デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第四十二話『コロニー落とし』

「全く…人工衛星が落下とか…機動戦士かよ…」

 

「む?シドー、ガン○ムの場合はコロニーではないのか?」

 

「人工衛星も…コロニー…も同じものだったはずです…」

 

「おー、四糸之物知りー」

 

気絶した七罪を背負い、擬似霊装を展開した士道が走りながら呟く。

そんな士道の言葉に霊装を限定展開した十香がキョトンとした表情で問うてくる、それに十香と同じく霊装を限定展開した四糸之が答える。

 

《フラクシナス》から地上へと降りた精霊達と合流したのだ。

 

先ほど雷華から入った通信によれば、この天宮市に向かって四機の人工衛星が落下してきているとの事である。

 

《電脳女帝》を用いて某国のミサイル基地をハッキング、ICBMを発射して破壊を試みたのだが衛星内に潜んでいた《バンダースナッチ》が張った随意領域により防がれたらしい。

 

『一機は《フラクシナス》の主砲で破壊されたみたいなんだけど、もう三機が現在その質量を保ったまま落下中。

そして、《フラクシナス》は敵艦と交戦中らしいからね…残り三機機は君達で何とか破壊してくれ!!』

 

「うん!任せてなんだよ!雷華!!」

 

雷華の叫びに、桜が答える。

 

「くかかか、血湧き肉踊るとはこの事だ!のう!可倶矢!!」

 

「首肯、必ず破壊してみせます」

 

夕弦と可倶矢が力強く頷く。

 

「ふふ…張り切っちゃいますよー」

 

唇に人差し指を当てながら美九がそう、答える。

 

『もうそろそろ目標が視認できるはずだよ!』

 

インカム越しに雷華が、そう言うと同時に雲を裂いて三機の人工衛星が天宮市に向かって落ちて来るのがわかった―。

 

 

「うはー、これはまた凄いなー」

 

上空から迫り来る人工衛星を見ながらドニは口笛を鳴らす。

 

『確か、爆裂術式が仕掛けられているせいでこの高度で破壊したらダメだったんだっけ?』

 

雷華からインカムで聞かされた内容を思い返しながらドニは魔力を練り上げる。

 

「………投影開始」

 

小さく呟くと同時に、腰だめに構えを取る。

 

意識を集中すると同時にドニの手中に風を纏わせた剣が出現する。

 

それを感じてか、《バンダースナッチ》がミサイルやレーザーを放って攻撃を行うが、風に阻まれて機動を逸らされる。

 

「《風王鉄槌-ストライク・エア‐》」

 

周囲にミサイルなどが着弾し爆炎をあげる中、ドニは静かに呟きそれを振るう。

同時に竜巻のような暴風が吹き荒れ、人工衛星とバンダースナッチを上空高くへと打ち上げる。

 

『ま、吹き飛ばした後に破壊すればいいんだくどね…』

 

 

「《約束された‐エクス…」

 

心の中で呟くと共に、ドニは二撃目へのモーションへと入る。

 

柄を固く握り直し、再び腰だめの体勢を取る。

同時に刀身が輝き、光りが溢れる。

 

「勝利の剣‐カリバー》!」

 

剣の真名を叫ぶと同時に振り抜き、刀身から放たれた眩い光が人工衛星を跡形もなく消滅させた。

《約束された勝利の剣‐エクスカリバー》…その昔、小国を率いていた王が振るい、幾つもの戦で勝利を導いてきた剣。

それと同じ名と力を持つ剣であり、ドニが投影できる武器の中で最高クラスの攻撃力を持つもだ。

 

『いくら複製とはいえ疲れるー。

魔力の消費が大きいんだよねーこれ…』

 

肩で息をしながらドニは地面に仰向けになる。

だが、限られた時間の中で《バンダースナッチ》の攻撃を防ぎなから人工衛星を破壊する手段はこれしかなかったのだ。

落下中の衛星は残り二機…。

未だに衛星が落下していく中、ドニは襲い来る疲労感からか目を瞑り…数秒後にはいびきを立てて眠りに落ちていた。

 

 

小さく、大きく…呼吸のリズムを整えながら苺は魔力を練る。

 

『この技を使うのは一体いつ以来じゃろうか…?』

 

笑みを漏らしながら苺は心の中で呟く。

 

同時に、空中へと手を掲げる。

 

そこに現れる蒼き光を放つ魔法陣である。

『全く、奴は本当に飽きさせぬの…』

 

苦笑を浮かべながら苺はその魔法の発動キーたる言霊を口ずさんだ。

 

「《復元する原初の世界‐ダカーホ・ゼロ‐》」

 

その言葉と共に魔法陣が輝きを放ち、一瞬後には人工衛星を跡形もなく消し去っていた。

否、消し去ったという言い方には少々語弊が生じるかもしれない。

もともと、苺の使う魔法に攻撃の手段は乏しい。

使用できる魔法はを時を巻き戻す、巻き戻した状態を維持する、記憶の中にある人やものを呼び出というものである。

先ほど人工衛星に対して使用した苺の時を巻き戻す魔法の最終形態といってもいいだろう…。

《復元する原初の世界‐ダカーホ・ゼロ‐》‐対象の時間を生まれる前、作り出される前にまで巻き戻す回帰の魔法である。

 

「さて…」

 

苺は呟きながら地面に腰を下ろす。

 

「後は頼むぞ…士道…」

 

上空にある残り一機の人工衛星を見ながら苺は弟子の名を呟いた―。

 

 

「んっ…」

 

周囲が騒がしい轟音に七罪は目を開ける。

 

「え…?」

 

同時に漏らしたのは驚愕の声だ。

 

