デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第三十二話 『現れた援軍』

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「ドニ…」

 

士道は背中に嫌な汗を滲ませながら青年の名を呼ぶ。

 ドニの使う魔法は戦闘に特化したもので、純粋な戦闘能力だけで言えば『協会』のトップクラスであると言っても過言では無い。

もし、彼が美九の洗脳を受けていた場合戦えば確実に士道はやられる。

だが、それでも士道は逃げようとしなかった。

別に諦めた訳でも、ドニの魔法に怯えたからでも無い。

『落ち着け…さっき、あいつはなんと言った…?』

精霊と対峙した時のように強い緊張感に喉が渇く。

その渇きを唾液を飲んで癒すと思考を巡らせる。

先ほどドニが言った言葉は士道ではない誰かに向けられた言葉だ。

だが、一体誰に…?

などと考えていると―。

「ああ、身構えなくて良いよー。

食べ歩きしてお腹いっぱいになって寝てたからねー。

僕は他の人達みたいに操られてないよー」

 

などと両手を上げながら言ってきたために一気に緊張から解放される。

 

「で?どうして俺がここにいるってわかった?」

 

「んっ?ああ…」

 

士道がドニに問うと耳から何かを取り外した。

 

「これだよ」

 

それは先ほど、士道が廃棄したインカムだった。

一瞬、フラクシナスの琴里が美九の洗脳を受けていなかったのかと思ったがインカムを耳につけた瞬間にそうではないことを悟る。

『五河士道、聞こえるかい?』

 

インカムから聞こえてきた声の主は、雷華のものである。

恐らく、フラクシナスの回線をハッキングして話しているのだろうが彼女もまた操られているような感じはしなかった。

 

『そうとう厄介な状況になっているようだね?

…全く…桜も桜だよ。

あんな雑音を出す奴に簡単に操られるなんてさー』

 

『なる程な…』

 

二人の言葉に美九の天使である破軍歌姫はその音色を聞いていないものや音楽に興味が無い人間を操る事は出来ないと言うことに確信を得る。

 

「でっ?この先どうするつもりだい?」

 

「そんなものは決まってる…」

 

ドニの言葉に士道はすぐさま答える。

 

 

「美九を再攻略した後、十香を救い出す。

だが、それには二人の協力が必要なのだが頼めるか?」

 

士道のその言葉にドニは頷き、雷華もインカム越しに『もちろん』っと肯定の言葉を返した。

 

 

 

それから一時間程経過し、士道とドニは再び天宮スクエアへと再び戻ってきていた。

 

但し、今回は桜の光を操る能力を使って姿を隠した状態での潜入だ。

 

 

そのまま、士道はドニと共にスクエアを進み美九を探す。

 

―やはりと言うべきか美九の姿は簡単に見つかった。

 

ステージ設置した椅子に腰掛け、精霊達を侍らせていた。

 

「あの男はまだ見つからないのですか~?」

間延びした、だがどこか怒ったような口調で美九は言う。

 

そんな事を言う美九の後ろへと士道は回り込むと桜の能力を解除、同時に口を開く。

 

「俺ならここにいるぜ!」

 

「「「「!!!!!!」」」」

 

唐突に美九の後ろに現れた士道に精霊達が身構えようとする。

 

だか、それよりも早く士道が美九の首筋に手刀を突きつける。

 

「動くな!!」

 

「なっ!?」

 

まさか、自分を救うと言っていた士道がこのような暴挙に出るとは思っていなかったのか目を円くする美九。

 

「全員、ゆっくりとステージから離れろ…、少しでもおかしな素振りを見せたらこいつの首が飛ぶぞ」

 

言いながら、手刀に魔力を纏わせる。

 

「お姉様………」

 

心配したような表情を浮かべて離れていく四糸乃。

 

それに続くように桜、八舞姉妹もステージから離れていく。

 

 

四人がステージから離れるのを見届けると、士道は口を開く。

 

「ドニ!」

 

「了解!!」

 

士道が叫び、ドニの声がすると共にステージ中心に剣が刺さり、不可視の壁が発生する。

魔力を込めた剣を地面に突き刺す事で発動する簡易的な結界でドニが得意な魔法の一つだ。

 

『相変わらず…便利な魔法だな…』

 

などと思いながら士道は美九に向き直る。

 

「手荒な事をしてすまなかったな、もう一度会って話さなきゃならんことがあってな…」

「……私はあなたと話したくなんかありません」

 

謝るも、美九は顔を背けた。

 

だが、自分が今置かれた状況を理解したのか、士道に攻撃を仕掛けてくる様子はなかったが、だからといって士道の言葉に耳を傾ける気もないらしい。

 

何も話すことなどないうように腕組みしながら不快そうに顔を歪めている。

士道は美九に深々頭を下げた。

 

「まずはお前を騙していたことを謝らせてくれ。本当にすまない……!」

 

すると、美九がちらと士道の顔を一瞥してから鼻を鳴らした。

 

「……最悪です。本当に最悪ですー。

男であることを隠して私にいろいろした挙げ句、あんな汚らわしいモノを触らせるなんてぇ……!」

 

言って、両手を震わせる。

 

「本当にすまない。

騙したのは俺が悪かった!

でも……それに他のみんなを巻き込まないでくれ!

