デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第四十五話『電子精霊』

「五河くん、プリントの整理を手伝って頂きありがとうございました」

 

書類の束を抱えながら士道の隣を歩く少女がそう言いながら微笑む。

 

フレームレスの眼鏡をかけ、腰まで伸びた黒髪をポニーテールにした少女だ。

夜刀神十香とよく似た少女である。

 

だが、その性格は本来の彼女とは全く違っている。

 

それもその筈、今士道がいるのは現実の天宮市では無い。

 

『恋してマイリトルシドー2』ーフラクシナスが開発した恋愛シュミレーションソフトである『恋してマイリトルシドー』。

 

それを雷華がフルダイブ恋愛ゲームへと改造したものがこの世界の正体である。

 

『しかし…皆の事を良く知っている分、やりにくい…』

 

攻略対象となる他の少女達もまた士道の知る彼女たちと性格が全く異なるものであった。

 

十香のみではなく、四糸乃、桜、狂三、琴里、耶倶矢、夕弦、美九、七罪、凛祢、折紙…皆が士道の知る彼女たちとは違う性格の設定を設けられていた。

 

学級委員の十香、病弱な折紙、未亡人の四糸乃(よしのんが夫という設定)、図書委員の桜、オタクな狂三、魔法少女になって街の治安を守る琴里、サキュバスになって士道を誘惑する耶倶矢と夕弦、バンド活動を勤しむ美九、養護教諭の七罪、新体操部期待のエースの凛祢と殆どが元の人物からかけ離れた性格だったりするわけである。

 

『そりゃ、君が攻略した精霊と性格が同じだったら意味がないじゃん』

 

『まぁ…確かにそうだよな…』

 

そう思うと共に隣を歩く十香へと意識を切り替える。

 

『んっ?』

 

そこで士道は十香が全く動いていないことに気づく。

 

否…十香だけではなく、周囲の生徒にも動きも無い。

 

『どうしたの?』

 

『いや、どういう訳か十香やみんなの動きが止まっちまってるようなんだが…』

 

『そんなバカな…僕のプログラミングは完璧だよ…バグなんてあるはずが…』

 

士道の言葉に雷華の焦ったような声が響くも、ノイズのような音が声に紛れると電話を切るような音と共に通信が途切れる。

 

『雷華?』

 

その事を不審に思い尋ねるも返事はない。

 

『おい…雷…』

 

もう一度、雷華を呼ぼうとした所で視界の端で動くものを発見する。

白い髪に白い修道服のようなデザインの衣装を着た見覚えの無い少女である。

 

顔は見えなかったが、この世界で士道の知らない人物がいることはおかしい。

雷華曰わく、この『恋してマイリトルシドー2』は士道の記憶を元に作られていとのことである。

見た目も印象的であり、忘れていた可能性は有り得ない。

そんな状況から判断して、今この空間で起こっていることについて何かを知ってる可能性も高い為、士道は走って少女を追いかける。

だが、廊下の角を曲がった所でその少女を見失う。

 

『…だがそう遠くには行ってないはずだ…探せるか?オーディン?』

 

『ええ、やってみます』

 

士道の言葉にオーディンの声が響く。

先に述べた通り、この世界は士道の記憶を元に作られているため、魔法を使用したり、擬似霊装を展開することも可能だ。

 

『いました、屋上です』

 

『オッケー!』

 

オーディンの言葉に士道は足を早めて屋上へと向かったー。

 

 

 

 

 

階段を駆け上がり、扉を開け放つと端正な顔立ちの少女がフェンス越しに街を眺めていた。

 

 

「やっと追いついた……。

……それで?これはどう言うことか説明してくるるんだろ?雷華??」

 

『………いつから気づいてたの?』

 

士道がそう言うと通信が途絶えたはずインカムから雷華の声が返ってくる。

 

『怪しいと感じたのはお前との通信が切れて、十香や他の奴らの動きが止まってから。

 

