デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第四十六話『もう一人の人工精霊』

「…朝か」

 

起き抜けのぼんやりとした意識で士道は体を起こし、記憶を整理する。

士道が鞠亜の『愛について教えてほしい』との問いに頷くと共に士道の意識は途切れたのである。

 

『さて、どうしたもんかね…』

 

『やることは普段に精霊達と行っていることと変わらないのでは』

『まっ、確かにそうだな…案ずるより産むが何とかということか…』

 

 

オーディンと今後についてを話しながら、士道は一階への階段を降りる。

 

いつも通りに朝食を作るためである。

 

「ん…?」

 

だが、そこで味噌汁の良い匂いに気づく。

 

『朝食を琴理が作ってるのか?』

 

等と考えながらリビングへの扉を開く。

 

「或守?」

 

「士道、おはようございます」

 

台所に立って料理をしていたのは或守であった。

 

「何故家にいる?」

 

「士道を観察するためです。

 

なるべく近くで愛の形成、育成をを観測できます」

 

「別に良いでしょ?

鞠亜の目的に付き合う事に決めたわけだしね」

 

士道の質問に答えながら鞠亜が食卓へと料理を並べていく。

メニューはご飯、味噌汁、卵焼き、焼き鮭、焼き海苔、たくわんっと五河家の朝食で良く並ぶ内容である。

 

「これを鞠亜が?」

 

「はい、蓄積されたデータを元に作ったものです。

士道が作るものと比べても遜色のない出来のはずです」

 

「それは大した自信ね…士道、料理だけは得意だもの」

 

「とりあえず食べるか…」

 

琴理の嫌みを流しながら士道は手を合わせる。

 

鞠亜と琴理もそれに倣うように合掌する。

 

「「「頂きます」」」

鮭の身をほぐして口に運ぶ。

薄くもなく、濃くもない、程良い塩加減である。

 

「うん、旨いな」

 

「まさか……でも間違いない。

いつも食べているのと同じ味だわ」

 

鮭の塩焼き食べた琴理が目を見開いて驚く。

 

「士道の調理法を元に、正確に調理を行っているため、味も再現されている筈です。

実際に作った経験がありませんので正確な再現が可能か確実性に欠けていたのですが…」

「見よう見まねでこれを作るとはな…。

鞠亜は料理の才能があるんじゃないか?」

 

「士道の料理が美味しいからです。

私は同じ事をしただけですから…」

 

褒める士道に謙虚な態度を取る鞠亜であった。

 

朝食を終えた士道は琴理と、共に今後の事について話し合っていた。

皿洗いをする鞠亜に手伝いを申し出たが、断られ特にする事も無いためである。

 

「あそこまで再現出来るのはゲームの中だからか…?」

 

鞠亜の料理を思い出して士道は琴理に尋ねる。

 

「そう考えるのが妥当でしょうけど……。

本当に士道の料理の癖なんて細かい情報がデータベースに登録されているのかしら?」

 

『ああ、それは多分オーディンからの情報だと思うよ?』

 

琴里の質問に答えたのは雷華である。

 

「オーディンが?」

 

「俺との五感情報を共有しているはずだからな…」

 

首を傾げる琴理に答える士道。

最近になりオーディンが令音に戦闘以外でもサポートをしたいとのことで士道と感覚を共有する事になったのだ。

その情報をフラクシナスと随時やり取りしているということらしいため、鞠亜はそこから情報を得たのではないかと推察したのだ。

 

「なるほどね…。

それで…これからどうするつもり?」

 

「或守に愛に感する情報を蓄積させないといけないんだろ?

ならやる事は決まってる。

十香達とデートすれば良いんだろ」

 

「そのことなのですが士道」

 

琴理の問いに士道が答えると同時に鞠亜が横から口を出した。

 

「鞠亜、皿洗いは終わったのか?」

 

「はい、全て片付けてきました。

それで士道、今後の事ですが…。

私とデートしてくれませんか?」

 

「ふむ」

 

頷く士道に鞠亜は続ける。

 

「確かに、愛を育む様を観察すれば外側から見た情報は得ることは出来るかもしれません。

ですが、実際に体験しなければわからない事も多いと考えます。

もちろん、これは私の意見ですので最終的な判断は士道にお任せします」

 

「まぁ、考えておくさ… 」

 

