デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第四十四話『凛祢ユートピア』

イギリス‐ロンドンにあるビッグベン。

イギリス有数の観光地でもある巨大な時計塔の地下に《協会》の本部はある。

 

『ふむ…彼は七体目の精霊の力を手に入れたのだね…?』

 

暗い室内の中、若い男の声が響く。

その声の発生元は部屋の中で唯一の光源である巨大なビーカーからだ。

ビーカーの中には淡いグリーンの培養液らしきもので満たされており、幾本ものコードがビーカーを支える装置から延びている。

そして、その中には逆さの体制の男がいた。

中性的な見た目に腰まで白髪を伸ばした欧米人である。

アレイスタ=クローリー。

《協会》の創始者であり、19世紀初頭より生き続ける魔法使いである。

 

「で、どうするつもりじゃ?」

 

ビーカーの前に立つ、外套を羽織り三角帽を被った女性-相良苺はクローリーに問う。

 

「どうする…とは?」

 

「士道の今後の対処についてじゃよ」

 

苺の言葉にクローリーは問いで返す。

 

「それは私個人としてかい?

それとも組織全体としてかい?」

 

「わかりきった事を聞くのぅ……。

無論、お主個人はどうするかということじゃよ」

 

苦笑したような声で言う苺。

《協会》は一応は組織の形を成してはいるがどのような行動を取るかは所属する魔法使い個人個人の裁量に任されている。

 

だが、《協会》内でクローリーを心酔しているもの少なくない。

そのため彼の意見が大きく関わってくるのも確かだ。

 

「わかっているとも…私は変わらずに中立の立場だよ」

 

「それは今のところかの?」

 

苺の質問クローリーは首肯する。

 

「だが、もし彼の持つ精霊の力を制御しきれなくなった場合は私も考えねばいかぬだろう…」

 

表情を変えず、淡々とした口調でクローリーは言う。

 

「そうか…じゃが決断は早めにしといた方がよいじゃろうな…。

奴…異能殺し‐衛宮切嗣が現れたのじゃからな…」

 

苺の口からその名が出た瞬間、今まで無表情だったクローリーが僅かに眉を動かす。

 

「やはり憎いかの?自分をそのような身体にした者が…」

 

「全く、君も意地の悪いことを言う…」

 

苺の言葉に苦笑したような声を漏らすクローリーであった。

 

 

 

 

「シドウ…」

 

少女、リンネはホムンクルスである。

 

ホムンクルス‐賢者の石と呼ばれる鉱石を核とする人工生命である。

主に自分を作り出した魔法使い‐マスター-の身の回りの世話や研究の手伝いをする使い魔的な役割を行うものだ。

 

そんな彼女がマスターであるクローリーと苺の会話を偶然に立ち聞きしてしまったために悶々とした感情を抱くことになった。

 

精霊の力を封印し、その力を行使する魔法使い‐五河士道についての話である。

 

「シドウ…もしかして殺されちゃうのかな…」

 

クローリーから与えられた自室のベッドに座り、呟く。

 

恐らく、士道は自分の事を全く覚えていないだろうがリンネの方は彼の事を知っていた。

っと、言うよりも《協会》の中で知らないものが皆無と言ってもよいかもしれない。

何しろ精霊と言う世界を滅ぼしかねない存在の力を封印し、尚且つその力を使用できるのだから。

だが、そのせいで《協会》内にも士道を危険視するものが多いのも事実だ。

今はクローリーがどっちつかずにいるおかげで士道に危害が加えられる事はない。

だがクローリーの言葉から察するに彼が決断するのも時間の問題だろう。

 

 

『シドウ…』

 

リンネがその名を次の瞬間である。

 

『彼を助けたい?』

 

っと言う声が彼女の頭の中に響いたのは…。

 

 

 

 

 

「…どー、士道…起きないと遅刻しちゃうよー」

 

「んっ…」

 