それがこの娘が現れた辺りから確信に変わった…。

 

追いかけながらいろいろな可能性を考えたんだがやっぱりお前が一枚噛んでると考えれば全て辻褄が合う。

 

だいいち、電脳御手を持つお前が電脳世界…それも自分の作った世界に侵入者を許すわけが無いだろう?』

 

『本当に……君の洞察力には参るよ…』

 

士道の念話に雷華が苦笑混じりの声がインカム越しに響く。

 

『それで、この娘は何者なんだ?』

 

『ボクが電脳御手とフラクシナスの君が今まで精霊達と行ってきたデートのデータを元に、ボクの霊力の一部を分け与えた人工精霊の一人…或巣鞠亜さ』

 

自分の霊力とはいえ、他人へと譲渡する事が自分以外に可能なのだろうかと考える士道。

恐らく、電脳空間限定の能力だと考えると納得が出来る。

 

『……そういえば一人とか言っていたが他にも人工精霊が?』

 

『いるよー。名前は或巣鞠奈。

 

実を言えば、鞠亜と一緒に登場させようと思ったんだけど、彼女…どうしても士道に聞きたい事があるらしくてね………一足早く登場して貰ったわけさ~』

『聞きたいこと?』

 

「マスター、そこから先は私が答えます」

 

 

士道が雷華に尋ねると同時に鞠亜が口を開く。

 

「……五河士道…あなたに問います」

 

 

少女は小さく深呼吸するように息を吐くと士道に尋ねる。

 

「愛とは………何ですか?」

 

「愛か……なかなか難しいな…」

 

少女の質問に士道はに手を当てながら考えるもどう表現して良いのかを迷う。

 

「他人を慈しみ、思いやること…かな…」

 

考えた末に出た答えを士道は口にする。

 

「それが愛なのですか…?

確かに士道の行動を観測していた時にそのような言動が多数見られましたが…」

 

「まっ、これはあくまでも俺の考えだがな…。

他の奴に聞けば違う意見が聞けると思う…。っと言うか十香達もこの世界に呼んでるんだろう?」

 

「何故そう思うのですか?」

 

士道の言葉に鞠亜が驚いたように目を見開く。

 

「自分が知らないこと、興味があることにつうて多数の人から意見を求めることは普通だろ」

 

「…なるほど」

 

納得した表情で頷く、鞠亜。

 

『…今し方十香たちのアクセスを先程確認したよ。

もうすぐそこへ転送されてくると…』

 

「シドー!!無事か!?」

 

「士道、その娘から離れて」

 

雷華の言葉を遮って現れたのは十香と折紙である。

 

現れたのは二人だけではなく、琴里、四糸乃、桜、耶倶矢、夕弦、美九、凛祢…そしてどういう訳か狂三も一緒だ。

 

「なんとなく、予想はしていたが…良く合流できたもんだな…」

 

「五河琴里から士道がピンチと言われ、指定された合流ポイントへと向かう途中に偶然にも時崎狂三を発見。

同行を頼んだ」

 

「っと言うことですわ」

 

折紙の説明に首をすくめる狂三。

 

「それで、フラクシナスと通信が切れてから何があったか説明してくれるんでしょうね?」

 

『…雷華』

 

『ごめん、琴里達に説明するのを忘れてた』

 

「それについては私から説明させてください」

 

士道が雷華に念話で避難すると、鞠亜が十香達を見つめると口を開く。

 

「夜刀神十香、鳶一折紙、四糸乃、日乃宮桜、時崎狂三、五河琴里、八舞耶倶矢、八舞夕弦、十六夜美九、園神凛祢、七罪…あなた達の考える愛とは何か教えてください…。

それが私の目的です…。

あなた達の考える愛とは何か教えてください」

 

「む。愛というのはよくわからないが、シドーと一緒にいると楽しいのだ!

