私はただ生存率を上げたい   作:雑紙

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40000UA突破、誠にありがとうございます。感激です。
いつも誤字報告及び修正をしてくれる方にはほんとう、頭が上がりません。文章力が低くてごめんなさい。

あと、活動報告の感想、要望には目を通させていただいています。ありがとうございます。できる限り答えていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

今回はリクエストのも混じっていますゆえ。カノンのもオマケに。


極東支部 弐

 私は筒井マモル。誕生日は四月四日……つまり、今日で十八歳を迎える。世の中には十八禁なんていうアダルティーなものへのフィルターがあるが、それをちゃんと守っている若者なんてそうそういないと思う。もちろん、私だって男だからそういうものへの興味は少なからずありはする……不幸な見た目のせいで、触れる機会は無かったが。

 さて、実のところ私は焦っていた。ほんの少し休息を取っていたら、いつの間にか日記が手元からなくなっていたのだ。もしかして知らず知らずのうちに食べてしまったのかと思ったが、私はアラガミではないしそこまで寝相も酷くない……故に、第三者が持ち去った可能性が出てくる。

 

 私はとても、とても、とっても焦っている。だがそれを悟られないよう平然を装い部屋を出たが、辺りにはひとっこ一人いなかった。……皆、まだエントランスにいるのだろうか。

 

 

 エレベーターを用いてエントランスに入ると、ヒバリさんとペイラー博士という珍しい組み合わせの二人が何か話をしていた。どうやら私のことについての会話だったので、自然と入ろうとしたら二人にソファーから崩れ落ちる程に驚かれたので少しショックを受けた。悲しい。

 更に会話に加わろうとしたら、慌てた様子で話を逸らされたので、きっと何か私には都合の悪いことなのだなと肩を落とした。まあ、私のような落ちこぼれには度が過ぎる話のなのだろう……オペレーターのヒバリさんと支部長に就任することになる博士の話だ。優しいヒバリさんは考えてないだろうが、あの博士はもしかしたら、私のような有象無象になんて分からないことだよバーカ、と思っているのかもしれない。全く以てそのとおりだから反論出来ないが。

 

 

 そして、私はペイラー博士に促されたようにエントランスで皆が一点に群がっているところへとやってきた。皆そこに集中しているようで、真後ろにいる私にまるで気付いていない。

 

 「あのー」

 

 声をかける。返事がない。誰からも見向きもされない。……何だろう、これをイジメとでもいうのだろうか。まあ私は大してアルダノーヴァ戦でも活躍することが出来なかったし、指示も何もせずにガンガン行こうぜで行ってしまったから当然のことかもしれない。

 『後ろから何かゴミが話しかけてきてるな』『えー、私見えなーい、ミジンコ?』『何言ってるんだお前ら、ここには何も無い……空気だけだろ?』……そんな声なき声が聞こえてくる気がする。悲しい。

 い、いや、私たちの仲間である皆がそんなこと言うはずがない。なんて私は不誠実な人間だったんだ……アナグラに残って私達に未来を託してくれた彼らを疑うなんて。単に私の存在感が薄いだけではないか。

 

 

 

 私は辺りに同化し、決して他人とぶつかること無くゆらりと人が集まる中心へと向かう。他の人は大抵私よりも背が高いので、少し腰を低くしてスルースキルを極限まで極めれば私の存在に気づくことはそうそう出来はしない。人の目から外れたりするのは得意だった記憶があるので、落ちこぼれである私が胸を張れる数少ない特技となっている。

 そうしてやってきた中心……そこには、第一部隊の皆が座っているソファーと、そのテーブルの上にある一冊の本。皆がその視線を釘つけにしているそれは、どこか見覚えのある――――!?

