ポケモン(仮) 作:ネコ
ポケモンに変身できるようになることで、様々な技をメタモンは使えるようになった。
それだけ聞けば不思議でもなんでもないのだが、見れば一発でおかしいと思えるような状態になっている。
そもそも、変身相手が目の前に居ない状態で変身できることがおかしいのだが、未だに気付ける人はいなかった。
「さあメタちゃん。いくわよー! 電磁波を撃ってからのかぜおこし!」
「ピッ!(おけ!)」
メタモンは身体の半分をピカチュウにし、もう片方をポッポの姿へと変える。
そして、それぞれの手からブルーの指示した技を順番に放っていった。
最初に放った電磁波は、目の前のニドランを捉えて麻痺させ、ほとんど時間差もなく、次の技であるかぜおこしがニドランを襲う。
その攻撃は、レベル差が有りすぎるためだろう、一撃でニドランを気絶へと追い込んだ。
技を放ち終えたメタモンは元のスライムの形に戻っている。
「うんうん。これなら、ひとりで隣町に行くのを認めてくれるかも!」
「ピギピギ(さすがに無理だろ)」
「メタちゃんもそう思うよね!」
「ピギピギ(はいはい)」
ブルーの年齢もやっとのこと二桁になり、住んでいた町では飽きたらず、今では隣町にまでその足を延ばしていた。
隣町に行くと言っても、本来であれば許可がでないのだが、親と一緒であれば、その前提も覆される。
ブルーは、親が買い物をしている間に、メタモンを連れて様々なポケモンを見回った後、親と待ち合わせしている町の入り口付近で、野生のポケモンを発見し、バトルを仕掛けているのであった。
「早く旅立ちたいなぁ……。グリーンの奴は色んなところに連れていってもらえてるのに、私だけ置いてきぼりだし……」
落ち込むブルーの方へメタモンは慰めるように手を置く。
「ありがと。そうよね。落ち込んでなんかいられないわ! 私はあいつと違って先にポケモン持ってるんだから、出発するときはわたしの方が絶対に強いはず!」
ブルーはひとりで勝手に納得すると、先の事をぶつぶつと呟き始めた。
「まずは、ジムバッチを目標にしながら、メタちゃんを強く……」
ブルーが一人の世界に入っている中、メタモンは町の入り口に目的の人物が現れたことを確認すると、ピジョンに変身してブルーを掴み飛び立つ。
そうして目的の人物───ブルーの母親の前にブルーを降ろして元に戻った。
「あらあら。メタちゃんは便りになるわね。良い子にはこれをあげましょう」
母親は、メタモンにジュースの入った缶を差し出し、ブルーに身体を向ける。
ブルーは気付いていないのか、未だにぶつぶつと呟いていた。
「聞き分けの無い子はどこかしら?」
「い!? 痛い! 痛い!」
耳を引っ張られて説教されるブルーを見て、メタモンは貰ったジュースを口に含んだ。
町の近くは行き尽くし、町の中に至っては行ってないところは無いというほどにまでなった。
ブルーの背も初めて会った時より遥かに伸び、毎日外で活動しているお陰か、健康的な美人に成長している。
ただ、性格のせいでもあるが、かなりのお転婆娘としても知られており、見た目と性格からプラマイ0という認識だった。
「この辺りのポケモンは全て把握しました。変身もマスターしました。私が次にやることはなんでしょう!」
メタモンに向けて指をビシッと指しながら聞いてくるブルーに、メタモンは頭の上に?マークを付けて答える。
「ちゃんと考えないとダメよ! でも、メタちゃんには少し難しかったかもしれないわね」
ブルーは腕を組み頷くと、メタモンに説明を始めた。
「いい? 私たちは強くなったけど、それはこの町の周辺だけの話なの。将来私はポケモンマスターになるため旅に立つけど、町から離れれば離れるほど強い人やポケモンがいるはずよ。だけど、それは当たり前のことで、もっと大事なのは、危険な場所や状況もあるということ!」
力説するブルーに、メタモンは気の無い相づちとして、頷いているような動作をする。
メタモンの心情などお構いなしに、ブルーは続ける。
「と言うわけで、メタちゃんがわたしに取り付いて、私がビームを出したり、空を飛んだりするの。分かる?」
メタモンはブルーがある年齢特有の病気を発症していることに気付き、生暖かい目でブルーを見つめる。
「なんかイラッとするような視線ね」
メタモンは器用に旗を作ると、応援するように左右に振り始めた。
「私だけで出来るわけ無いでしょ! メタちゃんが変身するんだからね! 先ずは私にくっついて」
