デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第十一話『苺パニッシャー』

「おは…よう…五河…」

 

桜から霊力を受け取り、雷華の自宅訪問を行った翌日。

日直だった事もあり早めに学校へと登校し、教室へと入って来た士道をそう言って迎えたのは言うまでもなく殿町である。

だが、彼自身からはいつものような元気とかテンションのようなものが感じる事が出来ない。

某クトゥルフアニメのOPではないが『SAN値ピンチ! SAN値ピンチ!』な状態であった。

 

「おはよう殿町…ってどうした?」

「おう…昨日の休みに道で親切な人から商店街で催されているお化け屋敷のチケットをもらったのだがな…」

 

視覚とか聴覚にだけではなく自分の魂に訴えかけるような恐怖を味わったのだと殿町は言う。

 

「っと言うわけで五河!お前も俺と同じ苦しみを味わいやがれ!!!」

 

等と言いながら殿町が二枚のチケットを取り出して士道に手渡す。

恐らく、十香か折紙のどちらか片方を誘って修羅場れ的な意味も込められているのだろう。

だが、士道自身は既に誘う相手は決まっていた。

即ち―。

 

「折紙」

 

既に士道の隣の席に座ってる折紙だ。

ほぼ毎日、十香と共に登校している士道であるが今日は彼女と一緒ではない。

そのために彼女の機嫌値の心配もない。

現在、十香は桜と共に登校中である。

人間嫌いの克服の為にシェルターハウスから出た雷華と共に五河家の隣に建てられたら精霊用の集合住宅へと越してきたのだ。

 

「何?」

 

「この間のパペットの礼と言っては何だが、今日の放課後に商店街のお化け屋敷に行かないか?」

 

『お化け屋敷』…その単語に折紙の肩がビクンと震えたような気がするのを士道は見逃さなかった。

 

「折紙…ひょっとして?お化け屋敷苦手?」

 

士道のその言葉に折紙は頭を横に振る。

 

「大丈夫、士道と一緒ならばどこであろうとそれはデートだから…」

 

っと言う折紙の言葉はまるで自分自身に言い聞かせるかのようだった。

 

『……マスター』

 

『ああ…着けられてるな…』

 

放課後、折紙と共に 商店街へと向かう途中、《オーディン》の声に士道は念話で答えて後ろをチラリと見る。

伊達眼鏡やら、目深に被った帽子やらで変装した十香と桜の姿があった。

『確かに下校時には撒いたはずなんだが…』

 

そこまで考えて士道はある可能性を思いつく。

 

『なるほど…雷華か…』

 

雷華が人工衛星をハッキングして士道達を発見したのだろうと士道は納得する。

 

「士道?」

 

何時も如く無表情な折紙の瞳が士道を見つめていた。

後ろを見るために足を止めたのが気になったのだろう。

 

「すまん、行こう」

 

そう言って士道は折紙の手を取り、歩き出した。

 

 

 

『Dead Mans Wanderland』と看板が掲げられたホラーハウス内に士道と折紙はいた。

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

「つっ…………」

 

などと前方から聞こえてくる絶叫に折紙が士道に強く抱きつく。

ホラーハウスの外観は来禅高校の体育館と同じくらいの広さだったのだが薄暗く、手ををつないで二人の人間が歩ける程な幅の通路のせいかより狭く感じさせる。

普通はそう思う程度であるが士道はまた違う何かを感じていた。

極々、僅かでありながらも士道の知る魔力を感じ取っていた。

 

『《アリス・イン・ワンダーランド》だな…』

 

『マスター?』

 

《オーディン》ですらも関知出来ない程に巧妙に魔力を隠してはあるが、士道にはかつての師が持つ魔力を間違えることは無い。

《アリス・イン・ワンダーランド》…それは、二年前に士道へと魔力の使い方の基礎を叩き込んだ魔法使いの作り出す固有結界…。

その姿は結界を作り出した主である魔法使いが望めば自由に姿を変える。

『まっ…ほっといても向こうから勝手に姿を見せるだろう…』等と考えながら士道は先ほどから聞こえる悲鳴に震える折紙を見てボソリと呟く。

 

