デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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短編連投第二弾です


第十話『雷華コネクト』

力を封印した桜を抱きかかえて士道は路地裏へ降り立つと桜を地面に降ろす。

そると同時に疑似霊装のダークコートを脱ぎ、桜へとかけてやる。

 

「ありがとう、士道くん」

 

桜がそう礼を述べた瞬間、インカムにノイズが走り声が聞こえる。

 

『へぇ~、まさかとは思ってたけど…まさか本当に桜の力を封印しちゃうなんてね…』

 

聞くまでもない、桜の保護者を自称する少女-雷華だ。

 

「さて…フラクシナスとの回線を繋ぎ直してくれると非常にありがたいんだがな?」

 

『シドー!無事か!?』

 

『士道さん!』

 

士道がそう言うと同時にインカムから十香と四糸乃の心配したような声が聞こえてくる。

この間の時と同じようにフラクシナスで士道のデートの様子を見ていたのだろう。

 

『さて…五河士道……』

 

再び、インカムに小さくノイズが入り雷華の声が聞こえ士道は思わず身体に力が入るのを感じる。

 

『大丈夫、身構えなくても良いよ。

ボクも君と言う人間にとても興味がある。

だから…ボクと少しばかり話をしてくれるかい?』

 

雷華がそう言った直後、《フラクシナス》の転送装置にも似た浮遊感を感じた次の二人はその場所へと移動していた。

 

広さにしては畳二十畳程度と割と広い。

にも関わらず、当たりに散らばるゴミや何台も置かれたパソコンのせいかいささか狭く感じられた。

パソコンの大型モニターの前にその少女はいた。

身長は四糸乃や琴里と対して変わらず、綺麗な金髪とジュニアアイドルと言っても違和感が無いような整った顔立ちを持つ白衣姿の少女だ。

 

「ようこそ五河士道、歓迎するよ」

 

っと、とても友好的な態度を示す少女。

そこで士道は一緒に転送されてきた桜がいないことに気づく。

 

「ああ、桜か…あいつは隣の部屋に転送しておいたー」

 

士道の疑問に雷華は気づいたなかそう答える。

やっぱりあの浮遊感は転送装置によるものかと士道は納得する。

 

「顕現装置をどうやって調達したんだ?」

 

「ん?自分で作った」

 

『なっ!?』

 

通信の方は完全に回復したらしく、それがどうかしたのかとばかりに答える雷華にフラクシナスにいる琴里が驚きの声を上げる。

だが士道はそのことに大して驚かずに質問を続ける。

 

「ひょっとするが二年間にペンタゴンにハッキングしたりICBMを発射させたのも?」

 

「うん、僕だね。

ペンタゴンにハッキングしたのは精霊に関する情報を得るため。

ICBMを発射させたのは威嚇の意味を込めて発射したのさー」

 

雷華の言葉に『随分と大仰な威嚇だな…』っと思いながら苦笑しながら次の質問をする。

 

「なぁ?雷華…お前は…精霊なのか?」

 

士道のその質問に雷華は驚いたように目を見開く。

 

「何でそう思う?」

 

「俺はハッキングやらパソコンにはそれほど詳しくは無いが…それでもペンタゴンやらフラクシナスに単独でハッキングするのは精霊ぐらいじゃないと無理では無いかと考えてな…」

 

士道の言葉に雷華は目をすっと細めるとパソコン脇の冷蔵庫からドクペを取り出してプルを開ける。

 

「まっ、無きにしも非ずだね…

ボクは確かに精霊さ…但し、桜のように生まれながらにして精霊だった訳では無い」

 

「どういう事だ?」

 

怪訝そうに眉を潜める士道に雷華は座るように促すと冷蔵庫からドクペをもう一本取り出すと士道に手渡し口を開いた。

 

「話させてもらうよ…

ボクが精霊になるまでとボクが精霊になった日の事を…」

 

 

少女―武御原頼華は政府の情報局に勤めるプログラマー件、ハッカーの両親の下に生まれ、子供のころからパソコンが友達代わりであった。

彼女が9歳の頃には両親の手伝いでプログラミングを始める事となる。

ウィザード級と言われる両親の才能を受け継いだ頼華はその才覚をメキメキと伸ばし、中学に入る頃には両親の技術を凌駕する程になっていた。

また、プログラミング同様にハッキングの腕もまた両親のそれを凌駕し、ちょくちょく政府のデータベースへの侵入を繰り返すようになっていた。

頼華の両親はそんな彼女を叱ることなく素直に喜び理解を示してくれていた…。

そんなある日の事である。

 