 それに、美味しいものいつも食べさせてくれるしな!」

 

先ず、鞠亜の質問に答えたのは十香である。

『十香らしいと言えば十香らしい答えではあるが…。

俺の存在意義は飯だけかよ…』

 

十香の答えに苦笑を浮かべる士道。

 

「えっと…た、たとえば、その人の事を考えると、ドキドキしたり、心が……温かくなったり……」

 

『あはー。四糸乃はいつも、ベッドの中で顔真っ赤にして、士道君のこと考えてるもんねー』

 

「……っ!」

 

顔を真っ赤にして答える四糸乃を茶化すよしのん。

 

「心に温度変化が……?

それは穏やかな気持ちや、多幸感の表現ですね。

 

けれど、それは愛以外でも得られるのでは無いでしょうか」

 

「……うう、それは、そうかもしれないですけど。

他のこととは、違ってる、ような……」

 

「相手を、自分のものにしたい、という気持ちではありませんの?

体も心も溶け合って、一つになって……

互いが互いを求めずにはいられなくなる……」

 

言いよどむ四糸乃にそう助け舟を出す狂三。

「ちょっと健全な高校生には少し早いんじゃないか?」

 

「まっ、まあ…一理あるんじゃないの」

 

そんな狂三の意見に疑問を浮かべる士道と何故か共感する琴里。

 

「琴里よ…何でそこで共感するんだよ…。

お前の答え一体何なんだ…」

 

「そっ、それは……。

首輪をつけさせて、踏みつけた時に喜ぶ……?」

 

「何でそんな風に育っちまったんだろうな……」

 

琴里の答えに頭痛を覚える士道。

 

「では…八舞耶倶矢、八舞夕弦……あなたたちはどうですか?」

 

そんな士道を無視して、八舞姉妹に或守は問いかける。

 

「くく……っ、愛か。

愛とは運命の邂逅。

別離を許されぬ魂の半身よ」

 

「指摘、それは夕弦の事ではありませんか。

今聞かれているのは、士道の事です」

 

 

「ぬ……士道への愛……。

我が、求め……ええと所有…物?」

 

「あら、私と同じですわね?

耶倶矢さんも士道さんと一つになりたいんですの?」

 

「し、し、し…士道とひと、つ……?

 

そ、それは…夕弦はどう?」

 

耶倶矢の答えに狂三の意見を出すと、彼女は顔を真っ赤にして夕弦へと話題を振る。

 

「あら、答えが聞けなくて残念ですわ」

 

「回答、自分よりも相手を優先する事です」

夕弦の答えは非常にシンプルなものである。

だが、これについては耶倶矢と夕弦の行動を見ていればよくわかる。

二人とも互いの為にそうしているからだ。

 

「だーりんは、どんなことがあっても、私のファンでいてくれるって、そう言ってくれましたぁ。

それはずっと私の事を思っていているってことですよねー」

 

「ファン。

支持者ということでしょうか。

支持や忠誠心をもたれていることですか?

それは、愛なのでしょうか」

 

「……い、言われてみると何か違う気もします…」

 

「相手の要望を全て受け入れるのが愛」

 

「七罪と園神凛祢はどうですか?」

 

美九と折紙の意見を聞いたが鞠亜が七罪と凛祢へと問う。

 

 

「士道…の事を考えると…胸がドキドキして何も考えられなくなる…多分、これが愛なんだと思う…」

 

「私は大切な人を自分の存在全てをかけてでも守ることだと思う…」

 

乙女チックな解答の七罪と凛祢の場合は少々重い解答である。

 

「愛にはいろいろな形があって奥が深いものなのですね…。

ますます愛について良く解らなくなってきました」

 

十香達の意見を聞いて難しげな表情を作る鞠亜。

 

「それなら鞠亜もシドーとデートすれば愛について解るのではないか?」

 

そんな鞠亜に答える 十香。

 

「それでは士道。

私とデートしてください。

そして愛を教えてください」

 

「ああ、もちろんだ」

 

鞠亜の言葉に士道はそう言って頷いた―。

 

 

 

 

 

 

 

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