ポケモン(仮) 作:ネコ
ブルーは次の目的地であるハナダシティへ向かうべく、北東へ進んでいった。
通常のルートであれば、ニビシティから南東方面に向かい、タマムシシティへ行けばよいのだが、買い物の途中で飾られたピッピ人形を見て、ブルーが本物を見たくなったことにより、お月見山へ向かうことになったのである。
人が定期的に通っていることで出来たような道を歩き登っていく。
お月見山は、トレーナーの修行の地として利用されているため、たくさんのトレーナーとバトルすることになり、ブルーは上機嫌だ。
『ただいまの勝負。ブルーの勝ちとなります。賞金については口座をご確認ください。現在10戦10勝0敗0引き分けです』
勝負数は二桁に入り、その全てに勝利していることから、ブルーの機嫌はうなぎ登りになっている。
「よーし。次の町でもたくさん買い物するわよ!」
「カメー(おー)」
「ピギー(勘弁してくれ)」
やる気のある者とは別に、メタモンのやる気───と言うよりも、フラストレーションが高まっていた。
いつもであれば、メタモンが出てすぐに終わらせるところを、ゼニガメに経験を積ませるため、ずっとバトルをゼニガメで通してきたのである。
ゼニガメの戦い方がダメとは言わないが、もどかしい気持ちを感じていた。
「ここがお月見山の入り口ね……」
ブルーの前には、数人が余裕で通れるような大きな穴が開いている。
ブルーは何度も持ち物や自らの格好を確認し、気合いを入れるため自分の頬を軽く叩く。
「よし!」
お月見山の洞窟は、多くの人が入ったためか、広い上に、所々で光る壁があるため意外に明るかった。
それでも、薄暗いことには変わりなく、ブルーは緊張した面持ちで、恐る恐る進んでいく。
そして、途中で見つけたイシツブテやワンリキーを倒していると、洞窟にも慣れたのか、ブルーの歩幅はいつもの歩幅と同様になっていった。
「んー。もっと色んな事が起こると思ったんだけど、何にも起きないわね」
「カメー(そうだねー)」
「ピギピギー(フラグ乙)」
「カメー?(フラグ?)」
そんな話をしながら、ブルーは山を登っていった。
全く何も起こらない事はいいのだが、現実問題として、起こっているのに気付いていないことがある。
これはメタモンも気付いていないことで、ブルーの発言でやっと理解するのだが、それはもう少し後のことだ。
「よく来たな。ここで会ったら百年目。いざ勝負!」
「ええ。いいわよ」
相手のワンリキーに対して、ブルーはゼニガメで勝負をす。
勝負の結果は言わずとも分かる通り、ブルーの勝利だった。
ニビシティから、これまでの敵を全てゼニガメで突破したことにより、ゼニガメのレベルはかなり上がっていたのである。
そして、当然のことながらレベルが上がったことで、ゼニガメに変化が訪れる。
「カメー!?(!?!?)」
ゼニガメは、戦闘が終わってすぐに光り始めた。
「どうしたのカメちゃん!?」
「ピギー?(あれかな?)」
「おおー」
光は少しずつ大きくなっていき、それに伴って形も変えていった。
ブルーはどうすることも出来ずにあたふたと慌てていたが、バトル相手だった山男とメタモンは珍しそうに落ち着いてみている。
「カメちゃんはどうなっちゃうの?」
不安が爆発したようにブルーは叫ぶ。
それに答えたのは山男だった。
「ポケモンの進化だ。慌てることじゃない」
「進化?」
ブルーは山男に言われ、改めてゼニガメを見る。
ゼニガメから放たれていた光は次第に消えていき、ゼニガメのいた場所には、ゼニガメに似たポケモンが佇んでいた。
「カメちゃん?」
「カメー(そうだよー)」
進化してもマイペースそうな返事をする元ゼニガメに、ブルーは安堵の溜め息を漏らす。
そんなブルーの不安をまぎらわせる為に、メタモンはゼニガメへと変身して、ブルーのリュックからポケモン図鑑を取り出して手渡す。
「ありがとう。メタちゃん」
ブルーはメタモンからポケモン図鑑を受けとると、進化したポケモンへ向ける。
「カメール?」
「カメー(強くなったよー)」
ポケモン図鑑に表示された名前を見て、呟くブルーへ、カメールは進化したことをアピールするため、その場で回って見せたり、速射のみずでっぽうを撃ったりしている。
「強くなったのは分かったわ。これからもよろしくね、カメちゃん」
「カメー(よろしくー)」
ブルーが落ち着いたことで、メタモンはいつもの定位置に戻る。
「おめでとう。お嬢さん」
「ありがとう」
山男はブルーへ賛辞を送ると、言いにくそうに話す。
「すまないが、あなぬけのヒモを持っていないだろうか?」
「持ってないわよ」
「うーむ。困ったな……」
「歩いて帰ればいいと思うけど?」
何でも無いことのように答えるブルーへ、困り顔の山男は話を続ける。
「そうしたいのもやまやまなのだが、気の向くままに来たせいで、ここが何処か分からんのだ」
「私はずっと上に来たわ。だから、反対にずっと下へ行けばいいのよ」
「───そうだな! それでは、お嬢さんが来た方へ行ってみるとしよう。ありがとう」
山男はブルーの説明に納得すると、礼を述べて洞窟の中を進んでいく。
ブルーはカメールへ向き直る。
「じゃあ、行きましょ。カメちゃん」
「カメー(はーい)」
ブルーは、カメールを伴って登っていく。
既に道らしい道は無くなってきていた。