「顕現装置、及びワイヤリングスーツ基礎運用論…?」

 

防衛庁のデータベースへハッキングを仕掛けた頼華は聞き慣れない言葉に首を傾げる。

現在、彼女が見ているのは防衛庁の機密文章だ。

頼華の中で何かが警笛を上げている。

この情報はヤバいものだ…。

見てはならないものだと…。

それでも…、頼華は好奇心を止めることが出来ずにそのファイルをクリックした―。

 

そこまで話すと雷華は口を休めてドクペの缶を手に取ると喉を潤す。

「ファイルに書いてあったのは空間震と精霊との関係、そしてAST等の一般には知り得ない未知の情報だったんだ…

最初は心は躍ったよ…でもそれが後悔に変わるまでさほど時間はいらなかった…」

 

「何があった?」

 

士道が尋ねると雷華は悲しそうに目を伏せると言葉を紡ぐ。

 

「ボクがその情報を見てから一週間程たった雨の日に両親が死んだよ…。

後から調べてみると防衛庁がデータベースに接続したIPアドレスを割り出して、事故に見せかけて二人を殺したって事がわかったよ…。

データベースに侵入した形跡も、ファイルを閲覧した形跡もちゃんと消した筈だったんだけどな…」

 

「ッ…!」

 

寂しそうに呟く雷華に士道は言葉を失う。

幼くして身内を亡くす…。

その原因となったのが自分のせいだとすればどれだけ悲しい事なのだろうか…。

 

「両親を失ったボクは住基データを改ざんして戸籍上、別人になったって訳さ…」

 

そう言いながら雷華は首をすくめる。

悲しい素振りも見せずに言葉を紡ぐ雷華に士道は話題を変えるように問うた。

 

「…この部屋はどうしたんだ?」

 

「何かあった時の為にって両親が残しといてくれたお金でシェルターを改築したものを買った」

士道の問いにそう答える雷華。

 

「そういえば桜との出逢いと…ボクが精霊になった時の話だよね」

缶に残っていたドクペを一気に飲み干すと雷華は話を続けた。

 

 

頼華が雷華と名を変えて、3ヶ月…。

シェルターを改造して作った自宅の生活の慣れてきた頃。

廃棄された監視衛星をハッキングしていた時の話である。

 

「んっ?」

 

雷華はそれに気づく。

大きく響くサイレン音―空間震警報である。普段から地下シェルターで生活をしているために空間震の被害はなかったりするのである。

自分以外の周りがどうなろうと知ったこっちゃ無い。

はずなのだが―。

以前に見たファイルの内容が頭の中にちらつく。

気がつくと雷華は人工衛星を操作して街の上空へと移動させていた。

空間震警報によって避難したのか街には人気のないゴーストタウンのようになっていた。

そんな映像の中心が撓み、何も無いはずの空間に水へ石を投じたときのような波紋ができていた。

ゴクリと息を呑む雷華。

それと同時に空間の歪みがさらに大きくなっていく。

そして、画面に小さな光が生まれたと思った瞬間、爆音と共に、画面が真っ白になった。

 

「―っ!」

 

画面内の出来事だとわかってはいるはずなのに…思わず目をつむってしまう。

そして数秒後、妙に激しくなった動悸を抑えながら目を開けると、画面には、今までとは全く違う風景が映し出されていた。

街がすり鉢状の穴になっていた。

そうとしか表現する言葉がなかった。

そこにあった筈の店や街灯、電柱、更には道路の舗装に至るまで、全てが無くなってしまっている。

 

そしてその爆心地と思われる場所には法衣のような者を身につけた女の子がいた。

 

「これが…精霊…?」

 

始めて見るその存在に雷華は口を開く。

その姿はどう見ても普通の女の子である。

 

事態を呑み込めていないのか周囲を見回す少女。

そこに―。

ミサイルのようなものを撃ち込まれて爆発が起こる。

ASTからの攻撃である。

まるで少女をこの世界の異物として無理やりに排除するかのような行動である。

 

