ポケモン(仮)   作:ネコ

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第4話

 遅れてきたレッドは、トレードマークの赤い帽子で顔を扇ぎながら部屋の中を見渡す。

 

「あれ? その二人は?」

「わしが呼んだんじゃよ。レッドもそこの椅子に座るんじゃ」

「はいよ」

 

 レッドは椅子に座ると帽子を机の上に置き、ラッキーから貰ったジュースで喉を潤した。

 

「あー! うまい! もう一杯!」

「相変わらずだの。まぁ飲みながら聞くがよい。お主らは今年で15歳になる。つまりはポケモントレーナーになる資格を得ると言うことじゃな」

「それくらい俺でも知ってるぜ!」

「静かに聞けって」

「レッドもグリーンも煩いわよ!」

「「ブルーの方が煩いだろ」」

 

 口喧嘩を始める3人を博士は溜め息を漏らし、顔にてを当てて問い掛ける。

 

「何故お前たちは揃うといつも喧嘩するんじゃ」

「私は喧嘩してるつもりはないわ。喧嘩は同じレベルの人同士でするものでしょ」

「おれは諌めてるだけだよじいちゃん」

「絡んできたから相手してやっただけだし。別になんとも思ってないさ」

「なに上から目線でカッコつけてんのよ!」

「それをいうならグリーンもだろ!」

「俺を巻き込むな! 元はと言えばブルーが原因だろ!」

 

 再び始まる口喧嘩に、流石の博士も限界に来たのか大声を出した。

 

「静まらんか!」

「大声だしたら血圧上がるぜ?」

「じいちゃん。歳なんだから……」

「顔が真っ赤よ? 病院に行ったら?」

 

 3人の矛先が自分に来たことを悟り、博士はガックリと肩を落とすが、当初の予定通り静かになったことを思い出し説明の続きを始める。

 

「お前たちに長々と言っても仕方ないから簡潔に言うが、一ヶ月後に正式なポケモントレーナーの登録をするからここに集まれ。きちんと集まれたらわしからプレゼントをやろう」

「「「!!」」」

 

 博士の言葉は、3人が長年待っていた言葉だった。

 それぞれが、自分の思い描くポケモントレーナー像を思い浮かべる。

 

「話は以上じゃ。そら、行った行った」

 

 上の空の3人を外に出し、博士は家の中に引きこもってしまった。

 

「旅に出る準備だな」

「「!?」」

 

 グリーンの一言に、レッドとブルーが過剰な反応を示す。

 ポケモントレーナーになれば、各町を回ることになる。

 その途中で必要なものは多々あるはずだ。今までは漠然とした考えだけしかなかったが、博士に言われたことで現実味が増し、グリーンの言葉で、なんの準備もしてないことを二人は思い出していた。

 

「私はちょっと用事を思い出したから帰るわね」

「俺もちょっと寄るとこ思い出したわ」

 

 二人はそう言うと、それぞれの家に向けて走り出す。

 

「分かりやすいやつらだな」

 

 グリーンはそんな二人を見送ると、自分も家に向けて帰っていった。

 

 それから数分後、家に辿り着いたブルーは、玄関の扉を開けて母親を探す。

 

「お母さん!」

「あらあら。どうしたの? そんなに慌てて」

「私来月にポケモントレーナーになるの!」

「もうそんな歳なのねぇ」

「だから旅に必要な道具を買って!」

「旅には何が必要なの?」

「え?」

「え?」

 

 ブルーと母親はしばらく見つめあって、互いに知識がないことを知った。

 

「困ったわね。お父さんは旅に出たことなんて無いだろうし……。そうだわ! レッド君とグリーン君も一緒なのよね? 持っていくものを聞いたらどうかしら?」

「それはいや!」

「うーん……」

 

 ブルーの拒絶の姿勢に困った母親へ、助け船が渡される。

 

「ん?」

 

