毎日連載の恐ろしさよ

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エセ小説家の日常

 「ぐおおおおおお!!急げえええええええ!!」

 

 ある女性が、一人暗い部屋で指を高速で動かし、パソコンのキーボードをカタカタ言わせている。

 彼女は、一人ハーメルンというWeb小説投稿サイトの活動報告にて、

 

 『小説毎日2000文字くらい連載しまーす ☆(ゝω・)vキャピ』

 

 などとふざけて打ってしまったため今こんな事に追われているのだ。

 現在時刻、11時。明日になるまであと1時間。

 それで2000文字なら楽勝じゃんと思う輩もいるかもしれない。だが彼女は、時間が無いと同時に小説家…いや、作家にて最も恐れている"魔物"に追われているのだ。

 

 …"ネタ切れ"という魔物に。

 

 現在の執筆した文字は、300文字。ここから更に1700文字を書くのはそれほど困難ではない。人というのは夢中になれば30分で2000文字は書ける。だが、彼女はそうもいかない。締め切りが迫っていると、夢中になるどころか約束を破ってしまう心配の用が夢中の感情を上回り、かえってペースが遅くなってしまうのだ。

 更に、ネタ切れという魔物まで憑いている。不定期連載や月連載ならば別だが、連載するペースを早く決めてしまった以上その日を境に地獄がどんどんやってくる。

 今ワン○ースも週刊から月刊へと変わるらしいが、アレは飽く迄も約10年間も連載し続けていたから。逆に、"ここまで週刊だったなんてすごい"、"よく頑張った"などと褒めてくれる人が多いが、彼女は連載を始めてから一年間はおろか、半年すら経っていない。そこで一週間に一話にしますなどと言ってしまったら、確実にどこかからバッシングが来るかもしれない。毎日連載も十分きついのは確かだが、ワン○ピースと比べたらまだ取るに足らない。

 現在の文字、726文字。時間は、11時30分。嗚呼、確実にこれじゃあ間に合わない。彼女は考えた。もう少し小説を書くペースを上げる方法があればいいなと。だが、直ぐに気付く。それを考えて時間が無くなってしまったらそれはただの本末転倒だと。小説を書くペースを上げる方法は、小説を書くことだ。

 

 20分後…。

 

 彼女はまだ書き続けていた。休みなく動かした指が悲鳴を上げ、深夜に血眼になりながら書いているから、自分が過労死してしまう可能性すら感じられた。

 

 「…あと、あともう少し…。」

 

 そして、彼女は死にそうにもなりながらも最後まで書きあげ、そして…

 

 「…2文字くらい足りなくてもいいよね…。」

 

 1998文字も書きあげて、彼女は途轍もなく喜んだ。同時に、毎日連載している人々の途方もない苦労も味わうことに成功した。

 おめでとう。貴方はこれで勇者だ。ついでにはネタも沸々と湧いてきており、次からは普通に連載も出来そうだ。

 次の日になるまであと5分。そして連載しようとして、投稿ボタンを押そうとした。だがしかし、疲労の溜まった手でクリックしたところは、右上の赤いバツ印のボタンであり―――。

 


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