 

 

 「……な、あ…………なああぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マモルは普段決してあげることのない高音の悲鳴を辺りに撒き散らすと、電光石火の如く開かれていた日記をかっさらい胸へと隠すようにして手で覆った。

 一同はまず絶叫に驚き、次にマモルの姿に驚愕し、そしてそこにあった日記が消失していつの間にか移動していたマモルの元に戻っていることに唖然とした。一度に三度ビックリしてしまった彼らだが、更に驚かせることが目の前で起きていた。

 

 「み、みみ……みま、見ました…?」

 

 表情皆無の殺戮マシーン、控えめに言って狂人と名高いあのマモルが、顔を真っ赤にして焦りを見せているのだ。極東支部に属するゴッドイーター達は当然、第一部隊の面々の殆どもマモルが表情を変えるところ自体目にするのは初めてだった。

 あまりに一斉にやってきた驚きの連続に、一同はしんと静まり返ってしまう。

 

 「……え、ちょ、何で黙ってるんですか……? 見たんですか? 見たんですよね? ……あの、あの……その、何か言ってくれませんか……?」

 

 日記が露見したことと無言の圧力に晒されているマモルは、その重圧に耐えきれずだんだんと目尻に涙を浮かべ始める。

 そこでハッと全員が我に返るが、どう声をかけたものか分からずに口を閉ざしたままだった。耐えかねて誰からともなく、日記を読んでいた第一部隊へと目を向ける。意外と文書の量が多かったので、完璧に……もしかしたら読み終えてはいないのかも知れないが、内容を確認していたのはマモルが隊長であるその部隊だけだった。

 だがしかし、それでも沈黙は続く。コウタはどう言えばいいのかわからず戸惑い、サクヤは眉間に指を当てて困り果て、アリサは口を開きかけるが少し頬を赤く染めて目を逸らし、ユイに至っては両手で顔を隠していた……耳は熱を帯びているが。唯一、ソーマだけがフードを外し髪を掻きながらも、言葉を紡いだ。

 

 「…………あぁ、読んだ」

 

 「っ!? ……あ、うぁ……」

 

 たたでさえ赤かったマモルの顔は更に熱がこもり、開いた口は塞がることなく小刻みに震える。

 マモルは男ものの服装と若干低めの自声によってしっかりとした男だと認識されてはいるが、一見すると殆どの人間が女だと見間違うほどに女性のそれと容姿は似通っていた。そんな彼が他人に一度として見せたことのない一面を目にした者達は、老若男女関係なく思わずマモルを見つめていた。その視線から読み取れる感情は様々だが……その多くは普通可憐な少女にでも向けられるべきものである、とだけ言っておこう。

 

 マモルは救いを求めるように、ふらふらと覚束無い足取りで第一部隊の方へと歩き出す。その時、マモルの肩をぽんと叩いたのはコウタだった。意を決したかのような表情から、にこりといつもの愛嬌のある笑顔へと変わる。マモルの表情は色はないものの、こころなしかぱぁっと明るくなった。

 

 「面白かったよ! だから気にするなって! いいと思うぞ、うん!」

 

 が、それは一瞬だった。コウタの言葉で何かに全力で殴られたかのような衝撃を受け、マモルの身体は後方へと吹っ飛ぶ。

 

 「そ、そうよ! 色々真面目に考えてたのね、偉いと思うわ!」

 

 サクヤさんの優しさは時には棘になる。追撃としてマモルの心へと悪意のないはずの刃が突き刺さった。

 

 「リーダー、その、えっと…………ごめんなさい、やっぱりドン引きな部分もありました」

 

 初めの頃のアリサの勢いのある罵倒よりも、今現在の控えめな注意の方が身を削られる感覚がすることが多い。マモルの精神がドリルでごりごりと形が崩されていく。

 

 「…………あー…………すまん」

 

 ソーマが珍しく哀れむような視線と声音をマモルに向ける。マモルの内側から何か熱いものがこみ上げてくる。しかし、仮にも第一部隊隊長、ストレスがマッハになろうとも何とか堪え切り、立ち上がった。

 

 周囲のゴッドイーター達は静かに歓声を上げた。公開処刑にも等しい扱いを受けながら、なおも立ち上がる狂人に。

 

 「い、いいえ……大丈夫です……」

 