今すぐおまえが操ってる人たちや、四糸乃や耶倶矢、夕弦を解放してー」

 

士道が言いかけると、美九は髪を掻きむしり、興奮した調子で声を発した。

 

「う・る・さぁぁぁいっ! 黙ってください喋らないでくださぁいっ! わ、私をあれだけ辱めておいて、何を都合のいいことを! あなたの話なんて聞きたくありませんっ!」

 

「み、美九……」

 

「気安く呼ばないでくださぁいっ!」

 

叫び、美九がそっぽを向く。

 

「お、おい」

 

「…… 」

 

「美九ー」

 

「……」

 

とりつく島もないとはこのことだった。これでは話をするしない以前の問題である。

 

「参ったな、こりゃ……」

 

とはいえ、最初から想定されていた事態でもあった。

もとより、士道に対する好感度が最悪クラスの美九を、この短時間で説得できるだなんて思ってはいない。

ー士道たちが十香の救出を試みる際に、邪魔をしないこと。

それさえ約束させれば、士道の最低限の役目は果たせるのである。

士道は深呼吸をすると、美九の背に向かって声をかけた。

 

「ー美九。そのままでいい。聞いてくれ」

 

「…」

 

相変わらず美九は何も答えない。

だが、士道は言葉を続けた。

 

「十香ー俺たちがステージに立ったとき……タンバリンを叩いていた女の子がいただろ?

あの子だ。

気付いてるとは思うが、十香も四糸乃たちと同じ精霊だ。

そしてー美九、おまえは見てるはずだ。十香が、DEMの魔術師にさらわれるのを」

 

「……っ」

 

何か思い当たることがあったのか、それとも単純に『精霊』という単語に反応してか、全くの無反応を貫いていた美九が、微かに肩を揺らした。

 

「俺は……今から、十香を助けに行く」

 

「はぁ?」

 

士道が言うと、美九が首から上だけを振り向かせ、声を発してきた。

 

もっともそれは、極めて不機嫌そうな表情に飾られたものだったのだけれど。

 

「助けに……? なんでそんなことをするんですかぁ?」

 

「なんでって……そんなの、十香が大切だからに決まってるじゃないか」

 

士道がそう言うと、美九はさも意外といった様子で目を丸くしたあと、嘲笑するように鼻を鳴らした。

 

「大切ですってえ。……ああ、なるほど、そういうことですかぁ。

でも今ひとつわかりませんねえ。

確かに綺麗な女の子でしたけど、さすがに割に合わないんじゃないですかぁ?」

 

「……は?」

 

美九の言っていることがわからず、士道は首をひねった。

 

「だって、要は性欲処理の相手がいなくなったことを嘆いてるんですよねえ。

でも、死んだら元も子もないんじゃないですかぁ?

命あっての物種っていうでしょうにー」

 

「なんだって?」

 

美九のあまりにぞんざいな物言いに、異議を唱えることも忘れて呆然と呟く。

 

「だってえ、男が言う大切なんて、その程度じゃないですかぁ」

 

「……随分と偏見を持ってくれたもんだな」

士道が眉をひそめながら言うと、美九は嘲るようにあごを上げてきた。

 

「はっ、じゃあ何ですか?

あなた、自分の命よりその十香さんって子が大切だなんて言うんですかぁ?」

 

「当たり前だ」

 

そんなこと、考えるまでもなかった。

一瞬の逡巡もなく、返す。

 

「っつ…!」

 

士道の反応が意外だったのか、美九が今まで見たこともないくらいに顔を歪めた。

 

しかし構わず、士道は言葉を続けた。

 

「俺は、何があっても、何をしてでも十香を助け出す。

そうしたら、またここにやってくる。

今度はドニを連れず、一人で来たっていい。だからー美九、これ以上被害を広げず、大人しく待っていてくれないか」

 

「……ああ?」

 

美九が、嫌悪感に歪んだ表情のまま、不機嫌そうな声をこぼす。

 

「そんな言葉を信じろっていうんですかぁ?

ていうか仮に本当だとしても、十香さんの元まで辿り着けないんじゃないですかぁ?

途中で魔術師さんに殺されておしまいですよー。

ご愁傷様なんまいだー」

 

「ふっ…」

 

士道を馬鹿にするように手を合わせる美九に士道は反論の為に言葉を出す。

 

「確か約束したよな。天央祭一日目で俺たちが勝ったらーおまえは自分の霊力を掩に封印させるって」

 

士道は美九の目を見据えながら、静かに一言った。

 

美九にとっては突かれたくない点のはずである。

この話題を蒸し返せば、また美九が駄々をこねて暴れ出すかもしれなかった。

「……っ」

 

士道が簡潔に答えると、美九が再び顔を歪めた。

まるで、士道の言葉が信じられないと

 

「ふん……っ! お断りですう! だいいち、なんで私がそんなことしてあげなくちゃならないんですかぁっ!」

 

「美九……」

「もう嫌です! あなたの話なんて聞きたくありません! 全部嘘です! 裏があるんです! 人間みたいな利己的な生き物が、誰かをそんなに大切にするはずがないんです!」

「美九、おまえまたそんなことを……!」

士道はぐっと挙を握ると、苦々しげに顔を至めた。

一応は雷夏に美九に関しての情報を集めてはもらってはいるが、彼女が何故人間を此処まで毛嫌いするのかは未だに解らずにいる。

 

「なんでそんなに人間を拒絶するんだ! おまえだってー」

 

と。士道が言いかけた瞬間。

 

『マスター、結界を構築する魔力に乱れが発生しています』

 

っと、魔力回復の処理を終えたらしいオーディンが、そう言葉を発する。

 

オーディンの言葉の通り結界のあちらこちらに亀裂のようなものが見えた。

 

「お取り込み中、悪いんだけど、士道…そろそろ結界の方がヤバい」

 

「っつ!」

 

ドニの声に士道は唇を噛み、上方を見やると空間に、亀裂のようなものが入っていることがわかる。

 

『…ここまでか』

 

士道は心の中で呟くと桜の能力で姿を消し、結界の倒壊に紛れてその場を離脱した―。

 

 

 

 

 

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