ポケモン(仮)   作:ネコ

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第7話

 朝食を取り終えたブルーは、手帳を取り出して今日の予定を確認する。

 

「今日は、ニビシティのジムリーダーに挑戦した後、ショッピングね」

「ゼニー(はーい)」

 

 ゼニガメが、片手を挙げて返事をする。ブルーはそれを見て微笑むと、再び手帳を見た。

 

「それにしても、こんな落書きしたかしら?」

 

 手帳には、ブルーが書いた大まかな予定表(バッチを8個集めるなど)が書いてあったが、その下に具体的な行動方法が書いてあり、ブルーは首を傾げる。

 

「悩んでても仕方ないわね。行くわよカメちゃん!」

「カメー(はーい)」

 

 手帳をリュックに戻し、席を立つとゼニガメを連れてポケモンセンターから出ていく。その際にジョーイへのお礼も忘れない。

 

「お世話になりました。また来たときもよろしくお願いします」

「立派なトレーナーになってね」

「はい! それでは行ってきます!」

「カメー(またねー)」

「ラッキー(また来てね)」

 

 ブルーは元気よくポケモンセンターから出ていく。その姿をジョーイは見送りラッキーに呟く。

 

「あの子、話せたのね……」

 

 ジョーイは不思議そうにしていたが、今朝の仕事を思い出し、止めていた手を動かし始めた。

 

 ポケモンセンターを出たブルーは、ジムの場所が分からず、手当たり次第に場所を聞きまくっていた。

 

「ここかな?」

 

 ニビシティジムと思わしき場所に着たものの、表札など何処にもなく、変な形をしたオブジェが壁の少し上にデカデカと飾られている。

 ブルーは確認のために、その建物の入り口にいる人へ声を掛けた。

 

「すいません。ここがニビジムで間違いありませんか?」

「そうだけど、ニビジムに何か用か?」

「ジムに挑戦しに来ました」

「挑戦だと? ───ゼニガメを連れてるようだが、タケシさんも暇じゃない。挑戦する資格があるか俺が試してやるよ」

 

 ブルーの姿をジロジロ見ながら、男はサンドを出す。

 

「行くぞ! サンド!「みずでっぽう!」すなか……」

 

 男がサンドに指示を出そうと技名を叫び掛けたところで、ブルーがその言葉に被せるようにゼニガメへ指示を出す。

 

 ゼニガメは、前回のペルシアンに成す術なくやられた事を悔いており、もっと技の威力を高めようと練習してきたのである。

 そもそも、現在ゼニガメが覚えているのは、「たいあたり」「しっぽをふる」「みずでっぽう」の3つしかない。そしてブルーは、開幕にみずでっぽうを要求することが非常に多かった。

 その成果もあり、みずでっぽうの威力はそれほど変わらなかったものの、ブルーの声が聞こえた瞬間に、相手に向けて技を放つことで、技を放つまでの速度を上げてきたのである。

 しかも、みずでっぽう後に、しっぽをふるのおまけ付きで……。

 残念ながら、サンドは一撃で戦闘不能に陥ったため、効果を発揮しなかったが、マスターの指示を先読みして技を繰り出す姿は、徐々に既存のバトルから離れていっているように思える。

 

「おれの、サンド……」

「いいこね、カメちゃん」

 

 サンドを抱き締める男を無視し、ブルーはゼニガメを抱き締めると、そのまま手を取ってジムの中へ入っていく。

 

『ただいまの勝負。ブルーの勝ちとなります。賞金については口座をご確認ください。現在3戦3勝0敗0引き分けです』

 

 ポケナビから流れる電子音声が、サンドを抱き締めるトレーナーに更なる追い討ちをかける。

 

「初心者に負けた……」

 

 男は、サンド共々打ちのめされていた。

 

