デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第三十三話 『最強VS最強』

「ここか…」

 

天宮市東方、鏡山市にあるオフィス街の一角。

そこに士道とドニの姿はあった。

時間は深夜二時を回っており、辺りには人気は無い。

衛星にハッキングした雷華からの情報によれば十香はDEM日本支社第一社屋に幽閉されているとの事であった。

 

「さて、これから敵の本拠地に乗り込むが、二人とも準備はいいか?」

 

『準備?はっ?何を今さらなことを言ってるんだ?』

 

「とっくに出来てる…。

と言うか早く暴れたくてウズウズしてるよ…」

 

士道の言葉に雷華とドニが答える。

 

「オーケイ…それじゃ…行くか」

 

自身に言い聞かせるように士道は言うとドニと共にDEMのビル群に向かって足を踏み出した。

と―道路を抜けて、DEMの敷地内に入った瞬間。

けたたましい音と共に空間震警報が鳴り響く。

 

「精霊が現れた…って訳ではなさそうだな…」

 

「だね…」

 

周囲を見回すと残業中だったと思しきサラリーマンやコンビニの店員たちが慌てた様子でシェルターに非難を開始している。

 

『こっちの顕現装置も空間震が起こる際の空間の揺らぎ観測してないよ』

 

「っとなれば…目的は一つか…」

 

「―目撃者を減らして大暴れするつもりだね」

 

言いながら士道とドニは共に上空を見上げる。

空には月と高層ビル群を背にしてCR-ユニットを装着した銀色の人形が数体浮遊していた。

《バンダースナッチ》だ。

上空だけではなく前方の建物からも姿を現す。

こちらはDEMの魔術師も一緒である

 

 

「オーディン!!」

 

『了解!!』

 

 

その姿を見つけると同時に士道は《オーディン》を展開、その身に魔力を纏う。

 

 

「―投影、開始(トレースオン)」

 

ドニも静かに言うと片刃の剣を両の手の中に出現させる。

 

投影魔法―ドニが最も得意とする魔法で一度見た刀剣などを複製する魔法だ。

 

士道達が臨戦態勢を取ると同時、バンダースナッチがレーザーカノンの銃口を士道達に一斉に向けて引き金を絞ってきた。

 

「当たらないね!!」

 

「遅せぇ!!」

 

魔力光が地面に炸裂するよりも早く、士道とドニはバンダースナッチに肉薄、魔力を纏った貫手と斬撃を繰り出して瞬く間に鉄塊へと変える。

 

「準備運動にもならないね…」

 

「言ってろ…次が来るぞ!」

 

「うはぁ…良いねぇ…やっぱり戦闘はこうでないと」

 

ドニが悦に入ったような表情を作りながら言う。

 

「ドニ…目的を忘れてないか?」

 

「………………………そんなことはないよ?」

 

「今の間は何だよ!?」

 

などと漫才を繰り広げているうちに魔術師と《バンダースナッチ》は社屋から続々と姿を現し、その数は500に上ろうとしていた。

 

「まぁ…良い…ドニ…とっとと…」

 

『後方から高魔力反応!』

 

「「!!!!!!」」

『片付けるぞ』と言おうとした所で響いた《オーディン》の声に士道とドニは反射的に跳躍する。

 

それと同時に高出力のレーザーが今し方二人のいた場所を通り過ぎ、魔術師と人形を薙払う。

 

「兄様! ようやく見つけましたよ!!」

後半からそんな声を響かせて青と黒でカラーリングされた、見覚えのないCR-ユニットが大型のレイザーライフルを携えて乱入してくる。

 

士道の事をそのように呼称する人間は彼の知る限り一人しかそんざいしない。

 

即ち―

 

「真那…お前……」

 

 

少し驚いた表情を浮かべて士道は乱入してきた人物―自称、士道の妹を名乗る崇宮真那を見る。

 

数ヶ月前、狂三と戦闘のから姿を消していたのだ。

 

「兄様!!」

 

感極まった様子で士道に抱きつく真那。

 

とりあえずいろいろと聞きたいことはある。

だが何から問うべきか悩んでいると…。

 

