ポケモン(仮) 作:ネコ
ブルーは、ゼニガメの元へ駆け寄り、気絶したゼニガメをモンスターボールの中へ戻す。
「おつかれさま、カメちゃん」
「勝負の最中にフィールドへ入らないように! 今回は明らかに双方戦闘不能ですが、通常であれば失格ですよ!」
「ごめんなさい」
「気を付けるように……。今回の勝負は挑戦者ブルーの勝利とする!」
『ただいまの勝負。ブルーの勝ちとなりました。賞金については口座をご確認ください。現在4戦4勝0敗0引き分けです』
ブルーは、審判に対して深々と腰を折って謝罪しながら、地面へと視線をはしらせていた。
そして、あるものを見つけると、不自然ではないようにイワークへ身体を向ける。
「イワークを見せてもらっていいですか?」
「構わないが、早く休ませてあげたいから、手早くお願いするよ。それと、これがニビジムのバッチだ」
「ありがとうございます」
イワークの元へ近付いてきていたタケシへ確認し、バッチを受けとると、ブルーはポケモン図鑑を取り出して、イワークの全体を写すために少し離れる。
そして、やや周囲の色と違う色の地面まで来ると、その上に乗って、力強く足を踏み締めイワークにポケモン図鑑を向ける。
「試合中もしていたが、それはなんなんだい?」
「オーキド博士に、色んなポケモンをこれで撮ってくるように頼まれたんです」
「なるほど……今回は俺だったから良かったが、相手によっては不快感を示す人もいるから、相手の了承を得た方がいい」
「気を付け───!?」
話している途中で、ブルーはいきなり背筋を伸ばし、ほんの数秒固まる。
そして、タケシたちに聞こえない小さな声で何事か呟くと、ポケモン図鑑をリュックへ直した。
「もういいのか?」
「はい。ありがとうございました」
タケシはイワークを労りながらボールへ戻す。
「それでは、私はこれで!」
「あっ! ちょっと!」
愛想笑いを浮かべたまま、物凄い勢いでブルーはジムを去っていく。
残されたタケシは、ブルーへ手を伸ばしたまま立ち止まっていた。
「あれは振られたってことでいいのか?」
「しっ! タケシさんに聞こえるだろ!」
「でも、バトル中に告白は……」
「だよなぁ……」
タケシの取り巻きだった男たちは、審判をしていた者を含め、誰もバトルの内容に触れようとはせず、何故ブルーが逃げるように立ち去ったのかを勘違いしたままだった。
ブルーは、全力で逃げた後、ポケモンセンターでポケモンを回復しつつ休憩していた。
「全く! ダメでしょメタちゃん! 勝手に動いたりしちゃ! もう夜更かしは許さないからね!」
休憩と言うよりも、説教と言うべきだろう。
メタモンに対して言っているのだが、端から見れば一人で怒っているように見える。
「えーっと……ブルーさん、良いですか?」
「えっ……あっはい!」
説教の途中でジョーイに呼び掛けられ、ブルーは説教を止めてジョーイに向き直る。
「お預かりしたポケモンの回復は終わりました。またのご利用をお願いします」
ジョーイは困ったような笑顔のまま、ブルーへモンスターボールを返すと、ブルーの行動を見張るように、動かず見ている。
ブルーはその行動がよく分かっていなかったが、ポケモンセンターにいる他のトレーナーの視線が何故か自分に集まっていることが分かると、居心地悪そうにリュックを背負ってポケモンセンターを出た。
「何だったのかしら、さっきの人たち……」
理由がわからないまま、外へ出たブルーは朝に立てた予定を思い出し、先ほどのことを忘れるべく、買い物に出掛ける。
「あ……お金おろさないと」
お店につく前に、銀行へと立ち寄り、母親から貰っていた通帳で口座の中を確認し───
「……!?」
これまでは、数千円の単位しか扱ったことがなかった。
そして、その数千円を口座からおろすべく、いま入っている額を見た。
そこまではいい。
しかし、そこからが問題だった。
通帳に入っている額は、ブルーが見たこともない額だ。
見に覚えのないお金が、一気に十数万も入っていれば誰しも驚くだろう。
母親が渡す前に、少しだけ入れておいたと言われても、明らかにおかしい金額だ。
ブルーは表示されたモニターの前で悩んでいたが、ある結論に至る。
「ポケモントレーナーって儲かるのね」
その後は疑問に思うこともなく、ほとんどを一度に下ろすと、ドキドキしながら財布へと仕舞い、ゆっくりとリュックの中へ入れる。
「いっぱい服を買うわよ!」
ブルーは思わぬ収入に、拳を握りしめ、意気揚々と買い物へ出掛けた。
色々な服を物色し、気に入ったものを幾つも購入したブルーは、次いでゼニガメの物も幾つか購入した。
ゼニガメもメスであるためか、買い物には乗り気であり、優に数時間は買い物に時間を掛けており、洋服を買うための買い物に全く興味のないメタモンは、珍しいポケモンが居ないか、周囲に目を向けていた。
買い物が終われば、今度は試着会の始まりである。
一度、試着はしてみたものの、現在持っている服とのコーディネートを試すため、ポケモンセンターで宿を取り、部屋でゼニガメと共に話し合っている。
ポケモンセンターに戻ってきたときは、ジョーイさんに微妙な顔をされたが、既に夜になっていたこともあり、そのまま部屋に案内された。
「こんなのはどう?」
「カメー(いいよー)」
「ピギー……?(いつまで続くの……?)」
ブルーのドレスアップに、ゼニガメは拍手で答え、終わりの見えない試着会にメタモンはやる気のない拍手を返す。
ブルーはそれに気を良くして、次々に着替えていき、この日はそれだけで時間が費やされた。
次の日。
購入した洋服は全て転送システムで預けると、次の町へ向けてブルーはニビシティを後にした。