デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

23 / 96
第二十三話『終焉切り裂く桜色の聖剣』

―どれくらい走っただろうか。

 

「………!あれは―」

 

「―むっ」

 

「竜巻…だよね?」

 

併走していた士道と十香、桜は同時にそれを発見する。

木々が放射状に薙ぎ倒された森の中央に風が竜巻のように渦を巻き、その中で性格に耶倶矢と夕弦が激突を繰り返していたのである。

 

「耶倶矢―夕弦!」

 

叫ぶも士道の声は二人には届いていないようである。

 

『この風の壁が外部からの音を完全にシャットダウンしているようです

恐ろしく高度に編まれた術式ですね…』

 

オーディンの解析に士道が目を見開く。

魔法使いか顕現装置を用いずにそのような事を行うのは不可能に近いからだ。

士道の知る限りそんな事を可能とさせるには…。

 

『霊力の共鳴現象を用いる以外ないか…』

 

瞬時にその可能性に思い至る。

 

士道の『ユニゾン』のように霊力や魔力を共鳴させて増幅させる技術は強い絆や強い思いがあれば可能だ。

八舞姉妹とデートしていてわかったことだが彼女達にはそれを可能とするほどの強い思いを感じることができた。

その思いが無意識に働き、この風の城を作り出しているのだろう。

恐らく、この竜巻の壁を切り裂くのは最後の剣を用いても難しいだろう。

 

ならば士道が取るべき道は一つしかない。

 

「十香、桜、頼む!!力を貸してくれ!!!」

 

「うむ!!」

 

「うん!!」

 

 

言葉と共に士道が出した手へ桜と十香が手を重ねる。

 

『術式展開を開始します』

 

オーディンの声が脳内に響くと共に士道は自分と桜、そして十香の三人の魔力と霊力を共鳴させるべく調律を行う。

 

『良いか…士道。魔法とは己の魔力に自分の思いを乗せることで初めてその力を発揮するのじゃ』

 

調律を行いながら士道は修行時代に苺からそう教えられたことを思い出す。

 

「士道?」

 

「士道くん?」

 

そんな士道を十香と桜が次の指示を待つように見つめている。

 

「後は思いを…自分が何をしたいのか…目的を霊力に与えてやればこの魔法は完成する」

 

士道の言葉に二人は頷き、目を瞑る。

 

二人に次いで士道も目を瞑り願い、望む。

―耶倶矢と夕弦を助けたい―と。

―そのためにこの竜巻を切り裂く力を―と。

三人の思いに霊力と魔力が反応してそれは重ねた手の中に顕現する。

 

「これは…」

 

手の中に現れたそれに最初に反応を示したのは十香だ。

 

なぜならば現れたそれは彼女にとっても馴染みのあるものだったからだ。

 

「これは…《最後の剣》…いや」

 

首を横に振る十香。

 

手の中にある巨大な剣は彼女の《最後の剣》と形状こそ同じものであるが刀身が纏うのは黒い雷ではなく、桜色の光であった。

 

《最後の剣》と似て非なる剣、十香がその剣を握るのは初めてであるにも関わらずどこか懐かしいような感覚を呼び起こさせた。

 

桜もどうやら十香と同じような事を思っているらしく、どこか惚けたような表情を浮かべている。

 

だが今はその事を気にしている余裕は無い。

 

「「「はぁぁぁぁ!!!!」」」

 

裂帛の声と共に三人は手の中の大剣を振りかざし―。

 

「「「終焉切り裂く桜色の聖剣《オーバーロード・ハルヴァンヘレブ》!!!」」」

 

頭に浮かんだ言の葉と共に竜巻を切り裂き、斬撃は耶倶矢と夕弦の間を通り抜ける。

渦を巻いていた雲が二つに分かれ、今まで隠れていた月が顔を出す。

そして役目を終えたと言うように士道達の手中の剣が淡い粒子へと変わっていく。

同時に吹き荒れていた嵐が止み、変わりに狼狽した声が士道の耳に届く。

 

「な―」

 

「焦燥。これは…」

 

互いに槍とペンデュラムを向けていた耶倶矢と夕弦が目を丸くして斬撃の放たれた方向―即ち、士道達の方を見て眉をひそめた。

 

「士道…!? 今の、まさかあんたが……?」

 

「驚愕。 まさか。凄まじい霊力でした」

士道は桜と十香に肩を借りながら、二人の問いに応えるように口を開ける。

 

「耶倶矢―夕弦っ!