「ありがとうございます」

 

そこまで話した所で士道は時計を確認する。

時刻は八時半になるところであり、普段なら登校を始める時間である。

 

「さて、とりあえず学校へ行くか…。

鞠亜も学校へ行くんだろ」

 

「はい、私は転校生として設定されています。

学校でもよろしくお願いします」

 

士道の言葉に鞠亜はそう答えた。

 

 

 

「しまった…」

 

四糸乃と琴里、美九、七罪が来禅禅高校に編入、狂三が在籍していたり(琴里、四糸乃、七罪は一年三組、美九は二年二組)、士道が鞠亜と顔見知りだった事を殿町や亜衣麻衣美衣から非難されたりと半ば予想していた以外には大したイベントも起こらずに迎えた昼休み、士道は弁当を作り忘れた事に気づく。

普段は朝食と一緒に作るのだが、今日は或守が朝食を作った為に作ってなかったのである。

 

「シドー!昼餉の時間だ!」

 

「すまん、十香!今朝はいろいろと立て込んでいて作り忘れたんだ」

 

嬉しそうな笑みを浮かべる十香に謝る士道。

だが、そこで鞠亜が弁当を作って来ていないかと淡い期待を抱き、彼女に視線を向ける。

「残念ながら、私が作ったのは朝食のみです。

お弁当は用意していません。

ですが、提案があります。

今日は購買へ行ってみてはいかがでしょうか」

 

「おお、購買か!

それなら、私はきなこパンが食べたいぞ。

だが、焼きそばパンやチョココロネも捨てがたい。

う~む … 」

 

「夜刀神十香は認識が甘い。

購買パンの競争率の高さを甘く見ている。

早く行かなければ売り切れてしまう。

 

既に戦いは始まっていると考えるべき」

 

そう言うと同時に走り出す折紙。

「あっ … 待つのだ!鳶一折紙!!」

 

そして、十香も彼女を追って教室を飛び出していた。

 

「ふふ、騒々しいですのね」

 

「狂三は行かなくて良いのか?」

 

どこか妖艶な笑みを浮かべる狂三に尋ねる士道。

 

「ええ、私のことなら気にしないで下さいまし。

 

無理に急いでも仕方ないではありませんか」

「確かにそうか… 。

とりあえず、俺達も行くか……鞠亜」

 

狂三の言葉に士道は頷くと、鞠亜と共に購買へと向かったー

 

 

 

「あれ?」

 

 

到着した購買で士道は普段の購買と様子が違う事に気づく。

 

士道も以前に購買を利用した事があるのだが、その時はパンを求める人だかりでいっぱいだった筈だ。

 

「おーい、お兄ちゃん」

 

等と考えているとリボンを白に付け替えた妹モードの琴里が手を振る。

 

「あれー?ダーリンも購買ですかー?」

 

美九が柔和な笑みを浮かべて尋ねてくる。

「ああ、今日はな。

美九や琴里はここの購買は始めてじゃなかったか?」

 

「……思ったより …人…いなくて良かった」

琴里と美九の間で七罪がぼそりと呟く。

 

彼女の人間不振も大方治ってきてはいるものの、まだ人ゴミは苦手なのである。

 

「ふっ、どうやら八舞の出現に恐れをなして皆どこかへ散ったようだな」

 

「いや、それは違うだろ」

 

ふふんと胸を張って言う耶倶矢に士道が呟く。

 

「疑問、なぜ今日は空いているのでしょうか?

おかげで簡単にパンが買えましたが」

 

「私なんかいつもなかなかパンが買えなくて困ってたんだけど、今日は凄く助かったよ~」

 

首を傾げる夕弦とパンの山を机に築く桜はどこか嬉しそうだ。

 

「シドー、何だか今日は空いていたぞ。

シドーの分も買っておいたから早く食べるのだ」

 

「士道の分は私が買った。

夜刀神十香の買った物ではなくこちらを食べるべき」

 

桜同様にパンを山のように抱える十香と既に封を開けたパンを差し出してくる折紙。

 

「士道さん… あの… 」

 

 

「あ!よしのん、いいこと思いついた!

