平和の旗幟   作:hashibami

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三話『路中』

村を出たことのない俺には珍しい風景だったが、流石に三日目ともなると飽きてくる。

 

これをあと二日間見続けなければならないともなると、憂鬱で仕方がない。

 

借りた荷馬車に乗り、目的地まで片道五日間。

 

着いてくると自分で言いだしていたミュラも、暇だ退屈だのと俺に文句を言ってくる。

 

そんなことを言われましても。俺も同じ気持ちなので。

 

「ねぇ、ちょっとお腹空いたんだけど。何か適当に食べていい?」

 

こちらが返答する前にもう既にミュラの手はバックパックを漁っている。

 

「まだ昼食には早い時間だが、まぁいいか。」

 

俺が言い終わる前に食べ始めるのはやめてほしい。

ミュラが食べているのは干し肉。

 

生物なんてとんでもない。団長には日持ちするものを用意するといいと言われている。

他にも乾燥パンなどはあるが、パサパサしていてあまり美味しくない。

 

昨日の夜はミュラがあまりにも微妙な食事に飽き飽きし、

厚めの塩漬けの肉を少しの水と野菜で煮込んで、味を整えてシチューにしていた。

 

そんな方法があるのか、ミュラも意外と料理ができるのだな、と感心していた一方、

こいつ飽きるの早すぎないか、とも思った。

 

そんなことを考えていたら、後ろの文句たらたらでうるさかった奴が口に干し肉をくわえたまま寝ている。

 

こいつは無防備で隙が多いが、俺には手を出すような度胸はないので心の中で悪態を吐く。

 

...その干し肉をどうにかしろ。あまりにもおっさんくさい。

 

ため息をつきながらミュラの口から干し肉を取ってやる。

 

少しだけミュラの口をつけていた部分を見ていたが、理性が俺を引き止めてくれた。

 

再びため息をつく。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ずっと同じ風景を眺めているだけだったので、時間の感覚がなくなっていた。

ミュラの目が覚めた頃には既に陽の光が山の端にまで差し掛かっていた。

今日はここらで野営するか。

適当なところで荷馬車を止め、馬にさっきまでかじっていた野菜をやる。

その後、川の水をやってから野営の準備をした。

野菜をかじっていたので、中途半端に腹がいっぱいになってしまった。

ミュラはといえば、お腹すいたーだの、怠いーだのとぶーぶー文句ばかり言っている。

昼食時、近くの川で適当に魚を釣ったので、今日の夕食はこれにしよう。

 

「どこで釣ったのそれ。」

 

「昼間釣ったんだよ、見てなかったのか。」

 

ミュラは思い出そうとしていたが、やがて記憶になかったのか諦めたようだ。

こいつがちょっとばかし記憶力無さ過ぎなのか、本当に釣ったところを見ていないのか。

前者の可能性も否めないが。

 

まぁいい。さっさと薪に火をつけてしまおう。

バックパックの中から火打石を取り出す。

腰からナイフを取り出し、細めに割った薪をささくれの様に割く。火がつきやすくするためだ。

そして、ナイフの峰を火打石に叩きつけ、今割いた所に火をつける。

小さかった火は大きな薪に燃え移り、やがて大きな炎になる。

火の勢いが安定したのを確認し、さっきの細めに割った薪をさらに細く棒状にしたものに魚を通す。

俺はそこまで腹が減っているわけではないが、ミュラが食べそうなので三つほど魚を用意した。

まぁ、あいつだったら俺の分まで食いそうな気もするが。

木の棒に通した魚を焚き火の周りに刺し、一息ついた。

 

 

空を見上げた。さっきまではまだ明るかったはずの空が、いつの間にかほとんどが闇に覆われ、

遠い向こうの方にわずかに橙色の空が見える。

 

不思議だ。

いつも見ていた空とは全く違う気がしてならない。

辺り一面を見渡しても障害物はなく、ただただ広く、高い空。

賑やかな村とは正反対の静寂。

それこそ不安になる程。

 

天上を見上げ感嘆していると、ミュラが若干キレ気味に声をかけてきた。

 

「ちょっと、早く食べないと魚焦げるよ!」

 

そう言いながら既にミュラは魚に口をつけている。

ミュラ、一口がでかい。

 

まぁいい、熱いうちに食べるか。

 

 

…ッ、うまいっ!

 

川魚だったので臭みを気にしていたが、以外とそんなことはなかった。

むしろ、程よく脂がのっていて美味しい。

味付けは塩だけだったが、それだけで十分だった。

腸 (わた)の部分も、大人の味、というやつだろうか。

 

…ミュラは食べられなかったようだ。

 

「ここの部分食べられないなー。」

 

腸だけ食べろ、ということらしい。

仕方ない。

 

 

あっ。

 

「どうしたの?」

 

まずい、顔が熱い。

 

「おっ、俺は先に寝るからな!」

 

「???」

 

空気は涼しい方だったが、なかなか顔の温度が下がらない。

 

ため息をついた。




久しぶりの投稿でぎこちない文章となっておりまーす。
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