デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第四十話 『灰被り‐シンデレラ‐』

「うふふ、ダーリンかわいいですぅー」

七罪によって子供の姿にされた士道は美九の膝の上に載せられていた。

 

「ううー、美九ちゃーん私もそろそろ士道君をバグしたいんだよー」

 

「そうだぞ美九、ケッカッチンなのだー」

 

十香と桜がうずうずした様子で言う。

 

この姿にされてから数日。

 

士道は精霊達からいいようにいオモチャにされていた。

 

「あのー、桜さん…その手にあるプリ○ュアっぽいフリフリ衣装はなんなんでしょうか?」

 

 

冷や汗を浮かべながら士道は宣う。

 

「士道くんにはこの衣装が似合いそうなんだよー」

 

士道に着せる気満々の桜に士道は逃げ出そうと試みるも現在、美九にガッチリとホールドされているためにそれも叶わない。

 

疑似霊装を展開して振り切るべきかと考え始めたところで士道のスマホの着信が響く。

令音からである。

 

「もしもし、令音さん?

はい、はい、えっ?七罪が!?」

 

曰く、ドニと苺が七罪を保護したとのことで至急《フラクシナス》まで来てほしいということだったー。

 

 

 

二人が七罪とDEMの魔術師達が戦闘を繰り広げている現場に到着したとき‐七罪は傷を負っておりエレンがとどめを刺そうとするところだったらしい。

流石に魔法使い二人相手に戦闘を繰り広げるには厄介と踏んだのかすぐさま撤退していったのだ。

あと少し、二人の到着が遅れていたらと思うとゾッする。

七罪は五河邸に向かう途中で一度意識を失ったらしく士道や十香達の姿は元に戻っている。

現在はラタトスクが市内に所有する地下施設の一つへ運ばれ、治療を受けている。

 

「でっ?あいつらを入れても大丈夫なのか?」

 

地下施設の一角。

〈フラクシナス〉の艦橋のように様々な計器と巨大モニターが設えた部屋で士道は目の前で椅子に座る琴里に尋ねる。

士道の言うあいつらとは言うまでもなく、ドニと苺だ。

 

「別に〈協会〉とは敵対している訳ではないし大丈夫でしょ。

それに、もし七罪が暴れてもあの二人なら直ぐに止められるでしょ」

 

『今のところだがな…』

 

っと、心の中で付け加えながら士道は義妹の言葉に苦笑を浮かべる。

〈協会〉に軍隊のような規律は無い。

そのためにどう行動するかは個人の自由意志に任される。

苺やドニは〈ラタトスク〉側にいるが、いつ〈DEM〉側につくか解らない。

また、〈協会〉所属の魔法使いが士道達に敵対する可能性もあるのだ。

 

『そういえば…』

 

ふと、何かを思い出したように士道は顔を上げる。

先月、〈DEM〉社でウェスコットに撃たれた時の事である。

『対象の霊力を暴走させて行動不能にさせる』

 

ウェスコットが言った言葉が何故だか士道の頭の隅に引っ掛ったのだ。

 

〈協会〉に所属しないフリーランスの魔法使いがそのような魔法を使う聞いた事があるからだ。

 

「―どー、士道ってば!」

 

自分の名を呼ぶ声に士道が顔を上げると〈フラクシナス〉の艦長兼、義妹様が士道を睨んでいた。

 

「まったく、人が七罪の状態を説明しているのに何を考えていたのよ」

 

腰に手を当てながらムスっとした表情を浮かべる琴里。

 

「ああ、すまん」

 

謝る士道に琴里は再び七罪の現在の状態について話し始めた。

琴里の話を総合するとエレンから受けたダメージの影響で一時的に天使が使えない状態にあり、おまけに士道への印象値が最悪な状態なのだ。

 

「まっ、七罪の機嫌が悪い理由はわかってるからな…そこから何とかしてみるさ…。

琴里も用意の方を頼むぞ」

 

「了解、任せときなさい!」

 

親指を立てる琴里を背に士道は七罪が隔離されている部屋へと歩いていった―。

 

 

 

部屋へと入ると中は広い空間になっていた。

薄暗いエリアの中には様々な機会が並んでおり、その中央には頑丈そうなガラスで仕切られた部屋が見て取れた。

そして、その中に置かれたベッドに、不機嫌そうな顔をした少女がいた。

七罪である。

寝癖だらけの髪に、不健康そうな生白い肌。

背も低く、手足は小枝のように細い。

その上、病衣を着ているために彼女が重病に冒されており余命幾ばくもないと言われても不思議ではない。

 士道は一旦、呼吸を整えるとガラスで仕切られた部屋の入り口に手をかける。

戸を開けて中にはいると外からは透明に見えていた壁は内側から見ると普通の白い壁に見えた。

部屋の中にはベッド以外にも戸棚やテーブルが置かれており、テレビやらマンガやらの娯楽品が七罪を飽きさせないようしようとする〈ラタトスク〉の涙ぐましい努力が窺えた。

 

「…………ッ!」

 

