デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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五話目ですー


第五話『新しき生活』

「お兄ちゃん?用事って何なのだ?」

 

学校の再開。

十香との再会。

更に十香とのデートを多くの他の生徒に目撃されていたため、それに関する事情聴取など、数々のイベントが一斉に襲ってきた学校の再開日。

士道はもう一つ、イベントを攻略しようと琴里をリビングに呼び出していた。

即ち―

彼が精神世界で聞いた琴里のものらしき謎の声―。

その正体を確かめると言う超重要イベントであった。

 

「琴里…お前は何者だ?」

 

「へっ?琴里は琴里だよ?」

 

真剣な表情を浮かべて尋ねれば士道に琴里は小首を傾げる。

 

「とぼけるな、お前?精霊だろ?」

 

精霊、その言葉に琴里はポケットからチュッパチャプスを取り出し、慣れた手つきで包みを解くと口に咥える。

それと同時に口調と雰囲気が先程の妹のそれからラタトスク司令官のそれへと切り替わる。

 

「どうして解ったの?」

 

椅子に座りふんぞり返って足を組む琴里に士道は口を開き、指を4本立てる。

 

「理由は四つある。

先ず、一つ目。

前は精霊の力を封印するには口づけをする必要があるとお前は言ったよな?」

 

士道の質問に首を縦に振る琴里。

 

「で、俺は十香以外の女の子と口づけをしたことが一度だけある。

琴里、お前とだ。

と言ってもガキの頃の話だけどな

で、次いで二つ目だが。

鳶一に撃たれて死にかけた俺は精神世界と呼ばれる場所で琴里、お前の声を聴いた。

そんで三つ目は魔力の質だ」

 

「質?」

 

士道の言った言葉をオウム返しに尋ねる琴里。

 

「そう、質だ、違和感と言っても良いかもしれん」

 

「?」

 

頭の上に?マークを浮かべる琴里に士道は分かり易く解説する。

 

「同じゲーム機でも自分の普段使っているものでないと使いにくいと感じた事があるだろ?

それと同じで精霊から譲渡された霊力を魔力として使うにもそれと似たようなものを感じるんだよ」

 

「なる程…でっ、4つ目は?」

 

「俺の感だ」

 

その言葉に琴里は椅子ごとひっくり返る。

 

「おいおい…大丈夫か?」

 

苦笑しながら琴里の手を掴み立ち上がらせる。

 

「でっ、実際のところどうなのか聞かせてくれるか?」

 

「ご察しの通り、私は精霊で力はあんたの中にあるわ。

能力は不死と超回復」

 

首をすくめると琴里は士道の質問にいとも簡単に答える。

 

「本当に観測機も無しに良く私が精霊って気づいたわね…

でっ?それをネタに私を揺する気?」

 

「人聞きが悪いな…」

 

ジト目で士道を睨む琴里に士道は答える。

 

「一つ、フラクシナスの技術力で作ってもらいたいものがあるだけだ…」

士道は小さく笑みを浮かべるとそう言った。

 

 

 

「シドー! クッキィというのを作ったぞ!見てくれ!そして食べてくれ!!」

 

十香が屈託の無い意味を浮かべながら手にした容器を士道の前に差し出す。

そこには、形が歪で少しばかり焦げたクッキーが納められていた。

十香が調理実習で作ったものだ。

 

「おう、ありがとう」

 

背後から感じる男子の嫉妬を無視しながら士道はそう言うと容器からクッキーを一枚取り、口に運 ―

「―ッ!?」

 

ぼうとした所で、目の前を銀色の矢が一直線に通り過ぎていく。

廊下の方から放たれたと思わしきそれは、士道の持っていたクッキーを粉々に砕くとそのまま壁に突き刺さる。

銀色の奇跡の先を見るとどこぞの邪神ハンターが使っているようなシンプルなデザインのフォークが突き刺さっている。

 

「誰だ!危ないではないか!」

 

十香が叫び、廊下を見る。

士道もそれに倣うようにそちらに目をやる。

そこにはつい今し方何かを投擲したように、右手を真っ直ぐに伸ばした少女が無言で立っていた。

言うまでもなく、鳶一折紙である。

 

「ぬ」

 

不機嫌そうな十香を無視しながらゆっくりと士道のところへと歩み寄る。

そして、士道のところへとやって来ると左手に持っていた容器の蓋を開けると十香と同じく士道に差し出してくる。

 

「夜刀神十香のそれを口にする必要はない。

食べるならこれを」

 

容器には、工場のラインで製造されたかのように、完璧に規格が統一されたクッキーが綺麗に並んでいた。

 

「邪魔をするな! シドーは私のクッキィを食べるのだ!」

 

横から割り込んできた折紙に十香は怒ったように声を上げる。

だが、折紙は全く怯んだ様子も無く。

それどころか表情を全く動かさずに言葉を紡ぐ。

 

「邪魔なのはあなた。直ぐに立ち去るべき」

 

「何を言うか!後から来ておいて偉そうに」

 

『またか…』

 

言い争いを始める二人の少女に士道は頭を押さえる。

片や精霊、片やASTという別の顔を持つ二人は水と油並みに相容れない。

 

『また、俺が取り持つか…』

 

そう心の中で呟くと両手で二つの容器からクッキーを取る。

 

「二人のクッキーを両方頂く、それでこの場は納めろ」

 

そう士道が言うと二人は口論を止める。

折紙も十香も基本的に士道の言う事は聞くのである。

 

『ヤレヤレ…』

 

士道は二人がバツが悪そうに睨み合っている様に苦笑を浮かべながら二枚のクッキーを口に入れた。

 

「せめて学校でぐらい仲良く出来ないか?」

 