 息も絶え絶えで虚ろな瞳を浮かべるその姿は、アラガミを相手にしたところで滅多にお目にかかれるものではないだろう。膝を震わせながらも、マモルは両手を床から放し――。

 

 「マモル? そのー……女神はちょっと、恥ずかしいかなって……」

 

 「ごはっっ!!」

 

 その瞬間、マモルは盛大に血を吹き出して生まれたばかりの血溜まりへと伏した(※床はちゃんと綺麗です)。

 ――ああ、止めをさしたな。第一部隊を除いた殆どのゴッドイーター達は、おそらく二度と思わないであろう同情の念をマモルへと向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やめて、やめてください。私にそんな、可哀想なものを見るような目で見ないで。やめ、止めてくださいよぉ……もうやだ、生きていけない 。あっ、お花畑だぁ……待って、蝶さーん……」

 

 

 マモルはうわごとを呟いたまま、どんよりと暗い雰囲気を醸し出していた。一応パーティーは再開され極東支部のゴッドイーター達も気持ちを切り替えて楽しんでいたが、嫌でもその黒い一角は視界に入ってしまう。その視線には哀れみや同情といったものがどうしても加わってしまうのも仕方が無い――何せ、自分の黒歴史の一節が瞬く間に辺りに広がる……それはもう、公開処刑といっても差し支えないのだから。

 流石に更にマモルを陥れようとする気は無い、というより起きない為に彼らは日記を読む事は止めた。榊博士はそれでも興味を示していたものの、第一部隊やオペレーターのヒバリさんによって止められてしまった。「命には換えられない」と榊が冷や汗をかいていたのは全員が目にしていた。

 

 「……ど、どうしよう」

 

 私、神薙ユイは幻覚を見ているらしいマモルの近くで軽い罪悪感に苛まれていた。人の日記を勝手に見ることは失礼だとは分かっていたけれど、あのマモルの日記だというだけでそんなことは頭の隅に置いてしまい読みたいという衝動に駆られてマモルにショックを与えてしまったからだ。

 あの日記に書かれていたのは、正真正銘マモルの配属一ヶ月間の記録だった。その内容は……私の口から言うには恥ずかしい部分もあるが……どこか抜けている部分が多数あった。 しっかりとしているようで、けれどどこかズレている、そんな日記。

 最初こそ第一部隊の皆で笑ったり、引きつったり、本当にマモルが書いてるのかと疑ったりしたが、部分的に私のことが取り上げられた際みんなしてこちらをにやにやとしながら見てくるのだ。……思い出すだけで顔が熱くなってくる。女神ってなんだ、女神って。

 マモルもマモルで、どうしてご飯を作ってあげたことや付き合いの約束をとりつけたことまで書いているのだろう。おかげで私も羞恥の的になってしまった……自業自得といえばそれまでなのだけど。

 

 いや、今はそんなことよりもマモルだ。責任は私にあるのだし、マモルの日記風に言うなら隊長がこのままだと生存率が下がってしまう……はずだ。それ以前に立ち直らせる義務が私にはあるし。他のみんながいつの間にかいなくなっているのが気にかかるが……この際、私一人で何とかしなければ。

 

 「……あー、マモル……?」

 

 「あの川の向こうへ…………と? はい、何でしょうか」

 

 声をかけると、意外にもマモルはすぐに現実へと返ってきた。あの時浮かんでいた焦っていた表情が嘘のように再び感情を感じさせない顔をしている。間違いなく、いつものマモルだ。日記では多少の喜怒哀楽が書かれているし、感情が表に出にくいと本人も言っているのだからもしかしたら今も何か感じているのかもしれない。

 

 「その……ごめんね。日記を勝手に……」

 

 「ああ、謝って頂けるのでしたらそれで充分です。みせたのは第一部隊の皆だけみたいですし……それでも個人から言わせてもらうと社会的な死を経験しましたけれど」

 

 「うっ。それは……ごめんなさい」

 

 「うん? ……あ、いえ。別に批難しているわけではありません。もしもこれが他のみんなに知れ渡っていたら本格的に社会的な死を迎えることになったでしょうから、不幸中の幸いという意味で言ったんです」