 そんな男など気にも止めずに、ブルーはジムの中を見渡す。

 ジムの中はトキワジムと同様に、バトル用に内部が広くなっている。

 ここのバトルフィールドは、ジムリーダーの趣味なのか、岩盤が多く設置してあり、地面も砂になっていた。

 ジムリーダーと思わしき人物はすぐに見つかる。

 中央で腕を組み、周囲でトレーニングしている男たちへ指導している人物がいたからだ。

 

「すいませーん」

「ん?」

「ジムに挑戦したいんですけど」

「!?」

 

 男はブルーを見て固まる。ブルーは何も言わない男を不思議そうに見ていた。

 男勝りな性格をしているブルーだが、きちんと身なりを整えれば美少女と言える見た目をしている。

 しかも、今日の服装はいつものズボン姿とは違い、ミニスカート姿だ。

 更に付け加えるならば、このジムには男しかいない。むしろ男しか通っていない。普段女性と話す機会の少ない男としては、目の前に現れた美少女に行動不能にされてしまっていた。

 

「ぐふっ……」

「リーダーしっかり!」

「まだ大丈夫です!」

「ここで終わってしまうんですか!?」

 

 周囲にいた男たちがタケシに集まってくる。

 それをブルーは冷めた目で見ながら再度問い掛けた。

 

「それで? 出来るの? 出来ないの?」

「くっ! 美少女に求められては男として断るわけにはいかない!」

「さすがリーダー!」

「凄いですリーダー!」

「何処までもついていきます! リーダー!」

 

 そんな漫才のような光景に、ブルーのタケシたちを見る目は氷点下にまで落ちていく。

 

「それでは、このタケシが! 挑戦を受けながら、お嬢さんに手取り足取り指導してあげよう!」

 

 心の声が駄々漏れだったが、ジムリーダーと戦えると聞いて、それまでの事を横に置き、ブルーはゼニガメに話し掛ける。

 

「いい? カメちゃん。今はメタちゃんがまた石になっちゃってるからあなただけが頼りなの。ダメージを受けないように立ち回ってね」

「カメー!(任せて!)」

 

 ブルーはジムに入ってか再びブルーから離れて寝てしまったメタモンをチラリと見てから言う。

 ゼニガメは、初めてブルーから頼りにされたことで張り切りだした。のんびり屋のゼニガメとは思えないような気合いがみなぎっている。

 

「モンスターボールはいくつ持っている?」

「2個よ」

「それでは、2対2で先に相手の2体を戦闘不能にした方を勝者とする!」

「上等よ!」

 

 タケシとブルーは、それぞれバトルフィールドのトレーナーサイドまで移動すると、各自のポケモンをバトルフィールドへ進める。

 

「行け! イシツブテ!」

「頑張ってカメちゃん!」

「それでは挑戦者……えーっと「ブルーよ」ブルーとニビジムのリーダー、タケシとの試合を始める! それでは……試合開始!」

 

 タケシの取り巻きが、締まらない審判を勤め、試合は開始される。

 その合図を受けて、ブルーやタケシが指示を出すよりも早く、ゼニガメが動いた。

 

「イシツブテ! かわせ!」

 

 タケシはすぐに指示を出すが、イシツブテはみずでっぽうを回避することは出来ず、ダメージを受けてしまう。

 しかし、流石はジムリーダーのポケモンと言うべきか、イシツブテがみずでっぽうの一撃で沈むことはなかった。

 

「カメちゃん! 審判が止めるまで攻撃よ!」

「カメー!(いくよ!)」

「イシツブテ! たいあたりだ! 敵の攻撃は気合いで耐えて見せろ!」

 

 ポケモン同士の距離は、二十メートル程離れており、イシツブテがゼニガメの所へ行くまで数秒掛かる。その間はゼニガメの攻撃に曝され続けるのだが、現在のイシツブテは育成中であり、遠距離攻撃の技を持っていない上にスピードが遅いため、敵が攻撃のために止まっているところを狙わなければならず、タケシとしては苦渋の決断だった。

