Re:ゼロを見守る道連れ生活   作:ひょうたんまん

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初投稿です


第一章1 『貧民街の案内人』

 

彼女には両親なんて物は既に無く、あるのはやたら大きな廃屋一軒だけ、頼れる先は隣のじじいがいるが、それ以外にはいない。

しかしこんな境遇は特別珍しくもない、むしろ頼れる相手がいるだけましなほうだ。

少なくとも彼女(キニス)がいる貧民街の中では。

 

 

 

 

 

彼女は貧民街の道案内兼用心棒をしている。

それなりに腕は立つ方で、仕事のミスも少ない、はずだ。貧民街にわざわざ入る物好きにはわりと重宝されている。

とは言ってもそんな物好きは滅多に来ないのだが。

 

いつも通り、貧民街の入り口付近の細い路地をブラブラしつつ仕事が来るのを待つ。

経験上、私を知らない奴らから見ると私は只のカモとしか思われないらしい。

 

この街にはそれこそガラの悪い奴なんて星の数ほどいる。

 

見知った奴なら絡まれずに何とかなるが、知らない奴だとそうは行かない、絡まれたらどうしても小さなイザコザが起きてしまう。

 

そのイザコザのお陰で日銭を得ることもあるが出来ればそれは避けたいのだ。

 

いつものチンピラ達が徘徊している路地を避けつつ一般人が通る道までふらふら適当に移動する。

 

今日は商売敵の金髪が忙しなく屋根の上を跳び回っている。大方、タチの悪い連中の物を盗んだんだろう。

 

腐れ縁の中々見られない焦った様子を少し笑いつつ、仕事が来ない間の暇潰しをする。

 

上を見ながら歩いていたら見知らぬデカいのに絡まれた。絡まれたのなら仕方がない、いつものように気絶させてから金目の物を盗む。

すまないな、私は性格が悪いんだ。

泡を吹いて気絶する巨漢に小さく言葉を投げ掛けた。

 

 

いつもの日常である。

 

 

 

いつもの人通りの余りない抜け道で誰かとすれ違いそうになった。

 

前にいるのは、女性。

それもこんな所には似合わない綺麗な黒いドレスを着込んでいる。女性はこちらに気付くと妖艶な笑みを口元に浮かべた。

 

「…ッ!」

 

前方の女性の不自然な気配を感じて、思わず後ろに跳び退いてしまった。

あれは普通に、ただの会釈であるはずだが、なぜここまで過剰に反応したのか、自分でも分らなかった。

 

「あら、突然どうかしましたか?」

 

女性はこちらを心配した言葉をかけてきた。

そこいらの人に言われたらただの気遣う言葉のはずだが、なぜか妙な恐怖感がわいた。

恐らく外道の類だろう、このタイプの奴らは大抵が独特な空気感をしてる。

 

「もしかして…同業者の方ですか?」

 

口元に浮かべていた笑みを消し、狂気を孕んだ目でこちらを見据えている。

目を合わせるだけで体がすくむような感覚を覚える。

 

「わ、私はただの道案内人だ」

 

こういった相手の場合は下手に刺激しない方が良い。

 

女性は目をつぶり少し考えた後、笑みを戻した、

 

「なら丁度良かった、大通りにはどうやって出ればいいのか分からないのだけど…教えて下さらない?」

 

「それなら私がいま来た道を真っ直ぐ行けば出られる、あっちだ」

 

後ろを指差しつつ答えた。

 

「そうでしたか、わざわざどうもありがとう」

 

女性はそのまま行ってしまった。

 

すれ違い際に

 

「あなた、面白い目をしているのね」

 

と言い残して。

 

 

 

気持ちの悪い出来事はすぐに忘れてしまうに限る、気晴らしに仕事を切り上げてふらふらしようか。

 

やってることはいつも通りである。

 

 

 

帰宅中、疲れきった表情の男女二人組が貧民街近くにやってきた。

 

片方はハーフエルフであろうか、尖った耳が見える。

ハーフエルフで銀髪とは、中々に趣味が悪い。髪色はともかくどの種族かは選べないから仕方ないが。

キニスの視線に気付いたのか黒髪の妙な服装の男がこちらを向き、隣の銀髪ハーフエルフに何やら話しかけている。

 

