私はただ生存率を上げたい   作:雑紙

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100000UA突破……!!
読んでくださっている皆々様、誠にありがとうございますっ。一ヶ月少しで六桁までいくとは思いもよりませんでした……っ。
沢山のご感想や誤字報告、評価等々をお送り下さった方々にも本当に感謝しております。拙い作品ですが、よければこれからもよろしくお願いいたします。


九十二日目~九十四日目

 配属九十二日目

 

 午後からの事柄だけを記す日記となってしまうが、しっかりと書いておくとしよう。実は今朝、身体が女性のものになってしまっていた。……この文面だけ見ると頭がおかしい人に見られること間違いなしだろう。しかし、事実ゆえこれ以外に言うことがないのだ。

 

 原因は昨日討伐したサリエル妖精種によるものらしい。コアを複数個取得し解析することが出来れば私のこの変化を治すことが出来るかもしれないとのことだが、新たなサリエル妖精種の姿は微塵も見かけられないとのこと。解決のめどがなければ私はこのまま一生女になるのであろうか。泣きたい。

 

 余談だが、私はどうやら女になった時の感情の変化に慣れていないようで、男の時よりも表情が表に出やすいとのこと。実際、上の行にある小さな染みは私の涙によるものである。涙を流すことなんて何年ぶりだろうか。複雑な気持ちだ。

 

 まあ、それでも仕事を休むわけにはいかまいと気落ちする身体に鞭を打って今日もアラガミを討伐していた。どれだけやれるか試すためなので、比較的控えめな相手だったが。それにしても、ディアウス・ピターから突然鋭い羽のようなものが出てきたことには驚いた。アラガミの進化というものだろうか、なかなか興味深かった。勿論へし折ってやったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 任務に出撃し続けて気づいたことだが、どうやらこの状態だと何時もよりも身体能力は向上しているみたいだ。オウガテイルの尻尾をつかんでぶん投げる際に込める力をそれほど必要としなかったし、何時もよりも早く走れたり素早く神機を振るえたりした。反面、何時もなら大丈夫であるはずのヴェノムやリーク、スタンといった状態異常にかかってしまうなどの問題点もあるようだが。毒々しい感覚を感じたのは久しぶりだった。

 

 皮肉なことだが小柄になり小回りがよく効くようになったので、ずっと手を出していなかったショートブレードを使ってみた。ロングやバスターと違いとても軽かったので、こんな重さでアラガミの肉を断ち切れるものかと少し不安だったが、何の問題もなく討伐できた。これまでずっと重さのある刀身による一撃を大事にしてきたが、手数で攻めるのも良いものだと感じられた。これだけ手軽なら兼ねてより考えていた二刀流も試せるかもしれない。……適合する神機が他にもあれば、だが。

 

 ブラストの空中飛行による行動も軽いショートの方が自由自在に行けるのではないかと思われるかもしれないだろうが、案外そうでもない。確かにオラクルの消費量が減ったり滞空時間、飛距離も上がりはするのだが、適度な重みがないと空中で回避行動が取りにくいのだ。軽すぎても駄目、重すぎても駄目ということで最もフィットするロングこそがやはり空中機動にふさわしいと思う。

 

 なんやかんやと書き連ねたが、私としてはやはり早く男の姿に戻りたいものだ。身体能力の向上や小回りの効きやすさは確かに便利なものであるのだが……女性の身体というところに問題がある。正直書きにくいのだが……その、胸が少々邪魔くさいのだ。

 

 俗に言う貧乳にあたる部類なのだろうが、動くごとに揺れる為に度々そちらに意識がいってしまう。変態と蔑まれてしまうだろうが、仕方ないことだと思う。なにせ、つい先日までなかったものに振り回されるのだから。ユイやアリサ、サクヤさんなどがいつもこのような感覚を味わいながら戦闘を行っていると考えると、尊敬に近い感情を覚えてしまう。女性は大変だ……肩も凝るし。今度皆にマッサージでもしてあげようかと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はもうお婿にいけないかもしれない。いやまあ、人間の欠陥品といっても差し支えない私を迎えてくれる人がいるとは限らないが。いたとしたら相当の物好きか聖人か、それくらいだと思う。

 

 満足する依頼の数をこなしても、私の姿は依然女子のままだった。第一部隊の皆からの提案で、この姿の間、私は臨時配属されたゴッドイーターとして振る舞うことになり、博士と第一部隊以外の人に正体を知られまいとしてきた。乗り気ではなかったものの、案外上手くいって懐疑の目をとても向けられた。

