私はただ生存率を上げたい   作:雑紙

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今回は前半が日記、後半が三人称となっております
リクエスト回も兼ねております。提供に感謝を。

オリジナルのアラガミが出てきますのでご注意ください。


反省はしている。後悔はしていない。
これが意味する事は察していただけると。

あ、半なので次の話に続きますので。はい。


九十一日目、九十二日目半

 配属九十一日目

 

 私の名前は筒井マモル。年齢は十八歳、誕生日は四月四日。早いものでもう私が配属してから約三ヶ月が経った。

 この日記帳は丁度二代目だ。一代目が全て書き終わったので新しく乗り換えた。全く同じタイプのものである。味気ない感じの配色かもしれないが、私はこういう渋い緑色は好みだ。……老人くさいと思われそう。

 このペンもそろそろ変え時だろうか、インクが切れてきた。ちなみに、私は色のついたペンは少なくともこの日記には使わない。変えるのが面倒だしキラキラしているのはあまり好かないからだ……そう思っていると、ふとタンスに目がいってしまった。あの最奥には一ヶ月程前にユイが買った女物の衣装がしまわれている。もし誰かに見つかったら変態扱い待ったなしなのだが……流石に他人のタンスをまさぐる人なんていないだろう、うん。ひらひら……きらきら……うっ、頭が……。

 さて。ここ最近またアラガミが適応してきたのか、リンドウさんがアラガミ化した末であるハンニバル侵喰種の姿が少々見られるようになってきた。最も、所詮は真似事のようなものなので本来のハンニバル侵喰種よりかは力が弱くなっているようだが。動きは簡単に読めるし、乱舞にも真正面から挑める程度には慣れてきた。普通に近づけてきただろうか。

 今日は朝からペイラー博士にお呼ばれしている。正直嫌な予感しかしない。支部長となったペイラー博士がやけに静かだったので、その反動が物凄いだろうと感じているのだ。

 …………何も無ければいいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペイラー博士から言い渡された依頼の内容は大量発生した小型アラガミの駆逐、そしてあるアラガミの討伐だった……簡単に言えば、だが。

 何でも、話によるとその小型アラガミ達は様々な場所を集団で移動しており、その数と質量でゴリ押して中型や大型のアラガミさえ喰らうことがあるらしい。更に実際に見かけた偵察班の人の話では、アラガミ達は統率されているかのように足並みを揃えて歩行していたという。

 そんな軍団を引き連れていると思わしきアラガミはサリエルの姿と酷似していたらしいので、その派生種で間違いないだろう。アラガミをまとめるアラガミというのは珍しいケースだ。どういう理屈かわからない分、恐怖心は拭えない。

 近々新しいタイプの刀身と銃身が正式に導入されるそうで、第一部隊の副隊長であるユイが試験運用をし残りのメンバーがバックアップをする形で任務にではからっているため、割ける人員は今のところおらず……私一人で赴くことになるとのこと。流石に無茶ではないかと思ったが、技術班が急いていることと「君なら一人でどうとでも出来るさ」というペイラー博士の言葉によって承諾せざるを得なかった。ブラックな職場である。

 三十体の少数のアラガミと一人で戦ったことはあるが、このような一対多数の戦闘になるのはこれが初めてだ。ロングはどちらかと言えば一対一、少数に強い組み合わせなので刀身を変える必要があるかもしれない。一応他の刀身も私は度々扱っているので、心配はないだろうし。

 ……うん。丁度良いし、試したいこともあるからアレに変更しようか。上手くいけば普通のゴッドイーターにぐんと近づくに違いない。気張るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 嘆きの平原へと足を踏み入れ、前方に視線を向けると嫌でもそれらが目に入った。溢れんばかりの小型アラガミの群れ、互いに捕食することなく列をなして進行する様はまるで軍人の行進のようだ。

 私は自身の背よりも大きな刀身……バスターブレードを振るい、軽く深呼吸を行う。目に入っただけでも、アラガミの数は有に百体を超えている。一体一体を丁寧に斃していては時間がかかりすぎるし、何よりサリエルの派生種と思われるアラガミと連携をとられたら厄介だ。今のところそれらしき姿は見受けられないが……数を減らしたら自ずと出てくることだろう。