澄んだ少女の声と体を揺り動かされる感触…そして女の子が放つ特有の甘い香りに士道は目を覚ます。

 

そこにいたの薄桃色の髪と瞳を持った優しげな少女である。

 

 

「おはよう…凛祢…」

 

眠たげに目を擦りながら士道は体を起こし、少女の名を呼ぶ。

 

―園神凛祢、士道の幼なじみである少女だ。

 

「おはよう、士道。

 

みんな食堂で待ってるよ」

 

「悪いな、起こしてもらうだけでなく朝飯まで作ってもらって…」

 

鼻孔をくすぐるカツオ出汁の匂いに士道は凛祢に言うと彼女は首を横に振る。

 

「ううん、私は士道の役に立てたらそれでいいの…。

それじゃ食堂で待ってるからね」

 

そう言いながら凛祢は士道の部屋を後にする。

 

それを見届けた士道は小さく伸びをして着替えを始めた…。

 

 

「悪いな…待たせた」

着替えを済ませた士道が食堂へと到着すると三人の少女が席についていた。

 

一人は腰まで伸びた黒髪を持ち、無邪気な印象の少女。

 

一人は水色の髪と蒼い瞳を持ち、右手にパペットを装着した大人しそうな少女。

 

一人は赤い髪を白いリボンでツインテールにした人なつっこいイメージの少女。

 

それぞれ名を夜刀神十香と四糸之、五河琴里と言う。

 

 

琴里は士道の義妹、十香と四糸之は五河邸の隣にある教会でお世話になっている少女であり、こうしてよく朝食を共にしているのだ。

 

「士道!待ちかねたぞ!」

 

「士道さん…おはよう…ございます。

あの…私…そんなに…待って…ない…です」

 

『士道くん、おっはよー』

 

「お兄ちゃん、おはようなのだ」

 

申し訳無さそうに言う士道に十香、四士乃、四士乃が右手につけたパペットの『よしのん』、琴里がそれぞれ答える。

 

「相変わらず、凛祢の作る食事は美味しさうだな」

 

食卓に並べられているのはご飯、味噌汁、焼き魚と代表的な日本の朝食である。

 

「ふふ、誉めても何もでないよ」

 

士道の言葉に凛祢が嬉しそうに微笑む。

 

「さて…それじゃあ」

士道がそう切り出すと五人は手を合わせ―。

『いただきます』

 

と挨拶をして、朝食を食べ始めるのであった。

 

 

『…今週末にオープンを迎える新天宮タワーですが…』

 

「んっ?」

 

皆が食事を終え、凛祢と共に食器を片付け始めた所で自分たちの住む土地の名が聞こえ、士道はテレビを見る。

今、かかっているのは地元ローカル局の朝の情報番組である。

 

テレビには絡み合った蔦ような見た目のタワーが映っていた。

 

「ああ、そういえばオープンがもうすぐなんだっけ…」

 

凛祢が洗い物をする手を止めて何かを思い出したように言った。

 

「ぬ?シドー、しんてんぐうたわーとは何だ?

食べ物か?」

 

凛祢とほぼ同じタイミングで十香が尋ねてくる。

 

「確か今度、天宮市にオープンする観光地だとか…」

 

『おお!!流石よしの!!

物知りー!!!』

 

「シドー!私も行ってみたいぞ!!」

 

質問に答える四糸之と『よしのん』に十香の弾むような声で言ってくる。

 

「多分、当日は混むだろうからな…まっ、行ってみるかな…」

 

そんな士道の言葉に十香が大喜びしたのは言うまでもない。

 

 

 

 

「シドー君、おっはよなんだよ!」

 

「おはよう」

 

「くくく、日輪の輝きが、我らの出逢いを祝福しておる」

 

「拝謁、おはようございます」

 

「ダーリン、おはようございますー」

 

「あの…その…おはよう…」

 

