デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第八十九『生存者の責任』

「令音さん。-明日、俺と、デートしませんか?」

 

天宮市上空、高度一万五千メートル。 

 そこに浮遊する巨大な空中艦《フラクシナス》の中で士道は令音に言葉を切り出す。

 精霊を保護する組織、《ラタトスク》の解析官にして、士道のクラスの副担任。

そして、全ての精霊の元となった始原の精霊・崇宮澪。

 今から三十時間後、精霊たちを皆殺しにした精霊である。

「………………」

士道の言葉に、令音は微かに目を細めながら、こちらを見つめてきた。

「………驚いたな。 急に何を言い出すんだい、シン」

 そして暫しのあと、特に驚いた様子もなく士道の意図を測りかねた様子で返してくる。

 とはいえ、無理もない。

親しい間柄とはいえ、否、だからこそ、突然そんなことを言われたら、驚くのが普通だろう。

 仮に士道が令音ね立場だったとしても、似たような言葉を返すに違いなかった。

 けれど令音の場合、胸中に生じる感情はそれだけではないだろう。

 士道は、こちらの思考を探るかのような令音の目を見つめ返しながら息を呑んだ。

 「駄目ですか? DEM襲撃には丸一日あるはずです」

「……それはそうだが、こんな時にすることではないだろう?

他の精霊たちとデートしたり、しっかり身体を休めたり、何か好きなことをして気晴らししておいた方か……」

「なら、それが好きなことです。

 俺は、決戦を控えた今だからこそ、あなたをデートに誘いたいんです」

「……………」

 

士道の言葉に、令音が再び無言になる。

 「………このことを皆には?」

 「もちろん、いってません。みんなには内緒の秘密のデートです」

「……一応、聞いてもいいかな。

なぜ私なんだい?」

 「嫌ですか?」

「……そうは言ってないよ。

だが、デートしたいならば他の相手がいるはずだろう?」

「それじゃあ、駄目なんです。

 俺は、令音さんとデートをしたいんです」

「………」 

三度の、沈黙。

 そうして数瞬の間何やら考え込むような仕草の後、令音は小さく息を吐いてきた。

「………ずるいな、君は」

「え……?」

「……そんな言い方をされては、ことわりようがないしゃないじゃないか」

「! じゃあ___」

 

士道が目を見開くと、令音は小さく頷いてみせた。

「……時間を空けておこう。

 どこへ行けばいいのかな?」

「……ありがとうございます……!

じゃあ明日朝十時、

天宮駅前でお願いします」

「……わかった。

………では、失礼するよ。

 それまでに残務を片づけておかねば、琴里に怒られてしまうからね」

そこで士道は前日どころか当日の深夜にデートに誘うことの非常識さに気づく。

 否、正確にはその不躾さに思考がお呼ばなかった訳では無い。

 ただ、数時間前までの士道に、それを気にするような余裕がなかったのだ。

「すみません、急に無理を言って」

「………いいさ。

立場上あまり大きな声で言うわけにはいかないが、私も黄みに誘ってもらって、嬉しくないわけではないよ。

__話が話だけに、琴里に仕事の融通を利かせてもらいづらいのは確かだけれどね」

「はは…」

士道が苦笑を浮かべると、令音は小さく手を振ってから《フラクシナス》の廊下を歩いていった。

やがて令音が角を曲がり、その背が見えなくなる。

「………とりあえず、第一関門突破といったところかな……?」

 そして誰にも聞こえないくらいの小さな声音で、そう呟く。

 ひとまず、令名をデートに誘うことには成功した。

無論、本番はここからであるため、気を抜いてはいられないが安堵するくらいは許されてもいいだろう。

 とはいえ、この成功はある程度予測は出来た。

 令音が士道の…否、澪が真士の誘いを断るはずがないことは、士道にもなんとなくわかっていたのである。

 だからこそ士道は、デートに誘うには乱暴すぎるタイミングと自覚していながらも、この強行に及ぶことができたのだ。

「…………」

士道は気合を入れ直すように両手で頬を張った。

 『相手は始原の精霊…策は幾つ練っておいても不足はないからな……』

そんなことを考えながら翌日のデートプランに思考を巡らす士道であった………。

 

 




随分久しぶりの投稿になりますが次話を気長にお待ち下さいー
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