士道くんに食べてもらう前にパンを服の中に入れて四糸乃の肌で温めておきました、ってやろうよ」

 

『どこの秀吉だよ!』っと思わず突っ込みたくなるよしのんのセリフに苦笑しつつ、士道はある事に気づく。

「そういえばここにはNPCキャラはいないんだな?」

 

「これだけ人がいないのは不自然、何かシステム的なトラブルでは?」

 

士道と同様に人がいないことを疑問に思ったのか折紙が怪訝な顔で言う。

 

「だが、それなら鞠亜が何か気づく筈だし …」

 

呟きながら顔を上げると両手にパンを抱える鞠亜が見えた。

 

「購買のパンを購入しました。

このうさぎの形をしたパンが興味深いです」

 

「おお、うさぎがお気に入りとはセンスがイイネー」

 

「この赤い眼の部分が面白いです」

 

「それはチェリーですわよ、或守さん」

 

「なるほど、ミザクラの果実ですね」

 

ウサギ型のパンの話題について話す鞠亜と四糸乃。

 

そこへ購入したパンを持った狂三が話に加わる。

 

「鞠亜、少し良いか?」

 

狂三の言葉に頷く鞠亜に士道が口を開く。

「なんでしょうか?」

「まさかとは思うが最初から人払いとかしてないよな?」

 

「私たちが困らない程度ですが… 」

 

「してるのかよ!!」

 

士道の疑問にあっさりと答える鞠亜に士道が突っ込みを入れる。

「はい、そうしないと、お昼を逃してしまいます」

 

「俺の記憶違いでないなら、朝に極力普段の生活を再現すると聞いた気がするのだが … 」

 

「普段通りに違いないと思いますが」

 

確かに、昼休みにこうして皆と食事するのは普段と変わらない。

「結果的に困っている人はいません。

オールオーケーと言うものでは無いでしょうか?」

 

「そういうもんかねぇ … 」

 

「あら、意外と或守さんのしりたがっている愛とは何か、についてのヒントがあるかもしれませんわよ。

食欲と愛欲は相通ずるものがあると思いますわ」

 

鞠亜の言葉に意味深な事を言う狂三。

 

「それは相手の胃袋を掴むとかそういう類のことですよね!?」

「さあ、どうでしょう?」

 

「なるほど … 男は胃袋で落とすというやつですね」

 

そんな狂三の言葉にたまらず声を上げる士道と、一人納得する鞠亜であった。

 

 

 

「士道、これで学校も終わりですよね?」

放課後となり鞠亜が士道へ尋ねる。

 

「ああ、部活には入ってないからな … 。

普段通りだったから、あんまり楽しくなかったか?」

 

「いえ、とても興味深い一日でした。

でも……足りません」

士道の言葉に鞠亜は首を横に振る。

 

「愛についてまだまた理解できないか… 」

「はい。

ですから士道、わたしにあなたの選択を教えてください。

そして、見せてくれませんか?」

 

「見せる?」

 

どこか回りくどい鞠亜の言い方に士道は首を傾げる。

 

「二人で特別な時間を過ごせば……。

士道とその相手は、同じように惹かれ合うのでしょうか」

 

「それはデートのお誘いと取っても良いのか?」

 

「はい……ですが、それは私でも良いのでしょうか?」

 

どこか気恥ずかしそうに言う鞠亜。

 

「ああ、もちろんだ。

それで鞠亜はどこに行きたい? 」

 

「私の行きたいところ…ですか…」

 

士道の言葉に考えこむ鞠亜。

 

「そうですね…町をゆっくりと見て回りたいです。

駄目でしょうか ? 」

「了解、とりあえず商店街でまぶらついてみるか……」

 

 

 

「街を歩くと言っても、特に代わり映えしないぞ?」

 

数分後、士道はマリアのリクエストに答えて馴染みの商店街へと来ていた。

 

「いえ、ちゃんと歩いた事が無いので新鮮です」

 

「考えてみれば知識で知っているのと、実際に体験するのとは全く違うからな… 」

 

「はい、建物は大きく見えるし、通りはとても賑やかです」

 

そう言いながら、鞠亜ははしゃいだ様子でくるくると回る。

 

「あんまりはしゃいで転ぶなよ」

 

「ふふ、そうですね」

士道の言葉に笑みを作り、鞠亜は再び隣を歩き始める。

 

「あ、兄様じゃないですか」

 

鞠亜が隣に来ると同時に聞き覚えある声が響く。

 

「んっ?ああ…真那か?」

 

声の主は士道の実妹である嵩宮真那である。

「何してやがるんですか、こんな所で?」

 

「ん?見てわからないか?」

 

「まさか、新しい彼女とデートですか…!!