学校へ向かおうと五河邸を出てきた士道達は隣の教会から出てきた五人の少女と合流する。

 

桜色の髪を持つ、人なつっこいイメージの少女―陽之宮桜。

 

金色の髪を持つ、眠たげな表情の少女―武御原雷華。

 

髪を後頭部で結い上げた中二病を彷彿させる少女―八舞耶倶矢。

 

長い髪を三つ編みに括り夕弦と瓜二つの見た目の少女―八舞夕弦。

紫紺の髪と瞳ののんびりとした口調の少女ー誘宵美九。

 

艶やかな長い髪に翡翠色の瞳の華奢で小柄な少女―七罪。

 

彼女たちと共に学校へと向かうのが士道の日課になっている。

 

そう…そのはずである。

 

『…スター!』

 

「つっ…!」

 

不意に頭に走る痛みと声に士道は顔をしかめる。

 

何の変哲も無い日常…。

それなのに何かを忘れているような思えるのだ。

 

『何だ…俺は…一体…何を忘れている…?』

この世界は何かが変だ…。

自分の中にある何かがそう告げている。

 

「士道…?」

 

声に顔を上げると十香達が心配したような顔で士道の顔を見つめている。

 

「すまん、何でもない」

 

まだズキズキと疼く頭を振ると、士道は学校へと歩き出した。

 

 

 

「おはようございます、士道さん」

 

中学へ向かう琴里、四糸之、七罪と分かれ、校門をくぐった所で士道は一人の少女に声をかけられる。

 

顔の左半分を覆い隠す、長い黒髪と良家のお嬢様を思わせる落ち着いた口調の少女である。

―時崎狂三、明治から続く財閥の令嬢であり、十香達の住む孤児院の経営者の娘である。

 

「おう、おはよう…狂…」

 

っと士道が挨拶を返そうとした所で狂三の右側に回り込み、士道の右手を握ってくる。

 

「ぬ、狂三!ずるいのだ!」

 

その様子に十香が眉を潜めて士道の左手を握ってくる。

 

「くかか!我らを差し置いて士道といちゃつくとは不心者め!!」

「反論、士道は私と耶倶矢の共有財産です。

使用の際には許可を取ってください」

 

「あぁん!狂三ちゃんと十香ちゃんばかりずるいですよー」

 

「夜刀神十香、時崎狂三。

士道は渡さない」

 

等と言いながら士道の周りに集まって彼を取り合う少女達。

 

「って!折紙!いつの間に!」

 

その中に先ほどまではいなかった少女の存在に気づき、士道は声を上げる。

白髪をショートカットの髪型にし、無感情な印象の少女だ。

鳶一折紙‐頭脳明晰、運動神経抜群な少女であり、士道のクラスメートだ。

 

「教室から士道が見えたから走ってきた」

 

「ああ…そう」

 

っと簡潔に答える折紙に苦笑する士道。

―まだ頭の中では何者かの声が響いていた。

 

 

「―」

 

大きな欠伸が出るのを感じながらも士道は顔を上げる。

 

時間は進み、五時限目。

昼食後の一番眠くなる時間帯である。

実際に、士道の右隣では十香が机に突っ伏して幸せそうな表情で寝息を立てている。

それにつられて瞼が重きなるのを感じる。

 

『…スター』

 

それと同時に頭の中に響く声。

今度は頭痛は無く、逆に意識を引っ張られるような気がする。

そして―士道はそのまま眠りへと落ちていった。

 

『マスター!』

 

「つっ!!!」

 

頭の中に響いた名を呼ぶ声に士道は目を覚ます。

 

「ここは…」

 

まだ白濁とした意識のまま周囲を見ますとそこは士道の通う来禅高校の教室であった。

 

だが、そこに人の気配はなく外は暗い。

 

「夜…と言うわけではないな…」

 

携帯を開けると時刻は午前十時を回ったところである。

 

 