 

 付け加えるならエリックさんに……ハッキリというのならナンパに近いものを受けてしまう程、私の女姿は受けが良かったらしい……とても複雑だ。私は至ってノーマルの性癖なので勿論ノーセンキューしたのだが、返答の仕方が悪かったのかエリックさんは凍りついていた。誤解をさせてしまい本当に申し訳ない気持ちになる。

 

 話がそれたが、夕方を迎えても一向に戻る気配がないので、最悪の場合……つまり、これから女性として生きていく場合のことも考えなくてはならないと第一部隊の皆と相談した。元凶のサリエルの派生種も未だ確認出来ていないために、結構私は真剣だった。

 

 が、そこで問題が起きた。話し合っている内に、誰から言い出してしまったのか、女である私の生活方法をどうするかという話になってしまったのだ。それには着替えは勿論、お風呂やお手洗いと言った私(男)が軽く死ねる案件も入っている。

 

 私はその問題から回避するために、「着替えたりお風呂に入らなければ大丈夫です。流石にトイレは目隠ししてします」と答えると、全員……特に女性陣に強く抗議されてしまった。曰く、折角可愛いのに勿体ないとか、髪や肌を疎かにするのは女性としてあるまじき行為だとか。

 

 言う事は最もであるが、私は元々男であるのでそこまで気を回す必要がない。そんな風に答えてしまったのが仇となったのか、女性三人に私の自室に連行され…………色々と教えられる羽目になった。

 

 ここまではまだ良い。自身の身に対する関心が少なかったのだと反省する点ではあるし、別に覚えていて損がある知識でもなかった。だが、これだけで終わることは無かった。

 

 早速、と笑顔で三人から渡されたのは数々の衣装。どれもが女性ものであり、その中には明らかにコスプレのようなものも混じっていた。私は困惑の視線を送ったが、三人は楽しそうに私を見返してきた。これでもかという抗議を口にだそうともしたのだが、圧力には勝てなかった。

 

 パーカーや隊服などの上着はまだ良かったのだが、どうしてもスカートには慣れなかった。スースーするし……少し大胆に動いただけで下着が見えてしまう。女性姿でも下着が見えるのは恥ずかしい。スカートを抑える姿を写真に収めたいとか言われたものだから、その時は必死で、それこそ涙を流すほどやめてくれと懇願したが。

 ここまで集団で虐めるとは……皆、サディストと化してしまったのだろうか。隙を見て逃げ出して男性陣に助けを求めようとしたら一斉に目を背けられたし。

 

 

 結局、満足するまで女性陣に色々な服を着せられてしまった。時折男性陣へと私の姿を見せさせるのはきっと私のメンタルを効率よく削るためなのだろう。もう着替えさせられている時点で私の精神力は尽きているが。

 

 ………………でも、まあ、楽し(ここから先は黒でぐちゃぐちゃになっている)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トイレはまだ気を保つことが出来たが、お風呂は相当きつかった。目隠しして身体を洗ってはみたものの、たまに変なところに手が触れてしまったりして本当に大変だった。胸もつっかえるし。持っている人としては本当に邪魔くさい。髪も長くなって洗うのに時間がかかるし。身体のバランスがうまく取れなくてつまずいて転ぶし。

 

 もうやだおうちかえりたい……そういえば最近家に帰っていなかった。機会があれば戻ってみるとしようか。

 

 ……女性って、生活するだけで大変なのだなと感じた一日だった。

 

 

 

 

 

 

 配属九十三日目

 

 

 今日の朝もいつもの通りにユイに起こされたのだが、どうやらボサボサになった私の髪が気に入らなかったらしく彼女の自室に連れていかれて化粧台の前に座らされ、髪をすかれた。確かに、鏡を見た時の私の髪はかなりぼっさぼさだったが……そこまで気にすることだろうか。普段の私……男の時はある程度寝癖が酷くても許されていたのに。断ろうとはしたが、あんなにしょんぼりした顔をされたら誰だってさせざるを得ないと思う。単純に私の意志が弱いだけなのかもしれないが。

 