少し眺めてると、ハーフエルフが声をかけてきた。

 

「突然だけど、あなた。宝石の付いた徽章をみなかった?誰かに盗まれたんだけれど…」

 

「金髪の…歯が…な女の子だった」

 

後ろで黒髪が何かゴニョゴニョしている。

 

ふむ、フェルトに何か盗まれたらしい。

 

「いや、宝石の付いた徽章は知らないな…しかし金髪の泥棒は覚えがあるぞ、どうせそいつに盗まれたんだろう」

 

「じゃあその子の居場所を教えてくれないかしら?報酬は今は払えないけど、ちゃんと払うから」

 

「…まあ良いだろう。承った」

 

この女はまあ身なりも良いし、いざとなったら身ぐるみ剥がして売れば仕事代にはなるだろう。

金髪が盗んだ物を売りにくるじじいの蔵は家の近くだし、帰るついでだ。

 

二人を連れてキニスは盗品蔵へ案内を開始する。

 

「これからよろしく頼むわ、私は…サテラ、こっちはスバルよ」

 

サテラが偽名とは直ぐに分かるがせっかくの客、それに金持ちには色々とあるのだろうし、聞かないでおく。

 

どうやらこの二人は今日初めて会ったらしい、にしてはスバルはサテラを信用し過ぎだろうと思うが、そこら辺はまあ、スバルは世間知らずらしいから納得しておく。

 

 

 

案内中、普段は無愛想な住人連中がスバルを見て少し同情したのか色々と施しをしている。

 

普段はずっと寝てるババアすらも、何か木の実を渡していた。

スバルは試しにとババアからもらった木の実を恐る恐る口に含み、やがてほっとした様に食べ始めた。

最初こそ何事もなく噛んでいたが、いきなり顔色が赤くなり、と思えば青くなり、鼻を大きく広げて涙をうかべて悶絶しだした。

 

「ふおおおお!優しさかと思ったらそうじゃ無かった!鼻が熱い!!体が熱い!死ぬかもしれない!」

 

「それはボッコの実だな、食べると気休め程度に傷の治りが速くなる奴だ、効果は人によって少し差があるがスバルは結構効くようだ」

 

「ちょっと効きすぎかな、スバルはマナの循環性が高いみたい。過剰摂取したら死ぬかも」

 

「食べる前に言って欲しかったなあ!で、どうすればいい!?」

 

「ちょっと待ってね…パック」

 

そう言うとサテラの銀髪の中から眠たそうな猫が這い出てきた。

サテラのマナの量からみて魔術士であると思っていたが、どうやら精霊使いであったようだ。

それも使役されている(パック)のマナの量をみるに、かなり高位な…

 

これは身ぐるみ剥ごうとしていたら返り討ちに会っていたな。

 

当のパックは話を聞いて無かったようで

 

「にゃんだい?ぼく、もうそろそろ限界なんだけど…」

 

「寝る前に少し食べていってくれない?これ」

 

とスバルを指すとパックはスバルを一瞥したとたん、眠そうだった黒瞳を輝かせた。

 

「食べていいの?」

 

「ああ、良いぞ」

 

熱で悶絶しているスバルの代わりに答える。

 

パックはサテラの肩の上で行儀良く座りなおし、

 

「じゃあ、いっただっきまーす」

 

直後にスバルのマナが一気にガリッと減った、精霊はそんなことも出来るのか。

スバルは今度は目に見えて寒がりだした。

この症状は私も覚えがある、マナが枯渇しかけているのだろう。体が芯から冷えていき動きが鈍るから戦闘中に陥りたくない症状の一つだ。

 

「ごちそうさまでした」

 

行儀良く手を合わせるパック。

サテラはパックに咎めるような目線を向けた、

 

「ごめんねスバル、久しぶりだから加減間違えちゃったよ。でも、スバルのゲートは少し変わってるね、使いこまれた感じは無いのに凄くよくマナを通すんだ、だからつい吸いすぎちゃった」

 