『マスターが学校へと登校。

教室へと入り、席につくと同時に何者かが固有結界を発動したのを確認しました』

 

 

「その何者かの正体がわかるか?」

 

『分かりません、この固有結界を形成するために霊力と魔力の両方が使われているようです』

 

「………」

 

《オーディン》の言葉に士道は顎に手を当てて考える。

 

暫くして行き当たった可能性は…。

 

『魔法使いが《ファントム》から力を与えられて精霊化したか…』

 

『でしょうね…』

 

だが、一番重要な問題はこの固有結界を展開した者が士道の敵か味方かどうかである。

 

それにもう一つ士道には懸案事項があった。

 

十香たちやクラスメート、街の住人達が結界内に囚われていないかどうかである。

 

『結界内全域を探索した結果、内部にいるのはマスター、夜刀神十香、鳶一折紙、四糸之、陽之宮桜、武御原雷華、五河琴里、八舞耶倶矢、八舞夕弦、誘宵美九、七罪の11名を確認していま―』

 

す―と言おうとして《オーディン》が言葉を区切る。

 

『どうした?』

 

珍しい言いよどむ《オーディン》に士道が問う。

 

『時崎狂三の霊波を探知しました』

 

「なっ!」

 

予想外の名に思わず叫ぶ士道。

一瞬この結界が魔法使いの時間を喰らった狂三が展開した《時喰みの城》ではないかと考えてしまうが直ぐにその可能性を否定する。

 

《時喰みの城》は対象の影を踏んでいないと発動は出来ないからだ。

 

それにこの結界が《時喰みの城》ならば虚脱感を覚えるはずである。

 

『どちらにしても…今の十香たちが狂三と遭遇したら拙い。

《オーディン》、十香たちと狂三の現在地を特定頼む』

 

『了解です』

 

士道は疑似霊装を展開すると同時に教室を出て隣の2年B組の教室へと入る。

 

同時に机に突っ伏した十香を発見する。

 

「十香、おい十香!」

 

「うーん…もう食べられないのだ…。

ぬ? シドー、おはようなのだ…」

 

揺り起こすと寝ぼけたような声を上げて目を覚まし―

 

「シドー!後ろだ!」

 

次の瞬間には目を大きく見開き叫ぶ。

 

「っ!」

 

同時にシドーが横へと大きく跳び、十香も横へ転がる。

 

直後には何者かが振り下ろした大剣が机を真っ二つに切り裂き、床へと叩きつけられる。

 

「どういうことだ…全く気配が無かったぞ…」

 

『私も全く気づきませんでした…』

 

呟きながら士道は今し方攻撃を仕掛けてきた何者かを見る。

 

背中に白い羽を生やし黒い法衣のようなものを身にまとっている。

顔はベールをつけているために表情を伺い知ることが出来ない。

 

体は細く女性であることは確かだ。

 

『出来れば、殺さずに倒して事情を聞きたいが…』

 

気配を悟られず士道の後ろに現れた所から相手は相当の実力があると判断、その考えを放棄する。

いきなり攻撃してきたところから話し合いも無理だろう。

 

 

「くたばれ!!」

 

そう考えた士道の行動は早かった。

 

襲撃者が大剣を引き抜くよりも早く、距離を積めると魔力を纏わせた拳を放ち吹き飛ばそうとする。

 

だが―

 

「ちっ!」

 

舌打ちをしながら襲撃を睨む士道。

士道が放った拳は襲撃が床から引き抜いた大剣で防御されていたからだ。

 

『こいつ…やっぱり…強い…!』

 

少なくとも並みの魔導師レベルでは無い。

だが、手が無い訳では無い。

 

「士道…」

 

「ああ…」

 

先ほどの攻防の間に士道の隣に移動していた十香が士道の手に自分の手を重ねる。

 

それに対して士道は頷き、十香と共に叫ぶ。

 

「「《塵殺公》!!」」

 

