ドレスを身に纏い黒髪を腰まで伸ばした少女とフライトユニットのついたパワードスーツを着た少女が崩壊した大地で剣を交えている。
『これは…俺の夢か?』
ぼんやりとした意識の中、五河士道は考える。
『--切れか!……こんな時に!』
夢の中で士道は一人叫び…。
それと同時に激しい振動が起こり、士道の意識は覚醒する。
「ねぇねぇお兄ちゃん
ねぇねぇお兄ちゃん
お腹お腹が好いたのだー♪」
等と鼻歌を口づさみながら制服姿の少女‐五河琴里は布団を被っで寝息を立てていた士道の睡眠を邪魔するようにベッドの上で飛んだり跳ねたりしている。
「おっ、俺の愛する妹よー」
「んっ?どうしたのだ?私の愛するお兄ちゃんよ?」
白いリボンでツインテールにした赤毛を揺らしながら琴里は士道に尋ねる。
「とりあえず、そこをどいてくれないと起きれないんだが?」
「はーい」
そう言いながら琴里は士道の上から飛び降り、部屋から出て行く。
『変な夢だったな…』
そう心の中で呟くっ同時に士道は起き上がり身体を軽く動かす。
それによって寝ぼけた頭がすっきりとするのを感じる。
しばらくの柔軟体操の後に士道は朝食を作るために台所へと向かうのであった。
『―本日未明、天宮市近郊にて空間振が起き―』
「うん?」
聞き慣れた街の名前と物騒な単語に士道はベーコンエッグを作る手を止め、琴里の見ているニュースを見る。
空間震―空間そのものが振動したかのような大規模破壊をもたらす超自然災害だ。
30年前に起こった大空災はユーラシア大陸を壊滅させ、一億人以上の死者、不明者を出したとして教科書にも載っている。
最近では観測されなくなっていたが、五年ほど前からこの天宮市付近で再発したのを皮切りに日本各地で再び空間震が起こり始めているのだ。
「最近多いな…」
そう呟きながら士道は朝食の準備を急ぐ。
「……だねー、ちょっと予定より早いかなー」
『続いてのニュースです。2年前に米国防総省、並びに各国のミサイル基地が何者かにハッキングを受けた事件ですが…』
琴里がソファーにもたれながら何事か呟いた気がしたが、士道は次のニュースに耳を傾けながら慣れた手つきで盛りつける。
キャスターが今、話しているのは2年前にペンタゴンと世界各国のミサイル基地が何者かにハッキングを受けたと云う事件 である。
前者は米国の重要機密情報を根こそぎ持っていかれ。
後者は発射状態にあった2000発以上のICBMなどの弾道ミサイルを様々な国に向けて発射されると云う大事件である。
幸いと云うべきかICBMは目標に届く前に自爆し死傷者はゼロと言うものである。
「よし、出来たっと…」
盛りつけを完了したメニューをテーブルへと持って行く。
出来上がった朝食はトーストと目玉焼き、サラダと手間がかからない簡単なものだ。
「そう言えば、今日は中学も始業式だっけ?」
「そうだよー」
「なら昼は外で喰おう、作るの面倒だし」
士道の言葉に琴里は数秒程考えた様子をした後、口を開く。
「ん…デラックスキッズプレート!」
「お子様ランチか」
近所のファミレスのメニューで琴里はお気に入りのお子様ランチをご所望らしい。
「それじゃ、今日はファミレスに決定。
学校終わったらファミレス前で待ち合わせな」
士道の言葉に頷くと同時に琴里は興奮した様子で続ける。
「絶対だぞ!絶対約束だぞ!地震が起きても火事が起きても空間震が起きてもファミレスがテロリストに占拠されても絶対だからな!」
「いや…流石にそれはどうかと思うぞ…」
約束だよー、っと繰り返す妹に苦笑を浮かべる士道だった。
廊下に張り出されているクラス表を確認すると士道は一年間世話になる教室‐二年四組へと足を運ぶ。
荷物を適当に片付けると教室内にいるメンバーを確認する。
「ー 五河士道」
その途中に声をかけたのはショートボブの無表情な少女だった。
鳶一折紙、悪友である殿町が言うには学生で五本の指に入る美少女で完璧超人とのことである。
事実、人形のような端正な顔立ちにスポーツ万能、成績も常に主席と羨ましい程の才能の持ち主である。
そんな超有名人な鳶一が自分に何の用だろうかと首を傾げる士道。
「鳶一さん…俺に何か用かな?」
淡い期待を抱きながら折紙に尋ねる。
「…いえ、何でも無い…」
そう告げると士道の隣の席へと腰を下ろし、本を読み始める。
どうやら士道の興味は無くなったようであった。
その後に先生の挨拶やら始業式が終わり、放課後。
「五河ー、どうせ暇だろ?昼飯行こうぜー」
士道にそう声をかけてきたのは中学時代からの悪友、殿町だ。
「残念だが先約がある」
「女か?」
怪訝な表情を浮かべて問い詰める殿町。
「馬鹿やろう妹だよ」