「士道…この娘は?」

ドニが頬を掻きながら真那を指差す。

 

「ああ、申し遅れました、私、兄様の妹の崇宮真那と言います。

兄様と同じ魔法使いの方でやがりますよね?」

 

「うん、サルバトーレ・ドニ。

よろしくー」

 

などと自己紹介をしあうドニと真那。

 

すると、真那が何やら耳元を押さえながら眉をひそめた。

ヘッドセットに搭載されたインカムから大声が発せられたよう。

 

「……そーでしたそーでした。―兄様、これを」

 

言って、真那はポーチ状になった腰のパーツからインカムを差し出してきた。

 

「どうぞ。回線は繋がっています」

 

真那からインカムを受け取り、左耳に装着する。

するとしばらくしてから、ばつの悪そうな声が聞こえてきた。

 

『……士道、聞こえる?』

 

「琴里か? 操られてなかったのか!?」

 

聞こえてきた声は士道の妹にして《ラタトスク》の司令官である琴里のものである。

 

『……いや、操られていたが、一度気絶させ、真那の随意領域を通して洗浄させてもらった。

皆が操られた際に、《フラクシナス》の通信設定を滅茶苦茶に弄ってくれてね。

復旧までに時間がかかってしまった。

今まで連絡できずに、すまない。

無事で何よりだ』

 

そう士道の問いに答えたは令音だ。

 

「こちらこそ、ご心配をおかけしました」

 

『…だが、安心してくれ。

今君に渡したインカムは、特定域以外のおんを自動的にカットするように設定されている。

美九の演奏はもうこちらには届かない』

 

「なるほど……」

 

『で、ここからが本題だけど』

 

士道が言うと、琴里が気を取り直すように咳払いする。

 

『士道、あなたなんでそんなところにいるの?』

 

「ああ、それは……」

士道は手短に、皆が美九に操られてから起こった事を説明した。

エレンに十香がさらわれたこと、ドニと雷華が救出に協力してくれたこと。

 

そして―十香がこの施設の中に囚われているらしいことを。

 

それを聞いた琴里はしばらく押し黙り―

 

『……駄目…っと言っても聞かないでしょ…』

 

「…よくわかってるじゃないか」

 

『伊達に十年以上も妹やってないわよ』

 

諦めに似た吐息をこぼし、琴里が言葉を続ける。

 

『恐らく、社屋内は随意領域によって通信が阻害されているわ。

こちらからのナビはできない。

《フラクシナス》からできるのは、外部のサポートくらいよ』

 

そんな琴里の言葉に答えたのは今まで沈黙していた雷華だった。

 

『問題ない。

今し方監視システムと顕現装置の一部を掌握したから夜刀神十香までのルート案内はボクが務める』

 

「悪いな、琴里、雷華」

 

『全く、聞き分けない兄を持った妹同士、苦労が絶えないわね、真那』

 

琴里が言うと真那は笑いながら肩をすくめる。

 

「とはいえ、ここで尻尾を巻くような軟弱者、真那の兄様とは認めねーですけども」

 

真那の反応に琴里が再び、ため息を吐いた。

 

『……いいわね。

やるからには中途半端は許さないわよ。

十香を救い出し、全員無事で戻ってきなさい。

それ以外は認めないわ』

 

士道はそれに応ずるように頷いた。

すると琴里が気を引き締めるように言葉を続いてきた。

 

『さあ―私たちの』

「ああ―俺たちの」

応じるように、続ける。

『戦争を、始めましょう』

「戦争を始めよう」

 

同時にそう言い、士道は第一社屋へと足を向けた。

 

 

 

士道とドニは内部から破壊されたビルの入り口に足を踏み入れた。

広いエントランスに人影は無くその代わりにそこら中に瓦礫が散乱しており二人の進行を阻害していた。

 

雷華からの情報によれば十香が捕らえられているのは十九階。

おそらく、精霊を隔離する施設があるのだろう。

 

などと考えながら士道はドニと共に階段を駆け上がる。

 

「…おかしい」

 

六階へと差し掛かろうとした所でドニが走りながら呟く。

 