それと共に二人の手の中に顕現した天使を振り抜き、襲撃者を切り裂いたー。

 

 

 

 

「で…《フラクシナス》との通信は回復できそうか?」

 

「駄目ね…雷華の方はどう?」

 

『こっちも駄目だね、衛星にハッキングはおろかネットにさえ繋がらない』

 

士道の問に琴里が首を横に振り、雷華がインカム越しに答える。

 

十香と合流、謎の襲撃者との戦闘から一時間が経過した所で士道は折紙と狂三を除く他のメンバーと合流していた。

そして、雷華と彼女の護衛についてもらった桜、美九、七罪を除いたメンバーで固有結界の中心である天宮タワーへと向かっているところである。

 

敵が何者かわからない以上、本拠地に向かって固有結界を張った張本人に確かめるのが一番であると結論に至ったからである。

 

『周囲の監視カメラにハッキングしてみたけど…。

やっぱりすごい数の敵だね…』

 

「ああ…こちらも確認したー」

 

身体強化で強化した視力で天宮タワーを視て士道は頷く。

かなりの数の守護天使‐その見た目から便宜上つけた-を確認することが出来た。

 

軽く見積もっても百体以上はいると考えられた。

 

だが…こんな所で二の足を踏んでいる時間も惜しいと判断した士道は可倶矢と夕弦を見る。

 

「よかろう!囮役は我等が引き受けよう!!」

 

「了承、任せてください」

 

そう言いながら限定展開した霊装を纏い、天使を手に飛び立っていく夕弦と可倶矢。

 

多数の守護天使が待ちかまえているのはある程度想定していたため、ここに来る前に予め立てた作戦で二人には守護天使を士道達から引き離す役割―囮役を担って貰うことになったのだ。

二人には八割程の守護天使を引き受けてもらうつもりだったが実際に引きはがせたのは五割程度だ。

ここに来るまでに守護天使には三種類のタイプがいることがわかっている。

大剣を武器兼盾として使用する赤。

魔術による中遠距離攻撃を行う白。

赤と白、両方の性質を持った黒。

現在、天宮タワー周囲にいる殆どが一番やっかいな黒い守護天使である。

 

『どうする…このまま強行突破するか…?』

 

そう考えた士道の疑似霊装を何者かが引っ張る。

―振り向くと四糸之が士道の疑似霊装の袖を引っ張っていた。

 

「ここは…任せてくださいっ!」

 

『そうだよ、シドー君はどーんと構えてて!』

 

四糸之が天使状態のよしのんと共に士道の返事を待たずに守護天使へと向かい注意を惹きつける。

 

「シドー」

 

「士道…」

 

「ああ、わかっている!!」

 

可倶矢、夕弦、四糸之、『よしのん』…四人の気持ちを無駄にしないためにも今は自分のすべきことに全力を出さなければならない…!!

士道は心配そうな表情で見つめる十香と琴里に頷き、走り出す。

 

だが―

 

「なっ!?」

 

「嘘…でしょ?」

 

十香と琴里が目を驚愕に見開く。

 

何故ならば、今し方八舞姉妹と四糸之が引き剥した守護天使が新たに現れ、士道達に攻撃を仕掛けてきたのだ。

「まず―」

 

士道達に向けて守護天使が殺到しようとしたその時ー

 

「私たち!」

 

「討滅せよ!《ブラスターク》!!」

 

声と共に飛来したいくつもの影が守護天使に抱きつき、動きを止める。

そこに力場のようなものが発生し動きの止まった守護天使を爆発が襲う。

声のした方を見るとゴシックロリータ調の霊装を纏い古式の拳銃を両手に構えた狂三と巨大な砲門やミサイルコンテナのついた武装を展開した折紙がいた。

 

「狂三!折紙!!