 母親の手を、メタモンから伸びた手が引っ張っていた。

 母親がメタモンの方へ目を向けると、メタモンの手はテーブルの上に向けられる。

 テーブルの上には、1枚の紙が置いてあり、そこに旅に必要であると思われる機材が一式書き込まれていた。

 

「これを買えばいいのかしら?」

「多分そう! さすがメタちゃんね!」

 

 ブルーからの誉め言葉に合わせて、メタモンは器用にVサインをしてみせた。

 

「確かに、メタちゃんがいれば安心ね。メタちゃん、ブルーをお願いね」

「ピギィ!(任せて!)」

 

 その後、メタモン主導のもと、旅に必要な荷物を買いに出掛けた。

 

 

 

 一ヶ月はあっという間に過ぎ去った。

 この間にブルーとメタモンがしていたのは、機材の使い方を覚えることだった。

 メタモンが組み立てれば早いのだが、ブルーが自分もやってみたいと言い始めたのだ。

 チャレンジ精神は良いのだが、出来るまでやると言う負けず嫌いな性格は、一向に治る気配がなかった。

 そのため、ブルーが機材が一通り使えるようになるまで、繰り返されることになり、それに一ヶ月掛かったのである。

 

「これで、何処だろうと大丈夫ね」

 

 ブルーの言葉に、メタモンも頷いて見せる。

 

「さて、行くわよメタちゃん」

「ピギ!(ラジャ!)」

 

 慣れ親しんだ道を歩き、博士の家に向かう。

 既にブルーは母親に旅立つ挨拶をしており、博士の家に寄った後はそのまま次の町へ行くため、旅の道具を背負っている。

 ブルーへの視線が多い中を、ブルーはいつもの事と切り捨てて歩く。

 ポケモントレーナーまで後少しだった。

 

 博士の家に着いてからは、緊張した手つきで呼び出しのブザーを鳴らす。

 すると、ボタンの上にあるモニターに博士が映った。

 

「よく来たの。開いとるから中に入りなさい」

「し、失礼します」

 

 ゆっくりと博士の家の扉を開ける。

 家の中には、既にグリーンが台の前で立って待っていた。

 

「よぉ。遅かっ……。ぶふぅ!!」

 

 ブルーを見て必死に笑いを堪えようとしたのだろうが、口から漏れる空気を防ぐことができずに、グリーンはそのまま笑い出す。

 

「何よ」

 

 その笑いが気に食わなかったブルーは、グリーンを睨み付けながら博士の前に歩いていった。

 しかし、グリーンはなかなか笑いが収まらないのか、腹を抱えて踞ってしまう。

 そこへフォローをしたのは、年長者であり、理由がわかった博士だった。

 

「ブルーよ。そんなに大きなリュックを担いでどうするんしゃ?」

「旅の道具を持ってるに決まってるでしょ」

 

 ブルーの機嫌は更に悪くなるが、博士は気にせずに話しかける。

 

「どうみても、過剰な荷物が見えるんじゃよ。リュックの横にぶら下げとる懐中電灯など、当分使わんじゃろ?」

「途中で洞窟とかあったら必要じゃない。それに、もし外で夜になったりしたら見えないと不便でしょ」

「ここから次の町まで子供の足でも二時間ほどじゃ。昼に出ても夕方までには十分につく。基本的には、次の目的地に行くのに必要な装備を除いたら、全部パソコンに預けといた方がいいんじゃよ」

「パソコンに預ける?」

 

 初めて聞く内容に、ブルーは首を傾げる。

 

(そんな機能あったな……)

 

 メタモンも、博士が口にするまですっかり忘れていた。

 博士の説明では、現在のパソコンは物質の転送を可能にしており、尚且つトレーナーIDがあれば、個人用の格納スペースが貰えると言うものだった。

 博士の説明が終わり、ブルーは持っていた荷物をパソコンに預け終わると、未だに笑っているグリーンへ指を突きつけた。

 

「笑っていられるのも今のうちよ! すぐにあんたは悔しがりながら家に帰ることになるんだから!」

「ハッ! そんな冗談はもういいって。これ以上笑わせるなよ」

 