 

 私は逆に気遣ってくれるマモルにお礼を言いながら、考える。確かに、この日記を読んだとしたら他のゴッドイーター達が抱くマモルの印象は変化するだろう。主に天然さや真面目さ等、今たっている噂が多少緩和される程度には。

 だが、マモルが狂人と呼ばれる事は恐らく変わりはしない。日記を読んだ限り、至って大真面目な本人が言う『普通』が、明らかにおかしいのだ。他にも客観的に見たらおかしいと思う行動を平然、最善としてやっているのは間違いない。コンゴウは小型アラガミでもないし。

 

 「どうかしましたか? ユイ」

 

 そんなふうに考えていると、突然真正面にマモルの顔が――。

 

 「わっ!?」

 

 思わず飛び退いてしまった。マモルは挙動不審な私を見ても、眉一つ動かさずに首をかしげるだけだ。

 

 「何か考え事ですか」

 

 「あ、いや、ううん。何でもない。それより、本当にごめんね。お詫びに私が出来ることなら何でもするから」

 

 「大丈夫ですよ。いつもお世話になっている対価を私は払えていませんから、お詫びまでされるとちょっと困ります。……なので、謝意があるのでしたら何もしないでください、謝ることもダメですよ」

 

 「そーきたかぁ、でも…………ううん、分かった」

 

 あまり納得はいっていないけれど、今はマモルの言うことを優先するべきだから私はこれ以上迫るのを止めた。油断ならないという印象は変わらない。

 

 「それに、逆にユイには感謝もしていますし」

 

 「へ? 感謝?」

 

 「はい。耳にした話だと、このパーティーは私の誕生日記念も兼ねているそうじゃないですか。口にした記憶がないので誰にも話していなかったはずなのですが、日にちを伝えてくれたのはユイだそうですし」

 

 日記を持ってきたことによる感謝だと思って私は身を固くしていたが、すぐに違うとわかると力が抜けた。さすがにマゾの線とかはないようで安心した……あんな状態にまでなっていたから元々思ってもいなかったけれど、万が一あり得るかもしれないと思った私は怒られていい。

 

 「う、ううん。そんなの全然だよ」

 

 「いえいえ、形だけだとしても誰かに祝われるのは嬉しいものですからね。『お誕生日おめでとう』なんて言葉久々に聞きましたし」

 

 どうやら、あの黒いオーラを身にまとっていた状態でも私達の声は届いていたようだ。精神が強いのか、おかしいのか、ズレているのか。マモルだったらどの表現でも当てはまるに違いない。

 

 「なので。ありがとうございます、ユイ」

 

 マモルは私の隣から立ち上がると、いつもよりも少し深めに頭を下げてくれた。

 

 ――本当に頭を下げるべきなのは私なんだけどなあ。

 

 でも、なんというか。そんな真面目すぎる(ズレている)ところが、彼らしい。

 

 「うん。どういたしまして」

 

 「……さてと、ユイのおかげで陰鬱な気分も大分軽くなりましたし、私も本格的に参加することにしましょうか」

 

 「私がこういうのも何だけど……大丈夫なの?」

 

 「多数の様々な視線には耐えられる自信はあまりありませんが、流石にお腹も空きまして。空腹によって羞恥が薄くなる可能性を信じるしかありません」

 

 私は真顔で変なことを言う彼に、くすっ、と笑ってしまう。だから、懲りずに私は少し悪戯っぽいことを言うことにした。

 

 「また気絶してもご飯なら作ってあげるからね?」

 

 「有難いことですが、お手を煩わせるわけにはいきません。何、別に遅くまで騒いでいても構わないんでしょう?」

 

 特に特別な反応をするわけでもなく、マモルは階段を降りていった。私は頬からの熱を感じながら額を抑える。マモルの表情の変化を見たのは、これで『二度目』だ。

 ……はたして、彼は話の途中自分が微笑みを浮かべていたことに気づいていただろうか。恐らく誰にも見せたことがない、私だけが見れたマモルの感情…………まずい、変に考えてしまったら顔の熱がどんどん上昇してきた。