「ピー(おー!)」
「ちょっと! 変なとこさわるな! こら!」
先程までのやる気の無さは何処にいったのかと言えるような速度でブルーに取りついたメタモンは、ブルーの身体全体に薄い膜を張るように広がっていく。
膜を張り終わって落ち着いたブルーは、身体のあちこちを触ったり見たりして変化がないことを確認した。
「うーん。これでいけるのかな……。じゃあ始めはれいとうビーム」
木に向かって指を突きつけブルーは技の名前を言う。
その数秒後、ブルーの指から木に向けてれいとうビームが飛び出した。
れいとうビームが当たった木は、当たった場所を中心に凍っていく。
「成功ね!」
自分でポケモンの技を出せたことに大喜びでブルーは跳び跳ねる。
それからも、色々なポケモンの技を繰り出していった。
「威力の強い技は、時間が掛かるし、実際の技より弱そうね……。それよりも問題は……」
「…………」
ブルーは辺りを見渡して悩む。それというのも、ポケモンの技を連発したことにより、周囲の環境はひどい有り様になっていた。
「見つかったら……。よし! 逃げるわよ! でんこうせっか! って……キャーー!!!」
自分の身体が勝手に動き、簡単にブルーの限界を越えて速度が出る。
その突然の速度にブルーは叫び声を上げるだけで何もすることが出来なかった。
ブルーの住むマサラタウンには、有名な子供が3人いる。
一人目は、世界的ポケモンの権威であるオーキド博士の孫───グリーン。
未だに自分のポケモンを持ってはいないが、研究者である親の研究に参加しており、その能力がかなり高いことから、神童と言われるほど優秀で、未来のポケモン博士として有名だ。
二人目は、オーキド博士の隣の家に住むレッド。
両親共に特に有名と言うわけではないのだが、レッドは野生のポケモンを発見しては自分から近付き、仲良くなると家に連れ帰っていたのである。
そのため、レッドの家にはモンスターボールで拘束されているわけでもないのに、複数のポケモンが拠り所として集まっていた。そのポケモンに好かれる性格とポケモンを大事にすることから、未来のポケモンマスターとして知られている。
三人目は、言わずと知れたブルーだ。
ブルーはメタモンにさまざまなポケモンや技を見せるため、最低でも一回以上はマサラタウンにある各家を訪れており、必要性があれば何度でも来ることから、ブルーが来たら大人しくポケモンを見せなければ何度でも来るポケモンマニアとして知られていた。
当初は他の二人とはあまりにも呼び方が違うことから反発していたブルーだったが、今では開き直っている。
「ポケモンマニアで何が悪いのよ!」
開き直ったのはいいが、逆ギレし始めるのはたちが悪く、しつこく諦めにくい性格は相変わらずであるため、ブルーの前でポケモンマニアと言うことは暗黙のタブーとしてしられていたりする。
そんなブルーたち3人も、もうすぐ今年で15歳ということもあり、博士の家に呼ばれていた。
「よく来たのブルー。もう一人来る予定じゃから、そこで大人しく待っとれ」
博士は机の横にある椅子を指差した。
その椅子とは机を挟んで反対側には、既に違う人物が座っている。
「よっ、ブルー。久しぶりだな」
「なんであんたがいるのよ」
グリーンは座ったまま、片手を挙げて挨拶をするが、ブルーの反応は冷たかった。
「ここは、俺のじいちゃんの家だからな? この場合ここにいるのがおかしいのはお前の方だからな?」
「博士の家であってあんたの家じゃないでしょ。ここには博士に呼ばれたから来たの。だからおかしいのはあんたよ」
「いやいや。俺も呼ばれたから。と言うかなんで喧嘩腰なんだよ」
「あんたがここにいる理由なんて私が知るわけ無いでしょ。だから、私は理由を聞いただけであんたが言い掛かり着けてきたんじゃない」
「───あー。俺が悪かったよ」
グリーンは降参と言うように両手を挙げてみせた。
ブルーはグリーンをジト目で見ていたが、気を取り直して椅子に座る。
座ったブルーの前に、ラッキーがジュースの入ったコップを置いた。
「ありがとね、ラッキー」
ブルーはラッキーに対して微笑むと、貰ったジュースに口をつける。
グリーンは信じられないものを見たような目をブルーに向けていた。
「ギリギリセーフ!」
「本当にギリギリじゃのぉ」
突然叫びながら入ってきたのは、博士に呼ばれた最後の一人であるレッドだった。