そんな殿町のにそう答える士道。
「なるほど琴里ちゃんか…仲の良いことはいいことだが、くれぐれも警察のお世話にならないようにな」
「なる程、お前が俺をどんな目で見てるか良く理解した。
ちょっと表に出ろ」
鞄を下ろしながらファイティングポーズを取る士道。
その時である不快なサイレン、その後にシェルターへの避難を促すアナウンスが流れたのは。
空間震警報である。
お互いに無言で頷き合いながら廊下の外へ出ると、クラス担任である珠恵があたふたしながら生徒の誘導を行っている。
「おっ、落ち着いて。
おかしをわっ、忘れないでー」
『先ずは自分が落ち着こうぜ』
などと思いながら士道は一つの心配を抱く。
『琴里のやつ…ちゃんと避難してるよな。
うん、大丈夫…』
心の中でそう呟くも「空間震が起きてもファミレスがテロリストに占拠されても絶対だからな!」っと言った琴里の言葉が頭から離れない。
『念のために…』
そう思いながら士道は携帯のGPSで琴里の位置を確認する。
「あの馬鹿やろう」
それと同時に士道は全速力で走り出した。
琴里の現在値がファミレスの前だったからである。
心臓がバクバクと破裂しそうな程のに脈打っている。
学校からファミレスまでを士道は猛スピードで走っていた。
時速にして80キロ…どう考えても人間が走って出せるようなスピードではなかった。
【魔法】…体内に眠る魔力を操り、その量が許す限りあらゆる奇跡を起こす技術である。
この魔法を使えるものを魔法使いと呼ばれており、世界に存在する魔法使いは十人ほどしかいない。
今から二年前…隣街へ出かけていた際に空間震に巻き込まれ懸けた時に自分が魔法を使える事を知ったのだ。
その時、魔法使いを名乗る女性に強引に拉致され半月の修業を経て魔力をある程度自在に扱えるようになったのだ。
「つっ!」
突如、猛スピードで走っていた士道はスピードを緩めてその場に止まる。
肌がビリビリするようなプレッシャーを感じたからだ。
士道が止まる同時に眩い光と衝撃波が士道を吹き飛ばす。
「ぐっ!」
地面を転がるように受け身を取り、立ち上がる。
「なっ!」
それと同時に士道は驚愕に目を見開く。
何故ならば先程まではあった街並みが消失していたからだ。
クレーターのように抉れた地面には椅子のようなものと共にドレス姿の女がいた。
『あれって…』
士道は直感的にその女が今朝に夢に見た人物である事に気づく。
女の方も士道に気づいたのか、椅子から大振りの剣を引き抜き構える。
「また…私を殺しに来たのか…」
女は悲しげにそう言うと剣を握る手に力を込める。
『不味い!』
相手は既に横凪に剣を振るうモーションに入ろうとしている。
今から伏せて間に合うかどうかは解らない。
『なら!』
心の中で叫び、腕に魔力を集中させて簡易的な防御魔法を発動させる。
それと同時に女が剣を振るい斬撃が士道に襲いかかる。
「がぁっ!」
腕が引き千切れそうな痛みに士道は声を上げる。
たが斬撃は士道の魔法を破る事無く消滅。
腕にも身体にも傷は無い。
痛みの残る腕を振りながら士道は斬撃を繰り出した女をみる。
御伽噺に出てくるような美しい少女…。
「――君は、一体…………」
腕の痛みすら忘れ、士道は一歩前に出て少女に問う。
「………名を聞いているのか」
鈴の音のように綺麗な声だが、どこか悲しそうに思えた。
「――――――そんなものは、ない」
そう言うと同時に少女は再び剣を振り上げる。
「そんな事、する訳が無いだろ」
その瞬間に士道は口を開く。
「へっ?」
士道の口から紡がれた言葉に女は目を円くする。
「さっき、君が言っただろ。
私を殺しに来たのか?って。
それに対する答えだよ」
その言葉で一瞬だけ戦意が薄れる。
――― その一瞬の隙をついて空から何者かが舞い降りる。
「………鳶一?」
その人物の顔を見るなり士道はその名を口にする。
先程、クラスで話した少女‐鳶一折紙であった。
しかも身体にはフライトユニット付きのパワードスーツと今朝に見た夢のままの格好であった。
「五河士道…」
折紙は士道を一瞥すると少女へと視線を向ける。
「…また、おまえら…っ!」
見るからに苛立った様子の少女。
誰がどう見ても臨戦態勢、いつ戦闘が始まったとしてもおかしくない状態であった。
士道は二人を止めるために足に魔力を集中させようとする。
だが足には力が入らずに士道は膝を折る。
『魔力切れ!こんな時に!』
士道が心の中で叫んだ瞬間、少女と折紙は激突する。
今の士道にそれによって生まれた衝撃波を防ぐ方法は無い。
士道は紙屑のように吹き飛ばされて意識を失った。
up
冒頭で琴里が歌ってる歌はヘタリアのまるかいて地球の替え歌だったりしますー