と、士道が部屋へと入った瞬間に七罪が大きく肩を揺らした。

 

「よう、七罪」

 

片手を上げてにこやかに挨拶するが七罪はそれに答えず、それどころか、ベッドに置かれたマクラやクッション、ぬいぐるみなどを手当たり次第に投げつけてきたのだ。

 

「…こっち…見ん…なっ!」

 

七罪が言いながら投擲してくる物を避けながら士道は確信する。

『やっぱり…七罪は自分の見た目を気にしているようだな…』

 

そう士道が心の中で思っていると投げるものが無くなったのかしばらく慌ててから、布団に潜り込んだ。

 

そして数秒間蠢いた後、目元だけを出して士道を睨む。

 

「な…何の用……ッ!」

 

敵意むき出しの視線で士道を睨む。

 

「傷の調子は大丈夫かと思ってな…」

 

「……」

 

士道の言葉に七罪は黙り込む。

だが、数秒の無言の後、言葉を続ける。

 

「……なんであいつらは私のことを助けたんだろう…」

 

不機嫌そうな口調で呟く七罪。

彼女の言うあいつらとは苺とドニの事だろう。

 

「さぁな…あいつらが何を思って、お前を助けたかわからないが…多分理由なんて無いんだろうな…」

 

「そ、そんなことあるはずが無いでしょうが!!」

 

「だってさぁ、女の子が襲われていたら助けるのが普通でしょう」

 

「うむ、右に同じじゃ」

 

叫ぶ七罪にそう答えたのはドニと苺だ。

いつの間に入ってきたのかはわからないが七罪はいきなり現れた二人に目を丸くしている。

士道はそんな七罪と二人の魔法使いの姿に苦笑を浮かべる。

だが、七罪は直ぐ様に気を取り直すとドニと苺を交互に指差し叫ぶ。

 

「そんな訳ないでしょうがぁぁ!

変身していた時の姿ならまだわかるわ!!!

でも、私がこのみすぼらしくてブサイクな姿に戻った時にまで私の味方をするなんて有り得ないわ!!!!!」

 

「ふむ、確かにお主のなりはみすぼらしいが、素材は良いと思うのじゃがのぅ…」

 

自分を卑下する七罪に残念そうに苺は呟く。

士道も苺に同意見であった。

七罪の格好は確かにみすぼらしいものであるがメイクや髪の手入れを行えば可愛らしくなるような気がするのだ。

 

『んっ、待てよ』

 

それと同時に士道は七罪と良く似た境遇の少女について思い出す。

っと言っても士道がこれまで出会ってきた精霊達ではない。

その少女はとある童話の主人公である。

気がつくと士道は口を開いて問うていた。

 

「なぁ、七罪…お前、シンデレラって知ってるか?」

 

「…童話でしょ?

そんな事は知って…」

 

士道の問いに七罪は言いよどむ。

何か思い当たる節があるようだ。

 

「そう、お前もシンデレラと同じように自分に自信を持てないんだろ?

なら、教えてやるよー。

女の子は天使なんかを使わなくとも『変身』出きるってことを…」

 

「………っ」

 

その言い方が気に入らなかったみたいで七罪は士道から顔を背けた―。

 

 

 

 

「うそ…」

 

士道が七罪を隔離部屋から連れ出し、本日何度目かわからない驚愕の表情を浮かべる。

七罪が驚いている理由は鏡に写っている自分の姿にである。

 

カサカサに乾燥した肌は美九がエステを施し、みずみずしい赤ちゃん肌に。

 

ボサボサで枝毛だらけだった髪は八舞姉妹のトリートメント&カットにより柔らかな髪へ。

 

精霊達に着せかえ人形のごとく、服や靴、帽子、様々なアクセサリーを付けさせられ。

そして今し方、苺からメイクを施されたのである。

ドニから彼女がもう七十近い婆さんだと教えられた時は本気で疑ったのだが、本人が苦笑混じりの表情で頷いたところからどうやら本当らしかった。

 

「まっ、ワシの場合はもう少し手をかけておるがのぅ。

お主は若いしこんな感じで良いじゃろ。

必要なのは自分が可愛いと思いこむことじゃよ」

 

とかなんとか言っていたがあまり頭には入って来なかった。

 

「これが…私…?」

 

信じられないものを見たというように七罪が言葉を紡いだ。

 

前髪が梳かれた分、露出が増えた顔は確かに七罪のものであった。

違いを挙げるならば、ほんのりと頬に差した朱や、少しだけはっきりとした目、薄い桜色に彩れた唇など、どれも僅かなものである。

だが、その一つ一つの些細な違いが七罪の印象を可愛らしくしているのだ。

 

「うむ、間違いなく、七罪、これがお主じゃ」

 

七罪が信じられないものを見るような様子で顔を触りながら呟くと苺が小さく頷いた。

「さて…最後は俺の番だな」

 

七罪が驚愕の表情を浮かべていると士道が手を差し出し口を開いた。

 

「一曲、踊るというわけでは無いがこれから一緒にデートをしよう」

 

 

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