一人工衛星を無事撃墜し終えてからおよそ三〇分後。
天宮市上空でDEMの空中艦と交戦していた琴里から連絡があり、敵艦に逃げられはしたもの《フラクシナス》も、多少の損傷を受けた程度である旨が伝えられた。
ただ、一時的に転送装置が使えなくなってしまったらしく、士道たちは避難した住民たちが外に出てくる前に、件の地下施設に歩いて移動しているところだった。
天使の使用によってダメージを負っていた士道の身体も、しばらく休んだことによってどうにか歩けるくらいには回復している。
それでも士道を心配した十香は「負ぶっていく!」と聞かなかったのだが、人の目がないとはいえさすがに恥ずかしいので丁重に辞退しておいた。
結局七罪はー士道たちと一緒に、《ラタトスク》へ来てくれることに決めたらしい。
『後は…霊力を封印をするだけか…』
無論、まだ霊力は封印できていないし、その旨を説明してもいない。
だが、彼女が持っていた外見のコンプレックスは既に解消済みだ。
士道は、隣を歩く七罪に目をやった。
「な、なに……?」
七罪が戸惑うように言ってくる。
が、その表情には、以前あったような険が見受けられない。
士道は微笑を浮かべながら首を振った。
「いや、何でもない」
「……あ、そ」
七罪がそう言うと、視線を逸らした。
だが、しばらくして。
今度は七罪の方から、前方の十香たちに聞こえないように声をひそめながら、士道に話しかけてきた。
「……あの、さ」
「ん、どうした七罪」
「ちょっと……聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「ああ、なんだ?」
士道が答えると、七罪は無言のまま士道の袖を引っ張ってきた。
「どうしたんだよ?」
「いいから、ちょっと」
七罪は士道を引っ張ると、そのまま脇道に入り込んだ。
そして、士道の顔を見つめながら、神妙な面持ちで問うてくる。
「……ねえ、士道」
「なんだ?」
士道がこの後の七罪の行動を予測する。
「私…本当に可愛い?」
「んっ?…ああ」
意外な質問に、士道は思わず目を丸くした。
だが、よく考えてみればそれは、士道が七罪に初めて会ったときにされた質問とほとんど同じものだった。
もちろん、そのとき七罪は大人のお姉さんの姿をしていたのであるが。
士道は口元を綻ばせると、大きく頷いた。
「ああ、もちろん。
可愛いぞ、七罪」
「!」
七罪は顔を真っ赤にし、目を見開くと、口をモゴモゴさせてからあとを続けてきた。
「……今度」
「ん?」
「ま……また……買い物に…連れてってくれる……?」
七罪が恥ずかしそうに顔を傾けながら言ってくる。
士道はその言葉に頷く。
「ああ、いいとも」
「……そっか」
士道がそう答えると、七罪は何やら納得したように小さくうなずいた。
そしてー
「―」
そのままぐいと士道の襟首を引っ張り-唇と唇を合わせてきた。
「……」
そのうちに七罪に事情を説明し、霊力を封印するためにキスをしなければならないと思っていた。
先ほど人通りが少ない通りへと入った瞬間に士道はある程度はこうなることは予想がついていた。
そして次の瞬間、身体に温かいものが流れ込んでくるかのような感覚が生まれーそれと同時に、七罪の纏っていた魔女のような霊装が、光とともに空気に溶け消えていった。
「わ……っ!な、何これ……」
七罪が顔を驚愕に染め、胸元を腕で覆い隠しながらその場にへたり込む。
「知らなかった。
霊力を封印すると、霊装って消えちゃうんだ……」
「そりゃ…霊装は霊力で出来てるからな…」
七罪が顔を真っ赤にしながらぼそぼそと呟き士道が答える。
「あーっ!」
そこで背後から十香の叫び声が聞こえてきた。
どうやら、後ろを歩いていた士道たちの姿が見えなくなっていたため、引き返してきたようだ。
無論。
十香だけではなく、四糸乃や桜、八舞姉妹、美九の姿もある。
「シドー! こんなところで何をしているのだ!」
「……! あ、あの……私、見てませんから……」
「士道くん…破廉恥は駄目なんだよ!」
「くく、このような街中で封印とは、見上げた性癖よのう」
「首肯。
無人の街という非日常空間をプレイに利用する貪欲さはさすがです」
「きゃー! だーりんたらダイターン!」
などと、わいわいと騒ぎ始める。
「ちょっと待て! これは俺からじゃなくてー」
士道が弁明しようとするも、十香たちは聞く耳を持たない…。
「ふふ…あはははは!」
そんな士道達の様子に七罪は笑い声を上げた。
灰音です、PCの故障により投稿に時間がかかりましたが、七罪編完結です。
今回は士道達と敵対する魔法使いが現れます。
ぶっちゃけて言えば 切嗣さんですー。
そして次回からはゲーム編のストーリーから原作ストーリーへとつながって行く予定なのでお楽しみにー。