デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第五十三話『監禁』

「……つ、う……」

 

小さく唸り、士道は目を開ける。

 

「どこだ…ここは…」

『お気づきになりましたか?

マスター』

 

オーディンの声に霞む目を擦ろうとして、右手が動かない事に気づく。

 

『《オーディン》、現状説明を頼む』

 

『現在地はマスターが鳶一折紙に昏倒させられた地点程近い廃ビル内。

現在、マスターの体は鋲により地面に打ち付けれた椅子にロープで固定されています。

魔力を用いてマスターの身体を強制的に動かすなどして脱出を試みましたが精製がうまくいかず断念しました』

『AMFか…また厄介なものを……』

 

《オーディン》の言葉に士道は苦笑いする。

 

AMF…正式名称をアンチマギリンクフィールド。

範囲内の魔法を無効化する結界である。

 

『マスターがスマートフォンの電源を切る際、或守鞠亜、及び或守鞠奈がマスターの位置情報をフラクシナス及び武御原雷華へ送信するのを確認しましたから問題は大丈夫でしょう』

 

っと、《オーディン》がそう言うと同時に前方の扉が開く。

入ってきたのは大きなボストンバックを携えた折紙である。

 

「…」

 

無言で折紙を睨む士道。

 

「……」

 

一方の折紙も無言で士道の近くまで歩いてくると、ボストンバックの中を探り始める。

 

「……はい」

 

そう言って折紙が士道に差し出したのは、ミネラルウォーターのペットボトルである。

 

「喉は渇いてない?」

蓋を開け、ペットボトルを差しだしながら折紙が尋ねてくる。

 

『毒の類は入っていないようです』

 

《オーディン》の言葉に口を開ける士道。

 

そこに注がれる水を飲み干す。

 

それを確認した折紙が満足そうに手を引く。

そして、士道が口をつけたペットボトルの口を舐めてから蓋をする。

 

思わず『小学生か!?』っと突っ込たくなる衝動をこらえながら士道は口を開く。

 

 

「……折紙」

 

「なに」

 

「………おまえ、DEMに入ったのか?」

 

「そう」

 

尋ねた士道に頷く折紙。

 

度重なる命令違反よって戒免職処分にあったことを先日、鞠亜から聞かされたのである。

もしかするとこれ以上、折紙が精霊たちと戦わずに済むのではと考えていた矢先に今回のイギリスへの転校である。

折紙がDEMへと入ることは容易に予想できた。

 

「ー力を得るには、魔導師でありつづけるためには、他に方法がなかった」

 

静かな、そして淡々とした口調で折紙が唇を動かす。

 

恐らく、折紙はDEMインダストリーという会社を士道以上に深く知っている。

 

知って尚も、彼女はその茨の道を選んだのである。

 

「…ならもう少し質問しても良いか?」

 

たが、まだ折紙を連れ戻すための方法が無いわけでは無い…。

 

そして、その為にはどうしても確かめないといけないことがある。

 

首肯する折紙に士道は深呼吸をして問いかける。

 

「俺を拉致したのはお前の意志か?

それとも…DEMの指示か?」

 

どちらの回答であっても説得することは可能ではある。

だが、彼女がどちらを選ぶかでどう説得するかが異なる。

 

「士道をここへ連れてきたのは私の独断。

DEMは一切、感知していない」

 

『DEMは…か…』

 

AMFを展開するには大掛かりな設備を必要とする。

折紙だけでそれを用意出来たとは考えられない…。

 

『そうするとフリーランスの魔法使いが折紙に荷担していると…考えるべきか…』

 

考えながら士道は次の質問を繰り出す。

 

「さっき、精霊と戦うと言っていたが…それは十香達も含むのか?」

 

以前、折紙は上からの指示が無いならば十香達と戦う事が無いと言っていた。

そして、今の折紙にGOサインを出すのは陸自ではなくDEMである。

ならば折紙が指示しだいで再び十香達にその剣を向ける可能性があるのだ。

 

「もちろん」

 

「お前が狙っているのは、五年前に親御さんを殺した精霊なんだろう?

なら、十香達は関係ないんじゃないのか?

 

「ーー精霊に変わりはない。

彼女たちは危険。

二度と私のような人間を作らないためにも、彼女達の存在を許しておく訳にはいかない」

彼女は…鳶一折紙といい少女が精霊に抱いていた感情は殺意や憎しみであった。

 

だが、それも最近になりだいぶん和らいできているように感じられた。

 

「夜刀神十香も、ほかの精霊も、皆精霊には変わりない。

復讐の対象であることに変わりはないーそのはずだったのに…」

 

折紙は微かに震える声で言うと、独白するように続ける。

 

「彼女たちと日常をともにするうちに、自分の認識が少しずつ変わっていくのが赦せなかった。

五年前のあの日、復讐を誓ったはずなのに、次第に今この現状に慣れていく自分が怖かった………。

私がDEMに入ったのは、ASTを懲戒処分になったからだけではない。

自分のそをな現状に気付いたから。

ー夜刀神十香のいる日常を、許容し始めている自分に」

 

「な……」

 

折紙の言葉に士道は声を詰まらせる。

 

「なんでーそれが駄目なんだよ!

 

おまえもわかっているんじゃないか!

 

十香たちは、普通に、生きたいだけなんだ!」

 

「………それは許されない。

彼女たちが、精霊である限り」

 

 

折紙はそう言うと士道に背を向ける。

 

「私が殺すのは精霊だけではない。

気づかないうちに情に絆されせようとしていた、私自身。

夜刀神十香の命を以てー私は、私を取り戻す」

 

言って、部屋を出ていく。

 

「あの…バカやろう…」

 

その背に向けて士道は呟いた。

 

「士道が折紙に拉致されたぁ!?」

 

令音からの通信に琴里が叫び声を上げる。

一時限目と二時限目の間の休み時間に令音から電話があったのだ。

 

『ああ…先ほど或守鞠亜、或守鞠奈から連絡があった。

今、相楽苺とサルバトーレ・ドニが向かって…なに?』

 

「どうしたのよ?」

 

「ドニと苺が例のフリーランスの魔法使いと戦闘を開始したそうだ…」

 

「わかった…私も早退してそちらに合流するわ」

 

令音に琴里はそう返して電話を切ると何処かへと電話をかけ始めた。

 

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