 すいてくれている間にユイの表情が鏡越しに分かってしまったのだが、どうしてかほんのりと顔を赤くしていた。何故……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サリエル妖精種が見つかった。喰ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一刻も早く元凶を倒したかったので、つい正午頃の文を疎かにしてしまった。反省しなければ。

 

 見つかったサリエル妖精種は新たに小型アラガミを引き連れていたが、発見が早かった分その数は少なかった。記憶によると五十~七十匹くらいだろうか。今回はサリエル自身の姿が最初からあったので、ついつい本体を真っ先に倒してしまったのだが、倒した後小型アラガミ達が自然と喰い合いをし始めていた。統率者が無くなればこんなものだろう、と残った小型アラガミはきちんと掃除した。

 

 さて、無傷でしっかりと持ち帰ったコアを技術班の方々が分析してくれた結果、あのサリエルの派生種が持つフェロモンが生物学上の雄にあたるものに多大な効果を及ぼすが判明した。簡単に言うなら、男性が若手のアイドルに魅了されるのと同じようなものらしい。勿論雌にも効果はあるようだが、支配下における可能性は低いそうだ。よくよく思い返してみると、オウガテイルやコクーンメイデンは多くいてもザイゴートの姿はそこまで見なかった気がする。

 

 その誘惑フェロモンと称されるものがアラガミではなく他の生物にかかってしまうとどうなるのかを検証してみたところ、少しの量であれば特に変化は生じないが、多くなっていくと病にかかって段々と体温が上がって動悸が激しくなり、最終的には死に至るのだとか。最も、最終段階に至るまでのフェロモン摂取量は自分から望んでそれを受け続けない限り決して達することがないほど多い必要があるらしいが。思った以上に毒性は低いらしい。

 

 また、これは雄に限る話であり、雌の動物にはほとんど効き目がないらしい。雄にとって致死量のフェロモンを受けてしまったところで、雌にとってはやっと身体に熱が入ってきてしまうところなのだそうだ。人間の女性にとっては恐れることのないものだということだろう。

 

 そんな風な説明をペイラー博士から丁寧にしてもらったのだが、結局のところ何故私が女性と化してしまったのだと問いただすと、静かに首を横に振られた。私がその場に崩れ落ちたのは言うまでもないだろう。

 

 可能性としてはごく稀なケースで性転換を起こしてしまう作用があるというものだが、そんな都合の良いことなどあるのだろうか。一応解毒薬は作ってくれるとのことだが……原因も分からない女体化なんて泣き出す他ないと思う。実際説明を受けた時、私の頬に雫が伝う感触がしたし。ペイラー博士や一緒にいた第一部隊の皆がとても焦った様子で「大丈夫」とか「頑張れ」とか励ましてくれたせいで余計に目頭が熱くなったが、私は何とか耐えた。やはり彼らは私を虐めているのだろうか。精神的にそれが堪えるというのを分かっていてやっているのだろうか。

 

 ……できるだけ、早く治るといいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペイラー博士の提案で、もしも私がこのまま女性として過ごす場合に使う私の名前を何人かで決めることとなった。最初から嫌な予感しかしなかった。皆の私を見る目が尋常じゃなかったからだ。しかもそれを自分の自室でやらされるとは思わなかった……いや、別にそこは全然構わないのだけれど。触られたり見られたりして嫌なものはないし。コウタが色々部屋を物色していたところでユイが「何も変なものはないよ」と言ってくれたのは事がスムーズにいって助かったのだが、どうして私の部屋のものを知っているのだろう。……いや、よく考えれば毎朝来てくれているのだから嫌でも目に入るか。

 

 話を戻すが、女としての私の新たな名前を考える会が開かれ、皆が一枚の紙に名前を記して発表する形式となった。そこそこ大事な場面だと思うのだが、どうしてか皆はこれから起こることが楽しみだと言わんばかりの表情をしていた。……唯一の救いは真剣な表情で考えてくれるソーマさんだけであった。後は察して参加してくれなかったサクヤさんや、リンドウさんくらいか。

 

 コウタの案は、『ノラミ』。

 私は有無を言わさず腹パンした。シオの時の名前をまだ引きずっているのか。しかもそれを私につけるってどういうことなのだ。抗議しようとしてたので二度目の腹パンをくらわせた。

 

 アリサの案は、『サイ』。

 動物の名前や数字の単位、アルファベットの読みなど見た時は色々予想を立てたのだが、どうやらあるロシア語の一部分を切り取ってきただけらしい。どんな意味かはわからないが、悪くは無いと思った。少なくともコウタよりは。