 

 私は高所からとん、と飛び降りると、真下にいる数体のアラガミを捕食形態で一気に仕留める。バースト状態に移行すると同時に、周囲のアラガミから殺意の篭った視線がむけられた。

 

 威嚇をされている間に、私はバスターブレードを構えて力を込める。神機にオーラを纏わせるようイメージをすると、紫色の刃が刀身の周囲に形成されていく。『チャージクラッシュ』と呼ばれるバスターの固有技であり、この状態の刀身はリーチも長くなり威力も倍近いものとなる。移行するのに時間がかかり、集中することで疲れがたまりやすくなるという短所はあるが。

 

 そして私は形成したそれで、力の限り周囲を()()()()()。ソーマさんやブレンダンさんのように、バスターの使い手はチャージクラッシュを放つ時より効率よくアラガミにダメージを与えるため縦一直線で振り下ろしていた。ならば、小型アラガミにとっては即死並の一撃であるそれを横へと払えば一気に刈り取ることが出来るのではないか。そう思った私の考えは正しかったようで、一瞬で十数体のアラガミを切断した感触が直に伝わってきた。

 

 が、それを見てもなおアラガミの第二波はやってきた。通常であれば、チャージクラッシュ後はどうしても隙が大きくなってしまうことだろう。集中も途切れてオーラが分散し、もう一度同じことを行うためには再び強化状態にする……スタミナを使う必要がある。

 

 ――だから、私は一つ工夫を加えてみた。

 

 やってくるアラガミの牙、刺、弾等を巻きこみながら、私はもう一度オーラを纏った刀身で辺りを一掃する。やってくる攻撃諸共、小型アラガミ達は一刀両断されてすぐに地へと溶け込んだ。

 

 そう。その工夫とは、『集中を切らすことなくチャージの状態を維持する』ことである。

 

 私程度が考えつくものなのだから他の人もきっと思いつくような簡単なことだが、それゆえにシンプルに強い。集中し続ける限り紫色の刃は大きさもリーチも威力さえも上がってゆき、なおかつあくまでそれがオーラである為に重さが増すことは無い……長期戦や多数戦にはもってこいだ。

 

 問題はスタミナがどんどんと消費されていくことだが、この点も既に装甲や銃身の装備に付与されているスタミナ軽減、強化、自然回復量等のスキルによって緩和されている。それに、慣れればこの形態に移行及び維持することは存外楽であり十分なスキルが合わさっていればずっとチャージ状態で神機を振るうことが出来るのだ。勿論、銃身や装甲を展開した時は流石に集中が切れてオーラも分散してしまうが。

 

 実を言うと、今までは理論的に考えていた何の確証もないことであったのだが、実戦で成功して良かった。

 

 

 みるみるうちに伸び、拡大し、強力になっていく刀身に小型アラガミ達はなすすべなくその身体を還していった。三分ほども時間が掛かってしまったが、その時点で既にアラガミの群れは両手で数えるほどにしかいなくなっていた。

 

 

 

 もう少し……といったところで、アラガミ達がふと上を見上げた。同時に、風を切って飛んできた真っ赤なレーザー弾を私はステップで回避した。

 

 小型アラガミと私の間にゆうぜんと降り立ってきたのは、ピンク色のサリエルだった。堕天種ではない。あれよりももっと明るい感じの……あちらを女優だとすればこちらはアイドルといったようなものだろうか。……何言ってるんだろう私は。

 

 

 サリエルの派生種が奇声に似た咆哮をあげると、小型アラガミ達が一斉に私へと襲いかかってくる。ピンク色のサリエルもまた、突進を仕掛けてきた。

 

 

 私はアラガミを統率していたというのに知性の感じられない行動に疑問を抱き、まあアラガミなら仕方の無いことかと割り切って、神機を振るう。

 一閃。それだけで新種のサリエルを含むアラガミ達は地に伏した。既に神機自体が脈動するほど強化されているのだ、警戒して遠距離からちまちまやっていた方がまだ善戦できただろうに。それでも恐らく限界まで長くなったリーチでは届いてしまうだろうが。