なんで…」

 

何故共同戦線を張っているのかと疑問に思う士道。

 

「久しぶりに士道さんの顔が見たくなって天宮市を訪れたのですが結界に巻き込まれたのですわ」

 

「結界が張られた後、士道を探していたら時崎狂三と遭遇。

士道の捜索と結界脱出の為、仕方なく共同戦線を張った」

 

疑問に思う士道に答える狂三と折紙。

 

「ここは私に任せて…」

 

「士道さんは先に行ってくださいまし」

 

「すまん!!」

 

二人に礼を言うと共に士道は十香、琴里と共に天宮タワー内部へと侵入する。

 

「ちっ!」

 

「ぬ……」

 

「やっぱり簡単には先に進ませてくれないようね…」

 

それと同時に士道が舌打ちをし、十香と琴里が苦い顔をする。

 

地面からせり上がるかのように守護天使が現れたからである。

 

「士道と琴里は先を急ぐのだ!」

 

言いながら《塵殺公》を構える十香。

 

「士道少しだけ私の霊力を返してもらうわよ…」

 

琴里がそう言うと共に彼女の身体が紅蓮の炎に包まれる。

次の瞬間には、琴里は霊装を限定展開し、巨大な斧の形をした天使をその手に顕現していた。

 

「《灼燗滅鬼‐カマエル》―【砲‐メギド‐】」

 

続く言葉と共に巨斧の柄が変形、琴里の腕に装着すると先端から熱線を放ち守護天使を焼き払う。

 

「ここは私と十香に任せて士道は先を急ぎなさい!!」

 

琴里の言葉に士道は頷き、焼き払われた穴を塞ごうとする守護天使の中を駆け抜けた。

 

 

 

「リンネ!!」

 

全速力で階段を駆け上がり天宮タワーの最上階へと到達した士道は精霊へ呼びかける。

法衣のような霊装を纏った精霊である。

顔はベールで隠しているが士道はその精霊の正体は園神凛音であると確信していた。

 

「どうして…私だとわかったの?」

 

ベールを取る精霊。

その下の顔はやはり凛音のものだった。

 

「すまんな…なかなか逢いにいけなくて…でも何でこんなを」

 

士道が《協会》で修行を行っていた時、クローリーから彼女の話し相手を頼まれたりしたのだ。

 

「ごめんね、士道。

士道が危険な目に逢ってるって聞いて…私…」

 

涙を瞳に浮かべながら言うリンネ。

そんなリンネの唇に士道は自分の唇を重ねる。

 

「リンネ、それじゃお前が救われないだろ…」

 

唇をを離してリンネの体を抱きしめる。

 

「ありがとう…それに…大好きだよ…士道」

 

士道の腕の中で凛音はにっこりと微笑みそう言ったのだったー。

 

 

 

 

 

霊力を封印を終えたリンネは《協会》の本部へと戻っていった。

一時、検査を受けるとのことであっが、彼女と逢う機会は減るかもしれない。

クローリーはリンネのことを娘のように扱っていた節もあるからだ。

ずっとそばにいた自分の娘が急に他の男の元へと行ってしまと思えばそれも当然だ。

 

「はーい、皆さーん席についてくださーい」

 

などと考えていた士道だはタマちゃん先生の言葉に思考を中断し教壇の方を向く。

 

「はーい、今日は転校生を紹介しまーす。

入ってきてくださーい」

 

タマちゃん先生の言葉と共に教室の入り口が開き、その人物が入ってくる。

 

「えー?」

 

目を円くする士道。

何故ならば教壇の前に立つ転入生が意外な人物だからだ。

 

「園神凛祢です、みんなよろしくね」

 

転入生―即ち凛祢はにっこりと微笑み自己紹介を行ったのであった。

 

 

 




凛祢生存ルート(ゲームでも死んでませんが…)
ゲーム版第一段 凛音ユートピアの二次創作です。
せっかく士道君が魔法使いなんだしそれらしい話にしてみようと思って書いてみました。
それでは次話を楽しみに待っててくださいー。

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