兄様はなんというろくでなしに…真那は悲しいです…」

 

士道の言葉にポケットからハンカチを取り出す真那。

 

「今のところは皆と仲良くやってるから良いだろうが………っていうのは冗談で転校生に街を案内しているんだよ」

 

「ビックリさせねぇで下さいよ。

……まったく、兄様は手が早いから心配でなんねぇです」

 

「ほっとけ」

 

真那の言葉に士道が苦笑して返す。

 

「で、そういうお前は何でここにいるんだ?」

 

「おお!冷蔵庫の中が寂しくなってきたので買い物に来たのでした!!」

 

尋ね返した士道に手を叩く真那。

 

「それじゃあ兄様、転校生さん。

私はこれで失礼するです」

 

そう言って歩き出す真那は何かを思い出したように立ち止まり、鞠亜に何事か耳打ちをする。

 

「兄様は本当に野獣みないな人ですから気をつくてくださいよ」

 

だが、士道には真那の言ってる言葉は丸聞こえであった。

 

「聞こえてるぞ」

 

「そっ、それでは、失礼するです!!」

 

ジト眼で言う士道に真那は足早に走っていく。

 

「全く……困ったやつだ…」

 

「ふふ…仲の良いのですね」

 

そんな二人の様子ににこやかな笑みを浮かべる鞠亜であった。

 

 

 

「士道、クラスメートがいます」

 

真那と別れた後、再びデートを再開した士道と鞠亜。

しばらく歩いた所で、興味深げに周りを見回していた鞠亜が足を止めて前方を指差す。

その先に見えるのは亜衣麻衣美衣トリオである。

 

『参ったな…魔法を使えば早いんだろうが… 』

 

現在、仮想空間全域の権限を持っている鞠亜を介した上で無いと魔法を使えない。

そのために、使用までに時間がかかるためオーディンを展開している間に三人に気づかれる可能性があった。

 

「見つかれば士道に関する、あらぬ噂が立つのは確定的です」

 

「一応聞くが、オーディンを展開して、俺が魔法を行使するのとあいつらに見つかるのどちらが早い? 」

 

「見つかる方が早いです」

 

尋ねた士道に鞠亜が答える。

 

「ですので、私は一足先にこの場を離れます」

 

「良いのか ? 」

 

「はい、大丈夫です。

それでは、士道 … さようなら」

 

そう言って走り出す鞠亜。

 

彼女ひとりならば見つかったとしとも大丈夫だろう。

そう考えながら士道もゆっくりと歩き始めた。

 

 

「すっかり遅くなったな…」

 

鞠亜と別れた後、買い物を行っていたためすっかり周囲は暗くなっていた。

 

「あれは …… 」

家への道を歩く途中、士道は鞠亜とよく似た少女を発見する。

だが、鞠亜と違って髪の色は黒く身につけているものも黒の修道服風の衣装である。

 

『もしかすると…雷華が言っていた鞠奈か…?』

 

そんなことを考えていると視線に気づく、視線の主は無論、鞠奈である。

 

彼女は暫し、士道を見つめた後、唐突に走り出した。

 

「おい!」

 

呼び止めようとするも少女は止まらない。

「ちっ!」

 

舌打ちをすると士道は少女を追いかけ始めた。

 

 

「ようやく、追いついた…」

 

鞠亜を追いかけて、たどり着いた先は高台公園であった。

 

「ああ、やっぱり来たね… 流石は五河士道」

 

「お前が鞠奈か……?」

 

「うん、初めまして五河士道。

私が或巣鞠亜だよ、でも残念だけど、そろそろ帰る時間~。

 

それじゃあ、また逢いましょう、五河士道」

「つっ!」

 

鞠奈がそう言うと、彼女の体から眩い光が放たれ、士道は目をつむる。

 

再び目を開くと、そこには鞠奈の姿は無い。

 

『…何だろう…何となくではあるが…妙な胸騒ぎがしやがる…』

 

理由は不明なのだが何故か嫌な予感がして仕方ないのだ…。

 

 

「とりあえず、家に戻るか…」

 

頭を降り、その予感を振り払うと士道は家路を急いだー。

 

 

 

 

 

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