「しかし意外だな…完璧超人だと思った折紙にも苦手なものがあったとわな…」

 

「私だって、人間。

怖いものは怖い」

 

そんな士道の呟きが聞こえてしまったらしく折紙は瞳にうっすらと涙を浮かべて答える。

 

「#$%&~! 」

 

そこで意味不明な絶叫を折紙上げる。

それは何故かと言えば士道達の間を青白く透き通った首無し騎士の間を通り抜けて行ったからである。

その際に感じた背筋を駆け上がるような怖気が首無し騎士がホログラムの類では無いものであることを告げていた。

 

「折紙…大丈夫か?」

 

「だ…い…丈夫」

 

士道の問いに折紙がそう答えるがその声は震えていた。

 

「ゃぁぁぁぁ!!!」

 

「んっ?」

 

近づいてくる悲鳴に士道は気づくと後ろを振り向く。

 

「いやぁぁぁぁぁ!!怖い!!怖すぎるんだよー!!!」

 

「ちょっ、桜!落ち着け!!士道に気づかれるであろう!!!」

 

絶叫を上げながら全速力で走る桜と彼女に引っ張られてパニクっている十香が目前まで迫っていた。

反射的に折紙の庇うように彼女の身体を抱きしめる。

程なくして大きな衝撃が士道を襲う。

その後、視界がぐるりと一回転し、頭に強い衝撃を受けて士道は意識を失った。

 

 

「いっつ…」

 

ガンガンとするような耳なりと頭の痛みに士道は目覚める。

 

「うむ、気づいたようじゃな士道」

 

っと、独特の口調でそう言ったのは黒の和服を改造したようなゴスロリ風の衣装を身につけた小柄な女性である。

女性の名は相良苺、士道の魔法の師であり、世界に数人しかいない魔法使いである。

 

「って、どうしたんだ?お前ら?」

 

身を起こした士道は自分へと向けられる恨みのこもった視線に気づく。

無論、そのような視線を向けているのは苺の隣に座っている十香達である。

 

「シドー!!どういう事だ!?」

 

ご立腹と言った様子で詰め寄る十香。

 

「士道…私はアナタを軽蔑する」

 

事態が呑み込めない士道だが次に桜が言った一言に士道は状況を理解する。

 

「士道くん、こんな小さい子と一つ屋根の下であんな事やこんな事やるなんて不潔だよ!!」

どうやら、苺が嘘偽りを十香達に伝えたらしい。

 

「お前ら…苺さんに何を吹き込まれたかは知らんが…お前らが考えるようないかがわしいような関係じゃないぞ?」

 

「「「えっ?」」」

 

三人は士道の言葉に頭の上に疑問符を浮かべる。

「まず、第一に告げとくと苺さんは俺の魔法の師匠でそれ以外に何もやましいことは無い。

ついでに言っておくと苺さんの年齢50を超える婆さんだ」

 

「「「はいぃぃぃ!!」」」

 

士道の言葉に三人は目を円くして驚嘆の声を上げる。

 

「ふむ…士道、どうやらお主、死にたいらしいの?」

婆さんと言った言葉が癇に触ったらしく、士道を睨む苺。

 

「すいません、許してください」

 

そう言いながら苺に頭を下げる士道。

 

「まぁ、良い。

士道、お主がこれだけ器量の良い女子を侍らせておるとはのー

ワシは師としてうれしいぞ。

ってな訳で主らと士道のノロケ話をワシに聞かせてくれ」

 

笑顔を浮かべでそう宣う苺。

 

『これはかなり長い時間ここにいることになりそうだなー』

 

実を言えばこの相良邸には時間の流れを遅くする特殊な結界が張ってあるため結界内の三時間が現実時間の三分程度だったりするので実を言えばそれ程時間が過ぎていたりはしない。

それでも和気あいあいとガールズトークを繰り広げる四人にそんな事を思ってしまう士道であった。

 

 

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