 

 ソーマさんの案は、『マナ』

 流石第一部隊の常識人、かつシオの名付け親である。かなりしっくりとくる名前を用意してくれた。本当に有難かった。しかし、申し訳ないが私が名乗るには可愛らしすぎて……率直にいうと、好みではなかったと言うべきか。私以外の女子につけて欲しい。

 

 そして、ユイの案は『マツリ』

 『筒井マモル』の文字列を若干弄り、名前をマツリとしたのだそうだ。簡単な発想ではあるが、だからこそ私としてはしっくりとくるような名前だった。

 

 結果、万が一女性のまま過ごす場合は『筒井マツリ』と名乗ることとなった。直後にマツリちゃんと連呼されてしまったので、コウタへとヘッドロックをかけてやった。「なんで俺ばっかり!?」と嘆かれたが、単なる八つ当たりである。慈悲はない。

 その際にコウタは何かが当たってるだの何だのと騒いでいたが、何を言っているのか分からなかった。頭を抑えているのだから腕が当たるのは当然だろうに。

 

 

 ……考えてくれたのはありがたいことだが、出来ることなら筒井マツリと名乗らないことを祈っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 配属九十四日目

 

 

 

 私の名前は筒井マモリ……ではなく、筒井マモルである。そう、やっと私は男に戻れたのだ……っ!

 

 朝ふと起きた時に身体のおもりが外れたかのような錯覚を覚え、声を出した時に低くなっていることに気がつき、つい目が覚めて股や胸を探ってみたら無かったはずのものがあり、あったはずのものが無くなっていたのだ。思わず歓喜の叫び声を上げたくなったが、流石に寝ている人たちに悪いと思い心の中で何度もガッツポーズをした。本当に、本当に良かった。男に戻ったことを知った皆が、嬉しさ半分残念さ半分といった表情を出していたことには少し傷ついたが。……もっと苦しんでおけば良かったのにということだろうか、やはり皆からは嫌われているようだ。ま、まあ慣れたし……うん……。

 

 男に戻れたということは、きっと博士辺りが気をきかせて夜に私の身体に解毒薬でも使ってくれたに違いない。なのでこれからお礼を言いに行くことにする。案外作るのが早かったものだ……そのお陰で助かったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうやらペイラー博士は解毒薬を私に打っていないらしい。そもそもまだ出来てもいないそうだ。

 

 ということは、自然治癒……だろうか。フェロモンを浴びたモルモットは病気に近い症状を見せていたそうだし、薬を服用しなくても病が治る場合は多々あるが……今回は人体自体が変わるほどの大きなものだ、普通こんな短時間で自然と治るものなのだろうか。

 

 いや、そもそも性転換自体がサリエルの醸し出すフェロモンの効果とは思えないようなものだったから、想定外や予想外で治ることもあるか。考えるのも面倒だし、そういうことにしておこう。

 

 

 エントランスに向かうと、やれ黒髪の美少女の姿がないとか云々で少し騒がしかった。黒髪の美少女………………まさか、女になっていた私のことではと冷や汗を垂らし、いつの間にか撮られていたらしいその人物の写真を見させてもらった。私だった。死にたい。

 

 唯一の救いはその写真が隊服だったことだろうか。もし、ユイ達に着せ替えさせられていた時の写真が出回っているなんてことがあったら……この極東支部自体滅ぼしてやろうか。もちろん冗談だが。そんな力があれば私は落ちこぼれになんてなっていないし、そもそもあったとしても極東支部のゴッドイーター達から一斉にぼこられて終わりだ。やはりぼっちには辛い。

 

 

 

 何はともあれ、男の身体は取り戻した。女の身体は便利さも不便利さもあったが…………興味深いものではあった、かもしれない……うん。

 

 

 言っておくが、私は決して変態ではない……はずだ。




わたしは おとこに もどった !

はい。というわけで1日半の女性体験記でした。(お風呂シーンとかは)ないです。女性のこれからを期待していた人はごめんなさい許してくださいなんでもしますから(

突然の流れで困惑する方も多々いらっしゃいますでしょうが、一応変異したのにも戻ったのにも理由や原因はございますのでご安心ください。だから私の趣味ってだけじゃないよ。ホントダヨ。

何故こうなったかまでは流石に言えませんけどね……っ。

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