『あんた、この村の外に出る気はない?』
ミュラの一言が、ずっと脳内で響いていた。
村を出る。
考えたこともなかった。
小さい頃から今までずっとこうしてアルエリの村で暮らしてきたが、平和だ暇だのと常日頃つぶやいていた割には村から出ようとなんてしなかった。
いや、自分にはデメリットなんてないのではないだろうか。
俺はこの退屈な村から出られるし、
この前のミュラへの謝罪として何か珍しいものを見つけてくるのもいいかもしれない。
いやしかし、団長から許可を貰えるだろうか。悩む。
...土産で喜ぶミュラのことを考えてニヤついてしまった。
なかなか顔からニヤけが引かないイブンは、ベットに顔を埋めて冷静になろうとしているうちに眠りについた。
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一応眠りにはついたものの、考えに耽っていたので睡眠時間が足りない。
隠そうともせず欠伸をしながらいつも通り食堂に向かった。
この食堂は騎士団が管理している。平和な村のくせして無駄に騎士団が大規模なせいでこの食堂も大きい。
騎士団に所属しているものなら下級上級問わずこの食堂を無料で利用できるので、毎朝この食堂は騒がしい。
ちなみに一般の村人なども利用でき、その際は有料になるがバランスの良い食事をとることができる。
「日替わり定食。」
「おう、んじゃ482番な。」
この食堂の管理は騎士団が管理している、とはそのままの意味だ。
騎士が当番制で料理を作ったりしている。
ちなみに俺は、団長に「お前は台所に入らないでくれ!頼む!」と言われているので、やらない。
あの時の団長は必死だった。何故なのか。まぁ、食べる専門なのでいいか。
頼んだものができるまでの間は暇だ。
と、思っていたのもつかの間、3つほど離れたテーブルの椅子に腰掛けていた村人が奇声をあげていた。
またか。
見る限り、また気分型定食に挑戦していたらしいミュラは物凄い勢いでコップの水を飲み干していた。
※気分型定食とは、日替わり定食と似ているが全く違う定食。
料理開発好きな騎士改めゲテモノ料理騎士が気分でゲテモノ料理を作る。
しかし、たまに凄く美味しいものを作る。たまに。
ミュラ曰く『ランダムに出てくる料理なんて退屈しないじゃない?』だそうだ。
いくら退屈がしのげるからと言って俺は毎日あんなものを食べたくはない。
ちなみに、今日の気分型定食は激辛カレーであった。これでもいつもよりは断然マシ。
「ぐあああああああ辛えええええええええええええ」
女子らしからぬ声だ、まったく。あ、俺がいることに気がついた。
何、何なに。唇むっちゃ腫らしながらこっち見てゲスい笑みを浮かべてるんですけれど。
待ってください、こっちこないで。
「さぁ食らうがいい!!そして激痛に襲われるがいい!!」
毎度思うのだがこいつは気性が激しすぎるのではないだろうか。毎度毎度付き合わされるこっちの身にもなっ
「ぎゃあああああ辛ええええええええええええ」
まっ待て尋常じゃないほど辛いぞこれ誰か水をくださいってミュラお前俺の定食食ってんじゃねええええええええ
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朝から最悪な思いをしてしまった、はぁ...。
それはさておき。ミュラとの別れ際に
『あんた、団長さんにしっかり昨日のこと話つけてきなさいよ』
と言われた。そんなに蜂蜜菓子が惜しかったのだろうか。
まぁ、言われたものは仕方がない。どうせ許可は貰えないと分かっているし、さっさと用を済ませてこよう。
「いいじゃないか。行ってこい。」
はい?
「何を腑抜けた顔をしている。いつもか。はっはっは。」
団長殿、流石にそれを言われるとへこみます。
しかし、特に面白くもなかったらしい。直ぐにいつもの真顔に戻る。
「お前は稽古を見る限り腕っ節は立つだろうに。村の外にでも出れば少しはその腑抜けた顔もマシになるだろう。」
はぁ。よくわからんが最悪だ。
「そうだなぁ、隣の村の騎士団にでも行って鍛えてもらってこい。話は通してやる。」
俺の考えてたことと全然違う方向に行ってるんですが。団長急にやる気出してるし。
「わかりました。」
困ったなぁ。
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「へぇ、よかったじゃない。あんたもいい経験になるし私も隣の村に行けてwin winよ。」
どこがwin winだよ。お前がwinでも俺はloseだよ。って、ん?
「お前もついてくるつもりなのか」
「あれ、そういう話じゃなかったっけ。」
ミュラはまたもやゲスい笑みを浮かべている。
「お土産を買ってきてもらうより一緒に行った方が色々買ってもらえるでしょ。」
相変わらず考え方が汚い。はぁ...。またため息をついてしまった。
「んじゃ、早く荷物まとめなさいよ。善は急げって言うでしょ。」
ミュラは早口で捲し立てる。
いや、流石に気が早すぎないか。
「ほら!さっさと!」
はぁ。なんでこんなことに。
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曲がりなりにもあいつは農家の娘なのだ。仕事を放って村を出ても大丈夫なのだろうか。
あいつの家は、アルエリの村の中でもずば抜けた広さの畑を所有している有名な農業家なのだ。
ミュラの家族はいつも忙しそうにしているのであまり話すことはないが、
何か用があるときなどに伺うといつでも歓迎してくれる。
なんであいつがいつも暇そうにしているのかは知らんが。
隣村に行くまでには最低でも荷馬車に乗って五日ほどかかる、と団長が言っていた。
当然、その間は宿に泊まるなんてことはできないので野営をすることになる。
五日間分の荷物の入ったバックパックは結構な重さだ。
ミュラも同行するので、その分の食料も加わり更に重くなっている。
幸いにも歩いていくわけではないのでまだマシだと思っておこう。
さて、ミュラを呼びに行くか。
二話でした。場面移動が多かったり、いらない場面があったり...。
あからさまにネタっぽいものは入れないほうがいいのでしょうか。
次回はもっと真面目に書いていこうと考えております。
今回はこれで筆をおかせていただきます。
自宅にて、大げさにEnterキーを打ちながら次話の構想を練りつつ。