気がつくと私は空を舞っていました。視界いっぱいに映る森林の緑や、街を覆う様に建てられた外門、世界の果てだと思わせる様な大きな滝。
何故でしょう。初めて見るのに、何もかもがわかります。あれは二一〇五三八〇外門、箱庭の一番外回りの外門。あれは陽光を通さない天幕…
「ニャアアア!」
私が色々なものを見回していると、突然猫の鳴き声が聞こえてきました。そちらの方へ目を向けてみると、同じ歳くらいの金髪の男の子が一人、お嬢様風の女の子が一人、ショートカットの栗色の髪にノースリーブのベストを着た女の子が一人、計三人の男女が私と同じく空を舞っていました。
「騒がしい猫さんですね。まぁ、空に投げ出されればああもなるかもしれません。仕方の無いことでしょう」
空を飛び続けている時間の長さから、少し不思議に思い下を見てみましたが、失敗でした。
「ひっ!」
かなり高いところから放り出されてしまっていた様です。このままでは下の湖に叩きつけられてしまいます。どうしましょう。
「あぁ、そうでした。私は飛べるじゃないですか」
気づいた私は背に白銀色に輝く羽を展開し、羽ばたかせてゆっくりと下降していきます。
他の皆さんは重力に引かれどんどん落下していきます。
奇跡なんてものが起きるはずもなく最終的に湖にダイブしました。
陽光が暖かいとはいえ風邪をひきますよ?皆さんは気をつけましょうね?
「はて、私は誰に向けて話しかけたのでしょうか。まぁ、関係ないことです。私も早く降りましょう」
ゆっくり下を向いて降りていると、先ほど湖に落ちた金髪の男の子が陸に上がってきていました。
「このままではパンツ丸見えですね」
私はローブの裾を押さえ陸に降り立ちました。当たり前です。何故わざわざ湖の上に降りなきゃいけないのですか。それでは飛んだ意味がありません。
「「「………」」」
陸に降り立つと、先に落ちていた三人が呆然とした表情でこちらを見ていました。
何でしょう、私の後になにかいるのでしょうか?
「………?」
皆さんに倣って私も後を向きますが何もいません。
本当にどうしたんでしょうか。
「天………使………?」
金髪の男の子が呆然としたまま呟きました。
天使…いい響きですね。ですが、私は天使ではありません。この人は何を言っているのでしょうか?
「空…飛んでたよ?」
「え、ええ」
皆さん何なのでしょう。私の方を見てぼんやりと口々に呟きます。失敬な。私は見世物ではありませんよ。
「私は見世物ではありませんよ」
あ、失敗しました。流石に視線に耐えきれず、本音を漏らしてしまいました。
どうしましょう、これはコミュニケーション失敗ですかね?
「え、あ、いや、すまん。それよりも、確認なんだがお前らにもあの手紙が届いたのか?」
「あ、えぇ。私にも届いたわ。貴方も?」
「うん、私の方にも届いた」
「私は………」
はて、私はどうなんでしょう。彼らの言い分からするとここは異世界の様です。
ですが私にはその記憶がありません。記憶喪失というやつでしょうか?
では漫画とかでよくある記憶喪失は間違っているのでしょう。私の場合綺麗さっぱりなくなっています。霞がかかった様な感じや、思い出そうとすると頭痛がするなんて事は一切ありません。はて、私は漫画を読んだことがあったでしょうか?漫画というものがどういうものかは分かるのですが、読んでいた記憶が一切ありません。おかしなものですね。
「私はわかりません。所謂記憶喪失というやつの様です。」
「「「え?」」」
「自分が何者なのか、どこからきたのか、何もわかりません。わかるのは一般常識と自分にこの羽があることくらいですね。まぁ、羽が生えている時点で私の記憶にある一般常識も一般と言えるか疑わしいところですが」
また皆さんが黙り込んでこちらを見ています。これはいじめなのでしょうか?ですが、表情に悲しんでいる様な感情も入り混じっていますね。もしやこれが憐れまれているという事でしょうか、何だか気に食わないですね。私には憐れまれるような事はありませんし。
「あの、何故私が声をかける度に皆さん固まるのですか?
皆さんを不快にさせるようなことを言っていたでしょうか?」
「いや、別にそんな事は…」
「では、私を憐れんでいるのですか?やめてもらえませんか、そんなこと。私は別に記憶が無いことに対して何も感じていません。自分が無関心な事柄に対して他人が気にするなんて私の方が不快なんです。」
金髪の男の子が何か言おうとしましたが、関係ありません。私の発言が不快でなかったのであれば、答えは聞かずともわかります。
だから私は今後そんな態度を取り続けられることの無いように捲し立てました。
皆さんが少し震えてますね。言い過ぎたでしょうか?でも私には関係ありません。
むしろ私は被害者ですから。
「それよりも、そろそろ出てきたらどうですか?ずっとそこにいるんでしょう?うさぎさん」
「!?」
名指しすると耳がもっと激しく動き出しましたね。怯えているのでしょうか?私なにかしましたっけ?