「ッ…!」

 

その様子を見た雷華は何故だか胸が痛むような感覚を覚えた。

 

『ああ…そうか…』

 

何故そのような感覚を覚えたのか…。

そして、他人をどうでも良いと思っていた自分が何故、街の上空へと衛星を持って行ったのか…。

その理由をはっきりと理解できたような気がする…。

 

『こいつは…ボクと同じなんだ…』

 

世界に否定されて。

世界から拒絶されて…。

その姿が自分と被って見えたからだ。

―この娘を助けたい。

自分が助かるためにではなく他人の為に尽くしたいと思った瞬間にそれは彼女の中に芽生えていた。

恐らく、この力を一度使えば自分は人では無く、少女と同じ存在になってしまうだろう。

だが、雷華は躊躇無く、その名を叫んでいた。

 

「電脳女帝-ラミエル-!」

 

 

叫ぶと同時に彼女の目の前に文字盤のようなものと5つの投射型モニターのようなものが現れる。

雷華は直ぐに、それが何かを理解する

日頃から自分が使い慣れている機械―即ちパソコンと同じものであると。

 

「プログラム―リリース」

 

その言葉と共に中心のモニターに先ほど見ていた衛星からの映像をより鮮明にしたものが映し出されている。

 

それに何の印象を抱くことなく雷華は猛スピードで文字盤をタイプさせ、いくつものプログラムを実行させる。

 

「システムコマンド実行、管理者権限を奪取

武器管制システムの停止プログラムを実行!」

 

僅か数秒で雷華はワイヤリングスーツの演算プログラムへと強制介入を果たし、武装システムを停止させていた。

 

『―!?』

 

『どうゆうことよ!?武装管制が働かない!?』

 

モニター内のAST隊員が困惑した声がどこからか聞こえてくる。

 

だがそんな事はどうでも良いとばかりに雷華は中央モニターを見る。

そこに先ほどまでいた精霊の姿はどこにもなかった。

 

『精霊の消失を確認!これより帰投する!!』

 

その声と共に去っていくASTにほっと胸を撫で下ろし、雷華は シェルターを出て、地上へと足を向けていた。

何故かはわからないがあの精霊は隣界へと消失していない…。

そんな気がする。

 

『そういえば…食糧や日用品を買いに行く意外はこうやって外に出るのは初めてだな…』

 

そう思いながら雷華はシェルターを出て走る。

風に乗って火薬の独特の匂いを感じながら雷華は精霊を探す。

だが…その姿はどこにも無い。

 

「おい!精霊!いるんだろ!!」

 

そう叫ぶと同時に背後に気配を感じる。

 

「ようやく私の話を聞いてくれそうな人がいたんだよ~」

 

先ほど、攻撃に合ったにも関わらずのほほんとした声に振り向く雷華。

先ほどラミエルを使って見たものより鮮明で端正な顔がそこにあった。

 

「私は桜、あなたは?」

 

桜と名乗った精霊はそう言うと雷華に名を尋ねて来たのであった。

 

 

「っと…まぁ、ボクが精霊の力を得た経緯と桜に出逢った経緯はこんな感じかな?」

 

疲れたとばかりに肩を叩きながら雷華は冷蔵庫から二本目のドクペを取り出してプルタブを開くとゴクゴクと一気に飲み干す。

 

「その後に偶然、ハッキングした衛星で君が精霊の力を封印する所を目撃してね…」

 

興味を持ったのだと雷華は言う。

 

「多分、この力は君や桜と出会うために神様が与えてくれた恩恵‐ギフト‐だと思うんだ」

 

「雷華…」

 

そんなロマンチックなセリフを吐き雷華は言葉を続ける。

 

「でも…ボクはまだ君にこの力を預けるのは早いと思う…。

確かに君の事を信じるに足る人物だと僕のなかにある何かか言っている…でも…」

 

うまく言葉に出来ないのか言いよどむ雷華。

そんな雷華の頭に士道はそっと手を置く。

 

「わかったよ…。

いつか…雷華が俺以外の人間の事も信じられるようになったとき、俺とデートをしよう」

 

にっこりと微笑みを浮かべてそう言った士道に雷華は小さく頷いた。

 

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