 ゼニガメはブルーの指示通り、一直線に来る的───イシツブテに向けてみずでっぽうを撃っていた。

 本来であれば、後一発程度は耐えられただろうが、イシツブテがゼニガメへたいあたりで近付いたことで、みずでっぽうの速度が相対的に上がり、更にはゼニガメのやる気が重なって、2発目はイシツブテに対し、致命的なダメージとなる。

 

「イシツブテーー!!」

「……イシツブテ戦闘不能! リーダーは次のポケモンを出してください」

「よくやったイシツブテ……。ゆっくり休んでくれ……。それにしても、そのゼニガメはよく育ててある。君からのゼニガメへの愛情を感じる。更には、俺の事を研究してきたようにタイプ相性もいい……。だが、ジムリーダーとして、そう簡単に負けるわけにはいかない! 行け! イワーク!」

「イワーク!?」

 

 イワークの全長は十メートルほどもあり、その巨体を初めて見たブルーは驚く。

 

「俺のとっておきだ! これに勝ったら付き合ってください!」

 

 どさくさに紛れてプロポーズをするタケシだが、ブルーはそれどころではなく、いそいそとポケモン図鑑を取り出して、イワークを調べ始めた。

 そして、ゼニガメはブルーの指示なくみずでっぽうをイワークに撃ち始める。

 

「今度はイシツブテのようにはいかん! イワーク! 防ぎつついわ「イワーク動かさないで!」なだ……」

 

 タケシは大声を出したブルーを見る。

 ブルーはポケモン図鑑を一生懸命操作していた。

 

「もう! 全体がしっかり写らない! なによこのズーム機能は!」

「あのー……試合は……」

「そうよ。さっさと終わらせて、近くで見ればいいんだわ」

 

 ブルーはポケモン図鑑をリュックに戻しゼニガメに指示を出した。

 

「カメちゃん! バブルこうせんからのみずでっぽうよ!」

「イワーク! あなをほる!」

「ああ!!」

 

 地面に隠れたイワークはゼニガメの下から掬い上げるようにして地面から飛び出す。

 その一撃でゼニガメはフラフラになってしまった。

 タケシは額の汗を拭い、ブルーを見る。

 ブルーはイワークが隠れたことに怒り始めた。

 

「隠れるなんて卑怯じゃない! ジムリーダーなんだから正々堂々勝負しなさいよ!」

「すまないが、あなをほるも歴としたポケモンの技なんだ。一応戦術なんだけど……」

「そんなこと知ってるわけないでしょ! こうなったら、完全に水責めなんだから! バブルこうせんで姿を隠して!」

「イワークはいわなだれだ!」

 

 ブルーの指示で、ゼニガメはバブルこうせんを放つが、先ほどの攻撃が効いているのだろう、姿を隠せるほど泡が増えることはなかった。しかし、ある時を境に、急遽バトルフィールドを覆うほどにまで泡が増え始める。

 

「やればできるじゃない! 後は地面が水で沈むほどみずでっぽうを撃ちまくるのよ!」

「イワー!!」

「どうしたイワーク!? 泡を振りきって縦横無尽にたいあたりだ!」

 

 タケシの言葉に反応はなく、中が見えない泡の中からは、みずでっぽうが幾つも飛び出してきていた。

 

「あれ……まさか……」

 

 ブルーはあることに気付き、メタモンが居たであろう場所を見ると、そこにメタモンは居なかった。

 そもそもメタモンは寝るとき、周囲の石と同じように擬態して寝る習性がある。

 普段は床の色に合わせた丸い漬け物石のようになっているが、本来は周囲の風景に溶け込んでしまうのである。

 それだけならば問題はないのだが、現在はバトルの最中であり、手を出すことはできない。

 嫌な予感を感じながら、泡が晴れるのを待つ。

 みずでっぽうが止み、泡が引いたそこには、イワークの上で、イワーク共々気絶しているゼニガメの姿があった。

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