「出てくるつもりがないのならそれはそれで良いのですが、彼らを招待したのはうさぎさんでしょう?そんな態度で良いのですか?」
「先程までの態度は謝罪いたしますので、そんなに黒ウサギを威圧しないでくださいませ。」
」
草かげの奥から黒…というよりも水色に近い色の長い髪の女の子が出てきました。
青っぽい色をしているのに何故黒ウサギなのでしょうか?どちらかといえば青ウサギなのでは?
「なら、隠れてないで出てくればよかったでしょうに」
「うぅ、言い返せないのですよ」
全て正論で返すとうさ耳を垂れさせて凹んでしまいました。これもやはりコミュニケーション失敗なのでしょうか…。人付き合いは難しいですね。
「とりあえず彼らに説明をしてあげてはどうですか?ずっと固まったままで皆さん困ってますよ?」
「そ、そうですね。では皆さん。ようこそ箱庭へ!我々は皆さんを歓迎いたします。まずはじめに、箱庭をご案内させていただく私は黒ウサギと申します。どうぞお見知りおき下さいませ。」
意気揚々とこの世界について語り出した黒ウサギを私は三人より後に回って聞くことに徹していた。
「貴女の言う我々というのは誰のことなの?」
「それは私を含めた我が"コミュニティ"のことです」
どうやら私が少し頭を整理している間に会話が結構進んでいたようですね
「そして、ギフト保持者は数多あるコミュニティの中からどこか一つに属していただきます。」
「断る」
「属していただきます!はぁ…説明に戻ります。ギフトゲーム勝者には主催者が提示した品物を獲得することができます。単純でシンプルなルールとなっております。シンプルイズベストでございますね」
私は楽しそうにこの世界を説明する黒ウサギをぼんやり眺めていましたが、時々こちらを品定めするかのような視線で見てきます。何でしょうかあの視線は、誘っているのでしょうか?私はノーマルですよ?たぶん、おそらく、記憶がないので確証はないのですが…。
「それでは、そろそろ移動しましょうか、十六夜さんももう満足しましたよね?」
「あぁ、別に問題ねぇよ」
黒ウサギの視線について色々と考えているといつの間にか黒ウサギの説明が終わったようですね。どうしましょう、何も聞いていませんでした。どうすれば生活できるのでしょうか?
「あのぉ、貴女のお名前も聞いてよろしいですか?」
いつの間にか目の前に黒ウサギがいました。考え事に集中しすぎていたのでしょうか、先程から殆ど周りが見えてません。これではいけませんね。ですがこの場合どうすれば考え事をしながら周りを見ることができるのでしょうか?
「無視しないでください!」
「へ?あ、すいません。ついぼんやりしていました。私の名前ですよね?私も教えてあげたいのですが、記憶喪失みたいでわからないのです」
「あ、そ、それはすいませんでした。無神経な発言して申し訳ございません」
記憶が無いと伝えると彼女もまた少し憐れみの混じった表情で謝ってきました。
記憶が無いのは悲しいことなのでしょうか?私にはいまいち理解できませんね。
「いえ、別に。記憶が無いことを気にしてはいませんから。謝る事はないですよ?」
「重ね重ね申し訳ないのでございます」
「気にしないでください。それよりも、私からも一つ質問よろしいですか?」
「はい、よろしいですよ。何かございましたか?」
「貴女の"所属しているコミュニティ"について教えてもらえませんか?先程の説明中コミュニティの全体的な説明はありましたが、貴女のコミュニティについて、目的も人材の数も何も話していませんよね?」
「………………」
固まってしまいましたね。やはり意図的に黙っていたのでしょうか?それよりも私にも何かしらのギフトが備わっているみたいですね。空に放り出されてから先程の会話まで何もかも鮮明に思い出せます。ほとんど聞いていなかった会話まで全て。
「何か知られたくないものでもあったのですか?それとも…逆廻さん?彼女は自分のコミュニティのことをどこかで話していましたか?私は所々聞いていなかったで聞き逃していたのかも知れません」
「いや、何も話してねぇな。後で問いただすつもりだったが丁度いい、おい黒ウサギ洗いざらい全部話な。コミュニティに行くかどうかはその後だ」
「………………」
これはダメですね。完璧に周りが見えていません。そんなに知られたくなかったことでもあるのでしょうか?まぁ、仮説くらいは建てられますが真意はわかりませんし意味は無いでしょう。
「とりあえず街に行きましょうか。彼女がこれでは聞きたいことも聞けませんし、日が落ちてから森を歩くのは危険ですから。」
「黒ウサギは置いていくの?」
「彼女はこの世界の住人ですからね、大丈夫でしょう。それにおそらくですが、彼女と一緒に行動していると面倒ごとに巻き込まれると思いますよ?私の勘ではありますが…」
まぁ、所詮は勘ですから確実ではありませんし、生活する上でなら彼女と一緒にいた方がいいのでしょうけどね。まぁ、きっと何とかなりますね。
「お待ちください!」
おや?復帰が早かったようですね。離れる前に気づきましたか。まぁ、わざわざ無視してまで逃げなくてもいいでしょうし、話してくれれば、判断もつきますし。
「話す気になりましたか?」
「え、えぇ。お話します」
「それではお願いしますね」
………………………
………………
………
…
そういうことですか、思っていた以上に面倒なことになっていましたね。それにしても"魔王"ですか…恥ずかしい渾名を持った方もいるのですね。どんな恥ずかしい発言をするのでしょうか?少し会ってみたい気もするのですが、話を聞く限りだとあまり会いたくない相手ですね。どうしましょうか。
「………」
皆さんの様子を見てみましたが、春日部さんと久遠さんは青ざめていますね。逆廻さんは肩を震わせてどうしたのでしょうか?