放課後、十香のご機嫌取りをかねて商店街のパン屋へと士道は向かっていた。

 

「だが士道…」

 

「だがも糸瓜も…」

 

「あ痛ぁ!」

 

無いと言いかけた士道は悲鳴に似た声に足を止める。

悲鳴の発生源は来禅高校の制服を身に纏い、ピンクがかった金髪の端正な顔の少女である。

寂しそうな彼女の視線の先を追うと逃げていく子犬の姿がある。

恐らく、子犬と遊ぼうとして手を出して引っかかれたか噛まれたのだろう。

だが、士道が足を止めた理由はそれだけでは無い。

 

『今感じたのは魔力、いや霊力か…?』

 

悲鳴が上がったほんの一瞬ではあるが士道は少女から精霊の持つ、特有の霊力を感じたような気がするのだ。

 

「士道!早くしないときなこパンが売り切れてしまうではないか!!」

 

『まっ…そんな訳はないか』

 

等と思いながら士道は足早に十香の元へと急いだ。

『……』

 

士道は無言で自分の前で美味しそうに山積みのきなこパンを食べている十香を見る。

場所は十香と最初にデートした時に来た喫茶店だ。

彼女の食欲は今に始まった訳では無いためにこれは大した事では無い。

問題があるとすれば…。

 

「シドー、後ろのそれは何だ?」

 

十香もシドーの背後にいる問題のもの…っと言うよりも問題の人物に気づく。

ピンクががった腰まで伸びた金髪を花弁を模した髪飾りでツインテールにした可愛らしい少女が窓からもの欲しそうな表情で十香を見ている。

 

「多分、十香と一瞬にパンを食べたいんじゃないかな?」

 

「なるほど!あやつも私達とデートがしたいのだな!!」

 

そう言いながら十香は立ち上がると店を飛び出し、あっという間に少女の所へとやって来る。

「おい!お前!!私と一瞬にデートしよう!!!」

 

「ほえっ?わっ私?…っと言うかデートって男の子と女の子で行くものじゃ?」

 

「とにもかくにも角にもデートだ!!」

 

目を白黒させる少女にそう言いながら強制連行する十香であった。

 

陽乃宮桜っと名乗った少女と十香はどこか通ものがあったらしく、直ぐに仲良くなった。

桜を交えて三人で談笑をし、店を出た後に急用を思い出したと言った彼女と別れ、士道は十香と共に家路に向かっていた。

今朝、琴里から十香を五河家に住まわせると言うか事を聞いたからである。

フラクシナスの隔離エリアで十香は生活していたのだが士道がいないと彼女の精神が安定しないためなのと他の精霊が現れた時の訓練ということらしい。

このまま十香の精神不安定な状態が続けば士道の中にある十香の精霊の力が暴走すると聞かされた時は流石の士道も肝を冷やした。

 

「なぁ…士道…」

 

そんな士道の気苦労などどこ吹く風と言った様子で十香が士道の名を呼ぶ。

 

「んっ?どうした十香?」

 

隣を歩く十香を見るととても嬉しそうな顔をして胸に手を当てている。

 

「士道…あの者…サクラと話をしていて私はとても朗らかな気分になった。

士道…お前と一瞬にいるときと同じような気分になるのだ。

士道…この気持ちを何と言うか知っているか?」

 

尋ねた十香に士道は笑顔で答える。

 

「それは…友情だな…」

 

「ユウジョウ?」

 

聞き慣れない言葉に十香は尋ね返す。

 

「友達の間に芽生える絆みたいなもんだな…」

 

「そう…なのか…?」

 

士道の言葉に十香は少しだけ戸惑ったような表情を浮かべる。

だがそれも一瞬でその表情は華のような笑顔に変わる。

 

「シドー…友とは…良いものなのだな!!」

 

「ああ!」

 

笑顔で言う十香に士道も笑顔で答える。

直後。

ポツリっと冷たい水滴が士道の髪に当たる。

 

「ぬっ?雨か?」

 

十香もそれに気づいたようで上空を見つめる。

 

「天気予報では晴れるって言ってたのになー」

 

そう言いながら士道も十香と同じように上空を見上げる。

上空には暗雲が立ちこめていて今にも雨が振り出しそうな状態であった。

 

「十香、負ぶされ、魔法を使って突っ走るぞ」

 

しゃがみ込みながら十香を促す士道。

 

「うぬ!心得た!!」

 

そんな士道の背中に嬉々とした様子で乗っかる十香。

士道はそれを確認すると魔法を発動させて走り出した。

 

結論から言えば二人とも見事な濡れ鼠である。

士道は女性優先‐レディーファーストで‐十香を風呂へと入らせると濡れた身体をタオルで吹き始める。

 

「お兄ちゃん、お帰りなのだー」

 

そう言いながら琴里が士道へと飛びついてくる。

ほんの少しよろめきながら琴里を受け止める士道。

 

「だだいま、琴里」

 

士道がそう言うと琴里はスカートのポケットから何かを取り出すとそれをし士道に手渡す。

 

「玲音お姉ちゃんがこれをお兄ちゃんにってー」

 

にっこりする琴里に癒されながら手を開くと士道の手にはチェーンのついたドッグタグが握らされていた。

 

「おう…、悪いな」

 

「でっ?士道、そんな物騒な物を何に使うつもり?」

 

礼を言う士道に琴里は人格を裏に切り替えて尋ねる。

 

「まっ、使わないに越したことは無いが守る為に力は必要なんだよ…」

 

ドッグタグを弄びながら士道は寂しげに呟いた。

 




いくつか伏線を投下してあるのでこの先を楽しみにしててくださいー。
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