頼む…戦いを、やめてくれ!」

 

だが、士道がそう訴えると、耶倶矢と夕弦は不機嫌そうに顔を歪める。

「…あんた、聞いてなかったの?私と夕弦は、どちらかがどちらかを取り込まないと存在できなくなっちゃうの」

「同調。その通りです。

邪魔をしないでください。

今はこの分からず屋に、耶倶矢がどれだけ優れた精霊かを教え込んでいるのです」

 

「っ、まだ言うか……! 私なんかが生き残ったって仕方ないって言ってるでしょ!? なんでわかんないのよ! 夕弦! あんたがいきるべきなの!」

 

「否定。そうは思いません。

耶倶矢の方が生きるべきです」

 

「―俺は!」

 

このまま勢いに任せていたら、せっかく中断させた決闘が再会してしまいそうだった。

士道は二人の言葉を遮るように声を張り上げる。

 

「まだおまえらの決闘の裁定約を降りたつもりはない!

俺が真の八舞に相応しい精霊を選ぶ!!

生き残るのが誰なのかを!」

 

「「………っ!」」

 

士道の言葉に耶倶矢と言うと耶倶矢と夕弦が驚いたように目を見開く―が、すぐに視線を鋭くして士道を無言で睨みつける。

だが士道には二人が言わんとしていることが容易理解できた。

相手を選ぶなら良し。

だが、もし自分を選ぼうとしているならその名を言い終わる前に心臓を刺し貫くと。

例え、魔法を使って逃げたとしても地獄の果てまで追いかけて殺すと。

士道は緊張に乾いた喉を唾液で濡らしてその選択を言葉にする。

 

「俺が選ぶのは―お前たち二人、両方だ!」

 

士道の声が、風の止んだ森にこだまする。

耶倶矢と夕弦は数秒の間士道を見つめた後、どこからともなく、大きなため息を吐き出した。

 

「…なにそれ。ふざけてるの?」

 

「軽蔑。小学生以下の回答です。

決断力のない男性はみっともないです」

 

「うるせぇ! 二人とも黙って俺に投資しろ!!」

 

「「!!!」」

 

不服そうに言う二人にが叫び黙らせると士道は言葉を続ける。

 

「耶倶矢、夕弦…二人が生き残るために精霊の力を代償にできるか?」

 

「「……ッ!?」」

 

士道が言った瞬間、耶倶矢と夕弦は目を丸くする。

 

「は……? 何ですって?」

 

「要求。今、なんと」

 

「お前ら二人の精霊の力を俺がもらい受け、お前ら二人が幸せに生きるって選択肢を提示したんだよ」

 

「精霊の力を他人に譲渡する? そんなこと、可能なわけがないじゃない」

 

「疑念。そうです。

そんな方法、聞いたことがありません」

 

耶倶矢と夕弦が、疑わしげな視線を向けてくる。

信じろと言うのが無理な話である。

それでも士道は言葉を続ける。

 

「魔法ってのは不可能を可能にするためにあるんだ。

信じてみろよ、万能たる魔法使いを」

 

士道の言葉に耶倶矢と夕弦はお互いの顔を見合わせて言葉を交わす。

 

「…耶倶矢…どう思う?」

 

「応答。非常に胡散臭いです。

ですがとても素敵だと思いました」

 

「意外とロマンチストなのね」

 

「憮然。そういう耶倶矢はどうなのですか」

 

 

「…奇遇ね、私もよ」

 