 

 何はともあれ、これで任務は終了した。頼まれていたサリエル派生種のコアを奪取した際、最期の足掻きなのか突然サリエルの身体から放たれたリン粉にかかってしまったことには焦ったが、身体に特に影響は見られない。まあ、ヴェノムは嫌というほど味わったのでとっくのうちになれて耐性も出来ているし、心配はないだろう。

 

 実験が上手くいったことも喜ばしい。ある意味、あのアラガミには感謝した方がいいのかもしれない。許しはしないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故だろうか。二十一時を回った頃から身体が燃えるようにあつい。温度計で測ってみたら四十度もあり、息もしづらい明日は休んでしまうことになるかもしれない。第一部隊の皆に怒られそうだ。

 心当たりはあると言えばある。あのサリエルの最後っ屁だ。医療班にメディカルチェックを頼もうかとも考えたが、もうこんな時間なので押し入るのが申し訳なく感じる。

 命に別状がない事は感覚的に分かるので放っておけばいずれは治るだろう。頑張って眠るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ユイはいつもの通りマモルを起こしに部屋へとやってきた。昨日、ほんの少しだけマモルの様子に違和感を持っていたが、恐らくは小型アラガミを駆逐したという疲れなのだろうと考えていた。

 

 「マモル~、朝だよ~!」

 

 ドアを開けてユイは大きな声を出すも、当人は布団を被ったまま微動だにしない。これもまた、いつものことではあるが。

 

 「ほら、マーモールー……………………うえぇっ!!?」

 

 だからだろうか。何時もであれば、マモルは頭まで布団を被っている事はなく、もっと言うのであればきちんと枕の上へと頭を預けていた。些細なことではあるが、その変化に気づくことが出来ればユイは心構えが出来ていたのかもしれない。

 ………それが到底無理な話であるとは分かっていても。

 

 布団を捲ったユイの視界に入ってきたものは、想い人ではない……男性ですらない一人の少女。穏やかな寝息を立てる彼女の服は明らかにサイズがあっておらず、滑らかそうな肌が肩から胸の近くまで露出している。

 マモルを起こそうとしたらベッドの中に入っていたのが見たこともない可愛らしい少女だった。様々な解釈ができる惨状を見たユイが腰を抜かして思考停止に陥っている最中、幸か不幸か少女は目を覚ましてしまう。

 

 「ん…………あ、ユイですか。どうしたんですそんなに固まって…………あれ、何か声がおかしいですね。風邪だったのかな」

 

 半開きの目をダボダボの服で擦りつつ、少女は幼い女声を上げながら上半身をゆっくりと起こす。腰元にまで伸びた黒い髪が揺れ、喉に手を置いて「あー、あー?」と声の調子を確かめている。

 

 「やっぱりおかしいですね……うん? ユイ、少し背が伸びました? やけに大きく見えるのですが」

 

 「…………き……」

 

 「き?」

 

 「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 それを見ていたユイが、悲痛な叫びを上げるのは決して責められることではなく、むしろ当然のことであった。

 

 

 「どうしたんだユイ、マモルに何か……どぅ!?」

 

 「おい何があっ…………は?」

 

 「どうかしましたか……って、え!?」

 

 「何かあったの…………えぇ!?」

 

 「どうしたー? リーダーに何…………んお!?」

 

 悲鳴を聞いて駆けつけた第一部隊も、早朝からマモルの部屋に、厳密に言えばベッドから身を起こしている見知らぬ少女に各々が驚愕の声をあげる。

 

 「な、何なんです一体……皆さんもそんな驚いた顔をして……って、あれ? 皆さんも背が伸びました?」

 

 未だ状況に気づいていない少女は両耳を指で塞いで、何故驚いているか分からない第一部隊の各員に目を向けつつ首を傾げる。

 

 「マモルの部屋にお、女の子ぉ!? しかも可愛いし……え、どういうこと!?」

 

