは声に気付かず辺りを見回し、ブルーは土のついた服を払う。
『出ていけ』
再度聞こえてきた声に、ブルーは眉根を寄せて辺りを見渡す。そして、声を掛けてきたであろうポケモンを見つけた。
「見たことのないポケモンね。名前は───!?」
謎のポケモンに向けたポケモン図鑑は、見えない力で破壊され、部品となってブルーの手から落ちていく。
「何で壊すのよ! カメちゃん! ポンプからのビーム!」
「カメー!(任せて!)」
カメックスは背中の噴射孔を敵対しているポケモンに向けて放つ。
ハイドロポンプで手当たり次第に攻撃し、水浸しになった場所を凍らせていく。
普通のポケモンであれば、これで身動きが取れないが、ブルーは油断することなく、次の指示を飛ばす。
「カメちゃん! は───」
ブルーが指示を出す前に、目前のポケモンが苦しみだした。
ブルーはその不可思議な行動に戸惑い、言葉を止める。
『毒か……』
「ピギー!(ミックスパウダーだ!)」
苦しんだ理由は、メタモンがカメックスの攻撃に乗せて運んだ粉だった。
その粉には、毒やら麻痺やらと、メタモンの技能を凝らした各状態異常が混ざっていた。
謎のポケモンは片膝をつく。
メタモンはここぞとばかりに、スーパーボールを投げつけた。
「ピギ!(くらえ)」
謎のポケモンは混濁した意識の中で、最後の抵抗とばかりに、そのボールを念力で当たる前に弾き飛ばし、その場からテレポートで姿を消す。
「何なのよいったい……」
残されたブルーは納得いかなかったものの、それを区切りとしてその洞窟を出ることにしたのだった。