 

 この胸に渦巻く熱いもものは何だろうか。自分自身に問いかけ、答えはすぐに帰ってきた。――『 』。

 

 ああ、うん。やはりそうだ。正直、自問自答をしなくても答えはわかりきっていたのだけれど。

 

 「……これから、頑張らなくっちゃね」

 

 私は密かに拳を固め、マモルを追って後を追おうとした時、ふと物陰の方で何かが揺れているのを目にした。

 

 「ちょ、おすなよアリサっ。バレるだろ!」

 

 「コウタこそ静かにしてください。声が聞こえてしまいますっ」

 

 「青春はやっぱり良いものよね……」

 

 「お前ら……いや、もう何も言わない」

 

 

 そこから聞き覚えのある声が次々と聞こえてきたかとおもえば、いつの間にか隣に呆れた様子のソーマがそちらを見ながら立っていた。

 「やってもいいですか?」という意味を込めた視線を向けると、ソーマは「好きにやれ」とアイコンタクトで返してくれた。――覗き魔には制裁を加えないとね……?

 

 

 

 

 

 色々と……特にマモルには色々とあったけれど、あの日記のおかげで私達はマモルとの距離を縮めることが出来たと思う。皆、マモルの印象が多少変わったり、認識が改められたに違いない。……多分、他のゴッドイーター達も。

 でも、皆は気づいているだろうか。日記の所々に含まれている、狂気じみた彼の一端を。

 筒井マモル……彼について完全に理解することが出来るには、まだ遠い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 

 

 台場カノン 壱

 

 

 

 

 

 「つ、筒井マモルさん! 私と一緒の任務にきてくれませんか!!」

 

 私がエントランスにあるターミナルを操作していたマモルさんに声をかけたのは、その日偶然が重なった結果だと言えるでしょう。

 本来同じ任務を受けるはずだったタツミさんとブレンダンさんが手違いで別の任務に先に出かけてしまい、他の防衛班の皆も姿が見えませんでした。受ける任務の難易度はそこそこ高くて、エントランス内でそのレベルの依頼を受けられるゴッドイーターの方はいなかったのです……ただ一人、狂人と名高い第一部隊の隊長である筒井マモルさんを除いては。

 

 顔がこちらへと向いた時、私はつい「綺麗……」と口を零してしまいました。事前に男性だとは知っていたのですが、一見本当に私よりも年下の女の子だと錯覚してしまったのです。失態に気づいた私は慌てて取り繕おうとしましたが、その前にマモルさんはたった一言、口を開きました。

 

 「分かりました」

 

 「ひっ!? ご、ごめんなさい。ごめんなさい!」

 

 その時の表情に全く変わりがなかったので、私はとても怖かったです。怒りが心頭しすぎると人間は無表情になるとジーナさんから教えてもらったばかりだったので、そのことを思い出した私は急いで謝りました。それはもう、必死でです。

 なにせ、マモルさんはあのリンドウさんをもってしても『狂っている』の一言を引き出した人物です。怒らせたら私は死を迎えてしまうと、本気で考えてしまっていました。

 

 「うん……? いえ、別に大丈夫です。それよりも早く行きませんか?」

 

 「あっ……は、はい!」

 

 でも、特にマモルさんは何を言うでもなく、というより私が何を言っているのかわからないといいたげな雰囲気でした。聞こえていなかったのかと思いましたが、準備をしてきたマモルさんの服装が若干男らしさを増したものになっていたので気にはしていたようでした。もちろん、心の内で謝罪しました。

 

 

 

 今回の任務のアラガミ討伐はあくまで副目標であり、本来の目標は私の連携の練習……具体的には、私の誤射を少なくするための訓練のようなものでした。マモルさんの戦闘スタイルは接近重視だそうなので、相性自体は良いものだと思っていました。