てへっと照れたように頭を叩くパック、少し可愛い。

しかし、吸われた側は少し考え事が増えたようでえむぴーとかあすぴるとか良く分からない言葉を呟いている。

 

 

「ごめんなさい。後でちゃんと言っておくから」

 

「反省はしてるよ、でも後悔はしていない。スバルは自分のマナの味に少し自信を持って良いよ」

 

多少おどけた調子のパックに毒気を抜かれたらしく、スバルは恨みがましく寒がるのをやめた。

 

「気にしてねぇよ、熱くて死にそうなのも終わったしな。それより犯人の行方を急いで追おうぜ!」

 

「遅くなった原因はキミが見知らぬ物を良く調べずにかじったからだろうに、本当に毒を盛ってくる奴だってここにはいるんだから気を付けるんだぞ?」

 

ゲッと黙ったスバルは無視して先に進む。

 

 

その後しばらくしてパックは依り代に戻っていった。

1日に出ていられる時間は限界があるらしい。

 

 

 

「ところで、サテラ」

 

「どうかしたの?」

 

「徽章は恐らくこの先の盗品蔵にある、しかし元の持ち主ですといってもハイそうですかと帰ってくる訳ないんだが、買い戻せそうか?」

 

「そんな事、言われるわけ無いじゃない。ただ管理人さんに盗まれた物があったら返してって言うだけよ」

 

…こっちはこっちで純粋過ぎるな、部分的にみればスバルより世間知らずかもしれない。

 

「そこら辺は俺のこいつを試してみようぜ」

 

スバルはサテラに万が一の為万が一の為と言いながら半透明なバッグからなにやら小さな箱をだした。

 

「こいつは携帯電話、その場の時を切り取って保存出来るんだ、こいつでなんとかいける…気がするぜ!」

 

そう言って私とサテラに向けて突然閃光を放った。

抗議しようとした所、目の前にずいっと私とサテラが描かれている精巧な絵をみせてきた

 

「ふむ。ミーティアか、確かにこれなら何とかなりそうな気もするな。」

 

じじいは偏屈だが物の価値と信頼には正直だ、騙すこともないだろう。

 

「ミーティア?なんだよそれ」

 

「魔道具のことよ。スバルてすごーく物知らずよね」

 

「どっちもどっちだな」

 

 

と言ってる間に盗品蔵についた。

 

「ちょっとノックしたら中から合言葉の合図があるんだ、少し待っていてくれ」

 

盗品蔵の戸をノックする。返事がない。

普段であれば直ぐに反応して落ち着きの無い足音が聞こえるはずだがそれもない。

戸を引いて見れば鍵が開いている…?

じじいは用心深い、よほどのことが無い限りカギをかけているはずだ。

 

「様子が変だな…見てこよう」

 

「ちょっと待て、俺が入るから待っててくれ」

 

「見ず知らずの男が押し入ってくるより顔見知りの私が入った方が安全だろう?スバルとサテラは外から管理人が帰ってきた時に説明してくれ、何かあったら呼ぶ」

 

入ろうとするとサテラにラグマイトを差し出された。

 

「いや、私は大丈夫だ、外で見張ってるときにでも使うといい」

 

「こりゃ何だ?サイリウム的なサムシング?素敵なステッキ?」

 

「これはラグマイト。叩くと光る鉱石よ、やっぱりスバルってすごーく物知らずよね」

 

「ほっとけ。おい女の子一人で入ろうとするなよ、俺も行く」

 

「…まあいいか、サテラ。外から管理人が帰ってきた時に説明してくれ、何かあったら呼ぶ」

 

サテラは少し頭を下げて黙考すると、スバルにマグライトを手渡した。

 

「気を付けてね、何があっても呼ぶのよ?特にスバル」

 

「分かってるよ。慎重に、だろ?」

 

サテラの言葉にうなずいて、そっと戸をあける。

常人なら前が一切見えない程度には真っ暗になっているが私にはしっかりと見えている。

入口をくぐった私達の目の前にあったのは小さなカウンターだっただ。盗品蔵で取引をする場合はここで交渉をする。カウンターの向こうに木箱が置いてあり、蔵主がいつ来てもそこに腰掛けていたのだ。

