デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第五十八話『鳶一折紙の消失』

『まっ…そりゃ…そだよな…』

 

過去で折紙の両親を救った士道が現在へと戻ると鳶一折紙という存在を知る者は鞠亜と鞠奈、《オーディン》を除いて誰一人としていなかった。

恐らく、士道が歴史を改変したためだろう。

 

以前、彼女に聞いた事ではあるが折紙がASTに入った理由は精霊に両親を殺されたからであり、入隊と共に彼女が精霊の現界が最も確認されているここ、天宮市へと配属されたらしいのだ。

 

「士道!!……士道っば!!」

 

「っつ!?」

 

折紙について考えていた士道は琴里の声に意識を向ける。

 

そして、現在…士道は琴里と共に五河家のリビングで新たに現れた精霊についての話をしている最中であった。

 

「人が話をしている時にボケッとしてんじゃないわよ」

 

「ああ、すまん…それでっ…?

《デビル》だっけか?

その最重要警戒対象になっているその精霊は…」

 

現在、士道と琴里の間で話題に上がってる精霊の呼び名を口にする士道。

 

どうやら士道が行った歴史改変が原因でこの世界では新たな精霊が確認されているのだ。

 

《デビル》‐反転体と目されるその精霊は通常は単独では現れず、他の精霊と共に現れては攻撃を仕掛けているとのことである。

 

精霊を狩る精霊…琴里の言葉に何となくであるがいやな予感がしてならないのである。

 

「琴里、《デビル》の画像か映像…その姿が確認できるものは無いか?」

 

 

『マスター……それは…!』

 

士道の言葉に《オーディン》が慌てた様子で声を上げる。

 

「了解。

 

士道、スマホが手元にあるなら出して頂戴」

 

士道の言葉に琴里が指示を出す。

 

同時に鞄から机の上に携帯を取り出すと、琴里は士道のスマホを操作して或守のアプリケーションを起動させる。

 

「鞠亜、鞠奈。《デビル》の映像を出してちょうだい」

 

『りょ、了解です、琴里』

 

『え…ええ……解ったわ』

 

琴里の言葉に鞠亜と鞠奈がどこか…ぎこちない様子で答る。

 

その様子が士道の不安を強くする。

 

スマホの画面にその映像が映し出される。

 

『やっぱりか……』

 

それと同時に士道は心の中で呟く。

何故ならば…立ち上る爆炎や煙の上がる中、映像に映るのは漆黒の…喪服に似た衣装を身に纏った少女…。

 

そう‐鳶一折紙の姿があったからだー。

 

 

 

翌日。

士道は十香とともに学校へ登校すると、自分の席に着くと同時に欠伸をする。

そんな士道の様子に隣の席に座った十香が、不思議そうに目を丸くする。

 

「む、眠いのか、シドー」

 

「ああ……ちょっと昨日寝付けなくてな」

「むう、それはいけないぞ。

大丈夫か?」

 

「まあ、学校が終わったらタ飯前に一眠りさせてもらうさ」

 

苦笑しながら十香に答えると、左隣の席を眺める。

もとの世界で、折紙がいたはずの席である。

寝不足の理由は昨夜、士道が折紙について調べていたからだ。

 

タ食を終えたあと、家を抜け出すともとの世界で折紙が住んでいたマンションと、五年前火災のあった天宮市南甲町の住宅街だ。

理由は単純で、もしかすれば、そこに折紙がいるかもしれないと思ったのである。

 

無論、現実はそう甘くはなかった。

 

マンションの部屋には誰も住んではおらず、かつて鳶一家の住んでいた家には、別の表札が掲げられていた。

 

一応、今の住人に意一家のことを聞いてみもしたが、詳しい行方はわからないとの事である。

 

そして、最後の頼みとして雷華に事情を話して調べてもらうことに思い至ったのである。

調査は数分で終了し、判明したことは彼女の所在と現在通っている学校。

 

彼女の両親は士道が救った一年後に死亡しているとの事である。

また、経緯は解らないがASTへと所属しているということでる。

 

昨日、スマホで見た映像。

そこに映っていた正体不明の反転精霊《デビル》は、問違いな く折紙である。

 

五年前の世界で、士道は折紙の両親を救っている。

 

雷華の情報が正しいならばその一年後に死亡しているが、そこに精霊は関わっておらず、折紙が反転精霊化して他の精霊に攻撃する理由も無いはずである。

前日、琴里から聞いた話では精霊が消失して姿を消すと、いつの間にか《デビル》の姿も消えているとのことで。

おかげで、街はそこまで深刻な被害を被らずに済んでいるという話だった。

 

折紙の情報と平行してもう一つ、士道が調査を行っていた。

 

この世界についての情報である。

 

もしかしたら士道が知らないだけで、他にも士道の記憶と異なることが、この世界で起こっているのではないか。

或いはー起こったはずの出来事が、なかったことになっているのではないかー。

 

そう思い、鞠亜と鞠奈に《フラクシナス》のデータベースを調べてもらったのである。

 

その結果、この世界の歴史は士道の知るものと殆どが一緒であることが判明したのだ。

 

そう…鳶一折紙に関わる事を除いてー。

 

だが、士道は折紙についてそれほど焦らなくても良いと考えている。

 

何故ならば今しがたタマちゃん先生に促されて教室へと入り自己紹介を行っているからである。

 

「鳶一折紙です。

皆さん、よろしくお願いします」

 

前の世界とは違い髪は腰まで伸ばしており、口調も少し、おどおどしたものとなっている。

 

折紙のを観察する士道をよそにタマちゃんが教室を見回すように視線を巡らせる。

 

「えっと、じゃあ鳶一さんの席は…五河くんの隣が空いてますね。

あそこに座ってくれますか?」

 

「わ、わかりました」

折紙がゆっくりとした足取りで土道の方に向かってくる。

だが、折紙は数歩歩いたところで、足を止める。

その理由は至ってシンプルだ。

 

士道が折紙に視線を向けていたため、そこで目が合ってしまったのだ。

 

「あー」

 

「え…?」

 

士道の口からそんな声が漏れると同時、折紙が驚いたように目を丸くする。

自分を凝視している少年と目が合ってしまったのだ。

そんな反応を取るのも無理はない。

 

だが、なぜかは折紙の反応はそういったものとは少し違うように思えた。

 

そう、まるでお化けでも見たような……そんな驚き方だ。

 

「ーうそ。

だって…あれから五年経つのに…あの時と変わってないなんて……」

 

恐らく、両親を助けた士道の事を覚えていたのだろう…。

 

だからこそ、士道の五年前と変わらぬ姿に驚いたのだろう。

 

だが、折紙はすぐに思い直すように首を横に振ると。

一転して他人行像な調子で会釈をし、タマちゃんに指定された席に腰を落ち着けた。

 

「ー」

 

「はい! じゃあ改めて出席を取りますよぉ!」

 

そんな士道と折紙のやり取りをよそにタマちゃん先生が元気のいいで生徒の名を呼び始めたー。

 

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