 「わかりません! っていうよりこれ浮気ですよね! ねぇ、ユイさん!」

 

 「ちょっと待って! 待ってアリサ! 今の状況を把握してるのにそんな発言されると更に混乱してしょうがないから!」

 

 「やっぱりマモルはロリコンだったのね……」

 

 「ああ、そういうことか。サクヤの言う通りかもしれないな、案外プレイボーイだったんだな、あいつ」

 

 「部屋に来られて訳の分からないことを言われた挙句目前で悪口を聞く経験は初めてですね。虐めですかね」

 

 固まって口を開くことが出来ないソーマを除き、思いも思いのことをいう第一部隊にジト目を向ける少女。溜息をつきながら、少女はベッドから服を引きずりながら体を降ろす。

 

 「歩きにくい……風邪のせいで身体が重たくなってるのかな。…………あれ、どうしたんですか皆さん」

 

 そんなことに気づいていない少女は、こちらを見ている……正確には目を逸らしているソーマ以外の男性陣の両目を咄嗟に塞いだ第一部隊の行動、そして顔を僅かに赤くしつつ見つめてくる彼女らに疑問を抱く。

 

 この第一部隊きっての冷静さをもち、そして場の空気を読み状況を把握することのできるソーマは、部屋にかけられている鏡を指さしながら呆れたように口を開いた。

 

 「…………自分の姿を見てみろ」

 

 「はい? 何故ですか?」

 

 意図がわからなかった少女はそう尋ね返すが、返答は返ってこない。疑問符を浮かべながらも言われたとおりに鏡の前に立つ。そこに映っていたのは、見覚えのない服のはだけた一人の少女の姿。

 

 「……ん?」

 

 少女は目を擦り、再度確認する。鏡に映る愛らしい少女は未だそこにいる。

 

 「………………ん?」

 

 頬を触るととても柔らかで、つねると軽い痛みが生じる。瞼を閉じて、開く。向こうに映る少女の象に変化は生じていない。

 

 「…………………………………………ん?」

 

 少女は自身の股に手をかける。あるべきものがない。

 胸に手をかける。ないはずの二つの実りがある。

 再度確認するも、そこにはあられな姿の少女がいるだけだ。

 

 「……あ、あわ……あわわ……あ、あえ……」

 

 ようやく自身の状態を認知すると、少女は顔を一瞬で真っ赤にしながら身体全体を震わせる。混乱している第一部隊のメンバーの中、唯一ソーマは次に起こることを予測して耳を塞いだ。

 

 

 「わえあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

 

 その日、二度目の女性の悲鳴がアナグラを揺らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「死にたい」

 

 ぽつりと呟いた少女――筒井マモルは、無表情でありながらも世界に絶望した雰囲気を醸し出していた。触れればその負のオーラに周りも巻き込まれてしまうのではないかと錯覚するほど、それは濃かった。

 

 「博士……これは、どういう……」

 

 「うーむ……昨日の彼の行動から予測するに、サリエル妖精種の鱗粉に当てられたと見て間違いないだろうね」

 

 ユイがペイラー博士に尋ねて出てきたサリエル妖精種というのは、昨日マモルが討伐した新種のアラガミである。

 

 博士によると、サリエル妖精種はオラクル細胞に刺激を与える特殊なフェロモンを有しており、力の弱いアラガミであれば一時的に支配下に置けるという強力な力を持っている。ゴッドイーターでさえ無闇に妖精種に近づくだけでもそのフェロモンに当てられてヴェノム状態になってしまう危険性があるらしい。そんなサリエル妖精種のフェロモンが濃厚に含められた鱗粉を直に受けてしまった為に、何らかの反応でマモルが女性に変貌してしまったのではないかと推測を立てた。

 

 「ま、マモル……その、元気だせって。可愛いぞ?」

 

 「あ?」

 

 「何でもないっ!」

 

 相当不機嫌なのか、コウタが冗談めかして声をかけると低い声でマモルは応答した。元々が高いのでそう怖い感じにはならなかったが、それでも初めて見せるマモルの対応にコウタは萎縮してしまった。

 