何故ならば、自分の目の前に士道が立ち、天使と思われる大剣を振るっていたからである。

 

『これは…一体…?』

 

『気がつきましたか?』

 

混乱する七罪の頭に《オーディン》の声が響く。

 

『あなたの目が覚めたら状況を説明するようにと、マスターから命を受けてます』

 

 

 

「なるほど…」

 

エレンと戦闘を繰り広げた後の事の顛末を《オーディン》から聞いた七罪は周囲の様子を見る。

 

戦況は不利な状態なのは明らかであった。

 

《バンダースナッチ》の数は少なくとも50機以上、統率された動きで人工衛星を押し戻そうとしている八舞姉妹、落下を防ごうとしている四糸之、演奏で皆の力を増幅させている美九、そして人工衛星を撃ち落とす決定打を持つ、桜と十香、士道の三人に襲っているのだ。

 

『マスター!』

 

不意に《オーディン》が叫ぶ。

 

天使を連続使用したせいか膝をつく士道。

そこに無慈悲にも《バンダースナッチ》が襲いかかる。

 

「っつ!《贋造魔女》!!」

 

気がつくと七罪は天使を《バンダースナッチ》に向けて行使していた。

 

光が迸り、次の瞬間には《バンダースナッチ》はぬいぐるみへと姿を変える。

 

「七罪…」

 

士道が首を巡らせると《贋造魔女》を構えた七罪の姿があった。

「あんなもさっさと落としなさいよ!」

 

「無茶を言うなよ…あれには…」

 

無茶を言う七罪に士道が苦笑を浮かべる。

 

「壊そうとすると爆発するんでしょ?

…だから、私が手を貸してやんのよ!」

 

七罪が叫び、再び《贋造魔女》を構える

同時に、光が再び迸る。

次の瞬間、人工衛星はその姿を巨大なブタさんへと姿を変えていたのだ。

 

『…なるほど』

 

士道は最初に七罪と出会った時の事を思い出す。

あの時と同様に、爆発力はかなり減衰しただろう。

だが、これだけの質量のものが落ちただけでもかなりの被害がでる。

 

「やるぞ!十香!」

 

「うむ!」

 

互いに頷くと二人は《塵殺公》を構える。

 

本来ならば同じものが二つとして存在しない天使。

 

だが、士道と十香の手にはその奇跡が一つづつ存在している。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

裂帛の声と共に振り抜かれる二振りの奇跡。

そこから繰り出された斬撃は空中でクロスして落下する巨大なブタさんへと直撃する。

 

「なっ!!」

 

「くそっ!!」

 

二人が繰り出した渾身の一撃。

 

だが、巨大なブタさんの随意領域は未だ健在らしくそれを切り裂くに至ってはいなかった。

本来ならば天使の一撃が《バンダースナッチ》程度の随意領域では防げるはずもない。

だが十香も《バンダースナッチ》との戦闘で消耗していたし、士道もまた天使の強行使用で身体が限界を迎え、魔力も底をつきかかけている。

ギリギリの所で…随意領域が破れず、巨大ブタがのしかかるかのように迫ってくる。

 

「くっ……!」

 

恐らくあと一撃を加えれば破れるはずであるがだが、その一撃が放てない。

四糸之、桜、八舞姉妹、美九も未だ《バンダースナッチ》と戦闘を繰り広げており、加勢は期待できない。

 

《共鳴‐ユニゾン‐》を行うにも時間が足りない。

 

ドニと苺は先ほど人工衛星を撃墜したらしいが、恐らく全力を出したはずである。

魔力も全く残ってないだろう。

 

『残りの魔力を使って特攻をかけるか…』

 

などという思考が士道の頭の中によぎった。

 

「《贋造魔女》!」

 

瞬間―、七罪が右手に握る天使を掲げて、再び声を上げる。

一瞬、ブタさんを他の何かに変身させる可能性を思いつくが、その考えは直ぐに廃棄する。

そんな事が可能ならば直ぐにやっているはずだ。

 

『…っとなれば…』

 

天使の真の姿―《塵殺公》の【最後の剣】や《颶風騎士》の【天を駆けるもの】を展開するのだろうと思い至る。

 

士道の読み通り七罪が続けて声を上げる。

「………【千変万華鏡-カリドスクーぺ】!!」

 

瞬間―、七罪の持っていた天使に変化が生じた。

 

箒全体が磨かれた鏡のような輝きを放ち、箒自体が、粘土のようにそのシルエットを変貌させる。

 

そして、数瞬後。

 

「なっ!?」

 

七罪の手の中にあるそれを見て十香が目を丸くする。

 

それもそのはずであるー。

今、七罪の手の中に先ほど十香と士道が振るっていたものと同じものが握られていたからだ。

そうー天使《塵殺公》がそこに顕現していた。

 

「士道に何してくれんのよ……!

 

こいつに悪戯していいのは………私だけなんだからぁぁぁぁぁぁっ!」

 

七罪がそう叫ぶと、《塵殺公》をブタさんめがけて力いっぱい振り抜いた。

 

「《塵殺公》……!」

 

刀身から光が溢れ、七罪の太刀筋に沿うように、斬撃がターゲットに向かって飛んでいく。

 

形のみではない、十香のそれには劣るが、それは間違いなく十香の《塵殺公》の力を有していた。

 

第三の《塵殺公》の斬撃がターゲットの随意領域へと浴びせられる。

ブタさんの周囲を沿うように張られていた不可視の壁はひびが入るような音を立てて砕け散る。

 

守るものを失ったブタさんは随意領域を砕いた衝撃の余波によりコミカルな音を立てて弾け飛んだー。

 

 

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