「質問。もし二人とも生き残れたら耶倶矢は何がしたいですか?」

「私?…十香が言ってた、きなこパンってのを食べてみたいかもー

なんでも至高の美味らしいし」

 

「同意。それは美味しそうです」

 

「夕弦は?」

 

「回答。―夕弦は、学校に通ってみたいです」

 

「ああ……いいわね。

夕弦ならきっと学校中の男たちの憧れの的よ」

 

「否定。それはないと思います」

 

「へ? なんで?」

 

「応答。だって、耶倶矢も一緒だからです。

きっと耶倶矢の方が人気が出ます」

 

「うーん…そうかな?」

 

「肯定。きっとそうです」

 

「……………」

 

「……………」

 

その言葉を最後、に二人がしばし無言となる。

風鳴りの中、沈黙を破ったのは耶倶矢が先だった。

 

「…ねぇ、夕弦」

 

「応答。なんでしょうか」

 

「ごめん、私、嘘をついてた。……私、」

 

耶倶矢の目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。

 

「私、死にたく、ない…」

 

嗚咽を漏らしながら言葉を続ける。

 

「生きていたい…もっと、もっと夕弦と一緒にいたい」

 

「応と――、」

 

次いで夕弦の頬に、涙がひとすじ伝った。

 

「夕弦も……です。

消えたく、ありません。

耶倶矢と、生きていたいです」

 

「夕弦…」

 

「耶倶矢」

 

二人はそう言いながらしばしの間抱き合っていたが数分後には地上へと降り、士道と向き合う。

 

「……士道。まぁ、なんというか、ありがとうね。

いろいろと」

 

「多謝。士道のおかげで、耶倶矢と争わずに済みました」

 

「おう、そりゃ…よかったな」

 

急にしおらしくなった二人に士道は頬をかく。

と、耶倶矢と夕弦は互いに目配せをしてから、士道に視線を戻す。

 

「だから、まぁ、つまんないもんだけど、お礼にと思って」

 

「請願。目を閉じていてください」

 

「ん?ああ…」

 

何となくだがこの後に起こる事を予想しながら大人しく指示に従い目を瞑る。

それとほぼ同時に唇の右と左に柔らかい感触が生まれる。

 

『ああ…やっぱりか…』

 

そんな事を考えながら目を開くと目の前に朱に染まった耶倶矢と夕弦の顔があった。

 

少し惚けた表情で二人の顔を見つめる士道。

 

「どう、私と夕弦なんて超絶美少女のファーストキスよ?」

 

「謝罪。ご迷惑でしたか?」

 

耶倶矢が顔を赤くして腕組みをし、夕弦がすまなさそうに顔を俯かせる。 と―

 

「な……」

 

「驚愕。これは―」

 

耶倶矢と夕弦が明らかに狼狽した声を発する。

 

それも無理からぬ話だ。

何故なら彼女らが身に纏っていた拘束衣と鎖が光の粒子になって消失したのだから。

 

「う、うきゃぁぁぁぁッ!?」

 

「狼狽。エッチです」

 

二人が揃って胸元を覆い隠し、その場にうずくまる。

 

「二人とも落ち着―」

 

「士道!これはどう言うことだ!!」

 

「士道くん…エッチぃのは良くないと思います!」

 

とりあえず耶倶矢と夕弦を落ち着かせようとした士道であるが声に振り返る。

 

そこにはいたのは怒った表情をした桜と十香である。

 

「はぁ…」

 

そんな二人の士道は疲れたように溜め息を吐き天を仰ぐ。

そこには澄み渡った青空が広がっていた。

 




八舞編、全八話…筆了。

てな訳で灰音穂之香です。

随分とかかりましたが八舞編完結話を投稿させていただきます。
とりあえずこの場を借りて執筆予定というか執筆予告的なものを…。

とりあえず、向こう一ヶ月はデートと平行で書いてるISの方を書こうかと考えております。
次のデート原作で言うところの六巻。
新キャラも出す予定なのでお楽しみにです。
たて
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。