士道自身も十香の事ばかりを考えていていっぱいいっぱいであったから気を回している余裕が無かったがドニの言葉の意味は直ぐに知れた。

士道とドニが社屋に入ってから一度も魔術師と交戦していないのだ。

よもや、ビル群で交戦した魔術師で全員という事もないだろう…。

などと考えながら士道とドニが七階へと上がった瞬間に全員に鳥肌が立ちような感覚と共にその理由は知れた。

壁がない吹き抜けとなったフロアに魔術師‐エレン・ミラ・メイザースがいたからである。

 

「やはり…来ましたか…」

 

エレン言い放つとCRユニットに取り付けられた巨大なレーザーブレードを構える。

そこで士道は以前、エレンが使用していた大型レーザーブレードと僅かな違いがあることを気付く。

柄と刀身の間に回転式拳銃の弾倉のようなパーツが見て取れたのだ。

 

「どちらからでも…二人一緒でも構いません来なさい…。

私を倒さなければ‐プリンセス‐の所へは辿り着けませんよ」

 

「噂の最強の魔術師か…良いね…楽しませてもらおうか」

 

静かに言い放つエレンに対してドニがその顔獰猛な笑みを浮かべて歩み出る。

 

「―殺すなよ」

 

「善処させてもらうー」

 

『エレンの装備の方も気になるが今は十香の救出を優先すべきだ―』

 

そう考えた士道はドニに釘を刺してエレンの後方にある階段へと向かおうとする。

だが―。

 

「言ったはずです…私を倒さなければプリンセスの所にはたどり着けないと!!!」

 

「っつ!!!」

 

エレンが声を上げると共に士道は体にかかる重力が倍になったような感覚に陥り膝をつく。

 

息ができない程の圧迫感にフロア全体が軋みを上げる。

 

にも関わらず。

 

「ははは!!」

 

ドニは楽しげに笑うと軽い動作で地を蹴り、双剣を投影しながらエレンとの距離を詰める。

 

「なっ!!」

 

そんなドニの行動にエレンが目を剥いてレーザーブレードで剣を受け止めようとする。

 

「この程度で僕を止められと思われるなんて心外だな!」

 

言って、そのまま剣を振るってエレンの身体を吹き飛ばす。

 

それと同時に士道は自身にかかっていた負荷が無くなるのを感じる。

 

「よし!!」

 

自分自身に言い聞かせるように言うと士道は走り出し、階段を駆け上がった。

 

 

 

 

「しつこい!」

 

士道が放った正拳が炸裂し魔術師を昏倒させる。

 

エレンをドニに任せて、数分…士道は行く手を阻む魔術師達になかなか前に進めずにいた。

 

『マスター、魔力の残量が50パーセントを切りました』

 

『後方から魔術師とバンダースナッチが迫ってるぞ…!!』

 

「倒しても、倒しても出てきやがる…一体なあと何人いやがるんだよ…」

 

オーディンと雷華の報告と次から次へと現れる魔術師にうんざりしたように呟く。

 

このまま魔術師達と戦闘を繰り広げていては魔力切れになるのは目に見えていた。

 

そんな士道の事などお構いなしとばかりにレーザーブレードや小銃を手に襲ってくる。

 

『どうする…塵殺公や桜色の聖剣を使って…天井をぶち抜くか…?

 

って、それじゃあ威力がありすぎてビルの倒壊を招く恐れがあるか…』

 

などと考えていると。

『どうやら、そこまで心配はいらないようだよ…』

 

「んっ?」

 

雷華がホッとしたように息をつきながら言い、士道は首を傾げる。

 

それと同時に何かに亀裂が入るような音が聞こえたかと思うと、次の瞬間、廊下に並んだ窓ガラスが一気に割れ、破片が雨のように降り注ぐ。

 

「なっ!」

 

銃を構えた魔術師の狼狽が響く。

だが、異常はそれで終わりではなかった。割れた窓から凄まじい風圧が襲い来て、士道の後方に迫ってきたい三名を軽々と吹き飛ばしたのである。

 

「な……っ! ば、馬鹿な、随意領域がー」

次いで、士道は辺りの気温がぐんと下がるのを感じた。

それこそ、辺りが一瞬にして冷凍庫に変わってしまったのではと錯覚するほどに。

どうやらそれは士道が感じた幻覚ではないらしかった。

後方から、魔術師たちの悲鳴が聞こえてくる。

 

「こ、これは……」

 

「随意領域ごと凍らされていく……!!