 「……あ、いや、そういうつもりじゃ……すみません。コウタは悪くありませんのに」

 

 「お、おう。大丈夫だよ、うん」

 

 こころなしか男性時よりも少女マモルは表情の変化があるように見える。今もしゅんと元気のない顔で謝っているからだ。女性になったことでより綺麗になった顔で繰り出されるその表情は、元が男だとしてもコウタをたじろがせる程であった。

 

 「……それで、どうしたら元に戻れるんでしょうか」

 

 「一番確実なのはサリエル妖精種のコアをあと複数個用意して解析を進めることだけど……あれから音沙汰がないからねえ。最悪……」

 

 「やめて下さい! その先は聞きたくありませんっ!」

 

 アリサに尋ねられたペイラー博士は起こりうる可能性を口にしようとするが、涙目になりながら叫ぶマモルによって閉じざるを得なかった。……可愛いは正義とはよく言ったものだと、博士は内心そう思った。

 

 

 「つらひ……マジ無理……どうして最近私ばっかりこんな目に……」

 

 ちなみに、マモルが今着ているのは丁度最近ユイと共に買いに行った女物の服の一つである。元の服はどれも微妙にサイズが合わずどうしてもズレてしまうために使わざるを得なかった。もちろん、着替え中彼はずっと顔を赤くしながら目を閉じていた。ユイやアリサ、サクヤは着替えを手伝うと申し出ていたが、「女とはいえ自分の裸を女性に見られるのはキツイです」と丁寧に断っている。

 余談だが、下着を着ける時マモルは血の涙(※イメージです)を流していたそうだ。

 

 

 

 「えーと……どうする? マモル、今日はお休みする?」

 

 「いえ。仕事はしっかりとしますよ」

 

 暗い表情で枕を抱きながらゴロゴロと転がっていたマモルだったが、ユイの言葉を聞くとしゃきっと直立し真剣な表情になる。この立ち直りのスピードの速さは誰が見ても賞賛に値するだろう。

 

 「この身体で戦うのは少々不本意ですが、戦えるのであれば戦った方が良いでしょう。それが普通のゴッドイーターというものです」

 

 「あ、うん。ソウダネ」

 

 何時ものズレをみて、他のメンバーもどこか安心した様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、エントランスはいつも以上にザワザワとしていた。彼らの視線の先にいるのは、ソファーに腰掛けている一人の少女。艶やかな黒い髪を腰元にまで伸ばし、青いコートとチェック柄のスカート、黒いニーハイソックスに身を包んでいる。突然あらわれた見たことのない美少女のゴッドイーターに、特に男性が釘つけになっていた。この正体が『狂人』と恐れられるマモルだと知ったらどんな反応をするだろうか。

 

 「お待たせー。ゴメンね? 刀身をどれにしようか迷っちゃって」

 

 「いえいえ。付き合わせてしまうのは私の方ですし、何も問題ありません」

 

 そこに加わるもう一人の美少女。極東支部最強のゴッドイーターと噂される、神薙ユイ。ふわりとした栗色の髪に前髪を綺麗に留めるヘアピン、紺色のカーディガンとシルクのスカートで着飾るその姿はとある人間の日記で『女神』と称されるに値するものだった。意味合いは違うが。

 

 そんな二人――背はユイの方が僅かに高い――が並び楽しそうに会話をしている場面をみて、エントランスはより一層騒がしくなった。姉妹のようだと楽観視するものもいれば、第一部隊副隊長に声をかけられている彼女は何者だと戦闘面で気にかける者もいる。

 

 

 「それじゃあ行こっか」

 

 「はい。よろしくお願いします」

 

 声をかけられそうになったからか、二人はにこにことしながらも逃げるようにゲートから出撃していった。

 




反省はしている。後悔はしていない。
大事なことなので二回言いました。

恐らく皆さんは私が女装好きな奴とかTSが好きなヤツとか、そういうおかしい目で見ていると思います。誰だってそう思うでしょうし、私だって作者でなければそう思います。実際間違ってはないですけどね!

これを伏線と捉えるか作者の趣味と捉えるかは皆さんにおまかせします。

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