「いいぜ、いいぜ、いいなぁおい!この世界にはそんな素敵ネーミングな奴がいんのか!」
喜んでいただけのようですね。彼とは今後の付き合い方を考えた方がよろしいでしょうか?
「それでうさぎさん?現状と彼らを呼んだ理由はわかりましたが、コミュニティ全体の目的はなんですか?」
まぁ、聞かずとも予想はつきますがね。憶測で動いても良い結果にはなりませんし、聞けるのなら今のうちに聞いておいた方が得策でしょう。
「私は、私達は魔王から奪われた旗印と名前を取り戻したいです。いつかきっと帰ってきてくれる同士達の為にも。ですから、どうか、どうか私達に力を貸してください!」
これが俗に言う泣き土下座というやつですか。そこまでされると断りづらいですね。どうしましょう。きっとこのまま手伝いを承諾すれば忙しくなるでしょうし、少し悩みますね。
「いいぜ、俺は手伝ってやるよ。下らねぇ理由なら断ろうと思っていたがな」
「私も、手伝ってあげるわ。それに、底辺から上り詰めていくなんて最高じゃない」
「私は友達を作りに来ただけだから、黒ウサギのところでも問題ない」
「皆さん…ありがとうございます!」
ずっと苦労してきたのでしょうね。涙ぐんでずっとお礼を言ってます。それにしてもどうしましょうか、私だけ入らないなんて言うのも空気が悪くなるだけですし…
「私でよければお手伝いします」
「あ…あぁ………皆さん………本当にありがとうございます!」
泣き崩れてしまいました。どうしましょうこれ。
「とりあえず落ち着ける場所に行きませんか?このまま日が暮れても困りますし」
「あ、すみません。ではコミュニティの方へ行きましょう」
私達はうさぎさんの先導の下街の方へ向かいました。
………………………
………………
………
…
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前回あとがきは無い!
と言ったな…あれは嘘だ
まぁ、あれは作者が勝手に言っていただけで俺には関係ねぇ。
というわけで今後はあとがきは俺…鷹宮恭弥が担当するぜ。
と言ってもあまり話すこともないがな、ただ一つだけ言っとくことがある。
過去作品も含めてな、意味のわからない設定だとか、意味不明な能力だとか、そのへんは強すぎる力を持ったが故の弱点って奴だ。俺の能力もそう。所謂出る杭は打たれるってやつだな。意味が伝わるかわ微妙だが…
要は作者は俺達がチート使って暴れ回るところを書くのが嫌いなんだとよ。だから、面白くねぇだとか、設定が意味不明だとか、って奴はブラウザバックを推奨するぜ。と言ってももう遅いがな。とりあえず作者は
「自分の作品で1人でも面白かったって言ってくれる人がいればいい。自分の作品を読んで1人でも多く楽しい時間を過ごせたって思ってもらえるように」って頑張っているからな。どこをどうすれば見やすくなるだとか、誤字脱字なんかの指摘だとかさ応援してくれるコメントならいいが、この設定意味不明とか、この能力意味あるのかよなんていうコメントはできれば控えてくれ。作者はあまりメンタルが強くねぇんだ。まぁ、メンタル弱いならネット投稿するなよって話だけどな。
まぁ、そういうことだ。というわけで今までの作品と今作ではあとがきを書いてる人間が違うから、今までのような中途半端に礼儀のあるような書き方はしねぇ。嫌ならマジでブラウザバック推奨だ。それじゃあ俺はそろそろ
るなちーんとこ言ってジャクジーに潜む用事があるからなまた次回あれば会おうぜ