 火花が散るような視線がはしる空間を破ったのは博士だった。

 

「そろそろ時間じゃがレッドは来んのぉ」

「じいちゃん。時間通り始めようよ。そもそも遅れてくる方が悪いんだし」

「そうじゃの。では、二人にはこれを渡そう」

「これは?」

 

 博士は、片手で持てるような小さなタブレットを二人の前に置くと、説明を始めた。

 

「これはポケモン図鑑と言ってな。ポケモンのデータを収集することができる」

「それだけ?」

「それだけではないぞ。送ることだけしかできんが、ポケモンの転送機能も付いとる。更に、ポケナビまでついとる優れものじゃ」

 

 自信満々に言われ、目を輝かせるグリーンを他所に、ブルーにはいまいち有り難みが伝わらなかった。

 

「それよりも早くトレーナー登録してほしいんだけど」

「既に登録は終わっとるよ」

「そう言うことは早く言ってよね」

「じゃから、ここからはお願いになるんじゃが、これから色々なところへ行くにあたって、その地域のポケモンをその図鑑で調べてほしいんじゃ」

「まあ、ついでだしいいけど」

「任せろじいちゃん! ブルーがやらなくても俺がやるよ!」

 

 二人のやる気の温度差はあったものの、博士は二人からの承諾に頷いて見せると、一番の本題であるモンスターボールを取り出した。

 

「トレーナーになったからには、ポケモンが必要じゃろう。ここに3匹おる。好きな子を選ぶとよい」

「うーん。どれがいいのかなぁ」

「ブルーが最初に選ぶといい。俺は残った方から選ぶよ」

「そう? なら……この子にしよっと」

 

 ブルーが選んだのは、ゼニガメの入ったボールだった。

 

「よろしくね、カメちゃん」

「よし! それなら俺はこれだな!」

 

 グリーンが選んだのは、フシギダネの入ったボールだった。

 グリーンは、未だにボールを見て話しかけるブルーを見てニヤリと笑う。

 

「おいブルー。折角だし、ポケモンバトルしようぜ」

「───負ける戦いがしたいなんてあんたも物好きね」

「バトルは外でやりなさい」

 

 博士に言われ、二人は外に出る。

 バトルは博士の家の前で行われた。

 

「使用可能なポケモンは一体のみ。戦闘不能になった方の敗けだ」

「分かったわ。出番よ!(メタちゃん。分かってるわね?)」

「(ピギィ!)」

 

 二人はそれぞれ目の前にポケモンを出した。

 グリーンは、博士から貰ったポケモン図鑑を手に取ると、自分のフシギダネに向ける。

 

「まあ今更だけど教えといてやるよ! 草タイプは水タイプに強い! それに、このポケモン図鑑は手持ちポケモンの技を見れる優れものだ! 行けフシギダネ! ゼニガメにたいあたり!」

「そんな機能があったのね」

 

 フシギダネはグリーンの指示に従い、ゼニガメに突き進む。その間ブルーは、グリーンに言われたポケモン図鑑を取り出し、ゼニガメに向ける。

 

「今さら遅い!」

 

 グリーンが勝利を確信して叫ぶ。

 それは、フシギダネがゼニガメに当たる少し前だった。

 ゼニガメにたいあたりが炸裂し、フシギダネが吹き飛ぶ。

 そのあまりの光景に、グリーンは口を開けたまま固まってしまった。それは、ポケモントレーナーとしては致命的と言っていい隙となる。

 

「えーっと。これね。じゃあれいとうビーム!」

「はぁ!?」

 

 更に、覚えているはずのない技の名前に、グリーンは成す術もなく結果を見守るしかなかった。

 

「くそっ! 覚えてろよ!」

 

 負け台詞と共にグリーンは立ち去り、その後にポケモン図鑑から音声が流れる。

 

『ただいまの勝負。ブルーの勝ちとなります。賞金については口座をご確認ください。現在1戦1勝0敗0引き分けです』

 

 これがブルーの始めてのバトルとなった。

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