デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第二十話『告白』

「やっぱり体がなまってるなー」

 

士道は肩を回しながら浜辺に設置された自販機へと飲み物を買いに向かっていた。

多少は魔力で身体強化していたとしても疲労は蓄積するのである。

 

『………大丈夫かい、シン』

 

と、右耳に令音の声が聞こえてくる。

それに士道は苦笑しながら答える。

 

「なんとか…そちらはどんな状態で…」

 

そこまで言って士道は言葉を区切る。

自販機の脇から耶倶矢が顔を出したからだ。

 

「耶倶矢…? みんなのところで待ってたんじゃないのか?」

 

「くく…鼬風の加護を持つ我にあの程度の隔たりは意味を成さん」

 

「それはそうだけど…どちらかというと理由が訊いたんだがな…」

 

そう言った所で耶倶矢が前屈みになって叫ぶ。

 

「だ、だから手伝いはいらないって言っただろう!?」

 

どうやらインカム越しに令音が何かを言ったらしい。

耶倶矢は怒鳴ったあとに一瞬だけ呆けた顔をし、その後に顔を真っ赤に染める。

 

「な、あんなの場の流れで言っただけに決まってんじゃん! 本気にすんじゃねーし!」

 

『ひょっとして…俺が告白するとかその辺の勘違いを…』

 

『まず、間違いないでしょうね』

 

顔を赤くする耶倶矢に士道は心の中でごちり、『オーディン』がそれに答える。

 

「とッ! とにかく、用件は別にあるの!」

 

顔を真っ赤にしたまま耶倶矢は言う。

先ほど令音に怒鳴っていた所を考えるに彼女の入れ知恵では無いことは確かだ。

 

「ところで…その口調のまま続けていいのか?」

 

「あ」

 

そこで自分の口調に気づいて耶倶矢は気まずそうに咳払いをして格好いいポーズを取る。

 

 

「くく…我が道化芝居に謀られたな。

我が手の上で踊る貴様は大層滑稽であったぞ」

 

「…………」

 

「……何よその目は」

 

耶倶矢が唇を尖らせてくる。

士道は苦笑しながら頬をかく。

 

「いや………なんでわざわざ無理してそんな口調にしてるのかなっと思って…」

 

「無理してないし! これが普段だし!」

 

「戻ってる戻ってる」

 

「は……っ!」

 

耶倶矢は愕然とした表情を作った後、息を吐いて小声で呟く。

 

「…だってさ…私、精霊じゃん、超凄いじゃん? だったらやっぱり威厳とかさ…そういうもんが必要しょ?」

 

「………そんなものかね…」

 

士道は眉根を寄せて唸った。

 

今まで、何人もの精霊と出逢ってきたが、別にそういう少女はいなかった。

 

「そりゃあそうでしょ。

せっかくこんなに格好良い出自と、悲劇的な環境が用意されているんだからそれなりの人物像がいるでしょ」

 

「まあ…もと厨二病のおれがどうこう言うのもどうだろうって事だしな…

それで?用件って何なんだ」

 

士道が問うと耶倶矢は頷いてから話を続けるける。

 

「なんか面倒くさいからこのまま続けちゃうけどさ、今私と夕弦は、あんたを巡ってバトルしてるじゃん?

それで明日にはその決着もつく」

 

「確かにそうだが…まさかお前…」

 

耶倶矢が自分に根回しをしにきたのかと思い、眉をひそめる。

―だが耶倶矢の言った言葉は士道の予想していたものとは全く逆のものであった。

 

「―――士道。あんた明日―夕弦を選んでよ」

っと。

 

 

 

 

耶倶矢からの告白を受けた士道は彼女の去った後もしばらく動けずにいた。

士道に夕弦を選ぶように言った耶倶矢はどこか嬉しげに夕弦の魅力を語った。

勝負に負ければ買った方に取り込まれて消えるというのにだ。

消えるのは嫌だがそれ以上に夕弦に生きていてほしいと耶倶矢は語る。

そんな彼女に士道は胸の奥が大きく軋むのを感じた。

 

『…シン』

 

立ち尽くしていた時間はほんの一分程であったが酷く長く感じられた。

そんな士道の耳に令音の声が響く。

 

『…話は聞いた。

これはなかなか難しい事になってきたな。

もし今のが駆け引きでも何でもない耶倶矢の本心だとしたら………明日、こちらが煽ってもキスに応じてくれない可能性がある。

―夕弦を勝たせるために』

 

「……くそっ…………」

 

士道は拳を握りしめて呟く。

確かにそれもある…非常に由々しき事態だ。

だが何よりも…夕弦を生かす為に自ら死を選んだ耶倶矢の決意が士道の心に重くのしかかっていた。

だが、いつまでもここでじっとしているわけにはいかない。

士道ゆっくりとだが歩き始める。

あまり長く姿を消していたらで夕弦に不審がられるからだ。

 

「制止。士道、止まってください」

 

「…………っ!?」

 

その声の主は言うまでもなく夕弦のものであった。

 

士道が振り向くとすぐ後方に夕弦が立っていた。

 

「どうかしたか?」

 

背中に汗が滲むのを感じながら尋ねると夕弦は耶倶矢は夕弦が消えていった方向に顔を向けて静かに口を開く。

「質問。 ―耶倶矢と、何を話していたのですか?」

 

「…それは」

 

士道が考えを巡らせながら口を開くと夕弦が小さく肩をすくめながら息を吐いた。

 

「撤回。大体の予想はついています。

大方―明日の選定の際に自分を選ぶように言ってきたのでしょう?」

「ちが…」

 

士道が否定の言葉を口にしようとすると夕弦が手を広げて制止する。

 

「質問。それは構わないのですが、その際耶倶矢は何かしましたか?」

 

「何か…?」

 

「例題。 例えば士道に抱きついて首筋に舌を這わせたり、胸に士道な顔を挟んだり、士道の水着に手を突っ込んで股間をまさぐったりしましたか、と訊きます」

 

「するか!」

 

予想外の言葉に士道が叫ぶと耶倶矢が首を横に振り深いため息をつく。

 

「落胆。耶倶矢はそこが駄目です。

詰めが甘いです。

耶倶矢がちゃんと誘惑すれば、士道なんて発情期の猿くらいに簡単に落とせるというのに」

 

「………」

 

酷い言われようだが、それよりも士道は夕弦の口振りに違和感を覚える。

夕弦の口振りは先程、士道が話していた耶倶矢と同じようなものだったからだ。

 

「請願。夕弦は士道にお願いがあります」

 

と、士道の思考を遮るように、夕弦が声を発する。

 

「お願い…?」

 

その文言を聞いて士道はデジャヴを感じる。

「肯定。その通りです」

 

夕弦は深く首肯すると、何ら躊躇することなく言葉を続ける。

 

「請願。士道、この勝負、是非耶倶矢を選んでください」―っと。

 

 




大分遅れましたが第十六話upです。
ヤバいです、完全に八舞編を嘗めていました…。
とてもじゃないが四~五話では収まりきりませんです。
攻略対象が二人いるので当然といえば当然なのですが…。
っと言うわけで…次回は八舞編完結予定です。
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