随意領域を一旦解除しろ!」

 

「りょ、了解!」

 

 

窓が吹き飛び、寒波が襲来し、今の今まで士道に威圧的な視線を送ってきていた魔術師たちが、何が起こったのかわからないといった様子で慌てふためいている。

 

だが。次の瞬間、士道は全てを理解した。

 

「ふん、まだ生きてましたかー」

 

砕かれた窓から、煌びやかな霊装を纏った美九が現れ、廊下に降り立ったのである。

そしてそれと同時に軽やかにステップを踏む。

 

「<破軍歌姫>ー[独奏]!」

 

するとそこからあのパイプオルガンの一部と思われる銀色の細長い円筒が現れた。

ライブなどに用いるスタンドマイクを思わせる姿である。

 

「――――――っ!」

美九がそれに向かって、思わず聞きほれてしまいそうな美声を響かせる。

するとそれは円筒の内側を通り幾重にも反響し、周辺に広がる。

次の瞬間、美九の声を聴いた魔術師達が一斉に武装を解除し、壁際に綺麗に整列する。

 

「美九!」

 

士道が叫ぶと、美九は不機嫌そうに視線を逸らす。

 

「気安く呼ばないでくださいますぅ?

あなたなのどから発せられた声で呼ばれると、それだけで私の可愛い名前に拭いようのない穢れが蓄積するんですよぉ」

 

相変わらず、愛らしい顔に似合わぬ鋭い罵倒に士道は苦笑する。

窓の外を見ると、美九をこの階層まで運んできたのだろう、天使を顕現させた四糸乃と桜、八舞姉妹の姿が見受けられた。

 

「お姉様……私たちはどうしましょうか」

 

巨大なウサギの人形の背にしがみついた四糸乃が言うと美九は士道に向けていた険しい顔を一瞬のうちに微笑に変えて四糸乃に向いた。

 

「んん、そうですねえ。四糸乃ちゃんや桜さん、耶倶矢さん、夕弦さんたちの天使はビルの中じゃ窮屈そうですしー……じゃあ、邪魔が入らないよう中の魔術師さんたちを引っ張り出してやっつけておいてください」

 

美九が指を一本立てながらウインクをする。

すると今度は八舞姉妹が声を上げてきた。

 

「くく、なるほどな。では我らは、姉上様の帰り道を掃除しておくことにしようぞ」

 

「懸念。しかし、夕弦たちがいなくて大丈夫ですか?」

 

「あはは、いくら強いって言っても、所詮は人間さんでしょう? 精霊であるこの私が後れを取るなんてこと、あるはずないじゃないですかぁ」

 

美九が快活に笑うと、四人は一瞬目を見合わせたあと、小さくうなずいた。

 

「お姉様がそう仰られるなら……」

 

「了解なんだよ!お姉様!!」

 

「ふ、承った! 我らに任せておくがよいぞ。

この建物から一直線に、ビロードの絨毯を敷いておくことを約束しょう!」

 

「了解。全てはお姉様の望みのままに」

 

「お、おい、四糸乃!桜! 耶倶矢! 夕弦!」

士道が叫ぶも、四人は聞く耳持たず、天使を駆るとそれぞれ思い思いの方向に飛び去っていく。

 

 

それを満足そうに見届けた後、士道の元へと歩いてくる。

 

「美九…おまえ、あの約束を……?」

 

「……っ」

士道の言葉に美九が不快そうに顔を歪める。

「勘違いしないでもらぇますぅ?

