デート・ア・ライブ~救世の魔法使い~   作:灰音穂乃香

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第九十五話『伸ばされた手』

 

「ーシドー! 大丈夫か、シドー!」

 

「う……、っ……?」

 

激しく身体を揺すられ、士道は瞼を開ける。

 

どうやら気を失っていたらしく、意識が覚醒するにつれ、周囲の状況がわかってくる。

 

最初に身体を揺すっていたのは十香だ。

 

心配そうな顔で士道の名を呼んでいる。

 

彼女だけでなく、幾人もの精霊達が周囲に集まってきた。

 

折紙、琴里、四糸乃、桜、雷華、耶倶矢、弓弦、美九、凛祢、七罪、二亜、六喰ーそれに狂三……その後方には真那と鞠亜、鞠奈の姿もある。

 

そして、士道が横たわっていたのは、夜の海岸だたった。

空に星が瞬き、辺りからは微かな波の音が聞こえる。

 

『なんでこんな所に……』

 

そこまで思考したところで、士道は痛む体を無視して跳ね起き、皆の顔を見回す。

 

「! シドー!」

 

「むん……目覚めたかの。

心配したぞ」

 

「安堵。 耶倶矢なで心配しすぎて士道の胸にしがみついつてわんわん泣いてました」

 

「そこまではしてないんだけど!?」

 

精霊達が安堵してる姿に苦笑を浮かべながら士道は十香に問う。

 

「十香。 澪はー」

 

「……っ」

 

返ってきたのは沈黙……それで察するには十分だ。

 

「そう……かー」

 

力なく手を落とす。

 

途方もない無力感と深い絶望がのしかかる。

 

切れる手札は全て切った、皆も命を賭して力を貸してくれた。

 

皆も命を賭して力を貸してくれた。

 

だが、そうやって掴んだ新しい未来にー澪の姿は無い。

 

どうすることも出来ない現実がむねを締め付ける。

 

涙が零れそうになるのを堪え、小さく息を吐く。

 

「あーあ……振られちまったよ。

俺より、シンがいいってさ」

 

士道が言うと、精霊たちは一瞬驚いたような顔をした後ー苦笑を浮かべてきた。

 

「そっか……なら、仕方ないわね。

稀代のプレイボーイも、純愛カップルの前にはが立たなかったかしら?」

琴里が、目を赤くしながら軽い調子で言ってくる。

 

士道はそれに肩をすくめて応じる。

 

とーその時だ。

 

すっかり暗くなった空から、小さな光が落ちてきたのは。

 

「えー?」

 

士道は目を丸くしながら顔を上げる。

 

 

するとその光は、まるで士道のもとに導かれるように、ゆっくりと皆の前に降りてきた。

 

「これは……」

 

それを見て、士道は驚きの声を上げた。

 

とはいえ、精霊達の反応も似たようなものだった。

 

皆、その光の正体を認め、驚愕に目を見開いているら、

 

仕方なかろう。 何しろそこに浮遊していたの様々な色の光を灯す結晶体ー。

 

霊結晶《セフィラ》とーその上に傷だらけのクマのぬいぐるみだったのだから。

 

士道がそれに気づいた瞬間、霊結晶の上からぬいぐるみがずり落ちる。

 

士道は咄嗟に手を伸ばすとそるをキャッチする。

 

間違いなく、令音が肌身離さず身につけていたぬいぐるみだ。

 

士道にはわかる。そのぬいぐるみは30年前、真士が澪に送ったプレゼントでもあるものだ。

 

澪の心を支え続けた陰の功労者。

 

きっと澪はそんなぬいぐるみをともに消してしまうねかが忍びなく、こうして士道に遺したのだろう。

 

年を経たぬいぐるみはくたびれており、身体のあちこちに繕った跡や違う布で当て布がしてあった。

 

澪の力を使えば傷を再生することは簡単だったろうに、わざわざ手作業で繕ったようだ。

 

恐らくー耐えられなかったのだ。

如何に綺麗に再生するとしても、真士から貰ったぬいぐるみが、別のものになってしまう気がしてー。

 

「ーっ!」

それを認識した瞬間、士道の目から堰を切ったように涙が溢れた。

 

「あ……、あーッ……」

 

皆をこれ以上心配させまいと、押しとどめていた感情が決壊する。

 

士道はぬいぐるみを抱きしめるように身体を折り、嗚咽を漏らす。

 

「……澪……、みーお………ッ!」

 

 

歪な方法で生み出され、わけもわからぬままに争いに巻き込まれー贖いきれない罪を犯した。

 

その生涯は決して平穏なものではなかったけれどもー

 

「お前は……シンに、会えたんだよな……?」

 

掠れた声でそう言うと、涙に濡れた顔を上げた。

 

すると、まるでそれに応えるように、虹色の光を放つ霊結晶が微かに揺れー空気に溶け消えていった。

 

「澪……」

 

がーそのとき。

 

「ーえ?」

 

呆然と士道は声を出す。

 

消滅しかけた澪の霊結晶。

 

それが、不意に伸びた何者かの手によって、鷲掴みにされた。

 

予想外の出来事に士道は息を詰まらせると、咄嗟にその手の主を見た。

 

「なー」

 

そして、言葉を失う。

 

澪の霊結晶を掴んだ物の正体が、意外過ぎるものだったからだ。

 

「十、香ー?」

 

そう。

 

皆の驚愕な中、手を伸ばしていたのはー十香だったのだ。

 

「ー悪いが、これは、私がいただく」

 

十香はそう言うと、霊結晶を引き寄せ、自分の胸元に押し当てる。

 

すると、狂三が二亜の霊結晶を取り込んだ時のように、十香の胸に、澪の霊結晶が吸い込まれていく。

 

「十香、何をー」

 

士道が言いかけた瞬間。

 

ー世界が、光に包まれた。

 

 

 




澪(令音)編……最終話を上げさせてただきます。
気づけばアニメ5期終わってから2年以上……大分遅れての投稿となり大変申し訳ないです。
この後、ゲーム『蓮ディストピア』を元にした話を数話あげた後完結まで持って行けたらと思います……。
アニメ6期が終わるのが早いか、わたしがこの二次創作完結させるのが早いかわかりませんが完結まで何とか走っていきたいので皆様もお付き合よろしくお願いしますお願いしますm(*_ _)m
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