 でも、他の方から聞いた話よりも戦闘中のマモルさんの行動はかなり激しいものでした。ステップよりも砲身による放射弾の反動で攻撃を避けていたり、それを利用して空を飛んだり、アラガミを突き刺しては別のアラガミに投げつけた後に一突きで止めをさしたり……極東支部トップクラスの実力者であることがありありと感じ取れたんです。

 ただ、口に神機を突っ込んではインパルスエッジを叩き込む、別名『狂人式内臓破壊弾』をこの目で実際に見た時は引きました。肉片とかしたアラガミの方が可愛そうだと思いましたよ。

 けれどマモルさんとの連携では誤射は自然と少なくなっていたんです。少なくとも、ほかの人といった時よりも二倍、三倍は気を使わずに楽に出来たので、その心の余裕で五回しか誤射しなかったのかもしれません。

 そのどれもがマモルさんが空を飛んでいた……あ、すみません。バレットを駆使した空中飛行中だったので私も最初は息を飲みましたが、それでも普通にアラガミに突貫していく姿はとても感動しました。なので気兼ねなく誤射……こほん。サポートをすることが出来ました。

 

 「その、付き合っていただいてありがとうございました!」

 

 「いえ、こちらこそ有意義な時間を過ごさせてもらいました」

 

 私達はお互いに頭を下げました。隊長なのにも関わらず礼儀正しくて私なんかのことも心配してくれて、戦闘中の姿とは大違いで……何故か親近感も湧きました。もしかしたら、マモルさんもサポートに回った時誤射をよく起こすのかもしれませんね。

 私は誤射でマモルさんの飛行を邪魔したことを中心に謝りましたが、マモルさんは首を横に振ってこういってくれたんです。

 

 「カノンさんは誤射で有名な人だという噂はお聞きしていましたが、私はむしろその味方に弾を当てられることが凄いと思いますよ」

 

 「す、凄い……ですか?」

 

 一体この人はなにをいっているのだろう。それとも、嫌味なのでしょうか。私はそう思っていましたが、全然違いました。

 

 「はい。バレットを積極的に回復弾に変えたらその特徴は長所にもなりますし、それに私はあれのお陰で助かる点が幾つもありました。また機会があればカノンさんと任務に出たいくらいです」

 

 「ほ……本当ですか!?」

 

 もうあまり一緒に行きたくないとはよく言われましたが、またもう一度一緒に任務に出たいと言われたことは初めてでした。私は思わず詰め寄ってしまいましたが、すぐに冷静さを取り戻して、少し恥ずかしがりながら退きました。

 

 「本当です。私は嘘をつきませんゆえ……っと、すみません。呼ばれているようなので、これで失礼します」

 

 

 マモルさんはもう一度丁寧にお辞儀をしてくれると、手を振っていた第一部隊の方の方へと向かっていきました。

 『また機会があれば』……その言葉が胸の中で何度も繰り返されて、私は不思議とマモルさんと行く次の任務が楽しみになってきたんです。普通ならまた誤射をしかねないから少なくともそんな気持ちにはならないはずなのに……おかしいですよね。

 それとも、最狂のゴッドイーターに私が狂わされたのでしょうか。……なんにしろ、マモルさんの任務以降私の誤射率が減ったことにはとても感謝しています。言われたとおりに回復弾を少し加えて任務に臨むと、仲間からは罵倒や恐怖ではなく礼や感謝も受けてとても良い気持ちになりました……その後、「もう少し誤射を減らしてくれ」とその方々からはやっぱり言われてしまいますが。

 マモルさんは後輩ですが、尊敬できる方です。だから、私も真似をしてブラストによる飛行を可能にしてみせます!

 

 

 

 

 

 

 ……え? 駄目なんですか?




カノン:おかしいゴッドイーターだけど尊敬できる後輩

というわけで、まだ要望はございますが次回からは本編も開始していきたいと思います。日記方式が詐欺になってしまいますから……。もちろん、リクエストの方も時折叶えていきたいとおもいます。
話の都合上時間がおかしいと思われますが……うん、そこまで詳しく覚えてないんだすまない……すまない。
では、よろしくお願いします

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