私、どこかの不愉快な自殺志願者が垂れ流していた妄言なんて、まっっっっったく気にしてませんしぃ。

ここに来たのはもう一人の精霊さん私のコレクションに加えようと思ったかですしー」

 

「すまん、恩に着る」

「ふんっ、だから、あなたにお礼を言われる筋合いはないんですよぉ。

私は私の意志で、十香さんを連れに来たんですから。

……無様に付いてくるのは勝手ですが、できるだけ私の視界に入らないようにしてくださいよー」

 

頭を下げる士道を一別し、美九が廊下を歩いていく。

士道はやれやれと肩を竦めながらそれを追っていった。

 

 

 

「はっ!」

 

空気を圧縮した放った不可視の弾丸を両断し、ドニがエレンへと距離を詰めると攻撃を繰り出す。

剣戟をレーザーブレイドで受けながらエレンは苦しげな顔を作る。

先ほどから魔法使い‐サルバトーレ・ドニに対してエレンは苦戦を強いられていた。

何故ならばこの魔法使いにはエレンの使う魔法を剣一本で無効化してしまうのだ。

今まで世界最強を自負していた彼女にとってそれは初めての経験であり、屈辱的な事でもあった。

にも関わらず、エレンの顔には笑みが浮かんでいる。

自分と並び立つものがいなかったエレンにとって初めて現れた好敵手とも言える存在に心が踊っていたのだ。

鞭のように繰り出される高速の攻撃にエレンのワイヤリングスーツに傷が創られていく。

 

「はぁ!」

 

裂帛の声を上げてエレンはレーザーブレイドを振るってドニを吹き飛ばす。

 

「この私がここまで一方的にやられるとは…やはり…ここは本気を出さないといけませんね…」

 

「まだ全力を出してなかったの?」

 

苦笑を漏らしながら呟いたエレンにドニが問う。

 

「ええ…この技は身体や負担が大きすぎるためにあまり使えないのですが…私は負けるのが嫌いですから…」

 

「へぇ…気があうね…僕も負けず嫌いでね…」

 

笑みを浮かべて言うドニの言葉を無視し、エレンは小さく呟く。

「カートリッジ、ロード」っと。

 

その言葉と共にレーザーブレードに装着されている弾倉のようなパーツが回転したと思うとエレンの姿がドニの視界から掻き消える。

それとほぼ同時に後方に気配を感じる。

 

エレンからの攻撃だ。

 

「!!!」

 

ドニはこれを剣で防御するがその衝撃で二本共に砕け散る。

 

当然の事ながら新たに剣を投影する余裕などをエレンは与えてくれない。

 

繰り出される二撃目がドニの胴体を捉えていたー。

 

 

『カートリッジ・システム』…圧縮した魔力が込められたカートリッジを込めた弾倉をワイヤリングスーツや武装に組み込んだものである。

このカートリッジに込められた魔力を使用することで従来のワイヤリングスーツの性能を数倍以上に引き上げることが可能だ。

 

文字通り、必殺の一撃。

にも関わらず…エレンの攻撃はドニの身体に届かず、展開された七枚の花弁によって防がれていた。

 

「くっ!」

 

苦虫を噛み潰したような顔をしながらエレンは再度カートリッジをロードし攻撃を繰り出しているが花弁には傷一つついていない。

 

天覆う七枚の円環‐ドニが作り出すもの中で数少ない防具であり、核シェルター並みの防御力を誇る。

 

そんなことは知らないエレンはドニが何事かを呟いているのを気づく。

 

「―体は 剣で出来ている」

 

『詠唱ですか…魔法使いが強力な魔法を行使する際に唱えるという言の葉…』

 

「―血潮は鉄で 心は硝子

―幾たびの戦場を超えて不敗

 ただ一度の敗北もなく、

 ただ一度の勝利もなし

―担い手はここに独り。

 剣の丘で鉄を鍛つ

―ならば 我が生涯に 意味は不要ず

―この体は、無限の剣でできていた」

 

 

早口にドニが唱え終えると共に炎が走る。

 

「つっ!!」

 

目を灼くような炎の眩しさにエレンは目を瞑り、ドニから距離を取る。

 

その一瞬のうちに世界は作り替えられる。

 

エレンが目を開くと、そこは無数の剣が乱立した丘であった。

 

無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)…ドニが展開する固有結界である。

 

 

「さて…こちらも本気を出させてもらおうか」

 

手近な剣を引き抜きながら言うドニにエレンは生まれて初めての敗北を覚悟した―

 

 

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