カウンターの近くには錆びかけた刀剣や独創的な形の壷が無造作に置いてあり、捨て値の書かれた値札と盗んだ奴の名前が刻まれた木札がついている

 

「妙に静かだな…まずは徽章を探すか」

 

「そうだな、ところでお前…そういえば名前聞いて無かったな」

 

 

そういえばまだ名乗って無かった。

いつもの悪い癖だ、そちらから聞かれなければ何も言わない癖は直した方が良いとここのじじいにも良く言われるが、こればかりは直る気がしない。

 

「キニスだ」

 

「あー…キニス、何であんたは灯り無しで暗闇の中を歩けるんだ?千里眼的な素敵能力?」

 

「そんな大層なもんじゃない、人より良く見える目を持ってるだけだ…それより速く徽章を探そう、高価な奴は奥にあるだろうからな」

 

「…分かった、後で色々と説明してくれよ?」

 

うなずいて二人で奥にいく。

 

普段は余り入る機会の無い蔵の奥にゆっくりと入っていく、異臭がするが古い物も沢山ある盗品ならではの匂いって奴なんだろう。

珍しい物を少しいじりつつ進むと不意に気持ち悪い感触を足裏に感じた、

 

 

「……あ?」

間抜けな声をだしたスバル側を向くとスバルが足元を照らして青い顔をしている。

 

足元には太い丸太のような『腕』が転がっている、しかし不思議な事に肝心の『胴体』に繋がってはいなかった。

『胴体』はすぐ近くにあった、筋肉質で力強そうながっしりとした胴体。それだけに血色の無さと、何より腕と首の繋がっていないアンバランスな感じが奇妙だった。

 

───片腕を失い、首を切り裂かれた大柄な死体がそこにはあった。

 

ただの見知らぬ輩の死体なら見慣れているし、冷静にすぐ判断を下す事が出来たのかもしれないが、こいつはどうみてもこの蔵の主人、私の親代わりのじじいのはずだ。私はこの場を離れる判断を下すのが遅くなってしまった

 

「ああ、見つけてしまったのね、それじゃ仕方ない、ええ仕方ないのよ」

 

静かで不気味なこの空間に、不意に低い女性の声が響いた。

いつの間に後ろを取られた?

 

「…ッ!スバル、私が時間を稼ぐから助けを呼ぶか逃げろ!」

 

「ちょーっとおそいかしら?」

 

振り向き様に右腕を腰のダガーに伸ばそうとした時、鋭い痛みを感じた。

 

見ればスバルの腹ごと右腕が切り飛ばされていた。

いつの間にこいつは攻撃した?

 

簡単な話だった。

話しかけてきた時には既に私の右腕は切られていた。

 

「ぐあーーーっ!」

 

スバルの叫び声が響き、どちゃっと血溜まりの中に倒れ伏す。

このままでは確実に二人とも死ぬ。スバルの腹の傷がどれ程かは分からないが、とにかくこの場を切り抜ければ可能性はある。

 

「あら、貴女はまだ立っていられるのね。いいわ、我慢強い子の腸はとても綺麗と決まっているもの。」

 

冷酷に、狂気的に、どこか楽しそうに。

狂った笑顔で後ろに倒れてもがいているスバルの血のついた。大振りなナイフを私に向けた。

 

「──天使に会わせてあげる」

 

これは死ぬかもしれないな…。

 

「簡単に切らせて堪るか、お前を殺してでも逃げさせてもらおう」

 

不慣れな左手で腰についているダガーの柄をつかみ、逆手で突き出すように斬りかかる

 

「あらあら、素敵。でも少したりないわ」

 

女の体がブレる、いや、違う。

 

私は地面に落ちた、遅れて私の腹を開かれた『体』が倒れ伏す。

 

近くに散らばるガラスの破片に私の首が写る。

 

「……バル?」

 

聞き覚えのある声、悲鳴、寒気、痛み、様々な感覚を覚えながら私、キニスは死を迎えた

しかし、何故か意識だけは嫌にはっきりとしていた。

 

 

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